私の知ってる超かぐや姫!がなんかおかしいんだけど質問ある? 作:天空ラスク
Side:
七月二十八日。
前回の配信のあらすじ! 名状しがたき麗しの美少女みことちゃんは悪童かぐやの魔の手にかかり、マイディメンションに帰れなくなっちゃっちゃのだ!
…………なんでぇぇぇぇぇぇぇ!?
と、慌てたのも昨日の話。よくよく考えたら、普段部屋に引きこもってたからバレない限り無問題だと気づいた。なら下手に同居人に連絡しない方が逆に安全って事だ。や、ネットは通じてるからいざとなればビデオ通話できるし、まぁなんとかなるっしょ! の精神でいこう。最悪小槌パゥワーで帰れるだろう、きっと。……帰れるよね?
「だからこの状況も許されるんだよ〜」
「許されちゃったか〜」
寝っ転がってスマホを弄るかぐや──のお尻を枕にゴロゴロする。先日チャンネル主からアシスタントに降格されました私なのでした。
瞼を下ろしたまま後頭部で幸せな柔らかさを感じる。それにしても寝心地がいい。誕生日イラストで電柱から出る時にお尻で詰まるだけのボリュームはある。ふよふよしてるのに頭をしっかりと押し返してくるハリがある。超かぐや姫! 界隈広しといえど、かぐやのお尻枕の質感を語ったのは私くらいなのでは。
・案外余裕そうだな
・とても押し入れでふて寝してたやつの顔に見えん
・ワインボトル抱き締めて泣いてるヤチヨが見れるのここだけだろ
・酒カスそこ変わってくれ
・ヤバかったらすぐ小槌振れよ
薄目を開けてレンズに流れるコメントを読みつつ、シャープなデザインのメガネを人差し指で押し上げる。
何故かバイザーがほぼ機能停止してコメント表示機能以外使い物にならなくなったから、小槌大先生の力を借りてファッションアイテムのメガネにリメイクさせた物がコレだ。ちなみに度は入ってないので伊達メガネだ。
ニッ、と脇に置いたカメラに笑顔とセットでウインクする。青白く輝く満月のような目と白い歯を少年のような笑みと共に視聴者にお届け。
メガネ系ヤッチョも似合うものだろう、……さすがに服は着替えたけど。ヤチヨの服でゴロゴロしても良かったけど、彩葉が顔赤くしてものすんごい何か言いたげに口をもごもごしていたから服を借りた。
やけに胸元とか背中とか足とか見てたけど何か変なところがあっただろうか。私なんか見てもつまらないだろうに。
でも、ヤチヨは違う。私よりずっと綺麗だ。心も表情も何もかも、月の姫を体現する存在だ。大切な人を思い続けて八千年も待ち続けるなんて、私には無理。
そんなヤチヨの見た目を真似っ子している時だけは、自分に自信を持っていないといけない。あまり下げすぎるとヤチヨにも失礼だから。
「神々のみんな〜。世界一メロついちゃっても良いよ〜」
口に出してから内容に疑問を感じて記憶を探る。
何故かライブ開始時に二分くらい立ってるだけで失神者を大量生産した同居人の姿を思い出した。あのメロいの擬人化にはいくつになっても勝てそうにない。ほんとになんっっでいっつもいっつも女の子落としちゃうかな唄葉は!? マイケル・ジャクソンとか米津玄〇とかシンガーってめちゃメロいけど、毎回ライブ会場に病院からお医者さん派遣してもらうの、かぐら達くらいだよ!? かぐら、お医者さんマジ苦手なんですけど!!
・死ぬ前に見た月って感じ……
・廃教会的な美しさですね……
・顔がいいとかの話じゃねえ!
・最後に酒呑んだのいつだ
・家族か恋人殺された?
・退廃的な廃墟じみた闇と美を感じる
コメントが謎にザワついている。どうして笑顔を見せただけで心配されるのか、それがわからない。わからない事はすぐに調べる。私はそれができるタイプの人間だ。ちょっと出自は怪しいけど、実は研究所から逃げ出した実験動物だったりするのだろうか……や、アニメの見すぎか。宇宙人も超能力者もアニメの中にしかいないよ。
「かぐや、私の顔に何か着いてる?」
「ちょっと待って、今見る!」
寝返り打ってかぐケツから降りると同時にかぐやが私の顔を見て、その顔から一気に血の気が引いた。やっぱり何か着いてるのか、そう思ったところに投げるような勢いでスマホを渡される。インカメになったそれを覗き込むと普段の私が写っていた。
「どれどれ〜、……うん? 何が変かわからないにゃ〜」
「目! 目! ねぇやっぱり怒ってるよね!? かぐや、そんなつもりじゃなかったのー!」
そんな事震えながら言われても、いつも通りの青い目(ハイライトオフ)なのは変わらない。あ、アルコール切れてるから元に戻ってるのか。これはこれで綺麗だと思うのだけど、怖いか確認したら満場一致で怖いと言われたので対策しなければならない。
「怒ってないよ〜? ほら、怖くなーい、怖くなーい」
「怖いよ!? どうにかなんねぇのその目! ガチ怖えんですけど!」
瞬きせずにジリジリとほふく前進したら本気で怯えられた。解せぬ。闇堕ちヤチヨはダメらしい。
しかしこれではかぐやのアシスタントとして配信に一緒に写っては視聴者が離れてしまうかもしれない。……それ以前に私が噂のバグヤチヨだとバレたらどう対応したらいいのかも考えていなかった。
「これじゃ一緒の撮影はできそうにないね」
「そんなんダメ! 彩葉もなかなか出てくんないし、ずっと一人で撮ってんの! ヤァ〜ダァ〜〜!」
床の上でジタバタと
「それだぁ────!!」
かぐやが頭上で電球が光ったように目を見開き、ビシッと手に持ったカメラを指差した。
それから私はカメラマンとして裏方に徹する事になり、かぐやいろPチャンネルの撮影が始まった。
「今バズってる曲踊ろ! 流行りは乗れる時に乗っとかな!」
「アニメって絵が動くの!? すっご、見よ見よ!」
「ヘッドホン買ってみたよ〜! 見て見て見て見て! 猫耳! へへ、かわいいっしょ〜」
「真実からオススメされたお菓子届いた! 食レポ食レポ〜♪」
「今日の晩ご飯に迷ってるあなたへ、ルーレットぉ、スタート! どぅるるるるるるるるるるるるるるるる、だん! サックサクの〜、天ぷら!」
ジャンルはバラバラ、とっちらかったおもちゃ箱のような自由奔放な配信者。だが、どこが目を惹かれるかぐや姫に注目したが最後。勢いに乗ったかぐや姫のその先を見たくなってしまう。昨日投稿した動画の数々も全て一万回以上再生されている事が何よりの証拠だ。
数本の撮影が終わった。日も沈みかけ、ちらほらと柔らかな星明かりが窓から覗いている。あと一本撮影したら今日の撮影は終わりだろう。
「ミコさぁ、やっぱその目なんとかなんない?」
「んー、こればっかりはしかたないゆえ〜?」
撮影が終わった動画を編集していると、バニラアイスを食べながらかぐやがそんな事を言ってきた。原作と違ってエアコンが効いているとはいえ、テンション高くはしゃぎ続ければ暑い。
「だってミコ、ヤチヨの真似してる時目ぇキラキラしてたじゃん! そういう問題じゃねーの?」
「あはは……、あれはお酒が効いてたから」
「じゃ、呑んで!」
「ところがぎっちょん! 年齢制限に引っかかります! 童顔でごめんね〜!」
お酒買えないから今もキーボード打ち込む指が少し震えてる。どうして店員さんは私の時だけ確認しに来るのか。
「……ミコ。かぐや、一個聞きたい事あんだけど」
え、何その確認。
・俺も今聞きたい事できたわ
・奇遇だな。おれも
・お前場合によってはこの配信のアーカイブ消した方がいいぞ
なんでコメントもそんな事言うの。何か変な事言った?
「お酒って二十歳から呑めるんだよね」
「そうだよー?」
唄葉も大人になってからしか呑んでなかったし。
「じゃあ、なんで年齢制限引っかかったとき諦めんの?」
………………あ゛っ゛。
・さ〜けカス♡今、なんちゃい?
・よく法律どうこう言ってる奴がまさか違反してるわけないですよねぇ?
・(^^)
「ミコ、もしや彩葉と同じくらいでしょ!」
「ちっ、違うよ〜!? か、私はヤチヨと同じ八千歳だよ!」
ジトっとした目で私を睨むと、
「それ貸して!」
ひょいと私が掛けていた元・打出バイザーのメガネを取って装着した。
「えっ、何するの……?」
「ミコのオタク達さぁ、どーしたらミコ正直に話すと思う?」
「うぇっ!?」
し、集合知借りようとしてる!? かぐや、とんでもない事しようとしてる!
でもだ、大丈夫だ。私は何があっても少雛海琴として演じ続ける。アルコールが切れてるから不安だけど、やり遂げてやる。かぐやをヤチヨカップ優勝させて、コラボライブも無事に終わらせて、思い出を沢山作ってから月に送り出す。かぐやが八千年に潰されないで月見ヤチヨとして帰ってこられるように。
「あー、オッケ! それのが手っ取り早いね!」
「ふふん。私は絶対に話さないからね! 黙秘権を行使した私は誰も止められないのです!」
鍛えられた鋼よりカッチカチに閉じたこの口、開けられるものなら開けてみよ。
「小槌ー。ミコって今何歳?」
『回答。人間年齢でいう九歳に値します』
私の隠し事をあっさりとバラしたのは、メンダコの中から聞こえた知らない電子音声でした。
……待って、整理する。今、かぐやは小槌って名前を呼んだ。そして私の首から下がったメンダコクッションがぼんやりと白く光ってるから、中に入っている小槌が反応している。
つまり、今喋ったのは打出の小槌。私が何回話しかけても一言も話さなかった打出の小槌。
………………ん????
「喋ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?!?!?!?」
「うひゃ!?」
急に発した大声に驚いたかぐやが後ろにひっくり返る。アイスを落とさないようにキープしたその努力は凄いが、もうそれどころでは無い。
「なんでなんでなんで!? どうやって小槌喋らせたの!?」
床に横たわる宇宙人の肩を掴む。一瞬力を込めて引き寄せ、前後に揺らしながら問を投げかけた。
「あうあうあうあう、どーやっても何も、普通に喋ってたよー。昨日もミコ気絶してる時喋ったしー」
かくかくと頭を揺さぶられながら、あまり役に立たない返事が帰ってきた。
「ど、どうしてかぐやだけ……」
「あ、えと、彩葉にも反応してたからさ、多分彩葉とかぐやが一緒にお願いすれば小槌もわかってくれるって、ね?」
もう床しか見えない……。
ガックリと項垂れた私を見て不味い事をしたと思ったのか、誤魔化すように慌てて甘い提案をしてきた。
でも、私は正直なところこの状況に納得している。ダメダメな私に使わせてくれただけありがたいのだ。今も元気に動けてるし、見た目も綺麗に整えてくれてる。そんな小槌を責める気にはなれなかった。
うん、彩葉とかぐやの方がキラキラしてるもんね。私よりも、あははは。
「うひっ、ミコの目がもっと怖くなった……。ほ、ほら! 最後の動画撮っちゃえば後はゆっくりするだけだから! 一旦後にぶん投げ時ゃいいじゃん!」
「……うん」
「にひ、後でプリン食べよ! 彩葉とかぐや、三人一緒に!」
「……う゛ん゛」
眩しい笑顔を浮かべるかぐやの顔がよく見れない。水越しに見たようにぼやける理由を探してみて、自分が泣いている事に気づいた。
「よしゃー! かぐいろみこチャンネルもっともっとデカくすんぞー!」
ごめん、そのチャンネル名は受け入れられない。そそくさとパソコンに向かってチャンネル名がかぐやいろPチャンネルから変わってない事を確認して、安堵の息をついた。
「そだ、これ返すね!」
手渡されたそれはかぐやが掛けていた打出メガネ。私が掛けた瞬間にコメントが大量に流れ出すのが予想できた。
「ちょっと……置いといちゃダメかな〜?」
「かぐやは良いと思うよ!」
腰に手を当てて全肯定かぐやが頷く。金色のアホ毛もクルクルと回転して『そうだそうだ』と言っているようだ。
「んー、まぁ、ちょ〜っとだけお試しに……」
そろそろとメガネのツルが耳に完全に乗っからない程度に掛けた。
・デトロ!開けろイト市警だ!お前に非人類の疑いが掛かっている!正直にゲロれ!
・やぁ、酒カスもとい酒ガキ。元気かい?
・まだ説明が終わってねえからな?
・何故九歳で普通の女子高生並の体型なんだい?おぢさんに教えてみな?
・九歳のロリの晩酌配信見れると聞いて
・《¥874・username・野菜伝説》可哀想だがロリー。お前もかぐやとともに彩葉にオギャるのだ
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「よ〜っし! 行くよかぐや! じゃんじゃん動画撮っちゃお〜!」
「うわー。ミコ、ズルっ子〜」
額にメガネを乗せ直してカメラを二つ小脇に抱えた。現実? ……はて、ヤッチョ難しい事わかんないにゃ〜。
「ところで、次は何を撮るんだい?」
そう聞くと、ギラリと瞳に怪しい光を灯して冷蔵庫を開け、中のものを取り出した。
唐辛子、ハラペーニョ、ハバネロと辛いものが出るわ出るわ。
「も、もしやこれは〜?」
「ミコ、時代は大食いと激辛のハイブリッド! そう、激辛料理大食いだ〜!」
嫌な予感を気のせいだと思いつつ念の為確認したら、勝ち確だとばかりに目を輝かせるかぐやがエゲツない事を言い出した。
に、逃げた先も地獄だった……。アルコール呑みたい……誰か助けてぇ〜〜。
書く時間取れなくて遅れちゃった……
大規模コラボってあり?
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アリ
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ナシ