トランプメン 〜異世界で道化師プレイをつづけた結果、大変なことになったその男の末路〜 作:山下敬雄
「そんなものがこのメル・ザ・メルのMP装甲に効くかぁッ!」
ナイトが投げつけた金平糖手榴弾は、メル・ザ・メルの黄金の堅牢な魔法の装甲を貫けない。ギフトを受けてもびくともしないその装甲戦車は、すぐさま反撃の機銃を浴びせた。
豆腐屋の自転車の前輪が、機銃から乱射された魔力弾にやられて歪み溶けた。そして走行不能にまで破壊された自転車から放り出され、地を無様に転がる調子に乗ったナイトへと、旋回した長いプラスチックの鼻が向けられる。
「やべっ!?」
倒れた間抜けな鉄鎧の男へと狙いを定め、今メル・ザ・メルの砲口が火を噴いた。
「いい加減死ねぇっ、雑兵!」
「ナイト!」
しかしナイトに容赦なく向かったその危うい砲弾は、横から一瞬チカッと光った赤い弾丸に撃ち落とされた。
「まじか!? おー、相変わらずロックなお姫様だな。元気だったか?」
10メートル手前の空中で炸裂した砲弾の爆風にさらされながらも、構えていた盾をどかし、膝をついていたナイトはその場を立ち上がった。そして彼は今やってきた車椅子に元気に並走しながら、昨日ぶりに会った金髪の令嬢へと手を振った。
「私は大丈夫っ。あなたはなぜここに?」
「あーそれならこれだこれ、おしゃんなテレカが昨日の森に落ちてたのさ! 確か姫さんも似たやつを持ってたろ」
「てれか……もしかして花札? アキトが?」
「あぁ? そいつが誰かは知らねぇが、このナイトと友達になりたいらしいな。ははは、指定の時間に楽しいパーティーがあるから来いって来てみればこのザマだよ」
(やっぱりアキトは、この戦いが起こるのを見越して……)
ナイトがすっと皮袋から取り出したのは一枚の花札。海曜日の神技の際、アキトが森にばら撒き残していたものだった。ナイトが言うには、それが危険なこの場への招待状代わりになっていたらしい。
ガーネットは、やはり仲間をかき集めたアキトの狙いが最初からこの戦いの中にあったのではないかと、頭の中で訝しんだ。
『おぉ、しゃくれのー、謝罪の言葉はどうしたー?』
「ってありゃ、お前なんで死んでねぇの?」
『バカヤローおまえとおなじ、ギャグ補正枠だー』
「なぁるほど……って誰がギャグ補正枠だよっ、古参ナイトだぞぉ? 自力、自力ィ〜」
「ええいっ、調子に乗るなーー! もういいっ、当たらなければまとめて凍っちまえ、ダンゴムシども!」
ナイトとパロダ二人の漫才を遮るように、ムゥー大佐の怒号が響く。金色の戦車は背部に積んでいた隠し兵装を開帳し、氷結の魔力を蓄えた八連装のミサイルポッドを天へと向かい斉射した。
「ミサイルっ、こいつ奥の手を!? 着弾したらやべぇぞ!」
「それだけの魔力が……糸を引くのならっ!」
その場にとどまり両手を前に突き出したガーネットは、十の指それぞれに宿した魔力を操るように動かす。そして地面に寝かせ、まだ魔力を宿し生きていた赤い宝石が、今迎撃するように勢いよく天へと跳ね上がる。
冷たい魔力を垂れ流しつつ、ぐにゃぐにゃと複雑な落下の軌道を描いていた八つの氷結ミサイルは、全て鋭く浮上した赤い宝石の迎撃弾に余すことなく破壊された。
「な、がァ……馬鹿な!? すべてを……射抜い……た……」
ミサイルは地に達しその威力を発揮することはなかった。敵のあり得ない射撃精度に、ムゥー大佐は唖然とする。
冷ややかな輝きがダイヤモンドダストのように空から美しく散っていく。
『これって天才の天ってやつじゃねー?』
「おだてないで! まだ敵を倒したわけじゃないわ」
『おっけーパロパロー! しょせんはプラスチックの組み立て模型、バラすこともできらー、今のうちにパーツの隙間を狙えー。しゃくれのは死ぬ気で時間をかせげー』
「パロダの言う通りこの金メッキの戦車の弱点があるとすればそこだな? 俺たちの魔力を緩い接合部に差し込めば、なんとかなりそうな気がせんでもないーッ。てことで、散開! 反撃の時間だぜぇ!」
「分かったわ!」
パロダが膝の上で立案した作戦にナイトとガーネットは頷いた。堅牢な戦車メル・ザ・メルを討つべく、固まっていた三人の戦士は左右に散開した。