Monster Hunter ~失ったもの、手に入れたもの~   作:小松菜大佐

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2話 昔、昔のお話

ただの平凡な一少年、タクト・シノカワ。それが、昔の俺。

大商人とか、貴族様の家に生まれた訳でもなく、普通の家に生まれ。普通に教育を受け、すくすくと育ったはずだ。そ、そりゃあ初恋とかしてみたりしたさ。たくさん勉強して、護身の為に格闘術を習ったりして。

朝は眩しい日差しと小鳥の囀る声で目覚め、昼は友だちと一緒に遊びまくって、笑いあった。夜は皆でいっしょにご飯を食べたり、父さんと一緒に風呂に入ったり。

そんな暢気で、緩くて、平和で……そんな毎日が緩やかに過ぎていく

俺は幸せだった。……あぁ、幸せだった(・・・)のさ。

ただ、運が悪かった。それだけだったんだ。

その日、俺と父さん、母さんの三人で里帰りをすることになっていた。そこは砂漠を越えた先にあるので、商隊(何人もの商人がそれぞれ護衛のハンターを雇い、一緒に行動する団体。規模は大きくなるが、護衛も増えてメリットも多い)の中に混ぜてもらって一緒に砂漠越えをしていた。

これが毎年の事だった。

今年も、おばあちゃんの家に行ける。いとこにも会える。

そう思っていた俺、そして警戒していたはずのハンターですら、何も関係ないように自然は、俺たちを一口に飲み込んでいったのさ――――。

 

 

 

…………………………。

……………。

………。

 

世界が、揺れている。

世界の法則が完全に狂った空間。縦か横かも分からない、前後不覚になる空間。とりあえず、寒い事だけが唯一分かること。

そんなよく分からない空間の中、僕はふわふわと浮いていた。

その不規則に襲い来る揺れがなんとも心地よい。

このまま、この空間に浸っていたい――――

「起きて!早く!!」

しかし、それを妨害する人がいるようだ。

そして、先ほどまでいた空間は夢だったという事を悟り、少し落胆する。もう少し、眠りの世界に居たかったのに……。

しかし、いつまでも無視している訳にはいかない。僕は目を擦って、眠ることによって荒れたフォーカスが徐々に修正していくと、僕の視界には母が映っていた。

母の顔には汗が浮かんでおり、瞳孔は開ききっている。

「…っう……?」

「ほら、急いで!タクト!!」

「うるさいな……」

若干ヒステリーを起こしかかっている甲高い声に少し不快感を覚えたが、とりあえず言われるがまま体を起こす。

周りの景色は、砂の茶色と夜闇による黒のみ。

(あぁ、僕は砂漠に来てたんだっけ……)

また閉じようとしていく寝ぼけ眼をこすりながら、俺は母に問うてみた。

「どうしたのさ、そんなに慌てて……」

その問いに答えたのは視界に入っていなかった父さんだった。首を傾けて視界に捉えると、やはり同じように瞳孔は開き、顔も汗まみれである。

「タクト、モンスターがでやがった!それも大量にな!!」

「……モ、モンスター!?」

モンスター。

それはこの世界における食物連鎖の上位に位置する生命体である。

アプトノス、ケルビなどの草食モンスターはおとなしい個体が多い。しかし、それらは個体数の割に種類が少ない。種類のみで言えば人すら簡単に喰らう肉食モンスターの方が圧倒的に多いのだ。米粒程度の小さい虫も入れば自分と同じ、またはそれよりも大きい虫もいる。それに猿、そして食物連鎖の頂点に君臨するモンスター、竜。

おそらくこの二人の慌てぶりから、草食モンスターである可能性は極めて低いだろう。

「……名前は?」

声が、自然と震える。

「ガレオスにゲネポス、それらを率いるドスガレオスにドスゲネポスもだ!!」

「なっ……!?」

僕はその言葉に、思わず言葉を失う。

ガレオスとは、砂の中を自由に動き回れる砂漠のみに生息する魚竜種の一種だ。

動き回る最中に飲み込んだ砂を圧縮し発射する、砂の中に引きずり込むなどして攻撃・捕食する。砂の中という環境から視覚は完全に退化し、その代わり獲物の足音を聞き取るための聴覚がかなり発達しているらしい。

ゲネポスは密林に生息しているランポスの亜種の鳥竜種のの一つ。

ランポスよりも過酷な環境に生息しているせいか、生命力が桁違いで、さらにその鋭い爪、そして何より強力な麻痺毒を備えている牙を持っている為、ハンターになったばかりの初心者の関門の一つらしい。そんな事を書いている本があった気がした。

しかし、砂漠という餌の少ない過酷な環境。本来なら餌を奪い合うライバルのような関係であるはずなのに、なぜ同時に僕たちを襲っているんだ!?

「がぁあああぁあああああぁああああ!!!」

「ひっ!?」

外から人の声とは思えない、しかしモンスターでもない悲鳴が聞こえた。

おそらく、あれは……

「な、ななななんでゲネポスとガレオスが一緒に!?あ、は、ハンターさんたちは!?」

「なんでかはわからん!でも、何かから逃げているみたいに殺気立ってる!!あとハンターたちはほとんど逃げるか死んでる!!!今の聞こえたろ!?あれが最後のハンターだ!」

父さんが「やっぱり装備からして明らかに腕がなさそうな奴らだった……!気付いていたはずだったってのに!!」と壁を叩いているが、僕はそんな事を気にしていられなかった。

ハンターさん達が、ほぼ壊滅って事?

じゃあ、残された僕たちは、死―――――!?

「や、やややややばいじゃん!」

「だからさっさと出ろって言ってんだ!死にたいのか!?」

「ご、ごめん!!」

いつもニコニコしていて、頼れる父さんが、目を見開いて声を荒げている。その異常さに急かされている気分がして、寝るのに邪魔で脱いでいた上着を引っ掴んで外へ転がり出た。

その瞬間、冷気が体を包み込んだ。

「うわ、寒っ!?」

砂漠は日が落ちれば、日中の暑さなど思い出せない程気温が下がる。

僕の乗っていたところは、かなり性能がよかったようで外気温による車内の温度変化がほとんどなかった。よって、普通でも震えるような寒さの中、快適に過ごしていた僕にとってこの気温はかなり応えるものだった。どれくらいかと言うと、鳥肌が余裕で総立ちするくらい。僕はひっつかんでいた上着を急いで着た。夜を越すためにもってきた、ガウシカの毛皮で作られたコートだ。これがすごいあったかい。

「も、モンスターはどこ……?」

満天に輝く星、暗闇に染まった空の下。確かな明かりは少しになった松明の朱と、全てを平等に照らす月明かりの青だけ。なんと幻想的な風景だろうか。

しかしそれは第三者のみの話。

そこに立つ人にとって、ガレオスの砂をかき分ける音とゲネポスの甲高い鳴き声にプラスされることにより、そこは地獄へと一瞬で様変わりする。

「ど、どこにいるのさ……!?」

とにかく危険回避が最優先だ。

僕は周りを見回そうとするが、

「いやぁああぁあああああああ!!」

どこかで聞いた事のある女の悲鳴によって、その思考は無駄になった。

「い、嫌だ嫌だ嫌だ!!死にたくないぃぃぃぃぃいいっ!!!」

僕はパニックになった。僕の感覚がイカレてなければあの声は――――

「うわあああああ、うぐっ!?」

慌てて駆け出す僕だったが、脚をもつれさせ転倒。ここで、僕の思考能力は完全に失われた。

「あぁあぁ、あぁあああああああ……」

起き上がろうにも、足が震えてうまくいかない。

「なんだよ、なんだってんだよ!動い…てよ……っ!!」

寒さによるものなのか、恐怖によるものなのかは知らないが、体の震えが止まらない。涙が勝手に流れてくるのだ、恐怖によるものなのだろう。

完全に思考を焦りに乗っ取られた俺を救ったのは、

「落ち着け、タクト!!」

父さんのよる叱咤と、今まで見たことのない程鬼気迫る表情であった。

「と、父さん……!怖いよ…!!」

「あぁ、わかってる!……手短に言うぞ、よく聞け」

そこで父さんは一度言葉を切って、目を閉じて深呼吸した。僕に見せた次の表情は鬼気迫るというより、真剣味を帯びた表情であった。

「さっき、母さんは死んだ。ガレオスに脚を食われて、砂の中に引きずり込まれたから確実にな」

「あ、ああ……う…」

母さんが、死んだ。

出来事が一気に起こり過ぎて、僕の思考能力のキャパシティを大きくオーバーしている。言葉を発しようとするが、洪水のような文字の羅列に飲まれ文が成り立たない。僕は赤ん坊のような言葉しか口にできなかった。

「……俺は、父さんはな。お前まで死んで欲しくないんだ。だから、お前は。お前だけはなんとしてでも生き残ってくれ!!」

「…え、だけって、父さんは!?」

「…………これを」

父さんは僕の言葉を無視して、首にかかっているペンダントを外した。

「これを持ってけ……お前は物を無くす癖があるからな。絶対に外すな」

「……え」

父さんはそれを無理やり僕に握らせ、少し微笑むと背中を見せた。

「…………逃げろ」

「……父さん」

「逃げろ!!」

「で、でも……こんなのって…!!」

「……はぁ、全く」

僕の態度に少し心配になったか、父さんはまた近寄ってきて、再び勝手に溢れてくる涙を軽く拭ってくれた。

目と目が合う。その瞳の奥には悲愴な覚悟と、どこか諦めに似た哀愁が漂っていた。

「……幸せに、なれよ」

父さんは見えない何かを振り払うように首を大きく横に振り、背中を見せて、今度は駆け出した。

(父…さん……)

認めたくない。

このたった数分の出来事を、夢であると信じたい。

(母さん……!)

でも、わかっている。

このかすかに漂ってくる血と何かが焼ける焦げ臭い匂いと、冷気が肌を突き刺す痛みとが、これは紛れもない現実だと教えている。

理解している。母さんは死に、父さんも死ぬ気であることを。そして、父さんの行動は僕を逃がす時間稼ぎであることも。

(なんだってんだ…畜生……!!)

わざわざ父さんに拭ってもらったってのに、どんどん新しい涙が溢れてくる。勝手に視界がぼやけていく。

脚が、体が震えている。

こんな状況で逃げられるかは、ほとんど運任せだ。でも、

(言われただろ、僕。父さんに、幸せになれって!なにか、できるはずだ……っ!!)

父さんの言葉を守るため、生き残って幸せになるため、停止していた思考回路を再起動。同時にフル稼働させた。

世界が、ゆっくりと流れているような錯覚になる。

(一旦整理しろ、僕には脳がある考えられる。今打てる手は?2つだ。1つ、おそらくここの近くにハンターの死体または逃げ帰ったハンターの装備が少しはあるはず。それをとって戦う……ダメだ。いくらちょっと格闘術をかじった所で勝てる訳がない。お前は父さんの遺志を無視してさらに犬死する気か?じゃあ2つ目、逃げる。これしかない。じゃあ、どっちだ。どこに逃げれば敵が減る!?)

気温が低いはずなのに頭が、体が熱い。妙な倦怠感に襲われ、思考を止めそうになる。

でも、その誘惑をゆっくりと流れる砂の音が断ち切ってきた。

(ダメだ、思考を止めた瞬間に死ぬ!ゲネポスから逃げるのは無理だ、僕よりも地面での運動能力が高い。秘境ってところがあるってどこかで見たけど、入れないだろうし候補に上げるべきじゃない。じゃあ、ガレオスなら?狭い所と、岩場にはは入れないんだっけ……)

視界を右に、左に動かし条件を満たすルートを選別する。

(地図を、思い出せ。……この地形からするにここはエリア5。なら……エリア10だ!)

僕は、エリア10を通ってエリア7、エリア6、エリア5と巡回するルートを選んだ。

エリア8のルートでも良かったが、それは先がない。それなら走り回って、少しでも人の目につくようなルートを選ぶべきだと考えたのだ。

父さんと逆方向に走り出した僕、その後ろから

「ギャォワ、ギャオア!!」

という甲高い鳴き声が届いてきた。聞き覚えがある……間違いない、ドスゲネポスだ。

(くそっ……絶対生き残ってやる!!)

どんどん近づくドスゲネポスから必死で逃げる僕。

…………遠くから、どこかで聞いたような男の人の悲鳴が聞こえた気がしたが、もう僕には関係のない、気にしてはいけない事である。

 




ところどころ言葉が続き見にくいと思いますが、仕様です。
本気で集中してる時って、いろんな言葉を呟くが脳内で並べますよね……あれ?僕だけ?

ごほん。
さて、次話なのですが……なんと!あの人気モンハン二次創作小説、黒鉄大和様の『モンスターハンター~恋姫狩人物語~』からあのキャラが登場します「!

ΩΩΩ<な、なんだってー!?

一体、誰が出張してきてくださるのか!?乞うご期待!!

キャラをお貸ししてくださった黒鉄大和様に、この場を借りて感謝を。
本当に、ありがとうございました!!


※感想、批評常時募集中!お願いします!!

※ツイッターやってます。更新情報などつぶやいていますので、気になるかたはこの名前で検索してください。こんな名前ダブる訳がないのでwww

※【宣伝】pixiv様にて「Dogdays~幽霊のフロニャルド戦闘記~」、小説家になろう様にて「そのだんっ!りたーんず!!」を連載中です。D
ogdaysの方は誘拐され、兵士となった主人公。後悔を抱いたまま死んだ主人公が神様の頼みで世界を救うことになっちゃった!?相棒であるスナイパーライフル「L118A」と共に戦に挑む。果たしてその先にあるものとは?そしてタイトルにある幽霊に込められた意味とは―――?こっちは無双系。
そのだんっの方。
二つの国がにらみ合う世界。いつ戦争が起きてもおかしくないなか、突然生まれた強い意思(説明しにくいので本気で本編参照)によって突き動かされた主人公アルフ。人種差別によって苦しい思いをしながら、ひたすらアルフは前に進んでいく。生き残るため、そしてだんだんと生まれる仲間との絆を守るため、少年は銃を取る。こちらはできる限りリアルに書いているつもりです。
どちらも銃が出ます。好きな人は気に入るかも?
暇つぶし程度に読んでください(´∀`)

※『恋姫狩人物語』はたくさんの女の子に囲まれたリアzyすいません。
……ごほん。囲まれたハンター、クリュウ・ルナリーフくんがいろんな戦いを経て強く成長していくお話です。僕がこの小説を書き始めたのも、恋姫という作品を見たことが大きな要因になっております。過去編、長旅などストーリー重視なのにもかかわらず、戦闘にも圧倒的なボリュームがあって……あぁあ!長所書き始めたら止まんないし収拾つかない!
「リア充?はぁ?興味ないわぁ」なんて方も、臨場感のある戦闘は必見です!!
お時間がありましたら、是非ご一読を!!

では、サラダバー!!
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