終わりまでの旅路〈待機を終了します〉   作:ヒツジ(ラム肉

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第六話 観測

空は静かだった。

 

風が海を撫でている。

 

岩場に二つの影があった。

 

少女と、丸い管理個体。

 

少女は海を見ていた。

 

長い沈黙のあと、言う。

 

「静かですね」

 

りすくまるは答える。

 

「はい」

 

少女は聞く。

 

「魔物は?」

 

りすくまるは答える。

 

「発生なし」

 

少女は頷く。

 

「もうずっとですね」

 

「はい」

 

少女は空を見る。

 

星が多い。

 

昔より多い気がした。

 

街の灯りが減ったからかもしれない。

 

少女は言う。

 

「世界機構」

 

「はい」

 

「動いてませんよね」

 

りすくまるは答える。

 

「はい」

 

少女は聞く。

 

「完全に?」

 

りすくまるは言う。

 

「機能停止」

 

少女は静かに笑う。

 

「ついに」

 

風が吹く。

 

草が揺れる。

 

少女は言う。

 

「じゃあ」

 

少し間を置く。

 

「魔法少女制度も」

 

りすくまるは答える。

 

「終了」

 

少女は頷く。

 

「そうですね」

 

沈黙。

 

海の音だけが続く。

 

少女は言う。

 

「戦わなくていい」

 

りすくまるは言う。

 

「はい」

 

少女は空を見る。

 

「不思議です」

 

りすくまるは答える。

 

「はい」

 

少女は少し笑う。

 

「戦ってないのに」

 

「まだ生きてる」

 

りすくまるは言う。

 

「はい」

 

少女は聞く。

 

「魔物」

 

「なぜ消えたんでしょう」

 

りすくまるは答える。

 

「不明」

 

少女は言う。

 

「またそれ」

 

りすくまるは言う。

 

「はい」

 

少女は笑う。

 

「便利な言葉」

 

りすくまるは言う。

 

「はい」

 

沈黙。

 

夜が深くなる。

 

少女は言う。

 

「りすくまる」

 

「はい」

 

「これからどうします」

 

りすくまるは答える。

 

「観測」

 

少女は聞く。

 

「誰を」

 

りすくまるは答える。

 

「世界」

 

少女は少し考える。

 

そして頷く。

 

「いいですね」

 

風が少し強くなる。

 

海の波が光る。

 

少女は言う。

 

「観測」

 

「長くなりそうですね」

 

りすくまるは答える。

 

「はい」

 

少女は笑う。

 

「暇になりそう」

 

りすくまるは言う。

 

「はい」

 

少女は聞く。

 

「あなた」

 

「どれくらい動くんですか」

 

りすくまるは答える。

 

「長期稼働」

 

少女は言う。

 

「便利」

 

りすくまるは言う。

 

「はい」

 

少女は岩に寝転ぶ。

 

空を見る。

 

星が流れる。

 

「りすくまる」

 

「はい」

 

「もし」

 

少し間を置く。

 

「文明が生まれたら」

 

りすくまるは答える。

 

「観測」

 

少女は聞く。

 

「干渉しない?」

 

りすくまるは言う。

 

「観測任務」

 

「干渉なし」

 

少女は頷く。

 

「それがいい」

 

風が吹く。

 

夜が過ぎる。

 

時間が流れる。

 

そして。

 

長い時間が流れた。

 

少女は海を見る。

 

遠くの地平に光があった。

 

都市。

 

新しい文明。

 

少女は言う。

 

「生まれましたね」

 

りすくまるは答える。

 

「確認」

 

少女は聞く。

 

「どれくらい」

 

りすくまるは言う。

 

「文明形成」

 

「初期段階」

 

少女は笑う。

 

「また始まりですね」

 

りすくまるは答える。

 

「はい」

 

少女は海を見る。

 

文明の灯りが増える。

 

船が走る。

 

空を飛ぶものもある。

 

少女は言う。

 

「世界は続いてます」

 

りすくまるは言う。

 

「はい」

 

少女は空を見る。

 

星は変わらない。

 

「りすくまる」

 

「はい」

 

少女は言う。

 

「観測」

 

「続けましょう」

 

りすくまるは答える。

 

「了解」

 

風が吹く。

 

文明が生まれる。

 

文明が消える。

 

そしてまた生まれる。

 

二人は見ていた。

 

ただ。

 

長い時間を。

 

観測し続けていた。

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