トランプメン 〜異世界で道化師プレイをつづけた結果、大変なことになったその男の末路〜   作:山下敬雄

46 / 50
第45話 秘密のメッセージ

 午前1時43分、島内西、宿泊ホテル308号室にて──。

 

【あの日のことをずっと後悔している、どうか信じてほしい】

 

 ブラックマーケットの会場、その喧騒と人だかりの中ですれ違ったある一人の冒険者から、ミタライはそんな短い言葉で書かれた手紙を密かに受け取っていた。

 

【然るべきその時まで、緑の旗の元で彼女はいつでも待っています】

 

 運営側から割り当てられたホテルの室内にいたミタライは、その冒険者へと宛てる返事の言葉を、そう、受け取った紙の裏に筆を執りしたためていく。

 

 彼女が手紙を書き終えた丁度その時、部屋の戸をノックする音が響いた。

 

 二度打ち響いたその静かな音に、椅子に座るミタライは向かいの机の中に手紙を仕舞いながら、「どうぞ」と一言返事をした。

 

 すると、ゆっくりと戸を開け現れたのは一人の青髪の男。団員のタイキ・フジ、彼であった。

 

「あのぉ……今日の神技の内容が気になって。ミタライさんならアキトさんみたいに何か予想がついてるかなって?」

 

 竜曜日の神技終えて、今はもう夜の0時を過ぎ日付の変わった海曜日。この後に行われるであろう神技の内容がどうしても戦闘員のタイキは気になってしまい、支部長の居るこの部屋を夜遅くにも尋ねたようだ。

 

「今日、海曜の神技のことですか? それならば……やはり何か海に関連することなのだとは思うのですが、ちょうど昨日、竜を模した船の上でそのような料理対決をしたばかりでしたね。また趣旨が違ったモノになるかもしれません」

 

 二回続けて船の上での勝負になるのはあまり考えられないと、ミタライは予想立て、大雑把ながらも彼に答えた。

 

「確かに……? あーまた船の上はちょっと、俺もまだ慣れてなくて困るかな? 見よう見まねだったんで、はは」

 

「ふふ──。そうですね、できれば舞踏円月の時のような力勝負の方が、あなたの力が最も発揮しやすいものです」

 

「やっぱりあの船の上の勝負、危なっかしく見えていたり……?」

 

 青髪をかきながらタイキが困った様子でミタライに問う。平たいデッキの上、戦米丸の上での海丁レモラとの戦いが彼女の目にどのように映っていたのか聞きたいようだ。

 

「そうですね。あまり怪我をされると支部長としては困ります。これからの作戦と陣形を練り直す必要性が出てきますから。──切り傷の状態は?」

 

 ただ勝つにしても怪我を増やされると困る。ミタライは褒め言葉を団員の彼に与えるよりも、冷静にもそう答えた。

 

 そして、一歩前に彼の方へと近づき怪我の具合を確認しようとした。

 

「はは。それならもう、ほらっ──大したことないです。ウッドコングのドラミングにやられた時と比べたら! はは」

 

 すると、タイキは切られた胸の辺りまで着込んでいた衣服を捲り上げ、すっかり刀傷の塞がったその怪我の状態を自らアピールした。

 

「ふむ……あなたの体は本当に不思議なものですね? 怪我の治りの早さが、その魔力量と相関でもしているのでしょうか」

 

 タイキの肉体についた傷痕を指にそっとなぞりながら、ミタライは不思議がった。

 

 やはりタイキ・フジ、彼は特別な才を持つ存在であると改めて知る。

 

 しかし怪我を顧みない彼の戦い方は、良いように言えば勇猛で、悪いように言えば危ういもの。

 

「この傷が増えないことを祈ります」

 

「はは……気をつけますっ!」

 

 ミタライは心配か、それとも皮肉か、そのように呟いた。

 

 タイキは後ろ髪をかきながら、見上げる彼女の青い目を見下ろして、そう気を引き締める返事をした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。