私の知ってる超かぐや姫!がなんかおかしいんだけど質問ある?   作:天空ラスク

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よぉ、子兎ども! 前書きに書く酒カスネタに困った作者の代わりにお前らの帝さまが来たぜ!


 いつもの文章量で投稿したらキリが悪かったので今回8000字くらいの長さです。原作を少しでも進めないと酒カスが暴れる暇もなさそうなので今回の酒カスは大人しいです。
(´∩ω∩`)ごめんぬ


月からやってきた宇宙人だけど質問ある?

 今までどんな夢を見てきたか、覚えている人は果たしてどれだけいるだろう。

 

 丘の上に建てられた美しくて美味しいお菓子の家、憧れのヒーロー達と共闘して大怪獣と闘う、可愛い動物達と海の見える草原でピクニック。

 

 夢ならなんでもできるしどんな光景でも見られる。夢という文字の頭に“将来の”とつけるとまた意味が変わってくるけども、夢の中ならどんな事でもできた。

 

 逆に言ってしまえば見たくないものも見てしまう可能性があるということ。例えば……、

 

 

「ウ゛ェ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛! 頭イッタイよおおおおお!」

 

 

「はーいお着替えしようね〜。あと夜だから良い子は静かにしようね〜」

 

 

「だっ゛て゛ぇ゛! 痛いのは痛いんだもん! しょーがないじゃん!」

 

 

「痛いのは元気な証拠だから大丈夫! ヤッチョも保証します! 多分!」

 

 

 後頭部を手で抑えて泣き喚く見知らぬ半裸の美少女と、その背後に陣取り暴れる少女をものともせず着替えさせるいつものダルダル部屋着の推しの生き霊とか。

 

 月光が部屋に差し込み薄明かりが二人を照らす。どちらも絶世のと付けていい顔をしているがやってる事がやってる事だしなんなら二人とも不法侵入者だ。

 

 ……あ、目が合っちゃった。

 ニコリとヤチヨ(の幻覚)が聖母のように微笑む。あっあっ顔が良い……。

 

 彼女は着替えが完了し未だグズる少女の両肩に手を置くと椅子の位置を変えるようにくるりと私の方に回転させた。

 よく見るとサイズがまるであってないけど生き霊と同じ服だ。……あれ、生き霊の服をなんで着れるんだ?

 

 というかこの少女は誰なのだろうか。いや解りたくないけど解る。この部屋は私とあの子しかいなかったんだから。……生き霊は人枠に入れていいのだろうか。ふらっと消えるし猫枠? 失礼か。

 

 微笑を漏らしヤチヨ(らしきなにか)が口を開く。

 

 

「ほら、ママが起きたよ☆」

 

 

「……ママぁ?」

 

 

「え゛」

 

 

 ヤチヨさん? チガウ、ワタシ、ママジャナイ。

 私の顔を見た少女の声にこの三日間で育った母性が顔を出そうとしたが部屋の隅っこに押し込んどいた。

 

 止めてそのまま預かって。もうソイツ交番に届けようとしてたんだから。

 

 内心の訴えをそのまま口に出そうとして気がついた。少女の瞳からボロボロと宝石のような涙が溢れている事に。

 

 それを見て私は思ったことを口に出すことを躊躇った。

 

 だって、あの赤ちゃんと同じ顔をしてたから。キラキラな目も、柔らかそうな頬も、潤い形の良い唇も。全てあの子が大きくなったらこうなるだろうな、と想像した通りのものだったから。

 そんな顔を辛そうに歪めて泣かれたら、心に棘が刺さったような気分になる。

 

 例え人間じゃないとしても、この三日間あの子を家族のように育ててきたのは確かな事実。それは部屋の片隅に置かれたダンボールの中の育児用品の数々が物語っているから。

 

 

『あうぅ……』

 

 

いっぱい泣いて困らされたし、

 

 

『うえ、あう……』

 

 

お腹が空くとすぐグズるし、

 

 

『うう〜〜う! あー!』

 

 

オムツを変える時も落ち着きがなくて大変だったよ。でも、

 

 

『ふひひぃ』

 

 

 それ以上によく笑うあの子が可愛かった。子供が産まれると子供中心の生活になるなんて聞いた事があるけど、その通りだった。

 

 そんなあの子に、泣いているあの子に直接私の口から出ていけなんて、とても言えなかった。

 そして────、

 

 

「ママぁ! 助けてよぉ〜〜!」

 

 

「ちょっ!? グエッ!?」

 

 

 少女がとんでもないスピードで私にダイブしてきた。十代前半頃だろうか。小さな少女の体でも飛び込んでこられたら普通に重く、筋トレをしてこなかった花の女子高生に受け止められる訳もなくそのまま後ろに押し倒された。

 

 

「ママぁ! 助けてぇ! 頭痛いの何とかしてぇ!」

 

 

「あーわかったわかった! 痛いの痛いの〜飛んでけ〜〜! ほら、もう痛くない」

 

 

 腹の上で涙を零す少女の頭を優しく撫でる。見知らぬ少女に急に飛び込まれたのに不思議と冷静になれた。最近ちゃんと食べて栄養が脳に回ってるからだろうか?

 

 チラと視線を逸らすとヤチヨ(かも)は『ヨシ!』とほろ酔〇の缶を傾けながら親指を立てていた。もう呑んでていいんでこの状況何とかしてください……。

 

 頭を撫でられた少女は数秒の間キョトンとすると、大輪の花のように笑った。アンタも顔がいいな……。

 

 

「すんごい! もう痛くないよママ! プロ痛み取り士になれるよ!」

 

 

 少女が感動と尊敬が混ざった目で喜んだ。キラキラな瞳から溢れた涙が雨の残りカスのように私の服の上に落ちた。

 

 無いから。そんな資格。てかママじゃないしどいてくれ重たい。

 そんな事を思った時だった。

 

 グー、と空気の読めない腹の虫が少女から聞こえた。何が起きたかよく分かっていなそうな少女と目が合う。唇が小さく空いている。何も理解していないモルモットのように。

 

 ぐ〜、と遅れて私の腹の虫も鳴った。そういえば夜ご飯まだ食べてなかったな。アンタも急に大きくなったからエネルギー使ったんでしょ。

 

 グゴゴゴゴ……、と誰かの腹の虫も鳴いている。誰だこんな轟音鳴らしてるの。なんで顔赤らめてるんですかヤチヨ()さん。

 

 

「……助けてぇ〜〜?」

 

 

「ッ〜〜!」

 

 

 あざとい。さすが宇宙人あざとい。なんだその媚び媚びの顔は。コテンと首を傾げた少女は私が何とかしてくれると信じて一切疑っていないことが伺えた。

 あと少女の頭の端から生き霊が胸を抑えて倒れるのが見えた。

 

 私に出来た唯一の抵抗は、私をベッド代わりにする少女を横に転がすことだけだった。……冷蔵庫に何かあげられる惣菜あったかな。

 

 後ろからペタペタと足音がする。そういえば少女は裸足だったな。

 視界の端に何故かドヤドヤした顔の推しが見えた。振り向いたらさっと空き缶で顔を隠される。

 

 まさかそれで誤魔化せると思っているのか?

 

 隣に立つ少女も同じ方向を見るとスッと消えてしまい誰もいなかったかのように静かになった。なぜ少女には顔を見せないんだ?

 やはり幻覚か。きっと寝不足だなうん。さっさと食べて寝よう。

 

 冷蔵庫の扉を開けるとひんやりした空気が私に向かって流れ込んでくる。この三日間で結構食べたからあんまり入ってない。

 入っているのはコーラが三本と2Lの麦茶が一本。それとBAMBOOcafeから持って帰った賄いのタコライス。後は……ん?

 

 

「なんだこれ、今朝こんなの無かったよな」

 

 

 それはアルミホイルで作られたクロッシュだ。その下には白い皿の縁が覗いている。皿の上に何が盛り付けられているのかクロッシュを開けないと分からないようになっている。

 

 よく冷えた皿を取り出しちゃぶ台の上に置く。少女が不思議そうに覗いてきたけど一旦意識の隅に置いておく。多分、先程のヤチヨ(の生き霊)の謎のドヤりはこれが原因だろう。

 

 意を決してクロッシュを持ち上げた。

 

 

「「わっ!」」

 

 

 皿の上にはオムライスが乗っていた。黄金に染まる卵、それが楕円形に整えられケチャップで“ガンバレ♡”と書いてある。

 

 ……えっ、推しの手作りオムライス? 楽園はここにあったのか? マジで? 本当にいいんですかヤチヨさん食べますよ食べちゃいますよというかお金払わせてください今なら赤スパもしますからお願いします貢がせてください。

 

 オムライスを前に興奮が抑えきれずに声が漏れる。それは向かい側も同様で……向かい側?

 

 顔をあげるとちゃぶ台の対面に少女が座っていた。瞳が未知を前にしてワクワクに染められた輝きをしている。

 

 そういえばコイツ何食べるんだ?

 今の見た目はどう見ても子供だ。なら子供が好きそうなものをやるべきだろう。例えばハンバーグとかカレーとかオムライスとか……オムライス?

 

 お皿を少女の顔の高さまで持ち上げ左右に動かすと少女の顔も着いてきた。時間が経てば経つほど瞳のキラキラが増していく。まるで宝物を発見した子供のようだ。……た、食べずらい。

 

 

「…………………………………………ほら、食べていいよ」

 

 

「えっ! こんなキレイなのくれるの! ありがとう!」

 

 

 負けたよ……その目には勝てない。

 花火のような笑顔が少女の顔で炸裂する。せめて私の分まで味わえ……食べたかったなぁぁぁ。

 

 レンジで温め終わったタコライスとオムライスをちゃぶ台に並べる。午前二時の遅すぎる夕食だ。

 

 

「頂きます」

 

 

「……? いただきます?」

 

 

 タコライスは今日もいい感じの出来だった。何より無料なのが最高のスパイスだ。

 少女は左手でスプーンを握りしめると何故か私を見つめている。しばらく見つめるとたどたどしくオムライスに突き刺しゆらゆらと安定感のない手つきで口に運んだ。食事というよりも私が食べているのを鏡写しに真似したような動きだ。

 

 

「ほあああああああっ!? すんごい! すんごいよこれ! なにこれなにこれぇ!?」

 

 

 瞳に流星群が流れ、サクサクとオムライスが口に運ばれていく。まるで初めて食事をしたかのように。

 そんなに美味しかったのね、たっぷり堪能しなさいね、私の分までね……。

 

 泣きそうな心を隠して手癖でタブレットをスリープから目覚めさせる。

 

 

『最近ヤチヨがだらしない格好でうろついてる所を見たって人が多いんだよね〜。みんなお疲れさんなのかな? ヤッチョはいつもビシッと決まった可愛い服を着てるから安心してね!』

 

 

 どうやらライブ配信中だったようだ。淀みないヤチヨの声を聞くと日常に戻ってきた気がする。ガッついてる少女がいたとしても。もう半分ないんだけど。

 

 

「ねえねえ! コレなんていうの!? この黄色いのは?  中の赤いつぶつぶは? あ、あとこのもきゅもきゅしたやつ!」

 

 

 少女が矢継ぎ早に質問をぶつけてきた。質問多いな。

 口の中のタコライスを飲み込んで次々と指刺される物の名前を答える。

 

 

「それはオムライス。黄色いのが卵でつぶつぶがお米で赤いのはケチャップ。んでそれは鶏肉」

 

 

 一つ一つ丁寧に教えればコイツも満足するだろ。そう思ったけど瞳のキラキラが一向に消える気配がない。満点の星空を見上げているような感じだ。

 

 

「オムライス! 大好き! これどうやったらもっと食べれるの!?」

 

 

「そりゃあ買ってくるか、自分で料理するかじゃない?」

 

 

 そう言うと少女は更に瞳を輝かせた。一回も落ち着かないなこの人。電柱から産まれたけど人かコイツ?

 少女は口の端から透明な雫をてーっと垂らし、

 

 

「料理! 面白(おんもしろ)そおおおおおお!」

 

 

 元気だなコイツ。瞳がギンギラギンに輝いてるよ。

 さて、一旦ヤチヨの声を聞いて落ち着いたし、そろそろコイツについて尋ねようか。

 

 

「あのさ、アンタはどこから来たの?」

 

 

 そう言って話を切り出した。

 少女は何も考えていなそうに首を傾げ────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・ギルティ

 

 ・有罪

 

 ・《¥200・username・username・フランスの鈍器》死刑⸜(˙∇˙)⸝

 

 ・《¥2000・username・sandog@新米銀行員》惜しくもない人を無くした

 

 

「どうして〜、私はみんなのために動いたのに〜」

 

 

 ちゃぶ台に置かれたカメラがハンカチで顔を抑え泣いている配信主を捉える。ハンカチはカッサカサに乾いたままだ。嘘泣き下手かよ。

 

 

「垢BANが嫌だったから私の服を着せただけでなんで怒られるの……んくんく」

 

 

 裁判が急に始まった理由がこれである。どうして自分の服をロリに着せたら怒られるのか。それが分からない。

 よく冷やされた缶が手のひらの熱を奪っていくがそれを気にせず喉に流し込む。かーっ! ひと仕事終えたあとのレモンチューハイは美味えぜ!

 

 なお視聴者には伝えてないが、さすがに下着はサイズが合わなかったので着せてない。(つまり今のロリかぐやの服の下は……ゲフンゲフン)。

 

 

 ・ロリにダルTショーパン着せるやつがイルカ?

 

 ・そこはメイド服だろ?

 

 ・スク水だろ?

 

 ・チーパオだろ?

 

 ・ハ?スモックだろ常識的に

 

 ・やるか?ゴスロリ派閥を敵に回して生きて帰れると思うなよ?

 

 ・でもダルTの首元から覗く鎖骨って江戸いよね

 

 ・それだとほぼヤッチョだとはいえ酒カスも江戸くなるぞ

 

 ・すまん。やっぱ無しで

 

 

 コメント欄を紳士の群れが徘徊している。迷走しだした裁判から抜け出し眼前の光景にカメラを向けた。このレモンの酸味が唐揚げを美味くするんだよなぁ。

 

 

「あのさ、アンタはどこからきたの?」

 

 

 彩葉が少女、いやかぐやに問いかける。少し展開を変えてしまったけど問題なく復帰したようだ。かぐやがママと呼び出した時はヤバいと思ったけど何とかなってよかった!

 

 

「ん〜〜、んっ」

 

 

 なんでそんなこと聞くの? とばかりにかぐやは指差した。ベランダに続く扉の網戸越しに月が見ていた。

 ですよね〜、と頬を引き攣らせた彩葉が質問を続ける。

 

 

「で? 宇宙人は何しに来たの? 侵略?」

 

 

「ん〜とね、なんかあんま覚えてないんだけど〜、とにかく毎日同じ仕事の繰り返しでー、楽しい所に逃げたーい! って逃げ出して来た……気がする」

 

 

「逃げるな。責任から逃げるな」

 

 

 何も考えて無さそうな様子のかぐやにツッコミが入る。そして酒カスの口に酒が入る。ガールミーツガールの始まりらしいたどたどしい話し合い。ここから仲良くなっていく過程を想像してそれをツマミにします! 美味え!

 

 

 ・これは酒寄炭治郎ですわ

 

 ・《¥3500・username・おじさん(概念)》仕事はちゃんと終わらせてね?じゃないと帰れないんだよ

 

 ・なんか実感こもってるな上のコメント

 

 

「私は仕事はキチンと終わらせてから呑んでるからなんの問題もないもんね〜」

 

 

 唐揚げをつまみながら呟く。今更だが海琴の座っているポジションは彩葉とかぐやが対面に座り、彩葉の左手側にヤチヨのライブ配信を流しているタブレット。その対面に座っている状況だ。

 この配信者顔良いなあ……私に似て。HAHAHAHA! 唐揚げの油をレモンチューハイで流すのがサイコーなんじゃあ!

 

 

「う゛え〜、だってつまんないんだもん! やりたいことだけやって、ジユーに生きる! それが私の生きる道!」

 

 

「そんなことやってると何かあった時に困るのはアンタだよ。アンタが抜けた分の仕事をやってる人もいるんだから。それよりも……」

 

 

 ヤダヤダと駄々をこねるかぐやを無視して彩葉が話を切り替える。彼女の操作によりタブレットの画面が絵本の【竹取物語】を映し出した。

 あっその配信見てたのに……。

 

 

「これに心当たりは?」

 

 

「んー? なにほれ?」

 

 

 モゴモゴと何かを食べながらかぐやが小首を傾げる。視線がこっちを向いたのでサッと缶を現実に送る。視線が外れた瞬間に戻して口に含む。このスリルたまんねえな。

 

 

 ・ん?何食ってんだ?

 

 ・言うな言うな。面白いから

 

 ・何が、ああそういう事かwww

 

 ・酒カスに悲劇がwww

 

 

 コメント欄は何を言ってるんだろうか。唐揚げをつまみながら小首を傾げる。……なんか唐揚げ減ってるような気がする。チューハイ美味。

 

 彩葉によるざっくりとした竹取物語の読み聞かせが始まったが、当の本人は理解して無さそうな様子。

 

 

「けっこん?」

 

 

 その意味も分からずに彩葉を見つめながら口に出した。

 

 

 ・《¥20000・username・いーある算数》

 

 ・《¥8000・username・おじさん(概念)》この子はウチの子にしよう

 

 ・《¥4000・username・フランスの鈍器》グハッ( ゚∀゚):∵

 

 ・《¥2000・username・野菜伝説》カワイイ!と褒めてやる

 

 ・《¥777・username・半馬鹿》この無垢さプライスレス

 

 ・《¥300・username・MMD@ヤチヨ推し》私はこの子のお姉ちゃんだったかもしれません

 

 

「視聴者ー? なんで虹スパができてるのかなー? 私に一回もやったことないよね?」

 

 

 コメント欄で紳士の群れがあまりのピュアさに討ち滅ぼされていく。でもさすがにこの天然のピュアと酒カスは勝負にならない。というよりジャンルがパフェとミトコンドリアくらい違う。

 

 

「ほんでー? ()(ははひ)()(ふづ)きはどうなるの(ひはぼーはうほ)?」

 

 

 コメントに反応してたら話が進んでた。両頬を膨らませ口の中のものを咀嚼するかぐやが彩葉に竹取物語の話の続きを促していた。

 そしてお皿の上の唐揚げが消えていた。

 ん? どこ行っちゃったのかな? 私のおツマミ。

 

 

「帝が姫と結婚しようとして姫が断る。そして姫が月から迎えが来るって翁に伝える。翁は帝にお願いして姫を守ってもらうけど姫は迎えの人に連れていかれる。それで姫は羽衣を着せられて地球の事を忘れる。で帰る」

 

 

「お〜〜……ん? 続きは?」

 

 

 彩葉がタブレットの画面をスワイプしながら簡潔に読み聞かせる。かぐやはほうほうと頷きながら話を聞いていたが物語が終わった事に気付かずタブレットを更にスワイプしようと触れる。しかし物語はもう既に終わっているため次のページが捲られることは無かった。

 

 

「おしまい。終わり。エンディング。めでたしめでたし」

 

 

「え゛〜!? 何それ月に帰って終わり〜!? 超バッドエンド〜! こんなんかぐや姫絶対姫様不幸じゃん! しかもなんか良い話風になってるし! そんなの許せないよおおお!」

 

 

 タコライスを食べ終わり流しに皿を持っていった彩葉が背中越しに応える。納得できないかぐやはちゃぶ台を叩き飛びながら駄々を捏ねる。

 

 

「これは、こういうお話なの」

 

 

「ヤダヤダー! ハッピーなのがいーいー! ハッピーエンドー! らぁぁぁぁぁぁららららーら♪」

 

 

 歯磨きをしながら彩葉が振り返り流し台に背を預ける。その目には床に転がり駄々を捏ね何故か歌う少女を見下ろしていた。

 

 

 ・ここの運命を受け入れる彩葉と拒むかぐやが後半互いの影響で意見が変わるの最高なんだよな

 

 ・わかるマーン

 

 ・かぐやの駄々こね歌こんなだっけ?ニコニコの曲だったよね?

 

 

「これは3DS版のニコ動の曲だね〜」

 

 

 分かるか! とコメント欄が溢れていく。二人の少女をカメラは抑えているが肝心の配信主は唐揚げを取られたのにショックを受けることなく何故か少し離れた玄関のコンクリート床の上にしゃがみこんでいた。

 

 

「どうしようもないじゃん。暴れたって歌ったって、決まってる事が変わるわけじゃないし」

 

 

 彩葉は起き上がった少女の顔を見つめ突きつけるように言い放った。

 

 

「受け入れて覚悟するしか、ない」

 

 

 その言葉を聴いたかぐやの表情が変わる。瞳が一回り大きく開き、比例するように瞳孔も広がった。その目は彩葉の顔、ただ一点を見つめていた。

 

 

 ・あーなーただーけ見つーめーてるー。出会った日かーらー今ーでもずっとー

 

 ・目と目が逢うー瞬間好ーきだとー気付ーいたー

 

 ・なんかここの曲選平成だな

 

 ・昔ゆっくり実況で良く聞いたな

 

 ・酒カス?お前なに持ち込んでんだ酒カス?おーい

 

 

 二秒、三秒、四秒。沈黙が二人を包み込む。そんなに大したことを言ったつもりのない彩葉が気まずそうな表情をしてきた。

 ジリジリと続く沈黙に身が焼かれそうだ。

 

 

「決めた!」

 

 

 カシュッ! と跳ねるような音とともに少女が勢いよく立ち上がった。

 

 

「自分でハッピーエンドにする! そんで、ハッピーエンドまで彩葉も連れてく!」

 

 

 仮面のヒーローのような、プリティでキュアキュアなヒロインのような大袈裟なポーズを決めた少女が彩葉に向けて指を突き出す。その指は二本、人差し指と中指を離して立て残りの指を握りしめたVサイン。

 

 

「一緒に!」

 

 

「ハッピーエンドいらない。普通のエンドでいいのでお引き取りください」

 

 

 キリリと顔を引き締め放った決めゼリフも、いきなり現れて苦学生の生活を脅かした宇宙人が言うとそんなに響かなかった。悲しいね。うんうん、やっぱり大きい方が食べ応えありそうだよね☆

 

 

「ウソウソウソウソ! 一緒に見ましょうよハッピーエンド、ね?」

 

 

「うわこっち来ないで宇宙人。表情が気持ち悪い」

 

 

 膝でスライディングするように滑り込み彩葉にかぐやが縋り付く。思いもよらない対応をされて焦っているのだろう。引きつった笑顔のまま服を掴みジリジリと顔に迫るようにゆっくりと立ち上がっていく。

 パチパチと弾けるような音がより緊張感を演出している。

 

 

「ていうか、これなんの匂い?」

 

 

「わかんない!」

 

 

 ふわり、と何かが焼けるような美味しそうな匂いが二人の鼻をくすぐった。

 

 

 ・いい話だったのに……

 

 ・背景にしか目が行かなかったぞこの酒カスが

 

 ・舞うな舞うなやかましい

 

 ・行け!かぐや!そいつから取れ!

 

 ・カシュッ!じゃねえんだよタイミング合わせてビール開けるなバカタレ

 

 

 流し台付近にいる二人の少女には見えないが、ちゃぶ台に置かれたカメラはハッキリと移していた。

 

 

 少女のハッピーエンド宣言、その瞬間にもビール片手にカセットコンロで大きなアタリメを炙る酒カスの姿を

 

 

 なお当然のようにメモリは3になっているため2人が見てもフライングアタリメがカセットコンロの上をひらひら揺れているだけである。小賢しいぞコイツ。

 

 

「あ! あのひらひらしたオムライスも美味しそう!」

 

 

「あれはアタリメだから。食べたら歯磨きちゃんとしなさいよ。それじゃ私は寝るから、お休み……」

 

 

 当然、そんな怪奇現象が見つからないはずがなかった。

 

 

「あっそんな止めて後生ですから取らないでああああああああ……、とっときのおツマミが……」

 

 

 ひらひらと揺らしていたアタリメを握りしめて持っているはずもなくあっさりと取られた酒カスはコンクリートの上で崩れ落ちた。コンクリって冷たいね……冷酒みたい。

 

 見て! 美少女が美味しそうに瞳を輝かせてアタリメをかじってるよ! 可愛いね!

 

 美少女に最後のおツマミを取られて酒カスは晩酌を止めてしまいました。でも酒カスのせいです。

 あ〜あ。




酒カスはやっぱりおツマミ取られて落ち込んでるのが似合うと思うんだ


楽曲コード
022-3008-9 あなただけ見つめてる
143-9133-3 目が逢う瞬間
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