私の知ってる超かぐや姫!がなんかおかしいんだけど質問ある? 作:天空ラスク
アンケート結果が圧倒的過ぎたので酒カスがかぐやに捕まるのは確定になりました。ちくせう(。。∩△∩。。)みんな仲良しかー!
────だが、今回のアンケはどうかな?
2026-6-20 設定変更による内容編集
家の中に入っても何かが起こるはずもなく赤子は大声で泣き続けた。
「お〜よしよし、泣かないでー……」
生まれてこの方18年、育児なんてやったことも無い女子高生が赤子の泣き止ませ方なんて知っている訳もなく、イマジナリーお母さんをイメージして腕の中で優しく揺らしながら部屋の中を歩き回っていた。
その後ろをカメラを担いでグルグル付きまとうダルTショーパン色白美少女不審者。そう、
泣きじゃくる赤子をあやす女子高生を手伝うこともせず一人涙ぐみ鼻をすすっている酒カスです。
・ほんとにさぁ……(ジト目)
・てかさっきのセリフなんで言ったし、バレるぞ?
・酒カスオンステージ状態だったな
すんすんと鼻を啜り、目尻に浮かんだ涙を指で払う。
カリカリとメモリを3に落として自分の声が彩葉に聞こえないように調整してからカメラに語りかける。
調整遅ない? バレるでキミ。
「だって、かぐやと出会えてさ、これからようやく彩葉の日々が楽しくなる日が来たんだな〜って思ってさー。そんなんつい言っちゃうじゃん」
ツンと唇を僅かに突き出す。カメラの画面に映る赤みの増した目はまだ少し潤んでいた。
・そりゃ文句言えねえわ顔いいなちくしょう
・ずっと頑張ってるとこ一緒に見てたもんな顔いいなちくせう
・配信に写った勉強ノート、あれ本当に役に立った。ありがとうございます彩葉様
・そのちっちゃいおててクイクイって動かすのやめろ可愛いだろ
「おやおや〜? ようやく私の事可愛いって言ってくれたね〜? うんうん、良きにはからえー!」
視聴者からの珍しいお褒めの言葉を貰った。嬉しくなってニコパと笑みを浮かべる。
顔が良ければ何しても許されるこんな時代、ポイズン。
・調子に乗るなよ酒カス
・家の前でビール何本呑んだか言ってみろ酒カス
・タップダンスで画面酔いしたぞ酒カス
・カメラ置いてまでやりたかったことがセルフスポットライトとかふざけんな酒カス
・女子高生の下着覗こうとするとか変態かよ酒カス
・ビール飲みすぎだよ肝臓を労れよ酒カス
・チューハイを呑めって言ってるんじゃない置け酒カス
【悲報】今日も視聴者のみんながツンデレてる【デレデレがいいにゃー】。
美味しいビールのように冷えきったコメントにおろろんと涙してチューハイを流し込む海琴なのだった。
情緒不安定か?
なんてコントをしていると突如、鈍い衝撃音が壁から響いた。
「か、壁ドン……初めてされた」
立ち止まった彩葉が超ショックを受けている。
どうやら原作通り隣人の怒りの壁ドンが炸裂してくれたようだ。
この壁ドンが無い場合、彩葉が子守歌を歌わずにかぐやが彩葉から贈られた初めての、大切なメロディの思い出が消えるところだったかもしれない。
でも肝心のかぐやの泣き声が先程から変わらない。もしやかぐや自身の泣き声で聞こえなかったのでは? なんて考えて、ふと恐ろしいことに気がついた。
このままだと普通に泣き止んだら子守歌イベントが無くなるのでは? と。
そうなるとどうなる? かぐやが初めて聞く音楽が【Remember】じゃなくなる。つまり大切なメロディの大切レベルが下がる。イコール彩葉に【Remember】が届かずバッドエンド直行。
……大変な事態では!? いやいや、いないな。そうならない為に自分がいる。
カメラを片手に持ち替え二人に接近すると、人差し指を曲げ親指の関節にセットする。そのまま軽く力を蓄えていき……。
「てい」
かぐやの足の裏にデコピンを当てた。
「えええええええええええええええ!!」
突如走った痛みにも満たない衝撃、それでも赤子は驚きより大きな声で助けを求めようと泣きわめいた。そうなれば当然、ドンドンッ! と怒りの抗議の音も増した。
このまま泣き止まなければ怒りの突撃訪問が待っているだろう。
すまぬ、これも大切なメロディのためじゃ。
「あー大丈夫、大丈夫だからー、泣き止んでよー……ヤッバイ、どうすんのコレ」
天才女子高生酒寄彩葉、このアパートに引っ越してから上から数えた方が早いレベルのピンチを迎えていた。
それでも赤子は泣き止まない。そうやって人間は大人になっていくのだ。……電柱の主が人間かどうかはさておいて。しかし泣き止んでいただかないと大変困ったことになる。
ちゃぶ台の上にスマホを置く。開いた検索サービスで検索するのはもちろん、
「赤ちゃんの泣き止ませ方は────」
『お腹がすいているのでミルクをあげましょう』
「今さっき産まれたばっかだぞ。違う、これじゃない」
『抱っこして優しく揺らしてみる』
「もうやってる。次は……」
『縦抱き、横抱き』
「やってるやってる。はい次ー」
『抱っこ歩き』
「やってる……嘘でしょ、全部やってるじゃん。ならもうあと何が残ってる? 助けて進研ゼミ」
・独り言多ない?
・人ってやっぱ切羽詰まると口と脳みそ直結するよね
・酒カス、お前子守歌歌え。
・ヤチヨ(偽(酒カス))からかぐや(本物)に贈る大切なメロディw
「さすがにそこは取っちゃダメでしょ。……んー、まだ時間かかりそうだね。ちょっと急かしてみようかな?」
一人想像上のお母さんの真似事をして頑張っている女子高生。それを前にワイワイと口だけ達者なコメント欄を尻目に、自室から持ち込んだソレを部屋の空いたスペースにセットする。
コメント欄の事は嫌いになっても私の事は嫌いにならないでください。
物音を立てると焦りまくりめち
・《¥100・username・MMD@ヤチヨ推し》あの、主さんは何をしようとしてるんですか?
お、スパチャや。たまには答えたろ。
なんてお気楽テンションで組み立て終わったソレの後部に座り込む。
備え付けの二本のバチを両手で持って胸の前で構える。
「子守歌を歌わずに終わっちゃう可能性が出ちゃうと今後のかぐやの思い出が減っちゃうのです。よって! 彩葉には悪いけどもうちょっと泣いて頂きたくて、ね?」
・鬼! 悪魔! 酒カス!
・非道いですね、人の心とか所持していらっしゃらないのでしょうか?
・東京育ちの直哉さん?
・巫山戯ないで頂きたい、呪力が練れません。側溝沈殿物が
・メガネかけて言ってそう
コントを始めたコメント欄から意識を外して彩葉・かぐやペアへ向き直る。
わたわたとしてはいるがかぐやが泣き疲れたのか少し声量が弱くなってきている。
一番、酒カス。参ります。
スルスルと画面上を指が滑る。画面に表示させる文章はどれもこれもありきたりな物しかなく、つまり大抵の赤子はこの辺りを試せば泣き止んだということだろう。
「あ〜〜なんか良いのないか……手足が動かないようにタオルで包んで抱く、これいけるかな」
少し声が小さくなった赤子を見詰める。まだ泣いているがこのまま泣き疲れてくれればなんとか寝てくれるのでは? なんて考え出した時だった。
ふと後ろに気配を感じて振り返ると、見覚えのない物が目に飛び込んできた。
全体的に赤と白、アクセントに黄色の素材で作られたそれ。
頭がアンパンでできた国民的な子供のヒーローがプリントされたそれ────アンパンマ〇ドラムに今、バチが振り下ろされようとしていた。
「ちょ、待っ────」
ドンッドンッドンッカカカッカドドンッカドン!
「────なんでお祭りなんだよ! せめて和太鼓でやれ!」
声を荒らげるとピタリとバチが止まり、お箸みたいに綺麗に揃えてドラムの上に置かれた。
五秒後、スッとドラムが消えた。怪奇現象を前にしてそそくさと片付けるヤチヨのイメージが脳内に浮かぶが背中を押して別室にお帰り頂いた。
驚いた赤ちゃんの泣き声がまた大きくなった。何故ヤチヨはこんなことをしたの。
………………ヤチヨ、貴女はいったい私に何をさせたいの?
(赤子の綺麗な思い出のために頑張りました)。
疲れと眠気から重くなってきたまぶたをなんとかこじ開けスワイプを再開する。
アンパンマ〇ドラムの演奏者は止まっても壁ドンがより激しくなる可能性は全然残っている。
いったいどうすれば良いのか、ほぼ気絶しかけている黄金の脳細胞を叩き起した時、画面に一つの文字列が下から浮き上がって来た。
「子守歌、か」
何か良い曲が無いか検索する。その合間にお母さんに歌ってもらった子守唄を思い返す。
思い返す……思い……かえ……、
「…………思い当たりませんなぁ」
思い返せなかった。彩葉が思い出せるのはありがたいお叱りの言葉だけだった。
何かいい曲はと記憶を探っていく。なにかいい曲……赤ちゃんにとっていい曲とは? 童謡? ははっ私が今一番動揺してるわ。
思考が滑ったが、1つの曲が思い浮かんだ。
それは今にも潰れそうになっていた自分を何度も支えてくれた曲。この曲がなかったら今自分は生きていないだろうとまで豪語出来るソレ。まるで自分の為だけに作られて歌われたかのような名曲。
【Remember】。自分の推しの配信者、ヤチヨのデビュー曲だ。
息を吸う。乾いた唇の隙間を潜り抜け肺に空気が流れ込んでいく。
自分を生かしてくれたメロディを、これから大きくなっていくアナタに贈ろう。
「大切な──メロディは──流れてるよ──あなたの──ハートに──」
次のフレーズにいく前に赤ちゃんは気持ちよさそうに眠りについた。
「ヤチヨパワー、すっげぇ……」
推しは赤ちゃんすらも堕とすのか、そう思うと関係者でもないのに誇らしくなった。
……いや、結局なんでドラム鳴らしたのヤチヨさん? おーい、盛り塩減らすから出てきてくださーい。
・彩葉パワー、すっげぇ……
・彩葉ママー!俺だー!あやしてくれー!
・めっちゃ優しい声出るやん
・わぁ……あ……
暗くなった部屋の中、布団に眠る二人をカメラは映していた。コメント欄はようやく聞けた彩葉の子守歌にクラブ会場クラスの盛り上がりを見せている。
配信者もきっと盛り上がっているだろう。そう考えた視聴者だが、急に映像がブレた事に困惑した。
カメラは木目調の床を映し出している。だらりと垂れ下がった紐の先にカメラを取り付けたような不安定な動き。
「あ────────、」
床に雫が次々と落ちてくる。いや、これは……涙か。
海琴は泣いていた。瞳からこんこんと雫が湧き出て、頬に細い滝を作っている。
「あれ、おかしいな。どうしちゃったんだろ、私」
別に悲しい訳じゃない。むしろ嬉しい。かぐやと彩葉を語る上で外せない名シーンを目の当たりにして嬉しくない訳が無い。
ただ、彩葉の唄を聴いたら胸がポカポカしてきて、凄く、凄く幸せすぎるせいで、
「あははは、なんだろ。めちゃくちゃ笑ってるのに……涙、止まんないや」
・分かる。でもまだ始まったばっかだぞ
・ここからかぐいろイチャイチャが始まるんやで
・涙は全部終わったあとにまとめて会計しな
・にしても泣きすぎでは?
「うん、……そろそろ止める」
誤魔化すように笑う声がする。映像の視点が持ち上がり海琴の笑顔が映る。瞳に潤みが残っているが、それを指摘するのは野暮というものだろう。
カメラをちゃぶ台の上に置いて、彩葉とかぐやの二人が画角に収まるようにする。
パパン! と場を仕切り直すように手を叩き、
「ほんじゃ私はちょっと支度するから、みんないい子で待っててね〜☆」
と意気揚々と視聴者を置き去りにして自室へと戻ったのだ。
嫌な予感しかしない。
・すみません、ここなら女子高生の寝顔が堂々と見られると聞いたのですが
・ああ、ロリの寝顔も見れるぞ
・あのこれロリってかベビー……
・ハアハア……彩葉たん、オヂサンが三食間食おやつ昼寝付きで養ってあげるからね……
・うっす、俺が彩葉っす
・押忍!おいどんが彩葉でごわす!
・ンンンンン!拙僧、名をば酒寄彩葉と申しまする
・うっふ〜ん♡セクシー彩葉よ〜ん♡
・彩葉が四人集まった!これはいったい、どうなっちゃうんだ〜!?
・彩葉「ヘイベイビー」
・な ぜ に ト ム ・ ブ ラ ウ 〇 ?
・なんで成功するんだよ!教えはどうなってんだ教えは!
「神々のみんな〜! お待たせ!」
元気な声が暗い部屋に響く。メモリを調整してなかったら今ので起きていた。セフセフ。
どうやら配信主が帰ってきたようだ。
いつものように漫才を始めた視聴者もようやく帰ってきた配信主に意識を割くが、何故か配信主が画角に収まっていなかった。
「えへへ、実はね? そろそろ原作が始まるかなって裏で準備してたの。せっかくだからこのタイミングでお披露目しようと思ったんだー」
眠る二人を映す画面に優しい声だけが響く。その声色はどこかいつもと違う雰囲気が滲み出ていた。
チラリと顔が映る。いつもの赤らんだ笑顔……じゃない。凪の海のように落ち着いたその美貌は儚く笑みを浮かべた。
・酒カスが酒カスじゃない……!?
・なになになにが始まるの怖いんだけど
・《¥8004・username・野菜伝説》可愛い!と褒めてやりたいところだ
・その、その姿は……嘘やろ?
「一夜限りの子守歌。彩葉がこれからも頑張れるように応援したいから。どうか、一緒に見守ってくれる?」
さらさらと誰かに頭を撫でられている。
なかなか再起動しない脳みその電源を連打して起動し、彩葉はゆっくりと目を開けていく。
薄く開かれた視界は滲んでいたが、少しずつ明瞭になっていく。すやすやと赤ちゃんが眠っている。その顔はとても穏やかだ。
「二人の間通り過ぎた風は──何処から寂しさを──運んで来たの──」
頭上から歌が聞こえる。夜の海のように静かで、優しい声だ。
「泣いたりした──その後の空は──やけに透き通って──いたりしたんだ──」
頭を撫でる手が心地良い。意識が雪のように溶けていく。とろとろに意識が溶け落ちて────、
「いつもは尖っていた父の言葉が──今日は温かく感じました──」
──いや、それどころじゃないでしょ。この家には私と謎の赤ちゃんしかいないはず。たまにヤチヨの生き霊が出たり出なかったりするけど、アレはどちらかと言えばヤチヨみたいな見た目の何かと言われた方が今までの行動的にしっくりくる。
……まあ、定期的に惣菜を冷蔵庫に詰めてくれたのはとても助かりましたけども。
「優しさも笑顔も夢の語り方も──知らなくて全部君を真似たよ──」
せめてこの歌声が誰のものなのか、確かめないと。
……でも、もう少しだけこの歌を聴いていたい。そう思った。
「もう少しだけでいい──あと少しだけでいい──もう少しだけでいい──から──」
優しい歌声だ。この歌声は聞いたことがある。
本当は分かっている。私がこの歌声を聞き間違えるはずがない。
「もう少しだけでいい──あと少しだけでいい──もう少しだけ──くっついていようか──」
歌声の主にバレないように寝返りを装ってゆっくりと体を動かす。
頭を撫でていた手が止まり、数秒後にまた動き出した。
「僕らタイムフライヤー──を駆け上がるクライマー──」
ゆっくりと薄目を開ける。薄暗い部屋で薄目を開いても視界は滲んでよく見えなかった。
「時のかくれんぼはぐれっこ──はもう嫌なんだ──」
それでもなんとか目を凝らしてみるとだんだん目が慣れてきたのか歌声の主の姿が鮮明になってくる。
「嬉しくて泣くのは──悲しくて笑うのは──」
容易く手折れてしまいそうな首からメンダコのようなマスコットがぶら下がっている。
白く美しい御御足を包むのは立ち登る
エメラルドグリーンと藍色の和を感じる衣裳、赤い袖口から覗く細い手が私の髪を撫でている。
金の髪留めを使って後頭部で二つの輪が隣合うように止められた長い白のツインテール。
星空を写す水面のようにキラめく青い瞳。その中には私の顔が映り込んでいる。
なぜ、私の顔を見てそんな嬉しそうな笑顔を浮かべているのか。
まるで再会を喜ぶ子供のような笑みを、なぜ私に向けるのだろうか。
寝ぼけた脳に疑問が浮かんでは泡のように消える。でもこれだけは間違いない。間違えるなんてありえない。
私の人生に光を当ててくれた。私の背中に手を添えてくれた。
例え今見ているのが一時の夢でも構わない。
電子の海から浮き上がった本物の歌姫でも、嘘か誠か私の部屋にいきなり化けて出た生き霊……のような何かでも構わない。
だって、私の目にはどうしようもないほどに────
「君の心が──君を追い越したんだよ──────」
────月見ヤチヨが写っていた。
UCHIDE.log 【BadEnd No01 大切なメロディは流れてない】が願望希望者の行動により発生しませんでした。世界線の最適化に基づき運命力が追加されました。 記録終了。
酒カス、覚醒(∩∇∩)
怪猫蜜佳さん、祐☆さん、誤字報告ありがとうございます!
楽曲コード
338-5458-1 Remember
221-0518-2 なんでもないや
N01701831 Ex-Otogibanashi
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