空は静かだった。
変わらない空だった。
海は形を変えている。
大陸も少し動いている。
しかし空は変わらない。
岩場に二つの影があった。
少女と、りすくまる。
少女は海を見ていた。
遠くに都市の光がある。
文明だった。
また一つ生まれた文明。
少女は言う。
「また増えましたね」
りすくまるは答える。
「確認」
少女は聞く。
「何回目ですか」
りすくまるは言う。
「文明形成」
「確認回数」
少し間を置く。
「三百二十四」
少女は笑う。
「多い」
りすくまるは言う。
「はい」
少女は言う。
「全部」
少し間を置く。
「消えましたね」
りすくまるは答える。
「はい」
沈黙。
風が吹く。
少女は空を見る。
「不思議です」
りすくまるは言う。
「はい」
少女は言う。
「生まれて」
「広がって」
「消える」
りすくまるは答える。
「はい」
少女は聞く。
「意味ありますかね」
りすくまるは少し黙る。
長い沈黙。
そして言う。
「不明」
少女は笑う。
「またそれ」
りすくまるは言う。
「はい」
少女は言う。
「でも」
少し間を置く。
「私は好きです」
りすくまるは聞く。
「理由」
少女は海を見る。
遠くの文明の光。
「頑張ってる」
りすくまるは言う。
「はい」
少女は続ける。
「必死に生きて」
「何か作って」
「また消える」
りすくまるは言う。
「はい」
少女は笑う。
「人らしい」
沈黙。
長い沈黙。
風だけが吹く。
りすくまるは言う。
「質問」
少女は振り向く。
「はい?」
りすくまるは聞く。
「なぜ」
少し間を置く。
「あなたは消去しない」
少女は笑う。
「急ですね」
りすくまるは言う。
「長期観測」
少女は頷く。
「そうですね」
少し考える。
そして言う。
「約束」
りすくまるは言う。
「確認」
少女は言う。
「あなたが納得するまで」
りすくまるは黙る。
少女は続ける。
「世界」
「理解できましたか」
りすくまるは答える。
「否」
少女は笑う。
「そうでしょうね」
りすくまるは言う。
「理解」
「困難」
少女は言う。
「私もです」
沈黙。
文明の灯りが増えている。
少女は言う。
「でも」
少し間を置く。
「受け入れることはできます」
りすくまるは聞く。
「受容」
少女は頷く。
「そう」
りすくまるは黙る。
長い沈黙。
風が吹く。
海が揺れる。
文明の光が瞬く。
そして。
りすくまるは言う。
「理解」
「不要」
少女は少し驚く。
「お」
りすくまるは言う。
「観測結果」
「十分」
少女は聞く。
「何が?」
りすくまるは言う。
「世界」
「こういうもの」
少女は静かに笑う。
「そうですね」
沈黙。
りすくまるは言う。
「受容」
少女は頷く。
「はい」
りすくまるは少し黙る。
そして言う。
「可能」
少女は空を見る。
星が多い。
「りすくまる」
「はい」
少女は聞く。
「納得しましたか」
長い沈黙。
海の音だけが続く。
文明の灯りが遠くにある。
そして。
りすくまるは答える。
「……はい」
少女は微笑んだ。
とても静かな笑顔だった。
「そうですか」
風が吹く。
長い時間が、そこにあった。
終わりが、近づいていた。