トランプメン 〜異世界で道化師プレイをつづけた結果、大変なことになったその男の末路〜 作:山下敬雄
『被る化けの皮の厚いやつめ──』
寺院の堂内に嘲笑うような怪しい声が響き渡った。
青い雷球を顔面に直撃された藤木の顔が、カレンダーのページのようにめくれ上がっていく。やがて原型を失ったその友人に似た薄っぺらい存在は、数多の紙となり散っていった。
周囲の参列者たちも皆同じように、顔が体が嘘のように紙に変わり消えていく。
立ち並ぶ人影が残らず、薄く、真っ白になり消えていく。そんな風に舞う紙吹雪の只中をゆっくりと歩き、今潜めていた姿を現したのは赤と黒の異形の戦士。
カレンダーマン、奴だった。
「そのまま祝福を享受していれば楽だったものを、貴様には、せめてもの慈悲が伝わらなかったようだな」
「祝福、慈悲? そんなもの俺は望んでなんかいない」
カレンダーマンは、さっき見せた偽りのシーンを祝福と慈悲という言葉で表した。だが、タイキは即座にそれをきっぱりと否定する返答をした。
「貴様が望める……立場ではないのだよっ!」
生意気な返答は受け付けていない。カレンダーマンは突如、タイキへと抜刀した剣で襲いかかる。タイキは振り下ろされたその不意打ちの刃を後ろに下がり避け、反撃を試みるも返す太刀は出せなかった。
そう、今の制服姿の彼に持ち合わせている武器はない。足元の青いスーパースニーカーだけが、冒険者タイキ・フジのことを表す装備であった。
「お前の全てを見てやったさ! はははは、志半ばでくたばったヒーロー気取りのちっぽけな物語をな!」
「見られたって構わない。みんなにはもう伝えてあることだ、俺のちっぽけさなんてっ」
「わざわざ己の恥と弱みを振り撒くとは身勝手なやつだな。その意味のない献身性と自己犠牲だけで、ヒーローを名乗る。まったく虫唾が走るやつだ!」
「男がヒーローに憧れて何が悪いっ!」
「直情的で薄っぺらいんだよ! 貴様という男は!」
タイキの魂の叫びが堂内に響き渡ると同時に、カレンダーマンの
しかし、振り下ろされた冷たい魔力を宿した致命の刃は、どこからともなく現れた青い雷刃に受け止められた。
「ほう……剣を見つけたか。運だけは良い」
「アキトさんが以前言っていた空間系のギフト。ここはそっちのギフトが作った〝まやかし〟なんだろ。ならっ……そこに剣があると思えば、あるッ!」
首の隣に重なる二つの刃。タイキは冒険者としての装備をまた一つ、その手に確かに握りしめていた。
「ハッハッハ! あの道化師気取りが余計なことをべらべらと。……だが、私のギフトは〝まやかし〟などではないッ!」
「どっちでも、斬る!」
刃は離れ、再び交わる。至近よりお互いに繰り出した二太刀目でタイキは魔力を一気に上げた。衝突したカレンダーマンの剣を刃ごと粉砕し、そのまま躊躇なく威力十分の雷剣を敵の胴へと強く叩き込んだ。
「っ……!」
しかし、前へと踏み込み放ったはずのその剣に返ってきた手応えは薄い。そう、まるで紙の束を切り裂いたかのような生気のない不気味な感触だった。
二つに裂かれて散る紙片が舞う中、剣を振り抜いた体勢でいたタイキに向かい、側面から鋭い殺気が押し寄せた。無防備な横腹を狙った槍の軌道を、殺気に反応したタイキは紙一重でかわし距離を取る。
(外したッ? いや、違う……敵がっ……二人!)
さっき刃をへし折り斬り裂いた正面の敵、今不意に横から槍で躍り出てきた敵。敵が武器を咄嗟に持ち替えたわけでも、自分が剣による攻撃を外したわけでもない。息を整えるタイキの前に並び立っていたのは、全く同じ姿をし、剣と槍、異なる武器をそれぞれの手に抱えた〝二人のカレンダーマン〟の姿だった。
「「どうだ、これも貴様の言うまやかしか? ははははは! もはや貴様に逃げ場はない。地獄から生まれ出た偽物のヒーローなど、再び元の棺桶の中にはめ直してやる! この過去と未来のくすみを浄化する……カレンダーマンがな!!」」
二人のカレンダーマンの言い放つ台詞が完璧にシンクロする。これは果たしてギフトの作る実体のないまやかしか、それを確かめる術は既に一つしかない。
指をさし勇ましい見得を切る二人の