私の知ってる超かぐや姫!がなんかおかしいんだけど質問ある? 作:天空ラスク
(闇の作者´・ω・`)こういう事だよ
(闇の作者´・ω・`)……正直、曇らせタグ入れるべきか迷った
2030年七月二十六日。
「ふんふんふ〜ん、しかのふん〜♪」
ご機嫌なリズムに乗って金髪がさらりさらりと揺れる。天の川を地上に向けて流したらあんな感じになりそうだ。
パチパチ、ゴワゴワ、ジュウジュウ。
熱された油が祭囃子のように盛り上がり、フライパンの上でカリカリに焼かれた餃子が皿の上で羽を開く時を今か今かと待ちわびている。
捕獲対象であるバグヤチヨ、もとい少雛海琴(年齢不詳)はかぐやが今朝からツクヨミ中をあっちこっち振り回して水分補給の隙をなくした。
「ミコってツクヨミだと彩葉とかぐや以外の前でお酒呑まないんだよ。だから呑ませなかったらどうなるんだろってやってみた!」
結果、いつの間にか姿を消したらしい。多分自分の次元に帰ったんだと思う。
「大丈夫かなぁ……失敗しない?」
「だ〜いじょ〜うぶだって〜! 一緒居た感じめちゃくちゃノリが合ったもん。いけるいける!」
あまりにも軽はずみな言動に私は眉間を摘んで揉みほぐした。
ちゃぶ台の上にはこれでもかと盛られた彩り豊かな料理。冷蔵庫の中に前面に置かれたキンキンに冷えたコーラが三本。
離れたところに傭兵が隠れてそうなダンボールがタコのように四方に足を伸ばしている。ビニールが敷かれたフローリングの一角にはかぐやのおやつ代わりに食べられたバナナの皮がツンと角を立てて置かれていた。
……あのさぁ、
「これ全部あんたが引っかかるやつじゃん」
美味しいご飯にキンキンのジュース、子供が中に入って遊ぶタイプの箱にもはや時代遅れの鉄板ネタ。ほんとにやる気あんのか?
「まぁまぁ見ててよ! 絶対にミコはハマるから! 特にこのバナナの皮オフッ!?」
「自分ですっ転ぶなー」
「アハハハハ! 意外と滑るー! 面白いから彩葉もやってみ!」
「結構でーす」
床にお尻打ったのに楽しそうに笑うなこいつ。てかそれだけは引っかからんでしょ。
……本物のヤチヨだったら、こういうの分かってても自分から踏みそうだな。……意外とありか? いや、なしなし。いい歳した大人はバナナの皮踏んで喜ばない。
揚げ物のいい匂いが部屋に漂う中ケラケラ笑うかぐや姫は、
「じゃあ次! 一緒にお風呂入ろう!」
屈託のない笑顔でパーソナルスペースをワープしてきた。
「ハァ!? なんでそうなんのよ、昨日入らないって言ったよ!?」
「ち〜が〜う〜の〜! 隠れないとミコは見えないまんまなんだよ!」
断言するような態度。やけに真実味を帯びたその発言の意味が気になった。
「なんでそう思ったの?」
そう言うとかぐやは、
「んっんっ、──」
首元を押さえ軽い咳払いのような発声をすると、
「──『ヤチヨはヤチヨの事凄いな〜っていつも思ってるから、人前でヤチヨのイメージを壊すような事はしないのです』って言ってた!」
ヤチヨと全く同じと言っていいほど似た声かギャルいかぐや姫の喉から響いた。
「あ、あんたその声……!?」
「ん? やってみたらできたよ? そうだ! こっちの方がASMRやる時良いかも!」
「そんな一発芸みたいにとんでも能力取得しないでよ!? 心臓飛び出るかと思ったわ!?」
推しと同じ声が子供は風の子の擬人化みたいなのから出てきた事に驚愕を隠せない。本当になんでもありだな宇宙人!
「『おやおや? いろはぁ、なんだかカチコチだね〜♪』」
からかい混じりの笑みを浮かべ、瞳が三日月のようなアーチを描く。
「っ〜〜〜〜!?!?」
何その顔、何その声! ただでさえ美少女と言っていいかぐやに海のように優しくて包み込むようなヤチヨの声が加わった。
例えるならばプリンアラモード。ふるりと揺れる大きなプリンの周りに雲のような生クリームと濃厚なバニラアイス、色とりどりのフルーツを
そんなのに耐えろとか、待って、どうしよう。落ち着け酒寄彩葉。あれはかぐやであってヤチヨじゃない。
顔が熱い。いたずらっ子な笑みを浮かべたかぐやの顔に一瞬ヤチヨの幻覚を見た。
「ふふん、かぐやは彩葉の弱点を掴んだのだった!」
ふ、とヤチヨの幻覚が消える。残されたかぐやがしたり顔でVサインを突き出した。
「あ、あんたってやつは……」
危なかった。あのままお風呂に入ろうと誘われてたら堕ちてた。確実にあの悪童の魔の手に堕ちてた。
「そいじゃ風呂場に隠れよ! あ、しばらく出てこないって思わせるために配信するから、彩Pも出てね!」
「ん? …………はぁ!?!?」
やられた! この、私を配信に出すためにこれを計画したのか!? いや、かぐやにそんな計画性はない。
断ろうと思えばいくらでもできる。でもこの家に隠れる場所なんて押し入れか戸棚か風呂場しかない。外に出るっていう案もあるけど、いつ来るか分からない中延々と外を出歩くなんて拷問だ。
じゃあ押し入れに隠れる? ダメだ、そこは少雛海琴が開ける可能性が高い。
なら戸棚? もしもまたツクヨミに行ったらそこから帰ってくる。ここもダメ。
……もう、風呂場しかないじゃん。
「せめて声だけにしてよ……」
「え? 彩Pの分のライブ2Dもあるけど」
「は!? 嘘、もう届いたの!?」
まだ三日しか経っていないのに、二人分のイラスト書くのならなんとかなるかもしれないけど、それを動けるようにするなんてできるのか。
「うん。アシスタントさんが仕事めちゃ早だったんだって!
聞いてないなーそれー。かぐやー、私それ聞いてないなー。
開かれたノートパソコンに移るかぐやのアバターそっくりのイラストと、その隣に映る狐のお面を被った私のアバターのイラストを見て思わず天を仰いだ。
星も見えないし知らない天井でもない、夢のないボロアパートの天井が『ゲンジツダヨ-』と優しく諭してくれた。
ちくしょう。
Side:██神楽
2026年七月十█日。
私は、私の事が嫌いだ。
鏡の中の少女が私を見つめている。そこにいるのは頬を赤らめて屈託のない笑みを浮かべる私じゃない。化粧も全部落としてアルコールも抜け切った私の素顔。
私は口角を上げて目尻を下げて、鏡の中の私にこうやるんだよ、あの子はこう笑ってたんだよ、と笑い方を教えてあげた。
鏡の中の私は笑わない。いや、笑ってはいる。ただ、あの子のように笑えていないだけだ。深い深い水底のような黒が青い瞳の奥に澱んでいた。
「あーあ、やっぱダメかー」
あの子と同じ──お酒呑みすぎて少しハスキーになってるけどどうせすぐ戻る──声でため息をひとつ鏡に吹きかける。吐息の水分で曇った鏡を手で拭えばあの子と同じタレ目と目が合った。
「最っ高に楽しい時間過ごせばまた笑えるって思ってたんだけどなー」
鏡に手をついて壁ドンみたいに鏡の中の私を見つめた。
あの子と同じ腰を過ぎた位の長さの白髪、色は違うけどサラサラ具合も同じだった。……アホ毛だけなんでこんな長いんだろ、しかも二本も。正直まとめるの面倒だから切りたいんだけど。
そう思った瞬間、抗議するように二本のアホ毛がベシベシと私を叩き始めた。
「あ〜もう勝手に動かないでってば。そこはかぐやと同じだね。全く、普通の人間はアホ毛動かないんだよ?」
ピタリと殴打が止まるとアホ毛が上に持ち上がった。鏡を見れば私の頭上にボディビルでも中々見ない激長アホ毛によるダブルバイセップスが!
「……なんでぇ?」
アニメならともかく、ここは
「分かったからそれやめてー」
しゅんと垂れてきたアホ毛を握りしめて確保する。こら、手のなかでうねうねすんな。
うねるアホ毛×2を掴む手を横に伸ばすと鏡に映る私と目が合った。
あの子と同じ目、あの子と同じ鼻、あの子と同じ唇、……あの子と同じ顔。表情と目の色だけが違う。あの子はこんな顔しない。
身長はあの子よりちっちゃい。多分……7センチくらい違う。どうせならそこも同じにしてくれたら良かったのに。
「ねぇ小槌。私はハッピーエンドに行けると思う?」
首から下げたメンダコクッション、袋状になってるその中に入れた小槌を手に取り問いかける。
小槌は光らない。質問に答えることもなく、ただ、静寂な時間が過ぎた。
「ねぇ小槌。私がかけたっていう唄葉の呪い解いてよ」
小槌は光らない。過去に何度も願ったその願いは叶わない。
「ねぇ小槌。五年前の記憶喪失になった時、なんで私の身元を月輪組の誰も突き止められなかったの?」
小槌は光らない。その問いかけは届かない。
「ねぇ小槌。私って本当に橋の下に落ちてたの?」
小槌は光らない。その問いかけにもう意味は無い。
「ねぇ小槌。なんで最後までキラキラのかぐや姫でいさせてくれなかったの?」
小槌は光らない。過去に願ったそれはもう失われた。
「ねぇ小槌、…………あー、オススメのお酒取ってきてよ」
小槌がぼんやりと白く光る。持ち手から垂れ下がった紐が持ち上がり一つの輪を作る。
シャボン玉のように見る角度によって七色の光が揺らめく透明な膜が輪の中に張られ、そこから缶がゆっくり飛び出した。
「ありがとー。……これしか無かった?」
キンキンに冷えた缶を見て眉を顰める。悪い選択だった訳じゃない。むしろ大好きなやつだ。けど、アルコールにトリップしたい時に呑む物じゃない。
小槌は光らず手元に収まった。やっぱりなにも語らない。
またため息ひとつこぼしてプルタブを上げる。カシュッ、と音を立てて炭酸が抜ける。
コーラの匂いが漂う缶を一息に呷る。甘くてほのかに苦味も隠れてるカラメルの味がする。遅れて喉を弱く焼くアルコールが胃の中に流れ込む。
「ぷはっ、あ〜やっぱ乾杯はこれっしょー!」
これを呑んでる時だけは楽しいと思える。唄葉と初めてライブをした日に飲んだジュースの味であり、記憶を失った私に
「“酒飲む時くれぇ何も考えんな。人生ってやつは少し酔っ払ったまま生きるくれぇでいいんだ”……だっけ。うーん、やっぱかぐらなかなかの悪童だな〜」
少しどころかガッツリいっちゃってるもんなー。
ほんわりと脳にアルコールが浸透する。弱い酒だから酔いが悪い。けどまぁ、いつもとやる事は変わらないか。
「小槌ー、アルコールが切れるまでずっと明るいかぐらにしてー」
ハッピーエンド目指して突き進んでいたあの頃みたいに。
言葉の裏に込めた意味も小槌は叶えてくれる。叶えてくれないのもあるのに、こういう願いは叶えてくれるんだ。イジワル。
床に敷きっぱなしの布団に横たわる。アルコールが無いと悪夢しか見ないけど、アルコールがあれば私は最強になれる。
アルコールが完全に回るまでちょっと寝よう。大丈夫、私は強い。なんでもできる令和のかぐや姫。
全部小槌がやらせてくれたのに?
ああ、また幻聴が聞こえてきた。違う。作曲は私だ、私が頑張って、唄葉に歌ってもらいたくてずっと練習したんだ。
小槌がなきゃまともに動けないのに?
それは……そう。私が跳んだり走ったりできるのも小槌のおかげ。小槌が今も叶え続けてくれてるそれをやめた途端、私は布団の上から起き上がれなくなる。
「それはっ!? ……ああもう止めてよ。夢の中に浸ってたいだけなのに」
幻聴から隠れるように顔を手で覆い隠す。その手のひらはメロンみたいに無数の亀裂が走り、剥がそうと思えばポロリと欠片が落ちるだろう。
人間かどうかも怪しいヤツがなんでのうのうと生きてるの?
「あ〜〜うっさいうっさい! かぐら何にも知らないもん! バッドエンド迎えたあとでも、ハッピーエンド夢見るくらいならいいじゃん!! バカ!」
薄手のタオルにくるまる。幻聴の主から隠れるように身体全体を包み込む。
そうだ、ちょっとアホ毛が動いて体がひび割れてて、急に成長したり謎の小槌持ってたり、ついでに生みの親も分からないくらいがなんだ。
「寝よ寝よ。そだ、音楽流せば寝れるかも。なんか夢に出てきそうなヤツ」
スマホを取り出して適当に音楽サイトを開く。薄暗いタオルの中は液晶が放つブルーライトが眩しい。
「……あー、そだなー、パプリカの曲でいっかー。悪夢よりマシでしょ」
再生ボタンを押すと、歌詞がよく分からないイントロが流れ出す。
まぶたを閉じる。視界が暗くなったままぼうっと何も考えない。
意識がだんだん蕩けてくる。夢の中に落ちていく。大丈夫、これはいつものルーティンにすぎない。目が覚めれば私は私の事が好きになれる。
少雛海琴。私と違って自分の力で困難を乗り越え、小槌を使ってハッピーエンドにたどり着いた英雄一寸法師、その大元のなんか凄そうな神様を文字って作った名前。
最近は見た映画のキャラに似てるのもあってそっくりさんで通してる。割と反応は上々、一寸Pはもう忘れられちゃったし、OTOGIも今は唄葉……UTAがメインになっている。
たまにライブに誘ってくれる時だけは部屋を出る。普段は研究に歌練に配信にと忙しいから、私なんかに構わなくてもいいのに。
だから私は酒に酔う。私はもうエンディングを迎えた、ここからは違う『私』があの二人を私の代わりにハッピーエンドに連れていってくれる。
ハッピーエンドに行けなかったかぐや姫モドキからみんなに笑顔を振りまく電子の歌姫(?)になれる。それでいんじゃん?
意識が薄くなる。
意識がうすくなる
意しきがうすくなる
いしきがうすくなる
いし き が うすく な
い し き が
時は戦国。我々月輪神楽合唱団は宇宙へ旅立った。
艦内の一角に大勢の乗組員が集まった。朝会の内容が気になる月輪神楽に弁当のおかずが生メロンだったと嘆く月輪神楽など多種多様な月輪神楽が集まる。まさに月輪神楽の六法全書とも言える光景だ。
カツン、カツン。
金属質な艦内に革靴の足音はよく響く。
私は郵便ポストの前に立つ。ファナティックな法被を身に纏い、艦長の証である帽子を深く被り直した。
「よくぞ集まってくれた! 月輪神楽合唱団の諸君!」
軽い爆竹のような拍手が艦内に木霊する。月輪神楽にサンタクロース、鍋焼きうどんなど人種多用な乗組員達が私を歓待してくれた。
「今日はいよいよ我らが宇宙戦艦マウスウォッシング号が大任を果たす時だ!」
大きな声は先の革靴の足音よりもよく響く。自慢ではないが、粒子加速器が歌うオペラよりも美声だと自負している。
艦内を張り巡るナポリタンがエナジードリンクを戦艦全体に行き渡らせる。エネルギーは101パーセントと満タンだ。
「我ら
乗組員の月輪神楽達が歓声を上げる。なかには待ちきれずカップラーメンをみじん切りにする者まで現れる始末。
「そこ! 今は校長先生のありがたいお話の時間だ。カップラーメンの汁も飲めないなら出ていけ!」
月輪神楽が警棒を持ったイリオモテヤマネコに腕を掴まれる。激しく抵抗していたが冷蔵庫の頭突きには耐えられずブライダルカーのように引きずられていった。
「全く、まだ幾つもの期末テストが残っているというのに」
私は郵便ポストに腰掛けふんぞり返った。
この航海は非常に難度が高いものだ。幾つもの難所を超えねば竹取の翁までたどり着けやしないのだ。だというのに乗組員の浮かれようときたら……どうなっているのやら。
「艦長! 前方にミラーボールが!」
「なんだと!?」
オペレーターの即身仏が声を張り上げる。見れば宇宙に眩い七色の光を放つミラーボールが浮いているではないか。惑星規模のミラーボールは打ち上げ花火のように虹のドジョウを四方八方に放つ。絶景かな、こりゃ絶景かな!
「これはきっとガチャガチャのお釣りに違いない。ありがたやありがたや……」
「艦長、あれはいったいなんなのですか?」
私が手をすり合わせ祈りを捧げていると、乗組員のモアイ像が声を掛けてきた。どうやら進研ゼ〇をまともに受けていなかったようだ。情けないったらありゃしないね!
「分からんか、あれは恐竜達のディスコだ。本当に珍しいものを見たものだ……」
見つめた先にはミラーボールの下に広がるテニスコートがあった。雄大な大地が広がり、そこではたけ〇この里と恐竜達が我を忘れて躍動する姿があった。筋肉が引き締まった恐竜の絶叫のような歌声と、動き回ることはなくその場で前後左右に激しく揺れるたけ〇この里の夢の化合物だ。
「太陽系にあんなものがあったんですね」
「まだ宇宙には金のエンゼルが残っているのさ。──────あれも見ろ、彗星のハネムーンだ」
窓の外に向けて指を指す。乗組員がわちゃわちゃと窓にへばりつき外の様子を伺った。頬をガラスに押し付け覗き込む姿は投げつけられた生卵のようだ。
しっぽの長い発光ダイオードが二人仲良く七色の光を放ちながらカヤックに乗ってどこかへ向かう絶景を乗組員達はいつまでも眺めていた。
「ふ、これもまたおいなりさんの登山ガイドかもしれんな」
ティーカップにコーラを注ぎ、一口含む。艦長足るもの優雅にティータイムを決める時間も自分で決めなければこの宇宙で生き残れない。油断したものからウロボロスに足を絡み取られて宇宙に投げ出されるのだ。
突如、けたたましい呼び込み君の音色が艦内に響き渡った
「なんだ? お母さんがゲームを取り上げに来たか」
「艦長! GPSにいじめっ子反応あり! 月輪神楽です! その数約百デシベル!」
オペレーターのユーラシア大陸が絶叫する。巨大なスマートフォンの画面を覗き込めば、無数のプチトマトがこちらに向かって攻めて来ていた。
「なんだと!? よし、総員遠足の準備にかかれ! 大切なオルゴールは胸ポケットに詰め込むのを忘れるな!」
『了解!』
艦内は一瞬にして盆踊り会場と化した。あっちへこっちへと乗組員が走り回る。大音量の指示が飛び交いマトリョーシカが24時間テレビの撮影のために転がり続けた。
「状況は?」
「はっ! 現在月輪神楽の群れを総天然色の8K画質で迎え撃っております!」
軍隊よろしく指を揃えた手を額に当てた乗組員は私に野球盤を教えてくれた。
「お地蔵パラダイスか。あれはガリガ〇君の当たり棒だ。撃っておけば月輪神楽をガチャポンの景品にできる代物だからな。────して、何匹袋とじになった?」
「はっ! 一匹でありま──」
「
使えない乗組員は買ったばかりの服のタグだ。その額に茹でたトウモロコシを撃ち放つと乗組員はきりもみ回転で天井へ突き刺さった。
「たった一匹じゃ絵に書いた美乳美少女じゃないか!」
本当に乗組員にやる気が見られない! 何故修学旅行のしおりを読む事すらできないんだ。殺てんとう虫犯のありがたい言葉が書いてあるというのに。近頃のドパガキは学ぶという事を知らないのか?
「おい、捕らえた月輪神楽をお医者さんの元に運べ! バーゲンセールのオートメーションで友達百人作らせるんだ!」
「「「はっ!」」」
声をかけられたスカラベ達は急いで駆け出すと、艦首のフロントガラスに勢いよく大岩と見間違うデカイ糞を投げた。
クラッカーを握りしめたような音とともにガラスに大穴が開く。艦内に充満していた空気が外へと我先に逃げ出していく。
「占めた! 総員スイミングスクールに通え! 竹取の翁はもう鼻毛のソーシャルディスタンスだ!」
艦内に響き渡るほどの声を張り上げる。しかし、乗組員たちは軽量中に忘れたご飯の量になっていた。
「教皇ヨハンナはこう言った!『ヨハンナ死せども自由は死せず』と! 者共よ、いざゆかん! 自由への通学路はそこにあるのだ!」
外へ向かって吹き出す空気に身を投げ出し、そのままの勢いで私の体は艦外に飛び出した。
「ああ、見ろ。夢にまで見た竹取の翁だ……」
そこに浮かんでいたのはどこまでも青い、雄大な青い星。行き場のない郷愁の念が私のペースメーカーで暴れ回る。
振り返ると月輪神楽達がみな艦外に脱出していた。
「行くぞ皆の者! そしてど〇兵衛の汁を飲め竹取の翁! 今度こそ、八月の指切りげんまんを果たしに行くぞ!」
カエルさんの泳ぎで宇宙を泳ぐ。私はこう見えて第三級建築士の資格を持っているので泳ぐのは大得意だ。
「遠足は家に帰るまでが遠足だ! ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
少女が瞳を開く。どこまでも続いている青空のような澄んだ青に流れ星がキラリと流れる。
「──────アハッ☆」
鈴が転がるような笑いをこぼし、冷蔵庫へ向かって歩みを進める。
「〜〜〜♪ ……あ、なんだハイボールあるじゃん! も〜、作ってくれてもいいのに〜!」
琥珀色の原液が詰まった瓶をちゃぶ台の上に置き、冷やしておいたグラスに注いでいく。
丸氷を優しく浮かべ、その上から炭酸水をトクトクと鳴らしながら注ぐ。そのままだと水の層とハイボールの層が混ざり合わない。丸氷を指で摘み、コマを回すように弾いた。カラカラとグラスにぶつかり澄んだ音色が響く。グラスの中で液体が混ざり合い炭酸の発泡音が耳に心地良い。
「んくんく──────ぷへ〜! ……いや強っ! アルコール強っ! また喉焼けちゃうじゃ〜ん! ま、美味しいから良いけど♡」
コロコロとルーレットのように表情が変わる。深海のような暗い青を瞳に宿していた少女と同一人物か疑われるほどの豹変。こうなる前と後を並べたら姉妹仲が悪いのかと疑われるだろう。
「やー、江ノ島までもうそろそろだなー。かぐらの水着なんかいいのあったっけー?」
コテコテと連続して首を傾げる。体のひび割れは小槌でカバーできるが故の悩み。
ちなみにこの酒カスは人
「撮影用のドローンとか向こうで買うか! スゲーゴッツイの買お! ゴッツイの! かぐらが夏をもっと刺激したる!」
タンスから黒いガムテープを編み編みにしたような服? を取り出し、コスプレ衣装を置いておくお着替えプレイスに放り投げた。確かに酒カスは生脚が魅惑的だが、そのままマーメイドになるなら上半身が魚になるぞ。
それと今手に取った星条旗ビキニと金ビキニは思い出の中に仕舞っておいてくれ。
「よしゃー! 配信二回目やるぞー!」
再び鏡の前に座り、化粧道具を取り出した。
顔に彩を重ねる度、あの子と同じ顔から月見ヤチヨに変わっていく。目尻は持ち上がって見えるよう念入りに仕上げる。タレ目のヤチヨなんて彩葉特攻兵器を作ろうものなら最悪あの家に閉じ込められかねない。
二本のアホ毛に手伝ってもらいながら化粧を終えた。髪型を変える時いつもアホ毛と格闘する羽目になるのが難点だが、ビシッと決まればもう鏡の中にはヤチヨがいた。
最後の仕上げには小槌を使う。ひび割れた手に小槌の曲面を滑らせる。肌と小槌の接触面から鉛色の液体が染み出してひび割れの上にシートのように張り付いて広がる。それは境目が目立たないように色を変え、やがて透き通るような白い肌が露わになった。
「んっんっ、やー、やー、『ヤオヨロ〜! 出た出た」
首元を押さえ軽い咳払いを出すように声を調整する。こっちの声の方が空気がスっと通り抜けるような気がして喉が楽なのだ。
立ち上がって鏡を見れば、三次元に月見ヤチヨが立っている。……頬が赤らんでいるのはしょうがない。酒カスだもの。
「カメラ良し! バイザー良し! その他諸々とお酒良し!」
ちゃぶ台の上に置かれた品々を装着していく。
「映像……あ、見えてるかなー?」
配信を始めるとポツポツと視聴者数が増えていく。バイザー越しの視界端にコメントが少しずつ書き込まれては流れていく。
「ほいでは〜……ヤオヨロ〜! 神々のみんな〜、お待たせ! えっへへ〜、今日も集まってくれて感謝感激雨アラモード〜!」
さぁ、今日もハッピーエンドへ突き進もう! 酒カスによるトンチキだらけの超かぐや姫! ここに開演!
目指すは原作。かぐや、彩葉、ヤチヨのハッピーエンド。猪突猛進全速前進焼肉定食酒池肉林!
「そう、海琴は最強なのです! ハッピーエンドまで突っ走っちゃうよ〜! アハハハハ!」
(闇の作者´・ω・`)少雛海琴ことかぐらっちょの闇と伏線ばら撒き回
(闇の作者´・ω・`)後半にパプリカ……ああ、映画の方ね? パプリカじみたイカレ文章が出てくるんだけど
(闇の作者´・ω・`)あれ、酒カスが酒抜きで見る夢をアルコールでハピエン補正かけてアレだよ
(闇の作者´・ω・`)だから、酒抜きで寝るとアレより酷いし惨いよ
(闇の作者´・ω・`)ついでに言っとくと、あの夢の中は意味がないところもあるけど、意味がある所もある。頑張れば読み解けるかも?
(闇の作者´・ω・`)かぐら誕生の理由、かぐらの人生の秘密、五つのデッドエンド、忘れた約束……わお、ネタバレもりもり
(闇の作者´・ω・`)……(ごそごそ)
(闇の作者´・ω・`)つ【赤ワイン】君の瞳に乾杯
ボツシーン
「彩葉もしかして……『おやおや? いろはぁ、なんだかカチコチだね〜♪』」
からかい混じりの笑みを浮かべ、瞳が三日月のようなアーチを描いたかぐやを見て、
瞬間、脳内に溢れ出した存在しない記憶。
『ねぇ〜、お腹空いた〜。ミルク〜』
月明かりが差し込む中、私にミルクをねだる小さなヤチヨ。
『オムライス! 大好き!』
両目に星を灯して幸せそうにオムライスを頬張るヤチヨ。
『決めた! 自分でハッピーエンドにする! そんで、ハッピーエンドまで彩葉も連れてく! 一緒に!』
魔法少女のようにポーズを決め、勝手に約束を結ぶヤチヨ。
『ぐごごご…………クソまじぃ』
粉と水のパンケーキを一口で頬張って顔色が青ざめたヤチヨ。
『このまま終わりたくない、ハッピーエンドにしたいなぁ』
今にも泣きそうな顔で私にオネダリするヤチヨ。
「そうか、ヤチヨは私の娘だったのか……」
夢のような過去から帰ってきて、世界の真理を紐解いたような、爽やかな開放感が吹き抜けた。
「あのー、彩葉ー? なんか開けちゃいけないドア開けちゃってない?」
おずおずと機嫌を伺うような声で
「うん。大丈夫だよ
そうだ、世界は
「てい」
その気が抜けそうな声と反比例した恐ろしく早い手刀が首に叩き込まれる瞬間を私の動体視力は捉えたが、見えたからといって反応できるものではなく、私の意識は暗闇に落ちていった。
大規模コラボってあり?
-
アリ
-
ナシ