トランプメン 〜異世界で道化師プレイをつづけた結果、大変なことになったその男の末路〜 作:山下敬雄
七人のカレンダーマンが繰り出した連携技──【デッドリーウィークエンド】。
剣が剣を抑え、槍が横腹を襲い、弓がマントを射抜き、鎌が足を刈り、斧が地を砕き、最後に塞ぐ盾の影から飛び出したバグナウの爪が獲物の肩口を深く抉った。
「言ったろう、まやかしではないと。味わう全てが本物だぞ!」
傷つき血を流す青髪の剣士の情けない姿を見下ろし、総勢七人のカレンダーマンが一斉に高笑いを上げた。
「剣も槍も弓術も盾術も拳法も、それぞれに鍛え上げた七人のヒーローの姿こそ、このカレンダーマンの真骨頂! 故にハリボテの強さではないのだよ」
七人の英雄に、七つの武器。各々が異なる仮の時間軸で日々異なる武術の研鑽を積んだ姿こそ、カレンダーマンの発揮する真の実力。一人一種ゆえに、全てが達人級の域にまで達することが可能であった。一人一人の持つその強さはまさしく本物である。
「少しばかり剣が使えたとて、この七人の連携攻撃を貴様では避けられまい」
タイキが多少剣術で勝っていようとも、焼け石に水。カレンダーマンが得意とするのは剣の腕だけではない。言わば、オールレンジ&オールマイティー。分身し七つの武器を操るカレンダーマンの連携攻撃を、たかが剣一本で破ることなぞできない。
「辛かろう? 正義なき弱き刃を振るいつづけるのは。認めたくなかろう、自分が最初から履き違えた悪の側だったとは、ハハハハハ」
カレンダーマンは嘲笑を強める。絶望的な人数差の包囲網を敷き、まだ大局の読めぬ逆賊に加担した未熟なヒーローもどきに、もはやそちら側に信ずる正義すら存在しないことを改めて突きつける。
「……そんなお決まりの
だが、そんな絶望の中でもなお不敵に笑う青髪の返答に、カレンダーマンはそれまで浮かべていた余裕の笑みを砕かれた。
「こいつめッ……! いい、ならば死ね! その手に穢れた正義を抱えたままな!」
生意気にもヒーローを騙られた怒りを形相に滲ませ、七人のカレンダーマンは、一斉に地を蹴った。
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素速く始動した七人の影に対し剣をどっしりと構え、呼吸を整えたタイキの全身から溢れた微弱な魔力の波動が、一気に周囲へと拡散するように薄く広がる。そして極限まで集中した赤い目を凝らし、怒涛の如く押し寄せる敵の流れに、タイキは己の剣と足をしなやかに踊らせていく。
七人が阿吽の呼吸で披露する流れるような連携殺法。目まぐるしく交錯し、通り抜けていく影。その重なる影の隙をスーパースニーカーを踏み込み駆け抜けた、靡く青髪と唸る雷刃。
交わり入り乱れた刹那の攻防の連続──その果てに。
バグナウの鋭い爪が切り裂いたのは緑のマントの端。息もつかせぬ六人の連携攻撃の間、生じた必中の隙に繰り出した爪を光らせるカレンダーマンの一撃は、青い敵の肉を掴み損ねていたのだった。
「なっ……!」
偶然か、いや──。今、虚空をすり抜けた不可解な手応えを、カレンダーマンは険しい顔で訝しむ。今の一連の戦いの流れに何のエラーが生じたのか、その要因を探るように深く頭を巡らせる。
タイキは完璧とまではいかずとも、七種の武器による流れる連携攻撃を掻い潜り、受ける致命傷を回避していた。
しかも、驚くべきはそれだけではなく。七人の内の一人が、遅れて咲くように光った青い雷光とともに紙屑となり散っていく。あろうことかタイキは、その猛攻を凌ぎながらも同時に一人、剣で敵を切り捨てていた。
「もっと深く、速く……! もっと知りたい……あの人の強さを……!」
タイキはさらに深く己の意識を研ぎ澄ませていく。帯電し妖しく揺れ動く青い髪に、瞬きも忘れ魔力を灯らせる赤い眼光。恐れと際限を知らぬ未知の生物は、なおも己の剣と技の限界に挑みつづける。
視界の先に七つの首を揃えて立つその難敵を食い破らんと、前を見据えたタイキ・フジは握る剣をだらりと低く構え直した。