トランプメン 〜異世界で道化師プレイをつづけた結果、大変なことになったその男の末路〜   作:山下敬雄

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第53話 宝船の合戦

 スーパーコットン団を手玉に取り、船の奪取に成功し占拠した冒険者アキト。そんな単独で行動を起こし先走り手招く彼につづいて、今、続々と追いついたise会シロツメ支部のメンバーたちが乗船していった。

 

 しかし、今は神技中、敵はスーパーコットン団だけではない。森に眠る宝の匂いを嗅ぎつけた他のクランたちが漁夫の利を得ようと、既にシロツメ支部の占拠する船へと一斉に群がり襲いかかって来たのだった。

 

 次の宴へのチケットを賭けた一隻の宝船をめぐる攻防は、その激しさを増していく。

 

「どうしたのかいコック。そんなに難しい顔をして? 今晩の献立にお悩みかな、それともお守りが必要かい?」

 

 船のへりに不用意に顔を出した賊をレイピアで素速く刺しながら、アキトは甲板上でどこか険しい表情をしていたペコロへとそう言った。

 

「けっ……気のせいだろ薄笑い。献立に口出しは許さねえ、そしてお守りが趣味なら鬱陶しいから他を当たれ。安心しろ、皿の上からこぼれたものまで拾いはしねェ……注文通りッ、今はここを守り切ればいいんだろ。さぁ、一流コックならここだ、串焼きにされたい奴から来やがれ!」

 

 しかしペコロはアキトの軽口には付き合わない。言われなくてもコックは請け負ったディナーまでの仕事を弁えている。今は協力するシロツメ支部の為に彼はしっかりと働くことを選んだ。

 

 投じられた鋭い鉄串が、船に乗り込もうと這い上がって来た迂闊な敵の手に、釘を打つように射抜く。

 

 ペコロ・ココットは戦意と魔力を上げる。闘志が乗り移ったように、指の間に挟んだ鉄串が赤い火を灯した。

 

「あぁ、助かる。しかし困った。先ほど誰かさんが盛大に花火を打ち上げたのがまずかったかな。これは予想以上の数だ」

 

「……ってあんたねぇ! やっぱり打たなきゃ良かったじゃないの! そんなことしなくてもぜーったいあの銀色軍団を片付けれたでしょうに! あんたならっ!」

 

「アハはは、ジブンはそれほど超絶無敵じゃないよ。しかし褒められるのは悪い気はしない」

 

「イヤ、褒めてないからッ!」

 

 敵を呼び寄せた愚策、その責任の所在をとぼけて誤魔化すアキトに対してリリスが小うるさくクレームを入れていく。

 

「時間まで敵を寄せ付けなければそれでいいです! いけっ【ケットシー】!」

 

 ミタライは魔力を練り上げた。すると突然化けたように現れた緑光を放つ一匹の猫が甲板上を素速く走る。そして、ロープや梯子を伝い下から登って来ていた敵のクラン員を遊ぶように脅かした。

 

 緑の火の尻尾を巻きつけ炙ったロープがやがて千切れ、乗り込もうとした敵が次々と重なり押されて落下していく。

 

「支部長は猫派か、面白いことを考える。よし──タイキっ、その矛がエンジンの指令キーだ。マジックポールの制御は頼んだよ。まだ出航の準備には時間がかかる、ジブンは外に群がる定員オーバーの乗客を少し間引いて来よう」

 

 ミタライのギフト【ウィルオウィスプ】の繰り出した変化技にアキトは感心した。そして、タイキのいる方へと今始末した敵から奪い取った宝の一つである三叉の矛を投げつけた。

 

「ダりゃッ! ──はいっ! アキトさん!」

 

 威勢よく返事を返したタイキは、今受け取った矛をマジックポールに彫られてあった三つの溝に突き刺した。そして水平に突き刺さった矛を鉄棒を逆上がりするように、ぐるりと回る。そうして後ろから殺気と魔力を漏らし来ていた敵の剣を上手く回避し、剣が空を切り唖然とする敵の面へと反撃の蹴りを叩き込んだ。

 

 握る宝の矛を通じてタイキは魔力を送り、寄る敵を返り打ちにしながら、眠っていたマジックポールの制御を試みる。

 

 そしてタイキに大役を任せたアキトは、甲板上に倒れていた敵団員のクラン紋章の刺繍された衣服を剥ぎ取り、早着替えを披露──これから行う撹乱の策の為の準備を揃えていく。

 

 既に船下は、数多のクラン同士が我先とせめぎ合う合戦模様。まるで熾烈な攻城戦にも見える眼下の混沌へと向かい今。微笑みながら野球帽子を投げ捨てた道化師は、懐に鋭い刃とカードを隠し、真っ逆様に飛び込んで行った。

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