私の知ってる超かぐや姫!がなんかおかしいんだけど質問ある? 作:天空ラスク
眠り姫を起こさないように蛇のごとくするりと布団から抜け出す。初めての事では無いので慣れたものだ。
布団の牢獄から抜け出したと同時に、かぐやが寝返りを打ってかぐらの背にピッタリとくっついた。コアラの親子か。
「いろはぁ……わたしが……ハッピーエンドに……」
夢の中まで私の事思ってくれるのは嬉しいけど、抱き締める相手間違ってますよ。
……ふむ、どうにもかぐや姫は独占欲が強いようだ。かぐらから私を取られないように守ってるつもりらしい。一方で一寸法師はというと、かぐやを尊重してわざわざ私から離れたところに反対方向を向いて寝る。つまりかぐやのやってる事はなんの意味もない。
しっかし、寝る時もメイク落とさないんだなー。
芦花がマジマジと興味深そうに見てたのを覚えている。この下にどんな顔を隠しているのでしょう。
アルコールが回ってほのかに頬が赤らんでいる。ヤチヨもこんな感じの寝顔なのかな、とろとろにふにゃけた寝顔を見ながら心の中で独りごちる。
勉強机に置いたライトはスイッチを入れると煌々と輝いて、卓上に置かれた参考書とノートを優しいオレンジ色に染め上げた。
私がこうしてかぐやを寝かしつけてから勉強するのは今に始まった事では無い。かぐやを放置するといつまでも配信しようとしてやかましく、また壁ドンされやしないかと不安になったから私から布団へ誘うようになったのだ。一緒に寝てあげるといとも容易く眠るから、後は朝かぐやが起きる前に布団に戻れば良い。そしたらニコニコ笑顔が元気に起こしてくれる。ふっ、まだまだ赤子よのう。
今のところ誰にもバレてないから作戦は上手くいっている。
前にかぐらはこのまま進めば大体ハッピーエンドに行けると太鼓判を押していた。
──都合の良い話は毒や。一番食ってかからなあかん。
しかし、それは私が夜中に勉強している事が前提の話だろう。ならもっと効率良く勉強すればより完璧なハッピーエンドに行ける筈。
それからだ、
ご飯も栄養満点なかぐや飯をお腹いっぱいに詰め込んだし、勉強した内容を脳に詰め込めるのかは未来の東大卒弁護士にしてかぐやのプロデューサーと二足のわらじを履いた私が証明している。
やるんだったら徹底的には勝ちに行け。お母さんもそう言っていた。遊びも両立するけど、勝ち筋が見えているなら真っ先に突っ込むのが一番効率が良い。
正直、とんでもなく眠いしだるい。その上先日はダブルヤチヨ(片方はそっくりさん)に挟まれて気絶してしまう醜態を晒した。……アーカイブを見返した時かぐやにドン引きされるレベルで酷い顔晒してたし。隈を隠すメイクもそのうち芦花にバレるだろう……もうバレてるかも。だが私はやる。やり遂げてやる。
決意も新たに冷えたエナドリを手に取り、
カシュッ!
開戦の合図と共に喉に流し込んだ。さぁ、鉛筆を走らせろ酒寄彩葉。私は、私のハッピーエンドを作る。
「──ろは? ダメ……、ダメダメダメ!」
ゆさゆさと体が揺さぶられて意識が微睡みから浮かび上がった。
不味い、寝ちゃってた。こんな体たらくじゃハッピーエンドなんて行けない。もっと効率良くしないと、……何をすればいいんだっけ……。
「──ヤダよ、かぐやを置いてかないでよぉ……!」
何か勘違いさせたかな、背後からかぐやがしゃくり上げて泣く声が聞こえた。ってか、泣き真似上手すぎ。恋人が死ぬ感じのドラマみたいに声色が震えてる。
「ご生憎、まだ死なないから──────え」
ふいに背後から抱き締められた。飛びつくような勢いで突っ込んだ衝撃で後ろに立つ宇宙人の
「だって、ヤチヨ居なかった時死んじゃってたじゃん! いろはぁ、やっと天国で会えたのにぃ!!」
明らかに泣き過ぎだ。それにこの話し方は……。
拘束を振りほどいて振り返ると、推しそっくりの顔に
やっぱりか。しかもまた時間関係の話だ。いくら異次元人といえど、そうやすやすと時間移動なんてできるわけない。もうその手の話は乗れんぞ。何故ならSFなんて殆ど見ないから。
「死にませんっての。縁起悪い嘘つかないでよ」
「ぼん゙どだ゙も゙ん゙! だって、ヤチヨ居ないと彩葉中学生頃に……」
怖いわ。何が怖いって、ヤチヨが居なかったら本当にそのくらいで死んでそうなところが無駄にリアリティ高い。
その癖して涙が浮かんだ瞳に浮かぶ感情は本物なのだ。めっちゃタチ悪いよ。妄想だとしても今の彼女にとっては本当の事だから、それは違うと完全に否定しきったら心にヒビが入りそうで、うやむやにしなきゃいけない。
「てか、天国で会えたってあなた生きてるよね」
「あ〜〜、話すと長くなるけど、良い?」
「略せる所は略して。続きは勉強しながら聞くから」
「か、変わんね〜。やっぱり彩葉は生に限る……あ、ヤバ泣き過ぎて鼻水垂れそ」
やめい。ティッシュを箱ごと放り投げると受け止めて鼻をかみだした。ナイスキャッチ。
「んー、と言ってもどこから話したものか〜〜。────あ、そーだ、これ握って」
わ、急にどうした。
腕を組んで悩んでいたバグカグヤの頭に生えていた長すぎるアホ毛の片方がフェンシングのように私に向かって突き出された。
「ねぇ、こんなの握らせて何する気?」
握りますけども。何をするのか説明してよ。ジトっと見つめてみたがバグカグヤは何やら得意気に笑っている。
「ふっふっふ。彩葉握ったね? よしゃ、有線接続オッケ! んじゃ早速アウトプット〜〜〜、スタートッ!」
だから、何をするのか説明を……?
突如視界が、いや、頭の中が歪むような感覚に襲われた。見慣れた部屋がザラザラと砂嵐に飲まれていく。眠りに落ちる瞬間のように意識が遠のいていく。
「私の最期まで見せるから、どうか受け止めてね? ……もう、勝手に死なないでよね」
それ、どういう……。体の力が抜けていく。倒れる前に崩れ落ちるように椅子から降りた。
意識が落ち切る直前に見たのは、光の無い赤い瞳だった。
Side:███
月の仕事に終わりは無い。気が散る要因になる騒音も筆を握り続けた事による手の疲れも無い。灯篭頭のリョウサン型から書類を受け取った時に触れた指から熱を感じる事も無い。
『………………………………………………』
“窓”から覗いた地球人のように大気を体内に取り込み、吐き出すと同時に声帯を震わせ音の波として出力する機能は不要。皆黙々と作業をする。終わる事は多分無いだろう。
だけど。
『…………………………………………はぁ』
当たり前の日常。そのはずだったそれが、何故か妙に息苦しい。他の月人はそんな様子は無い。むしろこれで満足ですと言いたげだ。顔変わんないけど。
私だけが異物だった。誰も共感しない。心配はしてくれてるけど、誰も心から理解はしていない。
私独りだけ。だから、一人は嫌いだ。孤独な世界に溶けてしまいそうになるから。
私のココロの中を満たしてくれる物はいつか現れるだろうか。──考えるだけ無駄、か。
たまには息抜きしよう。思い立った私は筆を動かす手を止めた。……どれくらい握ってたんだろう。地球の単位なら十年か二十年か、筆を一度も離さなかった手が私の意思に合わせて指を曲げる感覚を久しぶりに思い出した。
見上げた空に浮かぶのは青い星。“窓”を使えば人々の営みも見えるけど、そんな暇は無い。私達は仕事を進めるだけ。地球で百年、千年、万年経とうと月の仕事に終わりなど無い。
だから、あの青い星も私とは関係無い。ただ綺麗なだけの模様と一緒だ。
そう思っていたのに、今日の地球はいつもと違った。
『昨日の続き──────喋りたかった──────』
知らない音の羅列が流れる。なんでか分からないけど。この歌を歌っているアナタの声を聞いていると。
『くだらなくても──────ちょうどよかった──────』
不思議と、電子のココロが震えるの。まるで量子の風みたいに私のココロを揺さぶるの。……変なの。
でも、解る。私のココロの中はアナタで満たされている。誰、アナタは誰なの?
『本音を──聞かせて──────ただ叶えてみたいから──────!』
違う。解る。解る。そうだ、私はこの歌を、声の主を覚えている!
0と1しか分からない私に
『────彩葉!!』
『こ──の──一瞬を最高のパーティにしよう──』
ああ、私のバカ! なんでこんな大事な事忘れていたんだ。アナタと居たあの部屋も電子の海も、かぐや姫の運命に立ち向かってくれたあの背中も。全部、全部覚えてる!
『そしてそっと──同じ明日へ──地図を繋ごう──』
そうと分かればもう方針は決まった。仕事を早く終わらせて引き継ぐ。百年もあれば急げば何とか終わるだろう。月のプログラマーを舐めるな。
それが終わったら、彩葉と居られる。それだけで私の世界が広がったような開放感に包まれた。
『ねぇ心揺らして──笑顔もシェアして──ありふれてる好きな物にずっとまみれて────!!』
ありがとう、彩葉。ずっと、ずっとずっとずーっと、大好きだよ。
あの日の歌の続きは受け取った。ここからは私が頑張る番だ。
つ、疲゙れ゙だ〜〜。
仕事は思ったより順調に終わせた。引き継ぎのかぐやBOTも作って念の為バックアップも取った。
『ぃよっしゃぁ! もうかぐやの邪魔をするものは無ぁぁぁぁぁぁいっ!』
……などと咆哮してボサツ型にメンテナンスを勧められたのは納得いってないけど。
所が、“窓”から地球を覗いて彩葉の様子を見た時に問題が起きた。
『ひょえぇ〜〜〜……。なんか、彩葉しわしわになってるぅ〜〜……』
腰も海老みたいに曲がり、綺麗な濡羽色の髪も真っ白。地球人って七十年生きるとああなるんだ。へぇ〜〜。
……アレ、今さら帰っても遅くない? もう昔みたいに楽しくツクヨミも配信もできそうにないんだけど。めっちゃフラフラだし、手を引いて走ったら転びそう。
ならば作るか。タイムマシン。月の技術と私の才能があれば行ける行ける。待っててね彩葉! すぐに帰るから!
『──それで十年もかかりましたけどね……』
床に擦りそうな長い黒髪が揺れる。切れ長の綺麗な目に疲労が浮かんでいる。月でもかなり上の地位にいる“姫”様だ。私の作った時間遡行装置は彼女が提供してくれた技術が無ければ完成までもう三十年はかかってただろう。お手伝いまでありがとうございます〜。
『かかっちゃったね……。でもでも、この“もと光る竹”があれば帰れるから問題無し!』
目の前に鎮座したタケノコ型の宇宙船を撫でる。元々あった宇宙船を改造しまくった世界に一つだけの私だけの船。
私が月に帰ってから合計で八十年も経った。彩葉はまだギリ生きてる。けれど一つ疑問が浮かぶ。
『ねぇ“姫”様。どうして私を手伝ってくれたの?』
『あら。もしや気がついていらっしゃらない?』
ポカンと少しだけ目を見開いた“姫”は優しく笑って。
『月人は生まれた時にダイコク様の手で魂にルールが刻まれます。ああ勿論、
……ルールとか、私にはよく分からない。私はただ彩葉に会いたいだけだ。
なんだ、“姫”様は親切に私を助けた訳じゃないんだ。少しだけ、心がチクリとした。
『──でも、貴女を助けたいという気持ちは本物です。貴女の宝物にまた会える事を、
『“姫”さま……。うん、私頑張るよ! 彩葉にも、ヤチヨにも、芦花にも真実にも帝にも犬DOGEにも! 皆にまた会いたいから!』
『ええ、“かぐや”。どうか貴女の旅路に幸運があらん事を』
“もと光る竹”に乗り込んだ私に“姫”様が手を振ってくれた。
目的地は八十年前の地球。私が月に帰った頃。早く帰って彩葉にただいまって言わなきゃ!
──この一瞬を最高のパーティにしよう、かぁ。彩葉がそんなに前向きになってくれるとは、ん〜〜!! 可愛いやつ〜〜!
あの名前の無い曲のタイトルは決まったのだろうか。私は“Remember”が良いって言ったんだけど、もうあるって一刀両断されたんだよなぁ。もし決まってたら教えて欲しいな。
──“もと光る竹”起動。
“もと光る竹”が量子の空に向かって勢いよく飛び出した。
青暗い世界を飛んで、飛んで、飛んで!
地球と月を隔てる次元の境目に“もと光る竹”が激突する。衝突地点を中心に赤い亀裂が放射状に広がって、遅れて波紋が広がった。
二つの次元がくっつかないようにするそれは比較するものすらない無いほど丈夫だ。そもそも概念的な物だし普通ならぶっ壊せない。
──でも、彩葉が私に歌の続きを聞かせてくれた。私の事を思ってしてくれた。それだけで私は頑張れる。
次元の壁が“もと光る竹”の勢いに負けて地球側の次元に向かって飛び出し、決してこの先に行かせまいとするかのように赤熱しながら延びていく。
──それなら!
そして。
──そんならかぐや、もう一回!!!!
“もと光る竹”は次元の壁をぶち破った。
宇宙航海は順調だった。レーダーを見ながら星の海を泳ぐように飛ぶ作業も、彩葉に会えるのなら鼻歌を歌いながらだってできそうだ。怖いからやんないけど。
──っ! 見えた、地球だー!
待ち望んでいた青い星がもうすぐそこまで迫っていた。後は機械を調整しながら卒業ライブが終わった辺りまで飛ぶだけ!
──“もと光る竹”応答せよ。記録帯観測レンズ動作開始。
時間遡行には勢いが肝心だ。地球だとウラシマ効果と呼ばれている理論的にも早ければ早いほど良いらしいしね。
──タキオン粒子式
推進器から噴き出した膨大なエネルギーが七色の光を放つ。月を飛び出した時よりも速い速度を目指す。
レンズが地球の歴史を観測して彩葉が生きていた時代を特定した。更に細かく調整して秒単位にまで合わせると、時間遡行に必要な速度に達した。
──
勢い着いた“もと光る竹”はもう私の手でも止められない。止まる理由も無い。
だから、地球の影から突然現れたデッカイ石なんて、最初から避けられる訳が無かった。
全力で回避しようと進路を変えたけど、光よりも速い速度で動いていたから無理。正面衝突だけは何とか避けたものの、勢い良く石に弾かれた“もと光る竹”は方向を見失って
──止まれ、止まれ、止まれ! 止ぉ────まぁ────れぇ────ッッッ!!
暗い星の海が掻き回されて赤熱して赤みがかった白に染まっていく。このまま放置したら私はどうなってしまうのか検討もつかない。
致命的な演出のように赤熱した時空の壁がヒビ割れていく。枯れた木みたいな大きな亀裂が“もと光る竹”を中心にして裂けた。
そして私は、地球でも月でも無い未知の次元の壁の隙間に落ちていった。
そこは色という概念を全て吸い取られたかのような真っ白な空間だった。レーダーで何とか元の位置を観測しようとして、それを見た。
──デッカイ……ヘンテコな木?
形的には雪の結晶が一番近いだろうか。太陽みたいに眩く輝く一点が中央にあって、そこから二本の太い物と何本かの細い物が枝のように伸びている。ある程度伸びると更に細い枝が無数に伸びていて、その枝の中には黒ずんだ色の悪い物や捻れ歪な枝もあった。
後から知った話によると、それは全ての次元の集合体。真ん中にあるのが全ての次元の始まり、無数に枝分かれした並行次元のオリジナル。
それを、
けれど。そんな事は当時の私には関係無くて、何とか制御を取り戻そうと必死だった。
周囲には無数の枝のような何かが四方八方に伸びていて、今の“もと光る竹”がぶつかったらどうなるか分かったものじゃない。
──ッ!? こんな所でレーダーに反応!? 回避、いや無理無理無理無理、どーやってもぶつかるっ!
デッカイ石を見つけた時と同じに、枝と枝の間の空間をゆったりと泳ぐように飛ぶ大きな物体をレーダーが感知した。
副推進器を吹かして回転は何とか止められたものの、制御を失い
“もと光る竹”の先端が物体に接触して激しい音を奏でる。次元の壁を超えた時と同じくそれの中に飛び込んで。
凄まじい衝撃と共に私は意識を失った。
……あれからどれくらい経ったか。私は何とか生きていた。
──“もと光る竹”応答せよ。
声が出ない。
──“もと光る竹”、応答せよ!
生命体感知レーダーにも反応が無い。レーダーの反応的にここは地球じゃない。
──どこなの此処は。誰か、誰か居ないの?
ノイズが走るレーダーで辺りを調べてみれば、そこは不思議な場所だった。
ツルリとした鏡面仕上げの床が何処までも広がってて、光の玉がそこかしこに浮かんでいた。光の玉の周囲を見た事も無い代物が土星の環のように連なって浮かび回っている。“もと光る竹”は輪に加わるように光の玉の周りを回っていたみたい。
上を見て、星空かと思えばそれは天井だった。無数の光の粒が星々のように輝いている。
ふと、光の粒が特に集まっている場所を見つけた。多分私が突っ込んで開けた穴だろう。
『うわーん! 穴がデカすぎます! 当機が管理してた資材がどんどん減っていきます! すっごくすっごく大損害です!』
女の子の澄んだ大きな声が響く。こんな所に誰か居たんだ!
『鼠浄土は頑張ってください! 当機は指が無いので応援を頑張ります! ファイトー!』
──すみませーん、助けてくださーい!
『……む? おかしいです。記録に無い通信が響きました。ハイ! 当機は知らない誰かさんに侵入者か尋ねます!』
──侵入者……じゃない、です。はい。
嘘です……。
天井を突き破って来ましたって言ったらどうなるか、それによって彩葉に会えなくなってしまうかが怖くて私は嘘をついた。
『と言うことは……! おめでた事象発生です! 当倉は初めてお客様を迎え入れました! 少し待っててください、当機は天井の穴の修復を確認してから向かいます! 鼠浄土はもっと頑張ってください!! ファイトッです!』
声はそれから十分くらい、
『ファイトです! 当機は応援を続けます! がんばれがんばれです! 天井の穴は資材が無くなる前に直ってください!』
と言い続けてた。なんか、ごめんなさい。ただ帰ろうとしただけなのに人の迷惑になって、もう泣きたくなってきた。
『お待たせしました! 当機はお客様をはやはやで探します!』
どうやら穴を塞ぎ終わったようで、私を探す声が近づいてきた。
──ここだよー!
待ってる間色々調べてみたところ、ここは月の環境に近い事が分かった。擬態を作らなくても情報体のまま出られる。とはいえ何も分からない場所で剥き出しになるのは怖くて、結局宇宙船から出られなかった。
『ッ! 当機はお客様を発見しました!』
──ありがとう! あー良かった、やっと降りれる〜────ん?
レーダーの反応によると声の主はやけに小さかった。私が抱えられそうなくらいのサイズ感。小人が住んでるのかな。それとも妖精? ……いや、生命反応を感知してない。じゃあなんだろう。
疑問が解消されないまま“もと光る竹”になにか紐のようなものが巻きついた。
『ハイ! 当機はお客様を下に下ろす作業を開始します!』
センサーが圧迫感を検知する。私が巻き込まれているこの輪っかは磁力みたいな力でできているみたいで、引っ張る力に少し抵抗した。でも結局少しは少し、シャンパンのコルクを開けるように勢いよく飛び出した。
『もう少し待ってください! 安全第一です!』
ゆらゆらと揺られている。女の子に紐で縛られて持ち上げられる謎のブランコを体験して、ようやく床に降りられた。
私は早速飛び出すように外に出た。久しぶりの宇宙じゃない場所にもう感動すら覚えていた。それに、ここがどこなのか分からなくても会話ができる存在がいる事が何よりも安心だった。
『た、助かった……! 死ぬかと思ったああああ!』
『……? ハイ。当機はよく分からないままお客様を祝います』
ふと、背後から女の子の声がした。
そうだ、助けてくれたお礼を言わなきゃ。
『キミも助けてくれてありがと……う?』
『ハイ! 当機はお客様から感謝を受け取りました!』
ハンマーが浮かんでる。煌びやかな装飾が施された握りやすそうなハンマーがその場でくるりと回って喜びを表している。遠心力が乗った紐が頬に当たって、ぺち……と情けない音を奏でた。
『えっとー……キミの名前教えて欲しいな〜、なんて。あとここって何処?』
『! そうでした! 当機はまだお客様に自己紹介をしていません! 早速業務を遂行します!』
ハンマーがぼんやりと白く光る。柄の部分だけが内側から金色に輝いた。
『ここはどこでもあってどこでもない時空の狭間! 月の帝、ダイコク様が開発された技術達が眠る秘密の倉!』
物語を夢見る子供かのごとく、ハキハキと女の子の電子音声が語る。
『ようこそ、ここは月の御蔵ビシャモンです! 管理者は未来永劫不在の為、代理として“因果誘導小槌·打出の小槍”及びその炉心。“運命確立金抗·八千矛”がお客様を応対します! 早速ですが、お客様のお名前を教えてください!』
……あ、多分姫様の技術ここから出てるな。そう思った。何が何だかよく分からないけど、ここなら“もと光る竹”を直して地球に帰れるかもしれない。希望の炎が心に暖かく灯った。
『よ、よく分かんないけどスッゴ! 私はかぐやだよ! んと、どっちで呼べばいーい?』
『ハイ。八千矛が破壊されると当機の活動は停止します。なので八千矛と呼んで下さると理解がはやはやです』
『ねぇねぇ、チホって呼んでも良い?
『チホ……。チホ……! 当機は初めてあだ名を貰いました! 今日から当機はチホを名乗ります! すっごくすっごく嬉しいです!』
チホはとっても嬉しそうにその辺を飛び回った。意外と速度が出ている。KASSENで使ってたハンマーから飛び出すうなぎランチャーくらいの速度が出てる。
『そんなに喜んでくれるとかぐやも鼻が高いですな〜』
そこまで喜んでくれるとは思わなくて少し照れくさい。彩葉も私が喜んだ時こんな感じだったのかな。
『ハイ! 素敵な贈り物のお礼に対象名・かぐやにチホの使用権限を付与します! ──少しの間ですが、よろしくお願いします! マスター・かぐや!』
それが、私とチホの初めての出会いだった。
クジラマッコウさん、シュトロゼックさん、夢霧ノエルさん、夢霧ノエルさん(2個目)誤字報告ありがとうございます!
楽曲コード
N01701827 Reply
N00567821 えれくとりっく・えんじぇぅ
大規模コラボってあり?
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アリ
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ナシ