トランプメン 〜異世界で道化師プレイをつづけた結果、大変なことになったその男の末路〜 作:山下敬雄
激しく刃を交えできた戦いの傷跡に、偽りの寺院がついに崩壊していく。崩れゆく柱と天井、バラバラに底抜ける地。争う者同士がもつれ合い落下した先にあったのは、火の海の上に聳え立つ一体の巨大な仏像。仏の見守るその大きな掌の上こそが、ヒーローたちの降り立った最後の決闘場であった。
七人のカレンダーマンが再びタイキに仕掛ける。今度は武器ごとの連携の順番を変えて、囲む青髪の剣士を今まで見せていない組み立て方で狡猾に攻め立てた。
だが、青髪の剣士はまたしてもその包囲攻撃を剣一本で掻い潜ってみせた。最後にカレンダーマンが弓から放った矢の攻撃は、青髪の男の首の横の薄皮までしか穿つことはできなかった。
(やはりこいつ!? このデッドリーウィークエンドの連携に対応してきているっ……! ええい、こっちは組み立てを変えたのだぞ! 奴め、どういうからくりだ!)
外した弓をだらりと下げたカレンダーマンが驚愕している間にも──。
今度は二人、斧と鎌を振るっていたカレンダーマンたちが斬られた傷口から青く爆ぜ、焼けこげた紙吹雪が派手に舞い上がる。
またしても死地を素速く駆け抜け、雷刃をその手に握りしめるタイキ・フジ。巨大仏像の掌に黒い躍動感のある
(だが、この不死身のカレンダーマンを倒すことはできまい。何をしようとも避けられまい連携攻撃、着実に傷つく体。どれだけ上手く対応しようとも、この七技闘滔のデッドリーウィークエンドは完全には躱せまい……。なのに……おかしい……。こいつはもうずっと、一人で斬り続けている!)
雷剣を受け取った三人のカレンダーマンが、また青く爆ぜた。その後も七人の波状攻撃をつづけるも、タイキはただ押し寄せるその敵の猛攻に合わせて、腕が千切れんばかりに剣を振るい危ういステップを踏みつづけた。
(なぜ、こいつは俺の技で傷を受けるほどに迫力が増す……。なぜ、こいつはここまでこの剣戟入り乱れる死地の中をその足で踏み込むことができる……。チッ……だが、これだけの集中を続ければいずれ体力と魔力は尽きるはず。その瞬間こそが、こいつの
カレンダーマンは焦らない。まだこの技を破られた訳でもない、いくら分体を散らされても七人の不死身の英雄は復活を遂げつづける。逆に七人の起こす荒波に飛び込み、徐々にその体を蝕まれ息が荒くなっているのは青髪の剣士、奴一人であった。
(そうか……分かったぞ! こいつは命を削った代償に技を繰り出している。自己犠牲のヒーローもどきが行き着いた先が、破滅型のギフトという訳だ! 同じ雷でも、先生ならばこのような戦い方はしない。力量がっ、魔力がっ、持って生まれた器が違うのだ! そう、このような──)
敵はやはり未熟。青髪の命を削るような戦い方がそれを証明しているように、カレンダーマンには見えた。
「愚かな戦い方はしないというのだよッ!! 何度やっても同じだ、死ねっ!! 偽りのヒーローーっ!!!」
大仏の掌、ゆっくりと動き立ち上がった五つの太い指先から七つの素速い影が、一斉に空へ向けて跳躍した。
立ち向かうその命を削り切る。満身創痍の青髪のヒーローへと、とどめを刺す時が来た。疲れ果て動きの鈍った青髪に、最後の連携技【デッドリーウィークエンド】が空から降り注ぐように襲いかかる。
だが、万全の勝利を確信する七人のカレンダーマンは気づかない。彼らが仏の指先より飛び上がった時には既に、その勝負が決していたことに──。
『じりり……』七人のそれぞれの身の内に、今、同時に何かが流れ伝った。空中で一瞬、そんな不可解な感覚が痺れるようにカレンダーマンたちの身を伝う。そう、寄ってたかって獲物を追い立てた気になり逆にその身を蝕まれていたのはカレンダーマン、彼らの方だった。
そのことに気づいた時にはもう、逃げ場のない空へ彼らは自らの身を投げ出していた。
地上から宙に散りばめられた七つの首を見上げる青髪の剣士、真っ赤に燃える彼の瞳には、その星々のように散らばった七つの点を結びつける、痺れる魔力の導線が確かに見えていた。
剣、槍、弓、鎌、斧、盾、爪──七つの武器を振り上げていた英雄たちが今、青い一本の太い雷電の綱に繋がれた。
「【
そうタイキが叫んだ瞬間に、増幅した青い雷の魔力がフラッシュする。
地上から空に留まる耳をつんざいたその若き剣士の雄叫びと同時に、カレンダーマンの体に深き電流が走る。その時、一気に押し寄せたあまりの魔力の奔流に呑まれ、ヒーロースーツを焼け焦がすカレン・アズマの視界に突如、ギフトによる【未来視】のフラッシュバックが強制発動した。
「お前は、いったい……!! ナっ──」
そこに映し出されたのは──未来の戦場。数多の敵を、巨敵をも討ち倒し、剣を天へと掲げた青い英雄の姿。
カレンの覗き込んだ未来視のピースが刹那に砕け散っていく。
空を走るように示現した青い大百足が七つの悪を決して逃がさぬように縛り上げ、固く結び上げられた魔力の大綱が、今、刃を収めた英雄の手で断ち切られた。
勢いよく鞘に納刀した刃。その動作を引き金に、七人の敵の体を高速で駆け巡っていた雷電の魔力の奔流が堰き止められた。堰き止められた魔力は一斉に行き場を失い、百足の大綱が千切れると同時に連鎖爆発を引き起こす。
天を支配するように咲き誇る青い爆発花火。宙を泳ぐ百足の化け物に捕えられた七人のカレンダーマンが、断末魔もかき消す豪雷に同時に滅された。
「俺は次に行く! 全てを斬り伏せて!」
英雄はいつまでも散りゆく天を見上げない。ひび割れ焼け焦げた巨大仏像の手の上、青いスーパースニーカーを踏み締める。
やがて誘われていた敵のギフトの