英霊戦線クロスロード:エピソード0 ―メンテナンスの二人―   作:美風慶伍

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―メンテナンスの二人―

 防衛都市イスタンボール、その中心部から離れたチョルルの街に、エンジニアのエレナ・シルバーウィンドのエンジニアショップがある。

 この世界における重要戦闘戦力である戦闘機械シャドウスティール・ヴァンガードの製造やカスタマイズ・修理・メンテナンス全般を行うベテランショップである。

 店の規模は消して大きいとは言えないもの、店主であるエレナの腕前もあって、傭兵界隈では名の知れた店であった。

 

 異世界から漂着した少女カリナ・ウイングスは、この世界の戦闘職種である傭兵アーセナルコマンドになると決めてからエレナのところにずっと身を寄せていた。

 

 その日は傭兵としての遠征任務を終えて久しぶりにエレナの元へと戻っていた。

 

「エレナさん、ただいま戻りました」

「お疲れさん。しばらくは休暇だろ? ゆっくり休みな。その間にスティールウォーリアの方はメンテナンスしておくから」

「はい! ありがとうございます」

 

 そうはいいつも、カリナが何もせずのんびりとできるような性分ではないのは、誰の目にも明らかだった。

 パイロット衣装を上下脱ぐと、作業用のつなぎ姿に着替えてガレージに戻ってくる。

 カリナの愛機ディールウォーリアーは、すでにハンガーデッキに固定されてメンテナンス準備を始めていた。

 休まずにすぐに戻ってきたカリナにエレナはすぐに気づいた。

 

「なんだ、戻ってきちまったのかい?」

「じっとしてるのは性に合わないんで」

「それじゃ作業手伝ってもらうか」

「はい!」

 

 ちなみに愛用の聖剣は寝室に置いたままである。

 

「コックピットに入って、メンテナンスモードに切り替えてくれ」

「分かりました」

 

 ハンガーデッキ脇の階段を上り、スティールウォリアーのコックピットに入る。

 ちなみにコックピットハッチは開けたままにしてあった。

 規定操作で立ち上げた後、コンソールパネルのメインスイッチブロックを操作してメンテナンスモードに全機体状況を切り替える。

 ディスプレイパネルにモード切り替えが成功した旨のメッセージが出た。

 

「モード切り替え成功です」

「よし、チェックシークエンスプログラム、スタートしてくれ」

「了解、スタートしました」

 

 エレナはフロア側で、メンテナンス用の作業タブレットで機体状況をモニターしている。

 

「よし、こっちでも確認した。1番から48番まで、全チェックプログラム――、作動完了だけど……」

「どうしました?」

 

 エレナの言葉が止まったのでカリナは思わず尋ねた。

 

「41番、左足踵周りでエラーが出てるね。詳細エラーコードは……フィードバック回路のポテンショナルメーターセンサー不良か。単純交換だけど一番面倒なの来たね」

「そんなに大変なんですか?」

 

 メカニックのことはまだまだこれからなカリナだ。素直に疑問の声を出した。

 

「交換自体はそんなに難しくないんだけど、部品のある場所に到達するのに、山ほどの部品を外さないといけないのさ」

「時間がかかるんですか?」

「今日の晩飯くらいまでには終わらせたいところだね」

「お手伝いします」

「ああ、そう言ってもらえると助かるよ」

 

 そんな言葉をやり取りして2人はメンテナンス作業に入ったのだった。

 

 結果から言うと、メンテナンス自体は問題なく終わった。

 それでも時間がかかったのは、熱心に作業を見守るカリナにレクチャーしながら作業を進めていたからである。

 交換した部品は左かかと部分の関節部分に装着されている、角度検知用のセンサーユニットだ。足のかかとの角度を拾い上げて機体のコンピューターユニットへと情報を送っている部分だ。

 センサーの機能自体はシンプルだが、骨格の中心部分に近いところなので、そこに到達するまでにかなりの部品を外さないといけないのだ。

 

 踵周りの外板を外し、配線周りを整理する。

 内部パネルを複数外し、関節潤滑用オイルの高圧圧送パイプを外す。

 作業は丁寧にミスのないように進められる。

 要所要所でエレナはヴァンガードというマシンの両手について事細かに説明してくれた。

 

「――で、潤滑オイルのバルブコネクターからオイルを圧送する。その際に異常な振動やオイル漏れがないかチェックしてくれ」

「はい!」

 

 作業は問題なく進められ、センサーの交換と各部オイルの交換により完了後の再チェックでは無事OKとの表示が出た。

 

「回路接続よし、メンテナンスモードのままオイル潤滑作動させてくれ」

「了解、オイル潤滑作動します」

 

 コンソールのサブキーボードを叩いて左脚部のオイル系統を潤滑させる。オイル漏れも起こらず無事に完了する。あとは外した部品を元通りにしておしまいだ。

 

 全ての作業が終わったのは夜8時を過ぎた頃だ。とっぷりと夜にくれた中で、十分に体を動かした満足感の中で2人は作業を終えた。

 

「お疲れさん助かったよ」

「いえ、邪魔したみたいになってしまって」

「そんなことないさ。それに1人で黙々と作業してると話し相手が欲しくなるもんなんだよ」

「そうなんですか?」

「ああ」

 

 エレナは優しく微笑んだ。

 

「あんたもこっちの世界に来てから学ぶことは色々あるだろうけど、あんたは嫌な顔一つせず素直に受け入れていく。だからこっちも教え甲斐があるんだよ」

「そう言ってもらえると安心します」

 

 そう言いながらエレナはカリナの肩をそっと叩いた。

 

「あんたの戦いが一体どこに繋がっているのか検討もつかない。でも、いつかみのりあるどこかにたどり着くはずだ。くじけるんじゃないよ」

 

 魔法世界から未来世界へと漂着してきてしまったカリナ。その心細さを知っているからこそのエレナと優しさだったのだ。

 

「ありがとうございます。私は私のできることこれからも続けようと思います」

 

 その言葉にお互いうなづき合う。

 

「さてそれじゃ仕事後は片付けて飯にしようか」

「はい!」

 

 2人はまるで実の母子のように息がぴったりと合っていた。

 そして、2人は作業場を片付けると建物の生活エリアの方へと帰って行ったのである。

 

――――――――――――

この物語の続きは

3月19日 19:00より公開される

『英霊戦線クロスロード』本編で描かれます。

 

少女勇者カリナが辿る運命の戦いを

ぜひご覧ください。

 

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