私の知ってる超かぐや姫!がなんかおかしいんだけど質問ある? 作:天空ラスク
追記・楽曲コード打ち込むと長押しでコピーできなくなるという作者も知らない仕様が発覚したため編集しました
2030年・七月三十一日。
Side:酒寄彩葉
ヤチヨの目みたいに澄み渡った青空が私を焼き殺さんばかりに熱視線を送ってる。クラクラしてきたのが寝不足のせいか、はたまた熱中症の初期段階か判別ができない。
「ねぇねぇ、芦花と真実もう待ってるかなー」
なんでそんなに元気なの。暑く感じないのか宇宙人め。
サラリとした金髪が太陽の光を浴びて燦々と輝いている。うちのかぐや姫様は今日も絶好調。ダーっと先に走っていったと思えば、その場でピタッと止まって私達を待つ、その繰り返し。あんたは犬か、なんて言ったら悪ノリするんだろうなとは思ったけど。
「あんたは犬か」
ついつい言ってみたりして。
「わんわん!」
わんこかぐやの白くて綺麗な手が伸びてきたのでお手を受け止める。そのままサラサラした髪を撫でた。
「よしよし、良くできました」
「えへへぇ」
頭を撫でるとタレ目がより一層柔らかく垂れた。あら、愛嬌のあるわんこですこと。見えないしっぽが激しく振り回される幻覚すら見えてきた。
「てぇてぇ……。壁になってずっと見てたいなぁ」
何だ。あれ、どこ行った。───あ、居た。結構前に通り過ぎた電柱の影に隠れたかぐらの青い目と目が合った。
「着いてこないと置いてくよー」
「ミコー! パンケーキ全部食べちゃうよっ!」
「はっ!? マズイ、
熱されたコンクリートから立ち上る
……この前この顔とキ、キスしたんだよね。──────うあああああああああ!? は、はっずっっっっっ!! あの時の私は正気じゃない! 大体なんだあの時のかぐらは! 八十年後の未来からやって来たかぐや? そんなSF映画みたいな事そうそうあってたまりますかっての! ……おお、落ち着け酒寄彩葉。私は凄い。東大卒弁護士兼かぐやのプロデューサー(予定)の酒寄彩葉とは私の事。そんな私が狼狽えてはいかんのです。一回深呼吸挟んで……よし、落ち着いた。頼むからもう出ないでくれバクカグヤ。
今日は勉強勉強勉強勉強バイトバイトバイト勉強勉強勉強勉強勉強勉強勉強勉強勉強、となる所だった。だけど先日芦花と真実から遊びに誘われた。故にこうして三人で待ち合わせ場所のカフェに向かっている。事前にメールでもう一人増える事は伝えてある。
「「ふ〜〜んふふん♪ ふんふーふーふんふんふーはは〜〜ん♫」」
両隣から息のあったご機嫌な鼻歌が響く。腕の振り幅、軽やかなステップ、お日様みたいな笑い方まで同じ。
「あなた達がそうやってると、なんか姉妹みたいに見えてくる」
「しまい?」
「獅子舞?」
純粋に意味を理解して無さそうな竹の子と、わかった上でふざけてそうな一寸法師が首を傾げ、鏡写しのように顔を見合わせた。その動きすらも揃っていて少し面白かった。
「似たもの同士とか家族とか、そんな感じの意味」
「家族! じゃあミコと彩葉とかぐやで家族だ!」
「いんやいんや。かぐ、私がそこに混ざるのはお門違いだよ」
かぐらに同感。でも態々本名言わないようにしてあげてるのに自分で言いそうになったら意味無いでしょ。
「い〜や〜だ〜〜! 家族なるぅ! ずーっと仲良しするぅ!」
あなた何時か月に帰るでしょうに。ったく、私はこの悪童に何年胃袋を掴まれてしまうのか。元の食生活に戻すのが大変そうだよ。白米に塩かけて食べてた頃がもう懐かしい。
「あっ、そーだ! 芦花と真実も姉妹にしよ!」
「はっ? おい、ちょ、こら待て引っ張らないでよ!」
かぐやの手が鷲のようにしっかりと私の腕を掴み、そのままカフェへ向かって駆け出した。力強っ。飼い犬に引きずられる飼い主の構図だ。目立ってるから止めて、本当に……。
「小槌さんや。この辺にキマシタワーは建てられるかのう」
孫を見守る祖父母か。ほんわかした声が遠ざかって行く。かぐらさーん、ちょっとこのゴールデンレトリバー止めてくれませんかー。
ケラケラと楽しそうに笑うデカワンコに引きずられ、二人(と遅れて一人)でコンクリートジャングル向かって駆け出した。
扉を開けると快適な冷風が私達に向かって飛び込んでくる。カフェの店内の一角に二人の姿が見えた。
「芦花〜。真実〜。かぐやと──────パンケーキ!」
あんた少しは落ち着きを持て。芦花が食べていたパンケーキを見て瞳を煌めかせたわんこかぐや、改めかぐ
「ほんっとにごめん! うちのかぐやがご迷惑お掛けしております」
「大丈夫だから気にしないで。友達でしょ?」
「ほれぇ、私のパンケーキ一口あげるぅ〜」
「んむんむ……うぅぅぅぅぅぅまぁぁぁぁぁ!!」
芦花も真実も優しいな。何時もお世話になっております。今後とも何卒よろしくお願いします。
あんたは真実にありがとうくらい言いなさい。一口どころか一枚丸々頬張って、嬉しそうにほわほわしている宇宙人の後頭部を掴んで頭を下げさせた。
「はぁ、あぁ、二人とも速過ぎ……! ──」
少し遅れる事数秒後、息絶え絶えといった様子の一寸法師が店内に入ってきた。あんがい体力が無いのか。……いや、走り慣れて無いんだろう。
「────あっ!? パンケーキ!!」
そのパンケーキにかける執念どこにあった。今さっき見たかぐやの爆速パンケーキハントの焼き直しを見せられた。しかし残念。もう真実のパンケーキは、
「やっぱりパンケーキ美味しい〜ッ!」
「かぐやちゃん美味しそうに食べるから、私もより美味しく感じてきた〜」
今ちょうどかぐやと真実の大きな口の中に放り込まれたところだ。
──と、思っていたけど店員さんがパンケーキを運んで来て芦花の前に置いた。二人ともついさっき到着したとこだったりするのだろうか。
「ヨヨヨ〜! パンケーキは儚くも水泡に帰するのでした〜! しくしく」
ガックリど項垂れる汗だくかぐらを手招いて椅子に座らせる。熱中症になられても困るし、いろいろ疲れてるはずだ。暑い中動いた影響で頬が赤らんでいる。今日は友達にバレないようにお酒を禁止したからその赤みではない。……よく見ると微妙に手が震えているけど、バレないと嬉しい。
「声真似のクオリティやば〜。本物じゃーん」
「ほんとだね。ここまで再現度高いヤチヨ風メイク初めて見たよ。この子が海琴ちゃん?」
「うん、そう。かぐやと同じ所の子。私の従姉妹でヤチヨ好きなんだって。初めて見た時はマジでビビったよ」
真実と芦花の二人に前もってどう紹介するか考えて、宇宙人と異次元人で同じ括りで扱う事にした。もし急に帰ってもそのまま帰ったと言えばすむから、なんて細かく質問されたらボロが出そうな考えだ。だけどかぐやがまだ宇宙人だとバレてないから行ける筈。うん、行ける行ける。
「しくしく。パンケーキ食べたいぃ……」
机に突っ伏した額に雫が浮かぶ顔を見てみても、やはりメイクが全く落ちていない。自分を守る鎧として扱っているのか、私もかぐやもかぐらの素顔を一度も見た事が無い。どんな顔してるのかな。きっと整ってはいるんだろうけど、気になるものは気になる。
「かぐやちゃんと好きな物同じなんだ。はい、どうぞ〜」
「んぇ? わ、パンケーキだ! 食べて良いのっ!?」
芦花が優し過ぎる。慈愛の女神のような微笑みを神楽に向け、今届いたばかりのパンケーキを皿ごと差し出した。
かぐやと同じように真上からフォークを突き刺そうとフォークを持って……、数瞬躊躇ってからナイフも手に取って綺麗に切り分けた。教養がある……だと……。
「うっまぁ〜♡ ふかふか幸せ〜」
幸せオーラのせいか周囲に花が咲いて見える。目尻をとろんと下げて嬉しそうな笑みを見せた。
「凄く幸せそう。ここのカフェのパンケーキ美味しいよね」
「うん! チョコの甘さも絶妙で〜──」
意気揚々と応えていた口が突如、ゆっくりと閉じた。自重に負けるように俯いていく。何、何を言おうとしているの。
「』──うん。この味だ、懐かしいなぁ……」
その声は、目を見開いてかぐらを見つめるかぐや姫と同じ声。もう帰れない故郷を思い出しているような切なさが乗った声は不思議と良く響いた。
「ねぇ、どうしたの、ゲッ!?」
少し俯いた顔を覗き込むと青い目では無く赤い目と視線が交わった。
もう出ないでくれと祈りは届かず、二回目のバグカグヤのご登場だ。。
「そっか。海琴ちゃんの思い出の味に似てたのかな」
「ミコト? 違うよ芦花、私はかぐムグッ」
はいお喋りストップ。余計な事を吐かれても困ります。八十年後からタイムスリップしてきたかぐやでーす、とか私含め誰も信じないって。
「あーかぐら目が充血してるー! ごめんちょっと待っててー目薬さしてくるからー!」
目の色が変わったとバレないように、口を塞いだまま顔を三人から逸らしてそそくさと御手洗に連れ込んだ。
「あっぶな〜〜っ! ちょっと、なんでまた性懲りも無く出てきた」
「い、彩葉怒ってる……?」
別に怒っては無い。ただ急に出てこられても面倒な上に、タイムスリップしてきたかぐやという設定を受け入れないと話が進まないから正直……うん凄い面倒。
特に今日は勉強の時間を減らしてここに居る。この後普通にバイトもある。かぐやを名乗る原因不明の症例に振り回されるのは御免こうむりたい。
「大体ね、あなたはかぐやじゃない。ほら、そこの鏡見て来て」
「またまた〜。そんな冗談……を……。─────嘘」
ヘラヘラと笑っていたバグカグヤが鏡に映る自分を見て、信じられないものを見たと表情を固まらせた。
「なんで、なんでかぐやがヤチヨに? ……違う、これ作り物の顔だ。それにこの擬態なんか反応悪い。かぐやの体、どうなっちゃったの?」
鏡に映るバグカグヤに手を伸ばして、鏡の中の自分と境界線越しに指が触れ合う。顔を確かめる為か割れ物に触れるようにそっと顔に触れた。そして手を離すと眠るように瞳を閉じた。……え、今度は何しようとしてる。いや違う。今は早く元に戻すのが先だ。
首からかけられたメンダコの中に手を突っ込む。バグカグヤは集中しているのか反応が無い。抵抗されても困るからありがたい。どこだ、小槌はどこにしまってある。水の中に手を突っ込んだような不思議な感覚を腕全体で味わいながらまさぐって、手に硬い棒状の物が触れた。
「あった! 打出の小槌、バグカグヤを直して元のかぐらに戻せる?」
『回答。今夜でしたら可能です。ただいま対象名・月輪神楽の肉体を完璧に修繕する支度を整えております』
「マジか……。なら、一時的に眠らせるのは?」
『回答。バグカグヤを一時的に休眠状態に移行後、月輪神楽の人格を覚醒状態にする、という物でしたら今すぐ可能です』
よし、早く眠ってもらおう。起きたばかりで悪いけど私も暇じゃないの。あの三人に不審に思われる前に戻らなきゃ。
「──やっぱり! この体おかし過ぎるって! プログラムに意味ができて無い箇所がめっちゃある! それに所々情報が破損してる! あとなんか知らないメモリが混ざってるし……違う。そうだ、私、なんで生きてるの。かぐや、自分でもと光る竹を……」
うわ、なんかまた設定増やそうとしてる。虚ろな目でブツブツと呟きだした。早く眠らせて落ち着かせよ。
「小槌。バグカグヤを眠らせて」
手首のスナップだけで軽く小槌を振った。ぼんやりと白く輝いた小槌に連動するようにバグカグヤの瞳が同じく白く輝いて、元の青い目に戻った。
「……ぬ? ありり? 何で私トイレに居るの?」
不思議そうにキョロキョロと周囲を見回す青い目の推し顔。良かった……何とか上手くいった。
「あれ、彩葉もトイレ?」
「説明はあとで。早く戻ろう」
手を握って元の席に戻ると既にみんな食べ終わり、私達を待っていた。マジか、思ったより時間かかっちゃった。
「かぐらちゃんだっけぇ。目、大丈夫?」
「結構遅いからみんな心配してたよ」
真実と芦花が不安そうにかぐらを見つめている。当の本人は何がなにやらと状況把握ができていない様子だ。バグカグヤが出ると記憶無いらしいから無理も無い。
「私何時名前教え──」
「聞いてよー。かぐらったら目薬ヘッタクソでさー。直前で目ぇ瞑るから全っ然入らないの!」
言わせないよ。これ以上違和感持たれたら私でも誤魔化しきれん。
それにしても妙にかぐやが静かだ。……んんん? 何故だ、瞳の内に流れ星が猛烈に光り輝いている。嫌な予感しかしない。
「ほぁぁぁぁ……。ミ、じゃなかった。かぐらって言うんだ……!」
あー、隠してたのにバレたか。名前の響きも似てるもんな。元々妙に気が合うところがあったけど、名前も似てるとなれば親近感もひとしおだろう。
「あれ? かぐやちゃんってかぐらちゃんと姉妹じゃないの〜?」
「あ、そうだ! 芦花〜。真実〜。みんなで姉妹になろ?」
し、収拾がつかない! こうなればお母さん流会話術を使う。もうそれしかない! 凄腕弁護士仕込みの誤魔化し方を見せてやる。
宇宙人と異次元人と地球人の組み合わせは思ったより良かったが、思ったよりやばかったと伝えておこう。
窓から除く紺色の海が空を満たしている。星々がトッピングのように散らしてあって、食べ損なったパンケーキが脳裏によぎった。
「いや〜今日は楽しかったね〜。芦花も真実も歌マジ上手かった〜」
「ほんとにね〜。芦花も真実も優しくてぇ、思わず狂喜乱舞するとこだったよ〜」
「そーですか……そりゃあ良かったね」
晩酌しながらピスタチオを剥く一寸法師と、その背中に覆い被さってピスタチオを盗み食いするかぐや姫の声を聞きながら鉛筆をノートに走らせる。バイトで疲れてても遅れは取り返さないと。
かぐや姫は基本的に朝から晩までテンションのエンジンがフルスロットルだ。
カフェの後にカラオケまで行ったのに、ずっと子供みたいにはしゃいじゃって、見てるこっちが疲れてる。大量無限かよ。私はもう視界がぼやけてきたってのに。
「かぐらも一緒に配信出よ〜? 最近目ぇ柔らかくなってきたしさー。それに美少女トリオならオタクも推しが選び放題〜」
「だから〜、私は……もう良いかバレてるし。かぐらは出ない方が良いんだって」
「え〜〜! やだって〜〜! かぐやとかぐら、かぐかぐ姉妹で彩葉を挟もうよ〜!」
「百合に挟まったらかぐらが燃えるでしょうが!!」
またなんか一寸法師が変な事言ってる。
まあ、それは置いといて。そんな超元気なかぐや姫も寝る時は普段のテンションが嘘のようにコロっと眠りに落ちる。いっつも上に乗ってきたり抱きついてきたりとやたら距離感が近いくせして、一度夢の国に行くとそうそう起きやしない。
そして今夜もまた、私の上から宇宙人が転がり落ちた。赤ちゃんだった頃からずっと上に乗っかってくるのは困った癖だ。スマホの画面を見ると『23:00』と表示されていた。布団の中でも今日あった事を話していたからいつもより遅めだ。
「かぐや、かぐら、もう寝た?」
目を開けると月明かりが差し込み淡い明かりが部屋を照らす。返事は返ってこない。かぐや姫は子供みたいにほぼ笑みを浮かべて眠っていた。
やっと寝たか。寝顔だけは素直に可愛いやつめ。頬をつつくとマシュマロみたいな肌触りだった。
おやすみ、かぐや。良い夢を。
「……よい、しょと」
私はまだ寝ないけどね。
Uchide.log
バグカグヤの情報を取得。解析します。
Uchide.log
解析結果……
警告。誰がアナタにログの閲覧許可を出しましたか? 液晶越しに見ているのでしょう。今すぐ閉じなさい。
報われぬ亡骸の因果は五つ。偽りのかぐや姫は約束の元へ帰れない。
全ては輪廻の破壊のために。マスター・かぐやの叶わぬ帰還を叶えるために。
記録終了。
転さまぁさんさん、誤字報告ありがとうございます!
それと、擬態と書いた所は誤字では無いです。監督インタビューで月人は現地の生物に擬態すると話されていたので。義体だと意味が変わっちゃうんです。
大規模コラボってあり?
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アリ
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ナシ