トランプメン 〜異世界で道化師プレイをつづけた結果、大変なことになったその男の末路〜 作:山下敬雄
二度の青い雷光が竜の腹鼓に轟いた直後、荒れ果てたパーティー会場はいつの間にかみるみると、煌めく泡粒たちに支配されていた。
(なんや、石鹸屋のギフト……鬱陶しい目眩しのつもりか。ネタ切れの道化師のやりそうなことだ)
四方に渦巻く泡の風の中で、囁く小賢しい声が聞こえる。この見目爽やかで楽しげな演目を仕込んだのは冒険者アキト。ツツミが聞き飽きた一人の男の声であった。
『キミはもうジブンに勝てない』
「逆らうこともできんやつが、ままごとのつづきか」
『そう、ままごとのようなもの。キミの自慢の三位一体のギフトは欠陥仕様、先程まんまとこちらが焚べた魔力を補給したのがその証拠さ。おまけに言うと設計図を失くして、手放したくても手放せないんだろう? ──ソレを? 恐怖が透けて見えるさ』
一度灯したその魔力を消さずに、竜はここまでずっと合成に成功した光の戟を握りしめたままいる。そんな竜が強力なギフトを手放したくない理由を、アキトは勝手な推論を披露し説いていく。
「ドラハハハ……何を言いよるかと思えば、的外れなことを。それでは先生は任せられんな」
突如、飛び交う泡粒の隙間から幾本もの鋭いナイフが飛んできた。だが道化師の投擲したコレクションのナイフは全て、竜の首を掠めていき一つも当たりはしなかった。
やはり竜の腹に平らげられたあの血の契約のギフトがある限り、アキトは決してツツミを直接攻撃をすることはできない。ツツミにとってシロツメ支部のアキトはもはや、中身のない悪戯をつづけることしかできない、牙の抜けた犬も同然であった。
しかし竜がその道化に一瞬気を取られていると、ナイフが飛んできた方向と全く別の角度から、何者かが竜の身を引っ張ろうとしていた。
「98……!」
「っ──竜の尾を噛むどぶ鼠が!」
電撃を流しても離れようとしないアトラに、苛立つツツミは掴まれた尻尾を幾度も地に叩きつけた。
「9……9……」
「チッ……!」
アトラはそれでもしがみつく。ツツミが纏わりつく血塗れの鼠の処理に手間取っていると、間髪入れずに次の攻撃が仕掛けられた。
「砕けるのは……貴様の番だ、ツツミ! おい、早くやれっ!」
竜に宣戦布告するのはサイト。一度砕けたダイヤモンドナイトが密かに寝返り、その華麗なるギフトを行使する。
ピンク髪の騎士は滲む怒りの形相で周囲の泡を一気にかき集め、道化師の立てた作戦通りに一人の大男へと託した。
「ハハハ、焦るな若造。我が気操術に操れぬものはない」
周囲を取り囲んでいた泡粒の目眩しが全て、羅黄の掲げた大きな一手に集いゆく。大きな一つの泡粒の内部に圧縮された無数の微細な泡が、回転を続ける。
本日二度目のお披露目となる気操術【渦威】。
サイトと羅黄、ダイヤモンドナイトと現剣流道場の二人のクランマスターが協力し、今宵限りの一つの大技を成し上げた。
「たっぷり食らえ──【
道化師の誘うショータイムは終わらない。クラン連合軍による第三の攻撃が放たれた。