トランプメン 〜異世界で道化師プレイをつづけた結果、大変なことになったその男の末路〜   作:山下敬雄

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第27話 野菜炒めと電撃のスパイス

 黒い船の次は赤い船。

 港から乗り換えを促され、その竜の船首を持つ船に乗船した彼らは、一体どこへと誘われるのだろうか。

 

 本日、竜曜日に行われるであろう葬魔七曜血選二日目の神技の内容の詳細は依然不明。しかし今度は強面のラカンの哀愁ある小舟ではなく、この乗り心地の良い中型船で次の会場へと向かえるようだ。

 

 いつもの如く、船首の近くに両腕を組み先の海を見つめていた案内人のラカン。彼は今音もなく忍び寄って来た視線に対して、その場を微動だにせず、そして振り返らずに言葉を放った。

 

「なんだ貴様」

 

 背を向けながら短くも静かに威圧するラカンに、視線を向けていたアキトは甲板の上に足を止めた。

 

「ちょっと失格のルールについて、おさらいしておきたくてね」

 

 何かと思えば、柔らかな口調でそのようなことを投げかける。

 

「失格のルールだと? 馬鹿め、そんなものはない。次の太陽と月を拝める限り、その者は七曜血選を続行する権利を持つ。……しかし、神技の内容次第では単純決着とはいかぬものも、中にはあるのは事実だ」

 

 ラカンは向けていた背を振り返り、その強面で七曜血選に関するルールを聞かれた通りに大雑把にも説いた。彼は葬魔七曜血選に挑むシロツメ支部の五人の案内人の役を務めている。そのルールに関することを聞かれたならば、頑なに答えないほど、自分の仕事を放棄する気はないようだ。

 

 神技の詳細については舞台につくまで教える気はない。あるいは、ラカン自身も何が行われるのか聞かされていないのか。以前開かれたものと同じ神技が執り行われるとは限らないのは、そのラカンの言動から、質問者のアキトが想像することは容易かった。

 

 しかしアキトは神技の内容などには、実はあまり興味はないようだ。本当に聞きたかったのは前半の部分だけである。

 

「変わり種もあるか……なるほどね。じゃあ、ばったり出会した厄介そうなギフト持ちは、〝全員殺しちゃう〟のがやっぱりシンプルか。フフっ──後で逆恨みされても困るからね」

 

 皆殺し──彼はひどくシンプルなその答えに辿り着いた。明確な失格のルールが制定されず存在しないのならば、見つけたあるいは、一度刃を交えた厄介な相手は始末するに限る。

 

 そんな不穏な言葉を臆面もなくすらすらと口先から漏らす一人の戦士に対して、ラカンは剃り跡の青い右眉を、僅かに上へと歪ませた。

 

「貴様に返す答えはない。──もっともその様な臆病者に、葬魔七曜血選の真意が分かることは永劫にないと思え」

 

「ふふふ……臆病者?」

 

 アキトはその安っぽい微笑を止める。ラカンが今、先ほどよりも高圧的な声で放ったその言葉がどこか引っかかったようだ。

 

 ラカンは冷たい眼差しを返してきたその未熟者のことを、目を逸らさずに睨みつけながら、頭の上の制帽を正す。

 

 そしてブーツの踵を改めて合わせながら、その厳格な姿勢を保ち、一編の詩を読むように言い放った。

 

「月夜に酒を酌み交わし、腹を満たして眠りこける長い竜の尾を剣で断ち、この世に一つの枕にする。青い島唄を聴きながら、頭を出した亀の背で、迷い込んだ森の中、渋くて苦い罪を齧る。無知と未知を死するように彷徨いながらも、鬱蒼の中の道は拓かれる。鉄を重ね星を散りばめた時、魔色の滾る根源に、汝と友は永らえる旅の本当の価値を知る。飛び去った烏が嘴に啄んだ日の灯火を絶やさぬように、欠けゆく月たちは今日も昏冥を鏡のように美しく照らしている……」

 

 月、竜、海、木、亀、灯、冥。ガライヤの七曜の周期をなぞらえ、強面の男に読まれた詩は、アキトの知らないそんな物語だった。

 

「それはなんだい? 子守唄にしては難しいね。ジブンの聞いたことのない詩だ」

 

 それはあまりにも抽象的で聞かされた一度だけでは、唐突に読まれたその詩の意味の全てを測ることはできない。

 

 それに子供に聞かせる覚え歌にしては難解だ。異世界ガライヤを漫遊する冒険者アキトは、ラカンに聞かされたものよりも、もっと楽しげな子供の喜ぶ歌を知っている。

 

 アキトはじっと、制帽の影から睨む、真正面に据えられたラカンの裸眼の奥を覗いた。

 

「────最高のクランとは、最強のクラン。故に……真に七曜を制し得た者は、竜の尾では満足しない」

 

 強面の男の喉奥から引き出された言葉は、ロマンチックにも幼稚にもまやかしのようにも聞こえた。

 

 「最高のクランとは、最強のクラン──」アキトは強面に似合わず読まれた詩よりも、その後から足された言葉の方に何故か心をぞくりと動かされた。

 

「なるほどつまり。──こうするしかないわけだ」

 

 一瞬、手元から──銀の星が煌めいた。

 アキトが右手を伸ばした先にあったのは、踵を揃え、爪先の角度を寸分も変えずにいる制帽の男の変わらず立つ姿。その威厳ある背の後ろに、首を伸ばして待っていたのは船首に誂えられた竜の首。

 

 深く突き刺さった一本のレイピアは、やがてひび割れ軋む唸りを上げる赤竜の彫像、その喉元にある逆鱗にまで伝い届いた。

 

 道化師は手を伸ばし笑い、揺らぐ甲板に立つ案内人は制帽の裏に汗を滲ませる。

 

 首を穿たれた赤い船の行き先は天国か底か。

 目の前に笑い立つ得体の知れない参加者が放つ、その底の知れない不遜な闘志と静かに唸る魔力に、ラカンは目を鋭く光らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シロツメ支部の五人は、デッキから昇降口を降った先にある指定の待機部屋で、来たるべきその時を待つ。

 

 いつ、どこで、竜曜の神技が始まるか分からぬこの状況。戦前の緊張が団員たちの間に漂うものかと思われたが──。

 

「ワカメラさんから貰った【なんたら法師の酔い止め】なんだけど……ミタライさん、良かったら使いますか? これ?」

 

 考え事をしていた様子のミタライのことを気にかけてか、タイキは小さな薬壺に入った酔い止めをポケットから取り出し、それを彼女へと渡そうとした。

 

「いえ、私は大丈夫です。ですが……その酔い止めはもしかすると何か、次の神技に関する情報をその方は心当たりがあったのかもしれませんね? 船での移動も多いので、ベストコンディションで挑むには何かと必要な時が来るものかと。ええ、持っていても損はなさそうです」

 

 俯き気味でいた顔を上げたミタライは首を軽く横に振り、タイキに大丈夫だと言う。そして彼が手のひらに乗せていた薬壺を眺め、ミタライはそこから深読みした考えを彼に話した。

 

「あぁ、確かに? はは、そう言われればそうにも思えますねッ! あ、じゃあこれ、まだ俺が大事に持っときます」

 

「ええ。ワカメラさんも、きっとあなたに役立てて欲しいと思われてそれを渡したのでしょう」

 

 いつ終わるとも分からない船旅に持っていて損はない保険。効能のほどは分からないが毒ではないはずだと、タイキは和亀羅から貰ったこの酔い止めを信じ、ミタライの語りに頷いてみせる。

 

 すると、同じ青みがかった髪をしたそんな男女二人の話すやり取りを聞いていたのか、一人の団員が、今しれっと口を挟んだ。

 

「ジブンには分かるよ。その酔い止めの持つ、裏の意味。よければ一つ教えてあげようか」

 

 もたれていた船室の壁際から背を離し、アキトが腰に差したレイピアの柄にそっと手をかけた。

 

「えっ本当で、あ! いや……その裏、自力で探ってみます!」

 

「ふふふふふ、それがいい」

 

 柄から手を離し、アキトは指を弾き鳴らす。

 先輩冒険者が剣を取る仕草から何かを悟ったのか、そう強く返事をしたタイキ。そんな青年の目を見ながら、アキトはクールに笑い出した。

 

 

 

「はぁ……タイキもアイツも結局いつもの調子よね。けろっ、て感じの……」

 

 一方リリスはというと──。

 その賑やかな輪に混ざり、いつものように彼らと談笑を始めるような余裕よりも、いつ始まるとも知れない次の神技に対する緊張とストレスの方が心身に高まっていた。

 

 室内にあった簡易なテーブル席につき、机の上に肘を置きながら、また一つ彼女は溜息をつく。

 

 同じ火属性のギフトを扱う完璧な支部長に、どこか天然で無鉄砲ながらも天才の実力を持つ剣士、そして凄腕冒険者に扮し、すっかり打ち解けたつもりになっているあの黒髪の怪人。

 

 このシロツメ支部の誇る実力者三人に対して、自分の能力はもう何枚も落ちることを自覚している魔術師リリスは、彼らと同じように余裕を見せて和んでいる訳にはいかないのだ。

 

 かと言って、今になってできるようなこともそれほどないように思える。

 今までできなかったことがその場で急にできるようになる、そんな本の中の主人公のような存在は、タイキ・フジ、リリスと同期に仲良くクランに入団した彼だけなのだ。

 

 魔術師としては、球状の火の玉の形しか扱えない。彼女が故郷で、師と呼べる方から教わったのもそれだけ。

 己がそんな不器用な人間であることも自覚するリリスは、また溜息を重ねる。

 

(んーー……私もアイツの言っていた、〝示現(ジゲン)〟ってやつが、タイキみたいにできればいいんだけど? ……私の火のギフトにも何かが眠っていたり……?)

 

 机の上に溶けるようにいたリリスが、ふと、アイツのいる方を見る。

 

 すると、そんなじっと向けられた視線に気づいたのか、アキトは彼女に小さく手を振りおどけた様子で微笑んだ。

 

(って、アイツに頼ってどうすんのよ。はぁ……私も警戒がすっかり緩くなっている自覚はあるけど……アイツって、あの恐ろしいトランプメンなんだから? 分かってるの、リリス・アルモンド?)

 

 苦笑を浮かべたリリスは、手を振り返さない。机上で右を向けていた体と顔を、逆の左側へと、見なかったふりをするように倒した。

 

 D級賞金首、今もなお世界新聞を騒がす怪人トランプメンに魔術を習うことなどあってはならない。

 

(でもアイツって、本当にトランプメン? だって、このところの世界新聞でもあの怪人は休まずに、神出鬼没にも騒ぎを起こし続けている訳なんだし……もしかして……?)

 

 リリスは一度、激動とも言えるここ最近、そしてこれまでの冒険のことを思い返してみる。

 

 現在、ise会シロツメ支部にも属する冒険者アキトは、確かにトランプメンの姿で、あの時あの森でタイキとリリスの前に現れた。

 

 彼が現れて後ろや前について回るようになってからというものの、リリスはまだまだ夢の先だと思っていたB級の冒険者にまで、とんとん拍子で昇格を果たした。

 得意とする【ヒノタマ】の魔法の発練方法も、彼の時折挟む悪戯の手と奇妙なカードから、より良いコツを読み取り掴んだのは事実。魔力の燃費と総量も以前より上がっている。

 

 たとえ新しい魔法を覚えなくても、魔術師としていつの間にかコツコツと成長を遂げていた。

 

 強化種と言われる強力な魔物との戦闘を二度経験したことも、彼女の中で自信になっていたのは嘘ではない。

 

(はぁ……まぁアイツの正体はこの際、もうどうしようもないし、どうでもいいんだけど……。でも、不思議なのよね。あの時と同じこと、言われちゃってるのよねぇ……)

 

 『お嬢様、あなたは不器用ながらも魔術師の才能がある』──リリス・アルモンドは、そんな、故郷で師からいただいた遠い過去の言葉をふと思い出す。

 

 そして、しばらく耽っていた遠い思い出から覚めたリリスは、おもむろにもう一度、右側へと静かに顔を向けてみた。

 

 するとちょうど彼女が右を振り向いた瞬間──突然、銀のコインを弾く音が鳴り、高く宙に浮かんだ。黒髪の男は両手を交差させ、綺麗に回転するそのコインを素速い手つきで掴み取った。

 

 握られ突き出された左右の手どちらかに、きっとコインはある。当ててごらんと、彼は言いたいのだろう。

 

 苦笑したリリスはやる気なさげにも、右側の手にツンと、己の鼻を動かし向けた。

 

 彼女が机に寝ながらにリアクションを取ると、握られていた彼の両手がパッと開かれていく。

 

 しかし、どちらの手のひらの中にもコインは見当たらなかった。

 

 リリスが静かに目を見開いて驚くと、彼は急に苦しみ出す仕草をしだした。

 

 何事かと思いリリスが椅子から腰を浮かせると、天を向き苦しんでいたアキトは、口から何かを吐き出した。

 

 なんとなんとそれは、最初に弾いてみせた銀のコインと同じ物。喉の奥に隠し持っていたようだ。

 

 「ざ〜んねん」──きっとそんな事を言っているに違いない。舌を垂らしておどける道化師が一人、赤髪の観客に向けて笑っていた。

 

「や、やっぱり、馬鹿にしているだけなのかも……はぁ……」

 

 器用な道化師の披露したささやかなコインマジックに、リリスはまた呆れた様子で溜息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どことなく漂わせるネガティブな雰囲気でリリスが一人、机の前で覇気なくいると──向かいで、椅子を引く音が鳴った。

 

 

「おい、そこのトマト髪の女。野菜炒めだ」

 

「は、はぁ? トマト髪ってそれ私のこと言ってんの」

 

 呼ばれた赤髪のリリスは顔を上げ、真正面の席についた失礼な男を見る。

 

 顔も知らない男だ。体型は痩せ気味、頭は金髪。偉そうな態度でいる男は、まるでメイドに命令をするように、目の前でだらけていたリリスのことを顎で使おうとする。

 

「分からないか。野菜炒めだ」

 

 指先がとんとん、机を打つ。今初対面の赤髪の娘に、オーダーした料理を急かすような態度だ。

 

「それってぇ……野菜を火で炒める……料理ってこと?」

 

「違う。野菜炒めだ」

 

 リリスが親切で相手をし聞き返すと、痩せた男は淡々とそれを否定する。

 

「どう違うの……ちょっとなんなのこの人……」

 

 顔を顰めたリリスは、小声で愚痴を漏らす。

 

 すると男はそれ以上何も言葉に返さずに、赤髪の女のことを睨みつけて黙った。

 

 その様も勝手に呆れ見放されたようでリリスは癪に障ったが、そもそもいきなり登場したこの男は何者なのだろうか。顎に手を当て考える素振りをするが、すぐには分からない。

 

 しきりに左腕につけた腕時計を確認しながら、また、とんとんと指を机に鳴らす。そんな痩せ男の様をかたわらから見ていたアキトは、困惑するリリスの席に近づき呟いた。

 

「野菜炒めがどうしても食べたいんだろうね」

 

「そりゃそうなんだろうけど、なんでわたしっ?」

 

「さぁ。でも奇遇にも同じ船の上に乗り合わせたもの同士、今は余計な波風を立てず仲良くしておいた方がお得だろうね」

 

 アキトは、痩せ男が突然席につき発した野菜炒めのオーダーに対して、冷静にもそうリリスに言う。

 

「お得って言われても……まぁ、そうよね?」

 

 今アキトが言った事にも一理ある。ここできついツッコミを入れたり、不満な態度を取り続けても得はない。この痩せ男が何者であれ、乗り合わせた者同士、船の上での争いは航海中の毒にしかならないのだ。

 

「とすると野菜か。貨物室とかにあるのかな? 言えば分けてもらえるかも? 玉ねぎとかキャベツがあったら嬉しいな、はは」

 

「手分けして船内を見て来ましょうか」

 

「ちょ、ちょっと? そんなに乗り気なの? わ、わかったけど!」

 

 タイキもミタライもリリスの掛ける席の近くに顔を出し、この突飛な野菜炒めのお題に対して、解決に乗り気のようだ。

 

「よしっ! じゃあ決まりだ! 俺も食べたくなってきた、リリスの野菜炒め!」

 

「リリスのって! だから私それ知らないんだけど! 野菜を炒めたヤツとどう〝違う〟のよ!」

 

「それはぁ……〝野菜炒め〟だからかな?」

 

「って説明になってないし! 一つも!」

 

 いつの間にか自分が作ることになっているが、リリスはそもそも【野菜炒め】なる料理の作り方を知りはしない。野菜を炒めるだけのものとは「違う」と、あの痩せ男も言っていたのだ。

 

 タイキの説明になっていない説明を聞いても、野菜炒めの作り方は判然としない。

 

「……肉さがし」

 

 同室内に静かにいたアトラは、やっと口を開いたかと思えば、彼の第一声は「肉」であった。

 

 野菜炒めなのに肉が要るのか、ますます困惑するリリスは首を捻る。

 

「フフッ。ふむ、食材だけではなく火力も肝心か。ジブンは調理場のコンロを見てこよう。もう一人誰か、ご一緒を頼めるかな?」

 

 手分けすることになったので、野菜と肉の捜索はタイキとアトラに任せる。そして、野菜炒めに肝心な火力に目を付けたアキトは、調理場のコンロを一度見て来ると言い、もう一人のお手伝いを募集した。

 

 リリスが仕方なくひっそりと手を挙げ、そのお手伝い役に志願しようとしたその時だった。

 

「はい! では、僕がご一緒します!」

「じゃあ、わたっ……ってぇ!?」

 

 熱のある良い返事が、リリスのあやふやな声を遮る。

 

 今の声は誰だ。痩せ男がそんな腹から元気に声を出しはしない。タイキ、アキト、支部長、アトラ──存在しない六人目の返事の聞こえた方に、リリスは振り返り目を向けた。

 

「あっ! あんた確か……なんたら道場のミソラって!? ぇ??」

 

 その白い道着姿、間違いない。

 誰かさんがキャラ被りだと言い張っていたあの黒髪と中性的な顔立ち、そしてタイキと同じ熱のある赤い瞳を宿した戦士。

 

「はい。現剣流道場の八番弟子、美楚羅! 遅ればせながら……来ちゃいました?」

 

 驚愕しながら指をさすリリスに向かい、美楚羅が改めて自己紹介をする。

 

「ッええ!? 来ちゃいましたじゃないでしょ! な、なんで……?」

 

 何故、昨日月曜の神技で戦った彼がそこにいるのか。次から次へと現れる謎に、リリスは困惑と驚きの色を深めた。

 

「ジブンが呼んだんだよ」

 

「はぁ!? 呼んだ……ってどういうこと?」

 

 またもやアキトの仕業。そう、何かと周囲を驚かせる奇策を打つのがこの男だとリリスは思い出した。今度は一体何をしでかしたのか、リリスはおそるおそる、おうむ返しにも問い返す。

 

「こういうことさ」

 

 アキトが手元から何かを天に向かい投げると、美楚羅はひらひらと宙を流れたそれを躊躇なく手にした。

 

 そして、受け取ったシロツメ支部のクランカラーである特注の緑の帯を、彼は己の道着の上へと、ぎゅっと巻きつけて締めた。

 

「微力ながらもシロツメ支部の皆さんに、僕も協力させて貰います! はは……まずはその、野菜炒めで……!」

 

 竜曜日、午前11時25分──。

 葬魔七曜血選の二日目の神技に挑む、ise会シロツメ支部の六人目の戦士として、美楚羅が電撃加入した。

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