風が吹いていた。
高い建物の屋上。
街は広がっている。
しかし灯りは少なかった。
夜なのに、街は暗い。
少女は屋上の縁に座っていた。
足をぶらぶらさせている。
隣にはりすくまる。
少女は言う。
「少ないですね」
りすくまるは答える。
「はい」
少女は街を見渡す。
遠くの道路は静かだ。
人の姿もほとんどない。
「魔物」
少女は聞く。
「最近どうですか」
りすくまるは答える。
「発生頻度」
「減少」
少女は頷く。
「そうですよね」
少し間が空く。
「最近あまり戦ってない」
りすくまるは言う。
「はい」
少女は言う。
「良いことです」
りすくまるは答える。
「はい」
風が強くなる。
屋上の看板が揺れる。
少女は空を見る。
星が見えていた。
「りすくまる」
「はい」
「魔法少女」
少女は少し間を置く。
「今何人ですか」
りすくまるは答える。
「現在活動個体」
「三」
少女は静かになる。
「……三人」
「はい」
少女は言う。
「この前まで十人くらいいましたよね」
りすくまるは答える。
「はい」
少女は聞く。
「戦闘ですか」
りすくまるは答える。
「否」
少女は言う。
「消去」
「はい」
少女は少し笑う。
「やっぱり」
沈黙が落ちる。
風だけが吹いている。
少女は言う。
「残り三人」
「はい」
少女は聞く。
「誰ですか」
りすくまるは答える。
「個体番号」
「一二四」
「三〇一」
そして。
少し間を置く。
「個体番号」
「〇〇一」
少女は笑う。
「私ですね」
「はい」
少女は空を見る。
星が多い。
「三人か」
りすくまるは言う。
「はい」
少女は聞く。
「もうすぐ終わりますか」
りすくまるは答える。
「可能性」
「高い」
少女は頷く。
「そうですね」
しばらく沈黙。
少女は言う。
「りすくまる」
「はい」
「世界機構」
「はい」
少女は聞く。
「最近変じゃないですか」
りすくまるは少し黙る。
そして答える。
「確認」
少女は振り向く。
「やっぱり」
りすくまるは言う。
「世界機構」
「機能低下」
少女は聞く。
「理由は?」
りすくまるは答える。
「不明」
少女は小さく笑う。
「それは珍しい」
りすくまるは言う。
「はい」
少女は聞く。
「壊れるんですか」
りすくまるは答える。
「可能性」
「存在」
少女は空を見る。
長い時間が流れている。
「壊れたら」
少女は言う。
「どうなります?」
りすくまるは答える。
「魔法少女制度」
「終了」
少女は頷く。
「そうですよね」
少し間が空く。
少女は言う。
「魔物は?」
りすくまるは答える。
「不明」
少女は笑う。
「またそれ」
りすくまるは言う。
「はい」
そのとき。
りすくまるの目が光る。
少女は聞く。
「魔物?」
りすくまるは答える。
「否」
少女は言う。
「じゃあ?」
りすくまるは言う。
「通信」
少女は静かになる。
「誰から」
りすくまるは答える。
「魔法少女個体」
少女は聞く。
「どっち」
りすくまるは答える。
「個体番号三〇一」
少女は立ち上がる。
「行きます」
りすくまるは言う。
「了解」
二人は移動する。
街を越え。
建物を越え。
夜の中を進む。
そして。
屋上に降りる。
そこに一人の魔法少女がいた。
立っている。
空を見ている。
少女は近づく。
「こんばんは」
魔法少女は振り向く。
少し笑う。
「こんばんは」
少女は聞く。
「消去ですか」
魔法少女は頷く。
「うん」
少女は言う。
「もう一人いましたよね」
魔法少女は言う。
「さっき」
「終わった」
少女は黙る。
魔法少女は笑う。
「これで」
「最後かな」
少女は言う。
「まだ私がいます」
魔法少女は言う。
「そうだね」
少し間が空く。
魔法少女は空を見る。
「長かった」
少女は言う。
「お疲れ様です」
魔法少女は笑う。
「ありがとう」
そして。
りすくまるを見る。
「お願いします」
りすくまるは答える。
「了解」
光が生まれる。
静かな光。
少女はそれを見ていた。
粒子が風に溶ける。
光が消える。
屋上には三人いた。
今は。
二人になった。
少女は空を見上げる。
星が多い。
「りすくまる」
「はい」
少女は言う。
「これで」
少し間を置く。
「最後ですね」
りすくまるは答える。
「はい」
風が吹く。
世界は静かだった。
そして。
長い時間が。
ここから始まろうとしていた。