Monster Hunter ~失ったもの、手に入れたもの~   作:小松菜大佐

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11話 思わぬ再会

騒ぎがようやく終わり、ひとまずと言った感じで酒場らしい騒ぎに戻った頃。

周りからの奇異の視線を無視しつつ、ようやく俺は、ギルドマスターの所まで歩いていくことができた。ちなみに、いつの間にかあのお兄さんは消えていた。本当に面倒事が嫌いな人だな。

ギルドマスターの近くでは作戦会議をやっているらしく、フラディオさんのパーティと、なぜかあの青年が混じって話し合っていた。時々少女と青年が喧嘩をするらしく、不定期で届いてくる大男さんの怒りのプレッシャーが俺にヒットする。勘弁してくれ……。

そのプレッシャーが薄くなった頃合を見計らい、俺はダッシュでその横を駆け抜け、ギルドマスターと思しき人へ声を掛けることに成功した。当然、目上の方なので俺なんて使えない。ってあれ?大分俺が使えるタイミングないな。やっぱ僕に戻そうかな?どうも慣れないし……。

「すいませーん」

「……なにかの?」

柔和な表情、しかしその奥には鋭い眼光が見え隠れしている。この人ももともとハンターだったのかな……。

「僕、ラージ村から来たタクト・シノカワと言う者なんですが。ギルドナイトの方に連れてこられたまま置き去りにされて……」

僕がそう言うと、ギルドマスターは鋭い眼光を収めて、その代わりに溜息をついた。

「はぁ~、ロンはやはり気分屋じゃのう……。腕は確かなんじゃが……」

「?」

あの人はロンというのか。聞いた事はないけど……。

「すまない、君がタクト君か。遠路はるばる大変じゃったろう?」

「いえ、むしろ楽しかったです。建物は大きいし、初めて見た海はどこまでも広くて……」

「ほっほっほ。初々しいのお、なあ、ベッキー」

「そうですね、なんだか微笑ましいです」

そう言って話に混ざったのは、これまた美人さんであった。街の中では珍しい黒髪。緑色のエプロンドレスが最高に似合っていて、見ているだけで顔が赤くなってしまいそうだ。

「初めまして、タクト君。私はベッキー、ここの受付をしてるから長い付き合いになると思うわ。よろしくね」

にこっ、と笑みを向けられ、僕は思わずうつむいてしまう。

「あら、なにかしてしまったかしら?」

「い、いえ。ベッキーさんがお綺麗なので、緊張しちゃって」

「ふふっ、ありがと。それで、紹介状は持ってる?」

「あ、はい。ここに……えと、どこかな」

がさがさとバッグの中を漁る。これは財布だし、これは写真。うーむ……あ、あった!

「こ、これです!」

「はい、じゃあ確認するわね……」

そう言ってベッキーさんは慣れた手つきでペーパーナイフを取り出し、封筒を破って中の羊皮紙の手紙を取り出す。それを視線だけで流し読み。

「……うん、本物ね。じゃあ、これ」

と言ってこれまた慣れた手つきで取り出されたのは、あの分厚いハウトゥ本よりもさらに分厚い帳面。

「えーと……あった。ここに名前と年齢、性別に使ってる武器を書いてね。はい、ペン」

「あ、ありがとうございます」

綺麗な羽ペンを受け取り、僕はそこに『タクト・シノカワ 14歳 男 片手剣』を書いてペンと帳面を返却する。片手しかないことにあえて触れてくれていないし、さらに書きやすいように帳簿の面をこっそりと押さえてくれていたこと、その優しさに僕は少し感激した。

「これでいいですか?」

「ええ、大丈夫よ。じゃあこれ、登録証」

そうやって手渡されたのは、ペラい紙。

「イャンクック討伐最高記録を持っているとは言え、新人には変わりないから、君のハンターランクは『ルーキーハンター』よ。ちょっと部屋が悪めだけど、アレルギーとかない?大丈夫?」

「いえ。僕は体だけは」

丈夫なので。

そう言おうとしたら、会話に乱入してくる人がいた。

「ちょっと待てよ!」

あの青年である。

「なんで俺の時だけルーキーで、こいつは俺より上のルーキーハンターなんだよ!!おかしいだろ!?」

え?どういうこと?

その疑問は、ベッキーさんの言葉によって解消された。

「君が持っているのは村の記録。タクト君が持っているのは公式記録(・・・・)なの。ハンターズギルド登録後最短大型モンスター討伐記録、それがタクト君が今回達成した記録。そして今回、タクト君は正式に、ミナガルデハンターズギルドにスカウトされたの」

「スカウト!?」

青年のその大声に反応したのか、さっきまで奇異の視線を送ってきた人たち含め、多くの人がこちらを見てきた。目立ちたくなかったんだけど……。

――――スカウトだってよ。まじで?ああ、ベッキーが言ってた――――

―――あんなほっそい小僧が?嘘だろ?嘘だったらスカウトなんて大声で言わねえよ―――

そんな声がちらほらと、僕の耳に届く。

しかし、青年は何を思ったか、認めようとせず、

「はぁ!?スカウト!?そんな体で―――」

僕にとって禁句であるワードを―――

「ジーグ!!」

と思ったら、また乱入者が。今度はあの少女のようだ。

「いきがるのも程々にしなさい!!」

「はぁ?いきなり何を」

「あんたはもう黙ってて!」

そう言って無理やり黙らせた少女は、僕に視線を向けた。

「悪かったわね。こいつ、調子に乗ってて」

少々苛立っていたが、それを押さえ込み、僕は引き攣る口を無理やり釣り上げた。

「いいですよ。慣れてますし」

「ありがと。ほら、ジーグも謝んなさい!」

「な、なんで」となぜかまだジーグ、という青年は戸惑っている。

「あんた、さっきそんな体で、って言ったわね?」

「ああ、言ったよ。言ったさ!こんな奴がそんなことできるわけがねえ!」

「ッ!……どこまでアンタは!」

少女は僕に一言、ごめんなさいと言ってから体をジーグに向けた。

「アンタ、この人は左腕がないのよ!?」

ああ、ごめんなさいって腕のことを言うからか。いきなり謝られたから分かんなかったよ。

「え―――」

「アンタが村でどんなことしてたかは知らない!でも、アンタがイャンクック討伐最速記録を取った所で、五体満足なアンタより絶対にこの人の方が苦労してたはずよ!?」

「……」

「大剣使いのアンタなら分かるでしょ!?もし片腕がなかったら、剣なんてまともに振れないはず。それでも、この人は諦めずに戦い続けて、ハンターズギルド史上に残る程の記録を打ち立てた!これがどれだけの偉業か分かる!?それでもアンタは、まだこの人を馬鹿にするの!?」

「……」

その思いがこもった言葉に、ジーグは一度黙り込んだ後、僕に向き直って頭を下げた。

「……悪かった。あんなこと言って。大変だったろうに、それを俺は真っ向から否定しようとしてたんだ。本当に悪かった」

その言葉に僕は思わず戸惑った。あんな頑固そうな人が素直に謝ってきたんだ、そりゃ驚くに決まってる。

「いいですよ、全然気にしてませんから」

「そう言ってくれるとありがたいよ。でも、誤解しないでくれ。俺はアンタの腕のことを言うつもりは無かった。でも、体が細いから疑って掛かっちまったんだ。その結果、アンタを怒らせちまったんだ。ホントにごめん」

「あ、そうだったんだ」

そして腕のことは言ってなかったらしい。本当は、意外といい人なのかな?

「俺の名前はジーグ。ジーグ・グランエストってんだ。よろしくな」

そう言って、差し出される手。

「僕はタクト・シノカワ。これからよろしく」

それを僕はしっかりと握り返す。

「うお、手すっごいな!村じゃどんなトレーニングしてたんだ?」

「素振りくらいだよ、ほかにはなんにもしてない」

「マジ?すっげえな、素振りだけでこんなになるのか……」

「そういうジーグさんもすごいけどね」

そういうと、ジーグさんは気まずい表情をした。

「さん付けはやめてくんねえか?なんか、ぞわってするんだ」

「んじゃあ、君でいい?」

「ああ、それならいいぜ」

「じゃあ、ジーグ君」

「おう、大丈夫だ」

「おーい、二人で盛り上がってじゃないわよ」

そう言ったのはあの少女。

「ほら、アンタも座って。ジーグも」

その言葉に、僕は疑問符を浮かべる。

「いいの?基本的にパーティは4人だよ?」

昔、ハンターの創始者である4人がいて、その内の一人が婚約者を連れてきたんだそうな。そのまま狩場に言ったところ、不幸な事故に遭いその婚約者さんは死んでしまう。これは呪いだー、と思ったハンター達は4人以上でパーティを組むと誰かが死んでしまうという伝説を作り、それが今でも残ってるんだとさ。めでたくないめでたくない。

「誰がパーティーに入れるって言ったのよ。作戦会議も終わったし、これも何かの縁だしなんかあったときにパーティ組むかもしれないから自己紹介くらいしようかな、って思っただけ」

「あ、なるほどね」

それなら納得、と僕は近くにあった椅子を持ってきて(ここがハンターズギルドなのもあるのか、席も基本的に4つだ)席に着く。同時にジーグ君も席に着いた。

「さて、と。まずあたしから。エルメリア・フランポートよ」

「ッ!!」

あの、フラディオさんと話す前に一瞬見えたビジョン。

記憶の断片とそれが、そしてこの少女が放った言葉によってそれらは完全に繋がれた。

「え、エル……ちゃん?」

言葉が勝手に口から漏れる。体が震えていくのが分かった。

「……へ?」

言葉を受けた少女は、

(゚д゚)ポカーン

↑こんな顔をしている。

「……あ、あんた、今なんて言った?」

「だ、だから、エルちゃんって」

「そんな呼び方する奴……あ、まさか、あの時の男の子!?」

呆然から驚きへ表情がシフト。うん、この表情変化の分かりやすさは確実にエルちゃんだ。

「ど、どういうことだ!?」

とジーグ君は驚きの声を上げている。

「えっとね、昔僕の街にエルちゃんがきたことがあったんだ。確か……あれ?なんで来たんだっけ?」

「あら、言ったこと無かったっけ?避暑のためよ」

「ああ!そうだったね……って、あれ……?」

言葉を発そうとしたとき、懐かしい光景が頭に浮かんできた。

昔。僕は、涼やかに吹く風のなか、髪を揺らして佇む少女を見つけた。

白い日傘を差し、それに負けない程に白い肌。僕はそれに惹かれるように、近づいていった。

(ねえねえ、君はどこからきたの?名前は?)

矢継ぎ早に仕掛ける質問に、少女は戸惑ったような素振りを見せる。そこで僕は自分のミスを悟ってフォローに入った。

(ご、ごめん!一気に言って……どこからきたの?)

そう言うと少女はおろおろとした後に、ゆっくり、ゆっくりと口を開いた。

(し、知らない……)

(知らないの!?)

(だ、だって、私、家から、あまり出たこと、ないから……)

(……そっか。確かに、肌真っ白だ。綺麗だね)

(……あ、ありがと……)

(じゃあ、名前は?)

(え、エルメリア――――)

「ブランフォートって名乗ってなか……」

そこまで言ったとき、ランス使いの人から凄まじいプレッシャーが飛んできた。な、なんだなんだいきなり!?

「ん?どうしたの?」

「い、いや!なんでもないよ!!ごめん、話切っちゃって……」

「ん?まあ、いいわ。武器はハンマー、ランクは『闘龍士』。取り敢えずこれからよろしく!」

「と、闘龍士!?」

闘龍士。

それはハンターランクの中でかなりの高ランクであり、ギルドハウスで借りれる部屋も確かクイーンランクだったはず。すごいんだな……。

「なによ、あんたもジーグみたいに文句付ける気?」

エルメリアさんは目を細め、こちらを睨んでくる。

「違うよ!その装備、武器、あと防具の付け方見れば疑うわけがないよ!ただ、僕と変わらないくらいっぽいのにすごいなーって!!」

「……ふーん。よく見てるじゃない」

そう言ってエルメリアさんはそっぽを向いた。あれ、怒らせたかな?

「……ガノン・ドノンだ。武器はランス、ランクはお嬢様と同じく闘龍士だ」

「また闘龍士か……すごいですね、皆さん」

とはいうものの、どちらかというとガノンさんの言った『お嬢様』が気になるんだけど……まあ、触れない方がいいだろう。

「そして、先ほどもお会いしましたね。改めまして、僕はフラディオ・ハート。使用武器はタンクメイジというゲリョスの!武器で、ランクは皆さんと同じく闘龍士です」

「あれ?あんたたち、知り合いなの?」

そう言うエルメリアさんは不思議そうに首を傾げている。

「ええ。ジーグ君とお嬢さん、お二人が喧嘩している間にタクト君が見えましてね。ゲリョスについての魅力を語った次第ですよ」

「……(チョイチョイ)」

と、エルメリアさんが手招きして僕を呼ぶ。

(どうかしました?)

(……あいつ、不思議な奴だから、気にしないでね)

(別にしてませんよ、面白い人とは思いましたけど)

(なら、いいけどね)

「どうかしましたか、お二人さん」

「「別になんでもない(わ)(です)」」

「なら、いいですが」

「じゃあ、次はアンタね」

そう言って向けた指の先にはジーグ君がいる。

「お、俺か?」

「ええ、なんだかんだでアンタのことなんにも知らないし、丁度いいわ」

「なら……ごほん。俺はジーグ・グランエスト。大剣使いでハンターランクは……」

「ルーキー、よね?」

「う、うっせえな!」

ニヤニヤと笑いながらそう言うエルメリアさんと怒鳴るジーグ君は、なかなか相性がよさそうだ。もしかしたら、しばらくする内に新しいカップルが見られるかもね。

「じゃあ、次。お願いできる?」

次に言葉が向けられたのは僕。僕は一つ頷いておいた。

「えっと、僕はタクト・シノカワって言います。年は14―――」

「「14!?」」

ジーグ君とエルメリアさんから驚きの声が上がる。そんなに意外だったのかな。

「俺より2歳年下……でもランクは上………」

「私より年下だったなんて……」

「?」

「いや、なんでもねえ。話、続けてくれ」

「あ、はい。えっと武器は片手剣です。ランクはルーキーハンターです。これからよろしくお願いします」

ペコリ、と頭を下げて僕は自己紹介を終えた。当たり障りのない、普通の自己紹介だったな。つまらなかったかも。

そこで話が途切れ、皆が話題を探す中、ジーグ君が声を上げた。

「……なあ。嫌かもしんねえけど、出来ればでいいんだ。お前はなんでハンターになったんだ?」

「あ、私も気になる……けど、別に嫌ならいいわよ?プライベートのことは詮索しないのがハンターのマナーだけど……」

「いいですよ、別に自慢にもなりませんし、面白くもないと思いますが」

話題になるのなら、と僕は船の上で話したことをかいつまんで話した。シルフィードさんの下りはいらないと思って省略してある。

「……というわけでして」

と話を締めると、周りの皆は俯いていた。

「やっぱ、大変だったんだな……」

そう力なく呟くジーグ君。

(し、しまった。暗い話をしちゃったか)

「……アンタ、そんなことがあったのね……」

そう呟くエルメリアさんも、なんだか意気消沈した様子だ。

「アンタ、あの時はもっと明るかったのに、昔と大分変わっちゃったのね」

「そういうエルちゃん……って、年上なんでしたっけ?じゃあエルメリアさんも」

「さん付けは止めて気持ち悪いから。昔と同じでいいわよ、せっかくだし」

「じゃあ、エルちゃんで。エルちゃんも大分変わったよね。なんだか性格が入れ替わった感じ」

「そうね……タクトでよかった?すごいしっかりしたわね……ジーグと大違い」

「んだと!?」

「なによ!!」

しかし、エルメリアさんの一言で再びヒートアップ。本当に仲がいいな、この人たち。

それを見て溜息をつくガノンさん。

ニコニコしているフラディオさん。

(なんだか、いい雰囲気だな)

怒鳴り合っているが、楽しそうに言い合っている二人を見てなんだかあったかい気持ちになった。

ハンターになったあの日から今まで感じなかった感情。

(……なんだ。ハンターも悪くないじゃないか)

初めて僕はそう思えた。

 




本気で本文を確認していないので、誤字だらけだと思います。
また、読みにくいものであると思います。

それ込み込みで、事情は次話で。
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