私の知ってる超かぐや姫!がなんかおかしいんだけど質問ある?   作:天空ラスク

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とうとう劇場に足を運びました……! ウェルカムアナウンスのかぐや・イロPのフル良きかな……!
公式が上げてないかぐやのお願い!
やけくそイロPのリテイク挨拶!
豪快にポップコーン貪るかぐや!
2人仲良く映画鑑賞!

あとライブとMVが良い! 何回観ても泣けるぞこの作品なんだこれ電子ドラッグか!?


美少女と宇宙人の遭遇について質問ある?

 超ハッキングを終えてしばらくパンケーキタイムに突入した海琴は完全に浮かれていた。

 

「へへぇへぇへ〜、もうこのミコっちゃんを止められる奴はいないぜベイベ〜平家〜。うめ……うめ……」

 

 有頂天ここに極まれり。一仕事こなした満足感とパンケーキの美味しさの幸せダブルパンチにノックアウトされ表情筋が緩みに緩み溶け落ちそうな勢いだった。

 

 これにリキュール掛けたら美味しくなるかなー、なんてぼんやりとしているとカランカラン、とドアチャイムの澄んだ音色が鳴った。

 

「いらっしゃいませ。何名でご利用ですか?」

 

「三人で〜す」

 

「あの〜、私ホントに余裕ないんですが……」

 

「まあまあ良いから良いから。ほら、あの辺空いてるよ」

 

 先の自分の時と同じ店員が三人の来客に対応している。どこかで聞き覚えのある女の子の声が美琴の耳を通り過ぎて記憶をくすぐった。どこにでもいる女子高生の会話のはず、なのにそれが妙に気になった。

 

 だけどそんなことよりパンケーキ食べたい。パンケーキうめ……うめ……うめしば……。

 

 ・ダメだこいつ、酒カスの本文を忘れてる。

 

 ・酒カス?お前忘れてないか酒カス?

 

 ・幸せそうに食ってないで映せあの三人を!もう来てるぞ!

 

 ・返事がない、ただの酒カスのようだ

 

「ん〜〜? あーそだそだ。もう本編始まる頃だね〜」

 

 視界の端に流れたコメントを読み終えるとターゲットの三人がいつの間にか来店していたことを知る。

 最後の一枚を一口で頬張ると美味しさ爆弾で緩みきった頬を引き締める。完璧美少女(二十歳以上)のキメ顔をご照覧あれ。

 

 声がした方を向くとそこには美少女二人にエイリアンのように腕を引かれた超美少女こと彩葉がいた。

 

 ふんすっ、と一度気合いを込めると私物を部屋に戻す。メモリを2に切り替え三人に向かって堂々たる歩みを進める。隠れる必要がないのがとても便利。打出バイザー、お値段168万円(税抜)です。

 

「じゃあ私は──」

 

「すみません。この三段パンケーキと、チョコパンケーキのクリームマウンテントッピングを一つずつお願いします」

 

 店員が三人の座るテーブルに向かい注文を伺う。彩葉は先まで眺めていたメニューのいちばん安い品を注文しようとしたが、切れ長の目をした少女に阻まれた。

 

 ちょっ!? と注文に割り込まれたことに驚きを隠さず自分の分をキャンセルしようとした時、注意するように目の前に突き出された指を見て静止した。

 

「いいから。頑張り屋さんもたまにはお休みの時間があっても良いんじゃない?」

 

「そうそう。もっと私たちを頼れ〜」

 

 そう言って注文は受け取られ店員は厨房へ引っ込んで行った。自分が払うと告げるも注文した当人──(アヤ)(ツムギ・)芦花(ロカ)によって話をなあなあにされ切り上げられてしまう。

 

 腰を浮かせた彩葉だったが心配してくれている友達に返す言葉を無くし困ったように席に着いた。

 

「彩葉の操縦上手いね〜芦花ちゃん」

 

 彩葉の隣に視線と同じ高さでしゃがみこみ、からかうようにニヤニヤと笑みを浮かべる。

 彩葉が妙にソワソワしているがアレは留守番しているかぐやのことを考えているんだろう。 そんな推しも可愛いなーと口角が上がっていった。気付け彩葉、隣に推しモドキがいるぞ。

 

「アレが大人しくしているはずないない! 彩葉ったらおドジさんなんだからな〜もう〜」

 

 お前モナー。

 

 そうこうしているうちに美少女御一行のパンケーキが届いた。

 眼を輝かせた彩葉だったが何故かすぐに表情が曇ってしまう。もしや支払いのことを考えているのか。育児用品と惣菜のお金を代わりに出してはいるが貧乏なのは変わらないのでそうなるのも無理は無い。

 

「ねえねえ、私の分は〜?」

 

 さっき食べた分際でまだ食べようとする配信者は置いておくとしよう。この酒カスは構うと調子に乗りまくると視聴者は学んでいるから。

 

「ほーら、そんな顔しないで。可愛い顔が台無しだぞ? うりうり〜」

 

「そうそう。美味しいパンケーキに失礼だよ〜?」

 

 芦花が彩葉の頬を指で円を描くように突つく。その隣で真実──諌山(イサヤマ・)真実(マミ)がスマホを構えシャッター音を鳴らした。さすがはグルメ系配信者。私も美味しいお酒のレビューなら付き合うよ! とかほざいてる配信者もいるのに素晴らしい心構えである。

 

「彩葉ノートで赤点回避記念〜」

 

「お礼の品で〜す。「ご査収くださ〜い!」」

 

「芦花、真実……ありがとう」

 

 彩葉は二人の声色と楽しそうな態度から奢りだということを察した事で瞬く間に眼に生気を取り戻した。感謝の言葉と共にフォークを手に取る。

 

「最近特に疲れてそうだから、甘いもの食べてゆっくりしな〜」

 

「幻覚が見えてるのは流石にどうかと思いますな〜」

 

「う、うん……あははは。はぁ……」

 

 頬杖を着いた芦花は瞳に心配を宿していた。続く真実も胸の前で腕を組み深々と頷いた。

 彩葉は何か言いたそうにしていたが乾いた笑いを漏らすので精一杯だった。

 

 微かなドアチャイムの音色に海琴が視線を入口に向ける。そこにはかぐやが入口のドアにハマったガラスに顔をくっつけていた。

 

 興味津々にコチラを覗き込む様は私、気になります! とガラスを突き破りそうな勢いだ。美少女は顔が潰れても美少女である。酒カスは酔い潰れるので美少女ではない。

 

「それにしても彩葉、幻覚まで見えちゃってるなんてね〜。う〜ん、これはもう一回子守唄歌って休んでもらった方がいいのかな?」

 

 机に肘を付けると自らの頬を指で着き、小首を傾げる諸悪の根源系配信者の姿をカメラの奥の視聴者達は何回もやったチベスナ顔で見つめていた。

 

 ・お前お前お前お前

 

 ・お前の向こうでの晩酌回数を数えろ

 

 ・もうお前黙れよ。いや黙るな歌え

 

「ひぃん、心配してるのに怒られたぁ」

 

 悲しそうにタレ目を下げ缶を口に運ぼうとしてメモリが2だから持って来れないことに気がつきガクりと項垂れた。

 

 残当。

 

 愛想笑いから戻ってきた彩葉がフォークをパンケーキの柔肌に着き刺そうと先端を向ける。ふわふわパンケーキの甘さはきっと優しく彼女を包みこんでくれるだろう。糖分は女子に平等に癒しを与えてくれるのだ。

 

「いただきま、」

 

「────シャッ!!」

 

 それがたとえ宇宙人でも。

 彩葉のフォークがパンケーキの柔肌を突き刺す前に突如対面から三叉槍が襲来した。

 あっという間に三階建てが二回に減築され、攫われたパンケーキの行方を思わず三人(+α)は目で追った。

 

「うんんまああああはははぁ!!!!」 

 

 そこにはパンケーキを一口で頬張り両目に星を輝かせる美少女がいた。そう、彩葉の後をこっそりと後をつけてきたかぐやが刹那の間にパンケーキを食べてしまった。

 配信者は全て見た上で止めなかった。推しより撮れ高と原作イベントを取った酒カスの鑑、誉れ高い。

 

 突然の宇宙人襲来によるショックで彫りの深い彫刻のような顔で固まってしまった彩葉に更に近付く。もう肩がついてる距離だが当たり判定が無いことを良いことに遠慮なくスリスリと肩を擦り付けている。

 

「えっへへ〜♡ 彩葉すっごく面白い顔してんね〜」

 

 酒カスのマーキングとか誰が得するんだ。だが彩葉とヤチヨ(?)のイチャイチャは求める者が多いので画面の前の視聴者はチベスナ顔を絵面の尊さにニヤニヤと歪ませながらスクショボタンを連射した。

 だってよ、シャンカス……顔が! 推しと同じなんだ!

 

「みんなが見たいのはこの顔でしょ〜? ほらほら〜私の推しのご尊顔ですのよ〜」

 

 彩葉の顔にズームすると、その血の運命に組み込まれそうな顔をしていた。著作権法は流石に世界を越えられなかった。

 からかい混じりに笑う海琴がメモリを3に上げ彩葉の両頬に手を添える。

 ふよふよとした女子特有の柔らかい頬が──無い!

 あまりの頬の薄さに思わずショックを受け顔がモノクロの劇画調になった。

 愉快な顔面してんなこいつら。

 

「可愛い〜、彩葉の服着てる〜」

 

「パンケーキ好き? こっちもどーぞ」

 

「パンケーキ?? これがぁ? 彩葉のと全然違〜う」

 

 宇宙人襲来と推しのあまりの頬の薄さと別々の理由で固まった二人を置いて三人の会話が弾む。差し出された芦花のパンケーキをこれまた一口で頬張ったかぐやが違う味に目を煌めかせる。美少女が何人集まっても優しい世界、超かぐや姫!

 

「へえ〜、……彩葉のパンケーキ美味しかった?」

 

「全っ然! パッサパサで口ん中ん水分ぜ〜んぶ持ってかれたんだもん!」

 

「そ、そうなんだ。ごめんね?」

 

「彩葉は何を食べさせているのか〜」

 

「いや、これは違くてっ!」

 

 どこか不穏な空気を発した芦花だったが、率直な感想を言ったかぐやに微妙そうな表情で謝罪した。

 粉と水を使った画期的な料理の製作者である彩葉氏はようやく硬直が解け会話に混ざりだす。

 海琴はまだ固まってる。配信者失格、人間ギリ合格。

 

「彩葉とどんな関係なのかなー?」

 

「友達でママ!」

 

「「はい?」」

 

 芦花が放った至って普通の質問。しかしこの謎の美少女は普通の答えと常識外れの答えをかけ算して提出してきた。二人の目が丸くなるとありえない回答を理解するために硬直した。

 

「違っ、その子のお母さんが仕事で忙しいからしばらく預かって欲しいって頼まれたの! その、従姉妹だから!」

 

「ハッ!? 彩葉のほっぺたがこんなに薄いわけが無い!」

 

 ようやく現世に酒カス(今回1回も呑んでない)が帰還した時には場の空気はバリバリ修羅場りかけていた。

 

 この勘違いだけは解かないと今後の学生生活に致命傷を負ってしまう。彩葉は必死の誤魔化しで何とか難を逃れようとした。

 そもそもかぐやの見た目年齢的に彩葉が出産したとは思われない事に気がついてない彼女である。脳に糖分が足りない!

 

「じゃあじゃあ、どこから来たの〜?」

 

「月から来たの!」

 

 何とかこの空気を変えるために真実がサーブを打ち上げたが宇宙人の出自には敵わず、鉄壁の非常識に阻まれ届かなかった。再び気まずい間がカフェの一角に流れ出した。

 

「つ〜つつ、築地! 築地からだよ、ね!」

 

「へ〜、美味しいお寿司屋さん教えて〜」

 

 スペース爆弾レシーブにも彩葉は咄嗟に反応し難を逃れる。宇宙人バレだけは論外、もっとも問題にしてはいけない話題だからだ。生き霊も同ジャンルだと思うが?

 

 しかし質問のラリーは止まりかけながらもまだ終わらなかった。酒カスの晩酌と同じだね。

 

「可愛いね、お名前は?」

 

「えーっと──」

 

 ギリギリで持ち堪えていた彩葉の表情筋が強く引きつった。関係性や出身はこの宇宙人もよく理解していないだろうから適当に言えた。だが一個体の存在を現す名前だけは適当にする訳にはいかなかった。当人が違うと言ってしまえば今までの誤魔化しが全て怪しく見られるからだ。

 

 正直もうだいぶ怪しいが二人とも友達の隠したい何かを察して黙っているだけである。時すでにお寿司。

 

 今まであったことから彼女に一番似合う名前を考えるために止まりかけの脳細胞が動き始める。たった三日とはいえオムツも変えたしミルクもあげた。僅かながら湧いた母心のようなものが適当な名前をつけることを許さなかった。

 そして、

 

「──か、かぐや」

 

「かぐやちゃんか〜、いい名前〜」

 

 背中を冷や汗が濡らす中、彩葉はそう言い切った。

 こうして月から来た少女の名前が決まった。

 真実の顔を見て誤魔化せたことに少し息をつく……間がある訳もなく、本命に向き直った。

 

「ね、かぐや?」

 

 頼むから察してくれ。懇願する瞳が少女に向けられた。

 

「かぐや? かぐや……かぐやか〜〜〜! えへへへへへ」

 

 かぐやと呼ばれた少女はよく分かりませんと言いたげな顔で小首を傾げていた。少しして自分が何を貰ったのか理解したのか頼を両手で押さえ、心から嬉しそうに顔を緩めその場でクルリンと回った。可愛すぎます。グリフィンドールに10点。

 

 ただ名前を付けただけなのに、と彩葉は顔を疑問に染めていた。

 

「大切な人から貰った初めてのプレゼント、大事にするんだよ」

 

 姉のような目を向け海琴は芦花の皿に残った生クリームを口に運んだ。フライング生クリーム怪事件が発生したものの他の四人はそれどころじゃなかったのでバレずにすんだ。

 お前も宇宙人と同じ血を引いてるのか?

 

 彩葉はすぐ正気を取り戻すとこの状況から一刻も早く抜け出さんとするために二階建パンケーキを二口で解体した。幸せを噛み締める余裕もなく涙を心の中で流しながら水で強引に流し込んだ。

 

「ごめん! 埋め合わせは後でするからー!」

 

「え、ちょ、おぉぉぉぉぉ!?」

 

 かぐやの手を掴むと彼女が宙に浮く程の速度のコミカルな走り方で外へ飛び出していく。その場には唖然とする二人にカメラを向ける不可視の不審者が残された。

 

「それじゃ先回りしよっか。育児も出来なかったし、せめて洗い物くらいはしてあげなきゃね〜」

 

 ・みんな可愛かったな

 

 ・酒カスマーキングのところ、コラボライブのシーン思い出して泣きそうになったわ。酒カスなのに

 

 ・《¥3000・username・レッツゴー隣の晩御飯》今回のカフェ代

 

 そうして財布を取り出しレジカウンターに注文分の金額をピッタリ置くと意気揚々と扉を開け、ドアチャイムを背に彩葉家へ向かったのだった。

 

 なお、姿が消えたまま会計し店内を後にしたので翌日からやけに美人な幽霊が出るカフェの噂が広まることになるのである。




幻燈河貴さん誤字報告ありがとうございます!
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