トランプメン 〜異世界で道化師プレイをつづけた結果、大変なことになったその男の末路〜 作:山下敬雄
ミタライが教えた石のコンパスが指し示す方角へと、タイキが操舵輪を両腕で操作し傾ける。九人の乗客を乗せた宝船は順調に宴へと続く海の道のりを消化していくのだった。
そして宝船が安定した航行を続けている間にも、九人の内のイレギュラーである一人、密航者コットン・シルバーへの厳しい面接が執り行われることとなった。
「ワタァシのギフトはこの通り、超絶無敵のギフトであーる!! ──ってなぁ!? 刺すな!!」
まずは最も肝心なギフトの詳細について打ち明けてもらうことにした。するとアキトがレイピアで肩口を貫き、嘘がないか再確認をする。
銀髪の男は大袈裟なリアクションを披露しながらも、とても痛みがあるようには見えない。だが冷や汗は流れる仕様のようだ。刃で貫かれた恐怖までは拭えないのだろう。
「目的はなんだ?」
超絶無敵の正体である綿のギフトの念入りな確認が済んだところで、次にペコロが男の目的を問う。まだその銀髪の男のことをコックはしつこくも疑っているようだ。
「目的? そんなものはなぁぁい。あぎゃー!?」
「やっぱりコイツここで燃やすか?」
ペコロがコットンの盛大に広げた両手の手の甲に焼けた鉄串を打ちながら、そう物騒な提案した。
「あはは、そうだな。超絶無敵……そんな不死身のギフトをどう料理して倒すかはジブンも気になるところだね?」
ギフトの研究と言えばこの男、アキトが興味が示さない訳がない。中でも不死身の綿のギフトなど珍しいもの。今目の前にいる銀髪の男はアキトにとって恰好の研究対象であると言えた。
デッキの上をのたうち回ったコットンは突き刺さった鉄串を外し、不吉な煙の立った手の甲へと、カップに余った冷めた紅茶を注ぎなんとか事なきを得た。
濡れて萎んだ左手をぷらぷらと力なく揺らしながら、コットンはようやく正面に向き直った。視界には──微笑する黒髪のレイピア使いと、口元に近づけた一本の鉄串に息を吹き込み火を灯すコック。
冗談か本気か、ただならぬ圧を見せつける性格の悪い二人の男がいた。
やはりこの船は天敵だらけ、中でもこの二人の男には引き続き深く注意をする必要がある。焦燥の中で冷静にそう考えたコットン・シルバーは、歯を食いしばる苦しい顔をしながらも、ここで一つとっておきの切り札をきることにした。
「そうだ、オマエらにとーっておきの情報を教えてやる!」
「とっておきだと?」
「とーっておきか?」
突如コットンが自信気に掲げたとーっておきの情報に、ペコロとアキトはまんまと興味を示したようだ。
▼
▽
「はぁ? お前いったい何を言ってやがる? 正気か? 酔ったか?」
「はぁ、それって……本当なの?」
「とても現実味がありませんね。かと言って、ここがどこでどこに向かっているかと問われれば……僕も困りますが?」
密航者コットン・シルバー、今彼が吹いたのは大ボラか。彼の口から説かれたとっておきの話の内容は、団員のペコロ、リリス、美楚羅までが鵜呑みにするにはいかないそんな誠に懐疑的な情報だった。
「ワタたたたたた、おうおう好きに疑えばいいさ! だぁがしかしィ……このコットンお兄様のふわぁり詰まったスーパー頭脳を用いれば、すぐに分かったさ。これぐらいのお安いハリボテの仕掛けはな……!」
コットンは向けられたその疑いの言葉と視線さえ心地よく感じているように、胸をドンと叩きさも堂々と言い放つ。なおも自分がハリボテの仕掛けを見抜いたのだと、確信を持ったように言い張った。
「ふふっ。それは愉快な妄想だね。面白いことを言う、──本当に」
「ええ」
嘘かハッタリか脚色か。果たしてコットン・シルバーの語ったとっておきの情報とは──。
笑うアキトと顎に手を当てた支部長のミタライが一瞬、互いの目を合わせ頷いた。あの港の新聞から共有した二人に渦巻いていた疑念は、今ここで確証へと変わっていく──。
アキトの出した手合図で見張り台から落とされたりんごを撃ち抜いたのは、赤い弾丸。見事な精度と集中力で、落とされたりんごは宙で粉々に砕け散った。
魔力を宿し凝らしたその青い双眸を、ガーネットは今ゆっくりと閉じた。そして瞑った目をもう一度開くと、彼女が目にかけていた魔力のフィルターは失せ、元の状態へと戻った。
「え、待って、待って!! とても昨日までギフトを扱えない素人だったなんて思えないんだけど……これ……」
「不可視の微弱なギフトからこうして形のある赤い宝石のギフトへと成長させた。それも中遠距離を射抜く力とコントロールを持った使い勝手の良いものへと……ここまでが一朝一夕の出来事ですか……既に熟練の冒険者の域に達しているようにも見えますが」
事前に聞かされた話とは随分と違う。リリスもミタライも実際に目にして初めて驚いたのか、ティータイム後にガーネットが披露したその赤く煌めいたギフトを高く評価した。
「いえ、そんな……私はただ必死にやった結果で……とても……」
素直には喜べない。二人から驚きお褒めの言葉を受けたガーネットはそんな複雑な表情をしていた。
海曜日の神技【海宴七宝】の行われた森の中を、度重なる裏切りと追跡に遭いながらも迷い走り生き抜いた。その際に摘んでしまった命もある。
まだ経験した多くの事を完全には整理したり消化し切れてはいない、そんなもやもやとした心境なのだろう。
「あぁ……でっでもっ! すごい上達スピードなのは確かなわけよね?」
「はい、仮にも海曜日まで勝ち抜いたクランの面々。付け焼き刃で退けるのは容易なことではありません」
リリスは俯き加減でいたガーネットのことを慮ってか、その異例のギフトに関する上達スピードについて触れた。するとミタライも同調したように頷いた。
「それはきっとアキトのおかげです。アキトがまだ何も知らない私にギフトのことをよく教えてくれたんです」
ガーネットの口から出てきた登場人物の名前に、リリスは思わず驚いた。
「え、アイツ……あぁー、たしかにたまに教えてくれる感じもあるけど……アイツのやり方でそのなんというか……ガーネットっ、大丈夫だったわけ?」
怪訝な顔に変わったリリスは心配そうに問う。
「ええ、とても親切に教えてくれました!」
「アイツが親切!?(私は勝手にちょっかい出されて、発練中の魔法を弄られた記憶しかないんだけど……すんごく疲れるのよねアレ……)」
「親切」と「アイツ」は、リリスにとってはどうも一口にイコールとは認め難い。杖でせっせと練り上げた浮かぶ火の玉の中に、あれこれ謎の魔力を帯びたカードを放り込まれた記憶しか彼女にはない。自分の魔法を勝手にいじくりまわされたあげく終わった頃には、杖で支えることもままならなくなるほどに足腰が立たなくなったものだ。
「あ、そうだわッ。確か私と同じぐらいの年齢の女の子で、その方もアキトの教えでギフトを以前の何倍もうんと上手く扱えるようになったって、おっしゃっていました! もしかして……リリスが、そのアキトが言っていた方なのでは?」
またも思わぬ言葉が飛んできた。ガーネットにギフトの訓練を施す際、アキトが自分の名を例に挙げていたとは全く思いもしなかったリリスは不意を突かれた。
「え、わたしがっ!? あぁー……まぁ私もあいつに習っていないって言ったら……嘘になるわね。でもガーネットには負けるわよ? さっきも見た通り私なんてヒノタマ一つが精一杯で全然な──」
「いえ、そんなっ! 未熟な私はまだまだ色んなことを学びたいのです。リリスさんにも!」
「ええっ? 支部長じゃなくて、私にも?」
「はい!」
まるで疑いのない曇り一つない青い瞳が赤髪の魔術師のことを見つめている。車椅子から上目遣いに見上げるそのキラキラとした視線にたじろぎながらも、リリスは答えた。
「まあ、魔術師流だけど発練のコツと毎日やってるイメージトレーニングぐらいならいいけど? ……あっアイツの言う幻想を破るようで悪いけど、私だってギフトの方の鍛錬はまだまだだしっ」
「では互いに! 私もできる範囲で教え合うというのは?」
「ははっ、それなら助かるし。もちろん歓迎歓迎っ」
そういう事ならと、リリスは笑みを浮かべてガーネットのことを歓迎する。ガーネットも釣られたようにパッと明るい笑みを作った。まだまだ成長途上の女子二人は切磋琢磨で教え合うことを約束し、今しっかりと握手を交わしたのだった。
そんな甲板上の女子たちの微笑ましい光景を、見張り台から文字通りに高みの見物をしていた黒髪の男。
奇妙な薄ら笑いを浮かべ持て余したりんごを片手に齧っていたそんな男の元へと、下方からの梯子を登る音が近づいた。
「おい、一つ聞くぞ薄笑い。……お前最初からあの不穏なメイド共のことを見抜いていたんじゃねぇのか?」
そう不躾にも聞いたのは、同じ見張り台へとよじ登ってきた飴色髪のコック、ペコロ・ココットだった。
「トマトに水は与えない、勝手に雨が降るからさ」
「あぁ? また急に何を言いやがった?」
またお得意の煙に巻く調子か、ペコロが眉間に皺を寄せアキトの背をじっと訝しみ見る。
「ふふっ。最初から完璧な筋書きなんて見えていないさ、見えているように思ったならそれは、彼女自身が必死に描き切っただけだろう。ジブンだって判断を見誤る時もある。激しい雨がいついつまで降るなんて分かりゃしない。だからこそ過度な水やりはしないのさ。そうすればトマトは案外、ちょうど美味しく実るものさ」
そう長々と言い残したアキトは、齧りかけのりんごをコックへと預け見張り台を一気に飛び降りて行った。
「相変わらず会話のできねぇ奴だ……てめぇの間違ったトマトの育て方は聞いてねぇ。──ってコイツまた……!?」
愚痴を呟いたペコロは何の気なしに受け取った果物を上へと放り投げた。すると、今手に必然と落ちてきた重さと感触に彼は違和感を覚えてしまう。
まさかと思い左の手の中を覗くと──齧りかけのりんごが、齧りかけのトマトへとすげ替えられていた。
一流コックのことをまるで嘲笑う変幻のマジックに、ペコろは飴色の髪をくしゃりと乱し、しばらくその場で頭を抱えたのだった。
「わたたたたた! てめぇら、見えてきたぞ! 目の前にでっけぇ海上ネストがお目見えだァーー! ヨーソロー!」
いつの間にか双眼鏡をかっぱらい、見張り台から身を乗り出して声を張り上げているのは、コットン・シルバー。
ついさっきまで甲板でロープに縛られ鉄串で炙られていた密航者だったことなど、綺麗さっぱりに忘れてしまったかのような元気さと図々しさであった。
「かいじょーねすと……? なにそれ?」
聞いた事のないワードに引っ掛かり、赤髪の魔術師リリスが怪訝そうに首を傾げて呟く。すると、そのすぐ隣から足音もなく寄ってきたアキトが彼女に囁いた。
「世界最大シェアを誇る造船企業『ネスト社』。航海を続ける船のために、そこが提供している海の上に築かれた中継基地の総称さ」
「へ、へぇー!」
「本当に分かったかい?」
アキトが底意地の悪い笑みを浮かべリリスの顔を覗き込む。納得したような相槌を打っていたリリスは一瞬、視線を泳がせる。
「だっ、だいたいはね!」
「ネスト社……」
二人のやり取りをよそに、車椅子の上でガーネットが小さくその名を反芻するように呟いた。
「知っているの、ガーネット?」
「ええ、少しだけ。昔……お父様が着手した水産業の件で」
「お嬢様ともなると、色々と高尚な交友関係を持たざるを得ないか」
ペコロが腕を組み淡々とした口調でそう言った。ガーネットも静かに頷いてみせた。
「そうよねぇー?」
何の気なしに口からこぼれたリリスの静かな相槌が響いた瞬間、簡易テーブルを囲んでいたシロツメ支部の面々の視線が赤髪の彼女へと集まった。
それに遅れて気づいたリリスは取り繕うように少し咳払いをした。
──やがて、肉眼でも徐々に輪郭が見えてきた海上に固く聳える建造物を見据え、赤髪の魔術師は握っていた古杖を揺らし向けた。
▼
▽
シロツメ支部の面々が船上で賑やかなやり取りを繰り広げている間にも、海上を直進していた宝船は速度を落とし、重厚な鉄の扉が開かれた巨大な専用ドックへと厳かに入港していく。
4時間半にも及ぶ航行の末についに宝船から錨が下ろされ、タラップが架けられる。やがて微振動する足場を踏み締めながら船から降り立つ、九人の乗客たち。
消えていく波の音と機械の駆動音が反響する広大なドック内。彼らを迎えるためにやってきたのは、ネスト社のブルーの制服を着こなした社員たちだった。
そしてリーダー格の社員の一人が今降りてきたばかりの九人の前に立つと、事務的な口調で「宝の提示を」とだけ告げた。
するとアキトが指を弾き鳴らした合図を受け、一行が次々と持ち運び差し出したのは──神技の行われた島の森の中でかき集めた【七つの宝】であった。
青い宝珠、赤い宝珠、操舵輪、琵琶、骨の鍵、三叉の戟、石のコンパス。
これら七つの宝が白い布をかけた査定デスクの上にずらりと並べられると、ネスト社の社員たちは手袋をはめた手で、その数を一つ一つと厳密に数え上げていく。やがて、全ての宝が贋作でない本物であることを確認した社員の視線が、静かに九人へと戻った。
「──確かに。条件は全て満たされました。ise会シロツメ支部の皆様、長時間に及ぶ航海ご苦労様です! では、このチケットを手にあちらに見える青いゲートをお通りください」
社員は胸ポケットから一枚の豪奢なチケットを取り出し、クランの代表であるミタライへと恭しく手渡した。その上質な紙面には、鋭い眼光でこちらを睨みつけるような【鷹のマーク】が鮮やかに刻印されていた。
「あの宝物って、やっぱりただの戦利品じゃなくて後で何かと使うアイテムだったわけね?」
「ふふっ。例にも漏れず、そういうことだろうさ」
最初はたどたどしかったリリスも、この葬魔七曜血選の醸し出す特有の空気が掴めてきたようだ。アキトは楽しげに肩を竦め、その鷹のマークが施されたチケットを横目に覗いた。
『七つの宝を全て集めた時、真の宴への道は開かれる』──海曜の神技【海宴七宝】のルール説明で告げられた案内人のラカンの言葉を皆が思い返す。
鉄と潮の香りが満ちる入港した巨大ドックの奥、指定された青い入場ゲートへと向かい、宝船を降りたシロツメ支部の九人は今ゆっくりと歩き出した。
特別なチケットを片手に青い入場ゲートをくぐり、案内された先。変哲のない鉄の廊下を渡りきったそこに広がっていたのは──なんとも贅沢で広大な饗宴の会場だった。
だが、それほどの規模に対してやけに会場内にいる人間の数が少ない。
豪奢な空間を埋めているのは、その一団の数を片手で数えられるほどの少数のクランだけだった。どうやら海曜の神技で手に入れた宝の数によって、招待される宴のグレードが厳格に分けられていたらしい。ここにいるのは、あの過酷な島で七つの宝を全て集めきった選りすぐりの精鋭たちだけなのだ。
会場内には、純白のテーブルクロスが敷かれた数々の円卓がずらりと並び、その上には色鮮やか、かつバリエーション豊かな無国籍料理の数々が惜しげもなく並べられている。あの辛口なペコロ・ココットでさえ、並ぶ料理を目にした瞬間に思わず目つきが一流のコックのそれへと切り替わるほど、その光景は圧巻であった。
耳を心地よく震わせる楽団の美しい演奏、最高級のヴィンテージワイン、舞台上で繰り広げられる絢爛な劇などなど──。贅沢を挙げれば尽きない特別なもてなしの空間を、シロツメ支部の面々はこれまでの戦いの疲れを忘れたように心ゆくまで満喫した。
そして宴で出された賑やかな催し事にもひと段落がついた頃。シロツメ支部の団員たちが集った円卓へと、ある一団が優雅な足取りで声をかけてきた。
場と空気がそこはかとなく華やかさを増した。高名なそのクランの名は【ダイヤモンドナイト】。
「……あのダイヤモンドナイト?」
突如の有名人のご登場に、ミタライは今目の前に現れたピンク髪の男の顔を見てすぐにそう呟いた。
「ダイナイさんのダイヤモンド石鹸っ、僕、愛用していますよ! 高いけどほんと良いんですよねぇー。いやぁー本物にお会いできて光栄だなぁ」
美楚羅はテンションを上げた様子で声を張り、ピンク色の石鹸の欠片を手に取って普段から愛用しているその証拠を見せつける。どうやらそれは有名クランが広告塔になり販売している特別な石鹸のようだ。
「ゆっ、有名なの……?」
周りの反応とのギャップに戸惑ったリリスは、無知ながらもおそるおそる問う。
「あぁ有名だとも。ダイヤモンドナイト、通称ダイナイと言えばイダイヤ王国を代表するアイドル的人気のあるクランさ。もちろん見栄えだけではなくその実力も申し分ない一級品揃い。中でもダイナイのサイトの名を聞けば、世に振り向かない女性はいないよ。──ところでサインお願いできるかな? ここに」
リリスの隣をゆっくりとすり抜けるように歩いてきたアキトが、ダイヤモンドナイトの底知れぬ人気ぶりをべらべらと饒舌に語り出した。
やがてそのまま前へと躍り出たアキトは一冊のファンアイテムを手にし、中央そして先頭にいた美男へと流れる動作でサインを求めた。
「ははは、一大クランise会の方々には規模も影響力も劣るよ。──はい。これでいいかな?」
クラン:【ダイヤモンドナイト】のクランマスター、サイトはファンの男性から細かく注文された箇所へとサインした。
「うん、最高だ」
アキトは写真集にご所望のサインを貰って満足したようだ。さらに特別仕様になったお気に入りのページを覗きながら何度も首を縦に頷いた。
「なんであんたがそんなの持ってんのよ……」
喜んでいるところに悪いと思いつつも、感じた気味悪さの方が勝ってしまった。リリスが苦い表情で指摘すると──。
「あぁ、もちろんこれはお出かけ用さ。あと三冊あるがね?」
「お出かけ用!? 三冊!?」
今しれっと男の口から呟かれたのは衝撃の事実、いや単なる虚言か。水浴びをし髪をかきあげる、そんなポーズを取るピンク髪の男が表紙を飾る写真集。
「サイトの流儀=ナイトの流儀」といかがわしい題の添えられた薄い一冊を片手に、るんるんと自慢げに語るアキトの様を見て、リリスは思わず声を裏返し驚いてしまった。
「ははは、ここまで熱意のある男性のファンにはあまり会えないものだから嬉しいよ。同業者の方々からの応援は、なおありがたい。──あ、そうだ。良かったらそちらの赤髪のお嬢様もお一ついかがかな? 【ダイヤモンド石鹸】、まずはお近づきの印に」
どうやらその収集癖のある男性冒険者のファンのことも、彼は広い心で歓迎してくれているようだ。穏やかに笑った後、サイトは思い立ったようにそう言うと、宝石のように美しく個包装された高級石鹸をリリスへと惜しげなく手渡した。
突如として始まったクラン同士の交流模様。
料理も酒も話も尽きない、海曜日の宴はまだ終わらない。冒険者たちは煌びやかなシャンデリアが反射する光のシャワーを浴びながら、眠らない夜を語り明かしていく────。