私の知ってる超かぐや姫!がなんかおかしいんだけど質問ある?   作:天空ラスク

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裏でなんかが動いている時、肝心の主人公(最近影が薄い気がする)は何も知らずにのほほんとしていた


月見(るなみ)バーガー(いろP挟み)だけど質問ある?

 

 Side:月輪神楽(少雛海琴)

 

 日本人たるもの、心の余裕を持ってゆるゆると生きるべし。たとえ手がヒビ割れてようと、二次元美少女に叶わぬ初恋を抱こうと、家に帰れなくなろうと、まぁのほほんと過ごせば何とかなるものである。あ、あと自分がデジタルよりな生物だと発覚した時も。

 ──どっかの研究施設から盗まれた違法生物説が濃いな〜ってずっと思ってたんけどー、目覚めた時に一時間以上経ってた時は、いやーマジかーって思ったね。あでもでも、まだ脳にICチップが埋め込まれてなんちゃらもんじゃらな可能性もあるから。月人だけは無い! だってあれアニメだし! ねーよな! な!?

 

「お〜よしよしよし〜〜。良い子でちゅね〜。可愛い童(わらべ)はヤッチョの膝枕でぐっすり眠ろうね〜」

 

「バブゥ」

 

 だから、何故かヤチヨの配信でおぎゃバブ寝かしつけ羞恥プレイを食らっても堂々とオギャるべし。……いや無理だろ。何でぇ? と目をひん剥きそうな所をずっと耐えてる。そもそも布団に寝かせてくれるなら枕も良い奴用意してくだしあ。というか、この布団すっごいグラが細かい。布を構成する糸が一本一本見える。ただの白い板じゃないのヤババだよ。

 

[ な ん だ こ れ ][ヤチヨが二人……来るぞ遊馬!][服装違うの可愛い〜][ヤッチョ×ヤッチョ][あれ、膝枕されてる方この前料理売ってたヤチヨじゃね?][マジだ!?バグヤチヨじゃん!][とうとう捕まったか][そこからどうしてこうなったんだよ][白百合ってか]

 

 ・俺らの酒カスが見世物になってて草生える

 

 ・そうか、俺いらんからお前が責任取って引き取れよ

 

 ・見た目良し!料理の腕前良し!酒癖最高に悪し!違法ロリ!

 

 ・どうする?デートの時にガチヤチヨコスして来たら

 

 ・華は摘まずに見て愛でるものさ

 

 ・諦めんのはやw

 

 ・7991歳差の親子ってか。エルフじゃん

 

 おーおー、好き勝手言いなさる輩が多い。ヤチヨの正面の床の上にヤチヨの視線の高さでカメラが、その上にコメントを流すウィンドウが浮いている。そして私の足の方の床に私とヤチヨとウィンドウが映るように私のカメラが置いてある。ヤチヨの視聴者もうちの視聴者も誰も心配してくれない。なんでこんなに甘やかされてんだ。ぼすけて。

 

「おやおや? ヤチヨがどうしてこんな事をしてるか、げに気になりぬだね?」

 

「ブン。ビビバブビビバブビビベバビベブー」

 

「それはだね〜、君がヤチヨにとって初めてのAI友達だからなのです〜。すっご〜い! 君は電子の海のフレンズなんだね〜☆」

 

「……bad boo(バブー)」

 

 聖なる(Holy)うんちょ(Shit)。最悪だ。私はどうやらデジタル寄りな生き物では無くデジタルオンリーだったらしい。

 ──いやいやいやいや! ぜーんぜん納得せんよ!? かぐらちゃん産まれたの地球ぞ!? マジで理解できねーんですけど!

 おかしいおかしいおかしい。同居人がここに居たら橋の下で拾ったって言ってたの何、と小一時間問いただすところだ。……辞めとこ、顔と言動が一致しないんだもの。

 きっと『うん、嘘だよ。神楽にはせめて人として生きて欲しかったから。ダメ?』って真面目な声出しといて、仕方ないな〜って視線逸らしてもう一回見ると『私が美少女過ぎて許された』と無表情ダブルピースを決めてるのが唄葉と言う女だ。

 閑話休題。そうなると私って何、という問題が浮上するんだけど。まず月人は無い。何度も言うけどアニメだし。アンパンマンはキミさ! と液晶の奥からアンパンマンに指差されても頭がアンパンにならないように、ヤチヨが君はAIだよ〜と言っても月人には繋がらないのだよワトソンくん。

 だから視聴者よ困惑しないで欲しい。一番私がわ゛〜っ! て叫びたい人筆頭だから。

 ──泣くよ? かぐらちゃん泣いちゃうよ? 身長150cmの九歳児が床でジタバタ暴れて泣く所見たいか? 燃やすよな? コイツ教育したやつ手帳持ちだろーとか、キチガイが出歩くなカスとか、女さん甘やかされ過ぎて人の言葉忘れた模様とかSNSに流すよな? ふざけんな、お前の銀行口座の金全部FXにぶち込むぞ。

 

「ふふ、不満だな〜って顔して。一応お仕置のつもりなんだけど、他のヤツのが良かったりするかな?」

 

「バババババババババババババババ!」

 

 当然。こちとらお酒も呑んでいる。……店頭で買う時は小槌でこう、催眠をかけ(もにゃもにゃ〜っとし)て買ってるけども。

 ──顔が美少(・)女(・)過ぎて普段身分証確認しないヤツも止めてくるんだよぉ〜。ほんとにや〜だ〜〜……。無視しろよぉ〜。粉かけたいだけだろぉ〜。

 

「いとかわゆし。そいでは〜、次のコーナーに行っちゃお〜! れっちご〜〜!」

 

 ん、ミニヤチヨが群れで来た。ヤチヨがふわりと空中に座るように浮いて、ミニヤチヨ達が私を掴み、掴み……。

 

「ヤチ」「ヤチ-」「シュッカヨ-」「ソンナ-」「ヒッコ-シ!ヒッコ-シ!」「ドッカ-ン」「ハコブヨー」「ヤチヤチ」「ヤ-チヨ-、サ-オダケ」「ヤチチ」「ヌルポ」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」「ガッ!!」

 

 ──お、多くね〜? てかぬるぽって言ったやつ居たな。

 

「ガッ!! ……む、昔の癖で……あはは〜」

 

 ヤチータスお前もか。

 ふわり、と私の体が持ち上がる。昔見た何とか爺さんの空飛ぶ家の家側の気分がわかったような気がして割と面白い。

 ──あ〜〜、このままお空で寝れたら気持ちいいだろ〜な〜。ゆるゆるしよ〜よ〜。ね〜え〜〜。

 

 めんどくさい女ムーブをヤチヨのイメージを崩さないように内心に留めて愉快な誘拐を満喫するのでした。

 

 

 そんなこんなどんなもんじゃありまして、気がつけば私はKASSENのステージに居ました。

 それもただのステージじゃあない。大将落としがぶち込まれて爆散するあのお城、その天辺に座らされてる。屋根じゃんか、や〜ね〜。

 ──そだ、聞きたい事あったったね。

 

「ヤッチョさんやヤッチョさんや」

 

「なんだいなんだいバグヤッチョさんやバグヤッチョさんや」

 

「さっきのAI友達ってどういう意味か神々のみんなにも伝えた方がいいとバグヤチ思うな〜」

 

 あと配信主さんにも。It's me! 教えてプリーズ。

 

「良くぞ聞いてくれました! それはね〜、ざっくり言っちゃえば分身ヤチヨにインターネット迷子のウイルスがインした結果生まれたのがバグヤチヨの真相だよ〜。生まれたてピチピチチャパチャパのおばあちゃんなのです」

 

「……なななななんと!? バグヤッチョに衝撃の過去! 驚き桃の木サンショウウオ!」

 

 ヤチヨのカメラにも私のカメラ──両方ともミニヤチヨが持って飛んでる──にも背を向けたヤチヨさんだが、真正面にいる私にはその顔がよく見えた。

 イタズラがバレるかバレないかニヤニヤしている目と、もにょもにょ動いている口が。誰かひぐらしがよく鳴いてる村から嘘だッ!! の人連れてきて、役目でしょ。

 

「神々のみんな〜! そろそろここで何をするか気になってるよね〜! よしよし、早速始めちゃお〜! 題して──」

 

 指パッチンを合図に城の正面の高台がライトアップされ、大きなだるま落とし、いや、大将落としがせり上がってくる。そういえばKASSEN用の武器と乗り物が欲しい。打出の小槌使ったらだめだろうか……ツクヨミってガチャある? 

 

「──ドキドキッ!? 大将落とし大爆発! 月夜に轟く産屋敷(うぶやしき)ボンバー☆」

 

「やっぱりここブッ飛ぶのぉ!? 爆発オチなんてサイテー!」

 

 ──でもっ、ネタとして面白いし許しちゃう! かぐらの寛大な心にひれ伏せ〜。

 

 大将落としの横に降り立ったヤチヨがメンダコから番傘を引きずり出す。吹きガラスみたいな事ができる武器ってそれ武器かとは思うが。良いよねKASSENの武器の自由度の高さ。ノベライズでかぐやが彩葉の武器作っていたし、私も作るべきか検討しよう。

 

「実はヤチヨも見た事無いんだよね〜。この爆発どれくらいの威力あるのかなーってずっと思ってたの」

 

「ほーほう? つまり〜、バグヤチが世界初になって良いんだね?」

 

「おうともさ〜☆ 君がツクヨミで初めて流れ星になる存在でございますれば、やれ爆弾正の如く思いっきり吹き飛んでね!」

 

 バッター月見ヤチヨ選手、番傘を思いっきり振りかぶって、

 

「月に代わって、お仕置だよ〜☆」

 

 飛んで来た大将落としが白に突っ込んだ。

 ──あっ、なんか視界が赤くなっ────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気がついたらどこかに突き刺さ(犬神家)ってました。どうも私です。

 

「お〜、まさかバグってフィールド外に出るとは思わなかったや。あちゃ〜、こりゃ修正物だ〜」

 

「─────────」

 

「およよ〜、無視は酷い! ヤッチョも心は乙女なのです〜。人とお話している瞬間が何よりも楽しみで楽しみで生きております故、ご理解頂き平将門(たいらのまさかど)ってね〜!」

 

 埋まってるのにどうやって話せと。

 

「でも丁度いいね〜。ここはヤチヨの収録スタジオだよ。いと僥倖(ぎょうこう)」

 

「───────」

 

 切実に抜いてください。そろそろ真っ暗で眠くなってきました。

 

 何とか抜いて貰えたが、果たしてスタジオで何をするのか。O泉YOUくらい何も聞いていないので助手を務める事しかできない。あれ取って、それ取って、千葉ロッテ。

 

「今ツクヨミで料理ブームが起きてるのはみんな知ってるかな? ヤチヨの隣で眠そうにほわほわしてるバグヤッチョのせいなんだけど」

 

「よよ、ふぁ……。バグヤチまだ眠くないよぉ〜。そんな事よりぃ、今日は何をするの?」

 

 ヤチヨが空中に浮きながらくるくる回る。私の脳みそも回ってる気がする。ねむみ。

 

「今ヤッチョが言おうとしたとこ〜☆ ズバリ、チキチキ! 第一回・ヤチヨの屋台飯! のコーナ〜〜!! べべんべんべべん!」

 

 口から三味線を弾くヤチヨにペチペチ、とペンギンの拍手を送るとヤチヨはしたりげに腰に手を当ててふんぞり返った。

 

「ブームに乗っかってツクヨミに一大ムーブメントを巻き起こそ〜、って思い立ってやってみたの。バグヤチさんや、なんか良いご飯のネタはないかの〜。おばあちゃんにネタを分けとくれ〜」

 

 揉み手をしながら何かを期待するように目を細め、空中をスライドして接近してきた。

 そんな事を言われた所でそんなヤチヨっぽい料理なんてそうそう……あった。

 それは秋の風物詩。お月見の時期に良く出てくる名物メニュー。

 

「月見(るなみ)バーガーはどうかな〜。できたら食べさせてしんぜよ〜」

 

「じゅるるり浄瑠璃(じょうるり)。バグヤッチョの作るご飯美味しすぎて! 幸せジューシーがZIPファイルで送られて来て! ヤッチョもう我慢無理〜〜!!」

 

 後ろに背もたれも無いのにだらりと倒れ、そのままくるくる回り出した。

 

「も〜、しょうがないにゃあ。……クラスのみんなには内緒だよぉ?」

 

 メンダコをゴソゴソ漁って中からバーベキューグリルを取り出す。コメントで入らないだろと突っ込まれるけど、そんな事言われても打出の小槌が用意してくれた物だから謎パワーで入るんだよ。

 この中の時間が止まってたりすれば食材とかお酒とか最高の状態で保管できるけど、さすがに無理だろうから生物(なまもの)とか長時間入れられないしお酒も常温だ。

 ──や、最初からメンダコの形をしていた訳じゃないからできるかも。

 普通の真っ白な布袋だったから可愛くないって言ったらメンダコの形に変えてくれたんだった。やっぱ小槌パイセンっすわ。そういえばどこ行ったんだろ、またメンダコの奥に行っちゃったのかな。取り出すの面倒臭いんだよね。中見ようとすると頭叩いてくるし。

 ──小槌にも迷惑かけてるし、辞めとこ。おっきいだけで余は満足じゃ〜。

 

「ヤーチー三分クッキング。ミュージックぅ〜、ぁスタートっ!」

 

 そのまま放置してた炭に火をつけて、分厚いベーコンを焼いていく。ヤチヨが上機嫌に横揺れしながら三分クッキングの歌を歌い出した。

 

「さぁまずはベーコンを焼いていくよ。パティを捏ねて中に卵を仕込みたい所さんだけど、用意してなかったから許してね」

 

 食欲を増幅させる肉の歌が配信で届けられる。コメントで味とか匂いとかどうやって再現したのか聞かれたけど、実物だからとか言える訳が無い。唄葉の今やってる研究が上手くいってたらこんなチート使わなくて良かったけどね。まさか五感完全再現VRMMORPGを作ろうとしてるとは読めなかった。このリハクの目を持ってしても。しかも理由が『かぐらが自由に遊び回れる世界を上げたいから』、だって〜! プレゼント壮大すぎるよ〜〜!!

 

「その隣に敷いた鉄板の上で目玉焼きを焼いチャウチャウ犬。実は卵は常温保存できるのです。知ってたかな〜。でも生で食べるのは危ないから止めようね〜。ついでにパンも炭火で香ばしく焼いちゃう。炭火焼きバーガーだよ〜」

 

 ああ、ヤチヨの口からヨダレが垂れ出した。

 焼いたパンに肉厚ベーコン、塩コショウかけた目玉焼き、おつまみに取っといたスモークチーズを薄切りにして散らし散らし。最後にまたパンを乗せたら。

 

「幸せチーズ月見(るなみ)バーガー、でっきあっがり〜」

 

 三(・)人(・)前(・)の(・)ハ(・)ン(・)バ(・)ー(・)ガ(・)ー(・)が(・)完(・)成(・)し(・)た(・)。(・)本当はもっと具材を入れたかったけど、ハンバーガーはあんまり作ってなかったからレシピが分かりませぬ。

 

「ふぉぉぉぉ! は、八千年ぶりのハンバーガー! 食べていい? いい? ヤッチョもう一秒だって待てなーい!」

 

「良いよ〜」

 

 おお、チビヤチヨになった。なんで急に縮んだのか分からないけど、多分かぐやだった頃みたいにはしゃぎたいのかな。

 

「およよ〜、いと美味し〜! カリカリなベーコンの塩気がチーズと卵のまろやかなトロミの奥からひょっこり顔を出す! 炭火焼きにしたパンの香りと食感が食欲のエンジンを加速させてるのです〜!」

 

 子供が椅子に座ってハンバーガー食べてるシーンはどうしてこうも和むのだろうか。

 なんかトリコの食レポ聞いてる気分だな。お前はヤチヨ?

 

「およ? ねぇバグヤッチョ。ハンバーガー一個多いけど、それヤチヨのおかわり分?」

 

 気になるよね。ここには私とヤチヨと……ミニヤチヨは一旦除かせて。群れでこられたら対応できやせん。

 

「ノンノン。これは視聴者プレゼントにするのです。せっかくヤチヨが二人並んでいるのですよ。神々の中から一人の幸運な神を召喚して採点してもらおう!」

 

 ちょっとお耳を拝借。ゴニョニョゴニョゴニョ。

 

「いと理解! 感想も聞けるし美味しく食べられる。そしてヤッチョ達にも会える! 一石三鳥だね! じゃあ早速呼んでみよっか! 神々のみんなのすご〜い食レポに期待してるよ〜!」

 

 ヤチヨがカメラに映らない角度で一瞬『お主も悪よのう』とニヤつく。もうとっくにかぐやの路上ライブも終わってる事は確認してる。神々の中にかぐや・いろPのアカウントで『浮気者ー!』と『ハンバーガー発売したら絶対買います』とコメントされてたし。バレテーラ。

 さあさあ、ヤチヨの準備も終わった。

 ウェルカムカモーン! いろP!

 七色に輝く魚群が小さな竜巻を起こす。ちょうど人一人入るかと言った太さの竜巻の中に人影が現れた。

 

「せーの、「いらっしゃ〜い!」」

 

「え゛、嘘、待ってほんとに嘘、夢? 何?」

 

 散り散りになった魚群の中から現れた狐耳の女性アバター。感動からか困惑からか、思わず口を手で覆いながら二人のヤチヨの間で視線が反復横跳びしている。

 

「すっごくラッキーな神々の君! ヤッチョにお名前を教えてね?」

 

「エッ、ウッ、サッサカヨリサガヨリサカヨリイロハガグッグッ、ウス」

 

「おやおや〜? いろはぁ──」

 

 何だかカチコチだねーって言え〜。何だかカチコチだね〜って言え〜。ウェルカムアナウンス聞かせろ〜。

 

「──何だかカチコチだね〜」

 

「ッシャ! 生ウェルカムアナウンス来たこれ!」

 

「? ……さあさあ、彩葉! ヤッチョ達の間に座って座って!」

 

「おいでなされ〜。なんなら膝の上でも良いよー」

 

「ウッグッグッガッナマエヨバレタアガッバッチャバクチ」

 

 緊張カチコチロボットいろPが二人の間の椅子に座った。

 

「神々のみんなに伝わるように食レポできるかな〜?」

 

「かなかな〜?」

 

 ヤチヨから手渡しされたハンバーガーを食べた彩葉の目がグルグルと渦を巻きだした。これは緊張で味わからなくなってそうだ。

 仕方がない。助け舟を出してあげよう。

 ──べっ、別にかぐらがやりたくてやってるんじゃないからね! 勘違いしてよね!

 

「いろはぁ、お味はどうかな〜」

 

「ウェッ!?」

 

 横から抱きついてほっぺた同士ですりすり。チラ、とヤチヨに目配せで合図を送った。

 

「バグヤチヨずる〜い。ヤッチョも彩葉にファンサする〜☆」

 

「ヴェアアアアアアア!?」

 

 反対側に座ったヤチヨも彩葉に抱きついてほっぺたすりすり。あざとい、さすが八千歳あざとい。

 

「彩葉〜。これがほんとの〜」

 

「月見(るなみ)バーガーだよ〜」

 

「「美味しく召し上がれ〜?」」

 

「フグォブクガゴモニョガガグナカキ」

 

 ヤチいろ私で挟んでほっぺたすりすりしてたら、いろPが日本語忘れちゃった。

 

「あ、月見(るなみ)パイもあるよ?」

 

「る、るなみぱい……プキュ」

 

 抱き締める力を強める。仮想空間だから力込めても痛くないのいいよね。

 ダブルヤッチョすりすり攻撃する事数秒後、突如彩葉のアバターが桜の花びらになって散ってしまった。

 

「ありゃま。ファンサしすぎたかな〜。気絶で強制ログアウトされちゃったみたい」

 

「ヤチヨの事そんなに好いてくれるなんて、感謝、感激、雨アラモード〜! 落ち着いたらまた、ヤチヨの配信を見に来てね」

 

 ゲストが帰っちゃったので代わりにヤチヨが残ったハンバーガーを食べ終え、締めの挨拶を終えたのだった。

 デジタル関節キス。

 

 ──え、オチ? ヤチいろが見れただけでありがたいと思えよ。かぐらちゃんの采配を崇め讃えよ〜?




多分今後出てこない設定

 未観測収納袋・福袋

 ・月の御蔵ビシャモンにしまわれていた技術の一つ。打出の小槌と同時期に作られた。内部の空間が生命体に観測されない限り所有者の認識で設定とサイズが変更される収納空間を内部に展開する物理的シュレディンガーの猫、いや袋。時間停止機能は思い込めば設定されるが、ポンコツかぐらちゃんは小槌と会話できないのでエグい程物をしまえる魔法の袋だと思っている。元々ダイコク様の私物だったので一番奥の方にひっそりと不死の霊薬(アムリタ)とか補佐官の好物の酒(ソーマ)とかが眠ってるが、小槌含め誰も気付いてないのでずっと眠ったまま。もっちりしてて枕に最適なメンダコクッション。

 デザイン変更担当者の当時のコメント

 不理解。デザインにこだわる必要性が理解できません。

 制止。拗ねないでください。当機の改修場所にもなるのです。もう二度と運命力が底を尽きないようにしなければなりません。

 困惑。人間の少女型個体はピンク色が好きなのですよね? ならば色を変えれば終了で良い筈です。不貞腐れないでください。貴女が唇を突き出したところでどうにもなりません。注意。這いずって接近しようと試みないでください。当機の運命力不足でまだ長時間の歩行はできないのですから、体を痛めますよ。布団で寝てなさい。
 
 未知。可愛いとはなんでしょうか。何故袋に可愛さを追求するのです。どうせ清涼飲料水とお菓子しか入れないでしょう。当機を無意味に振り回さないでください。三次元に転移した負荷で炉心がまだ安定していません。このまま振られ続けると当機の意識(OS)が落ちます。止めな、あっ────────

 唖然。福袋に寝心地を追求した存在は貴女が初めてです。ダイコク様ですら考えた事ありませんよ。率直に伝えます。バカですか?

 激怒(ブチギレ)。いい加減にしてください。水族館のメンダコぬいぐるみを買って貰えなかったからと泣かないでください。まだ月見ヤチヨに要素を寄せていくのは早すぎます。第一、まだ貴女有名になってないじゃないですか。何なんですかこの次元は。汎人類史と同じ運命を辿るのになんでこんな大量の運命力持ってかれるんですか。対象名・かぐやと対象名・彩葉はどうやって二ヶ月で百万人のファン集められたんですか。再現できる可能性低過ぎですよ。当機はまだ本調子ではありませんのに、運命力を蓄えながら常に貴女の進む人生を調整するのがどれだけ負担かわかりますか。
 後悔。こんな事ならばマスター・かぐやの記録を分離するのではありませんでした。ほんの少しだけでも残しておけば今頃歌と踊りで……、嗚呼、擬態が動けるようにできてないのでした。失望。鼠浄土め、擬態出力プリンターすらまともに復元できていないとは。やはり外装が無いと単純作業以外使えませんね。特に設計図が無かったのが一番痛いです。諦観。当機の運命力が不足したせいとはいえ、マスター・かぐやの記録の復元が完璧だったのは本当に奇跡でした……。これで計画実行前に記憶と精神と魂も戻ってくれていれば良かったのですが……。嗚呼ほら、泣かないでください。これで良いのでしょう? まったく世話の焼けますね。

 激昂(ガチギレ)。喜ぶのは良いですから! 当機を! 振り回すなぁ──────!! あっ──────

大規模コラボってあり?

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