トランプメン 〜異世界で道化師プレイをつづけた結果、大変なことになったその男の末路〜 作:山下敬雄
剣と槍、異なる武装でかわるがわる襲いかかる二人のカレンダーマンを相手に、青髪と剣を激しく踊らせる。タイキは数的不利を感じさせない勇ましい立ち回りで、己の雷剣を振るいつづけた。
「悪に加担していることも知らずに剣を振るうか」
「悪……! そっちに担ぐ正義があるようには見えない」
カレンダーマンはそんな哀れにも必死にもがく青髪の贋作のヒーローに対して、斬りつけると同時に〝悪〟というレッテルを貼り付けた。タイキも即座に冷静に剣を合わせ、言葉を返す。
「馬鹿め、先生は悪などではない。今までの先生の素晴らしき行いを知らないからそんなことを言える! 光と闇を理解する彼という大いなる存在は必要なのだ、このくすんだ世界に! 最後に全てを呑み込み、真に君臨すべきお方だ!」
「ミタライさんの大切なものを奪うような人がか!」
光と闇を内包する大いなる存在。ツツミを先生と慕うカレンダーマンの思い上がりに、タイキは重ねていた刃を前へと押し返し勢いよく振り抜いた。正面の敵を雷刃が切り裂いた直後、青髪の剣士に生じた隙を縫うようにまた、鋭い槍が側面から襲う。
タイキは突き出る槍の軌道を読み、自身の脇に抱えるように掴んだ。
「ハッハッハ、貴様は随分とあの支部長の女に誑かされたようだな。その身にまだちっぽけなヒーローを名乗る心があるなら、聞けっ! 奴はクロキリ本部を乗っ取ろうと謀反の計画を企てた大罪人、一度は足元でみじめに許しを乞い、先生のお心添えで命だけは生きながらえ、こうしてまた従順の皮を破りむざむざと、嘘と甘言で力を蓄え歯向かってきた恥知らずの女なのだよっ!!」
「ちがうっ!」
タイキは敵がべらべらと言い放った考えを、真に受けずに拒絶した。掴んでいた槍の柄から青い電流が石突にまで伝う。焼けこげた槍をカレンダーマンは手放し退がり、もう一人のカレンダーマンが紙吹雪とともに鋭い刃で前へと飛びかかりタイキに襲いかかった。
「違わぬっ! フッ……それに、貴様の心酔しているであろうあの男の正体も教えてやろうか」
「あの男……なにがだっ!」
再び剣の刃を交えながら、嗤うカレンダーマンは眼前の未熟なヒーローもどきへと、更なる真実を吹き込み明かす。
「奴は過去、城に召喚されたバークローズの騎士でありながら、自らその砕いた聖なる仮面を隠し、あろうことか世間を賑わす凶悪犯へと裏返った。そしてどうだ、今ではかつて忠誠を誓った王国の騎士団を手にかける始末。そんな男が貴様らの元でまた仮面をすげ変えて、道化を演じ続けているのは果たして何故か? 馬鹿なお前にも分かるだろう? 言わずともッ!」
支部長の女につづきタイキが敬うあの冒険者の男もまた、信用のできぬ裏切り者の過去をもつ。それも国を裏切った真の大罪人であると、アキトの秘された過去を握るカレンダーマンは嘲笑うようにそう言い放つ。
「バークローズの騎士……アキトさんがっ……」
「そうだ奴も恥知らずの一人、ただの逆賊の道化なのだよっ!」
明かされた真実に狼狽えた様子のタイキへと、言葉をつづけるカレンダーマンはその男のことを〝逆賊〟と定義する。いかに自分の属するシロツメ支部が嘘と虚飾に満ちて腐っているのかを、未熟なヒーローもどきへと知らしめた。
「そうか……あの実力ならそれでも不思議じゃない! ははっ、むしろ安心したかもしれない。やっぱりあの人は、普通じゃないっ!」
だが、タイキは迷わない。彼が今振り払うのは迷いじゃない、握るその剣に力を込めた。纏わりつき重なる声で囁く二人の敵を剛力の剣でまとめて振り払い、〝安心〟などと口にし、その険しかった顔に笑みを浮かべた。
「なにっ……!? 安心などとッ……奴を逆賊と知っておきながら受け入れるか! とても正義のヒーローを目指す奴の振る舞いなどとは呼べないな。ならば見て見ぬふりをする貴様も同罪ッ!」
「たとえあの人が悪人でも、教えてくれたその強さに偽りはない! ここを切り抜けて本当の真実を確かめる!」
「はははは、なんとも哀れでおめでたい奴め。強さだと……信念も地位も立場もない道化に染まった矮小な奴如きでは、先生の持つ絶大なあの力には永久に敵わん! そしてぇッ……必然的に、貴様もな!!」
タイキが剣を豪快に振り払うと同時に、走る決意の雷に裂かれた二人の赤黒のヒーローの腹。やがて青く散っていく紙吹雪、不死身のヒーロー、カレンダーマンがまた正義の形を束ねて復活する。
「「「贋作の貴様をここで叩き潰し、証明してやろう!!」」」
「「「このカレンダーマンがっ」」」
「限りなき正義であると!!!」
剣、槍、弓、斧、鎌、爪、盾──紙吹雪の演出の中、颯爽と現れたのは七種の武装を手にした七人のカレンダーマン。過去と未来を見通す神眼を持つ、彼の正義に限りはない。
悪を討つために鍛え上げた七人の不死身の戦士たちが、たった一人の贋作の青きヒーローへと、各々の得意とする武器を振りかざし一斉に襲いかかった。