Monster Hunter ~失ったもの、手に入れたもの~   作:小松菜大佐

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申し訳ありません、お借りしたキャラクターは次話に持ち越しました。


3話 砂漠を駆ける

暗闇の中、僕の吐く息の白さがやたらと目立つ。

いつも見ていた柔らかな、優しい月の光は様変わりし、どこか残酷な光を湛えていて、こぼれ落ちた雫のような青色の光が僕を包んでいる。

周りは一面、黒と茶色の世界。その中、僕はひたすら足を進めていた。

「はぁはぁ……はぁっ…」

寒い。

砂浜に脚を取られ、うまく走ることができない。

足が震える、それは疲労によるものなのかそれとも寒さによるものなのか。

「はぁ……はぁ…もう、だめ………」

必死に走ってきたが、もうダメだ。日頃の運動不足が光ってしまって、脚が動かない。

肺が、酸素を欲している。

僕は脚を止め、肩で息をした。

(ここは……どこ…?)

とりあえず何をしようにも、位置が分からなければどうしようもない。僕は眼球のみを動かして辺りを見回す。

(周りを見るに、このフィールドはエリア10だな)

周りにはほんのすこし草が生えている……ここは草食モンスターの巣だったか?確か、アプケロスの巣だったはずだ。遠くの方にそのモンスター達のと思われる糞が落ちている。

しかし、ただの巣にしては……

「なんだ……この緊張感…?」

僕は普通の砂漠にしては重たすぎるその雰囲気に違和感を覚えた。

確かに、砂漠にたった一人きりであるということもあるとは思う。

だが……それにしては、異常すぎる気がする。この緊迫感は。

(そういえば、父さんがなぜか殺気立っているって言ってたな……)

それに何かから逃げているようだ、とも。

何が起こっているのかはわからない。

しかし、それは確かに、僕の目の前で異常として顕現している。

「アプケロスが………いない?」

そう、すでにアプケロスはいなくなっていたのだ。

凶暴なあのアプケロスが、モンスターが近くにいるわけでもないのに逃げ出しているなんて、もはやありえないと言える。

この緊張感、というか空気の重さに関係あるのではないだろうか?

「……むぅ」

少し、気になる。

……ザッザッザッザ……

「……!?」

しかしその思考は、遠くから聞こえてきた足音によってかき消された。……ドスゲネポスだ!

「やばっ…」

僕は急いで思考をブチ切り、転進。体を奥へつながる道に向けて、急いで駆け出した。

途中に、少しの段差がある。

「……くそっ、さっさと動け僕の体!」

僕はそれを這い蹲るように登る。なかなか動いてくれない体、かかる時間がとてももどかしく感じた。

「……うわっ!?」

段差に乗っていた砂によって、僕は腕を滑らせてずり落ちそうになるが、なんとか耐える。

「い、よっと!」

僕はなんとかよじ登り、奥へとつながる道を走り出した。

この道の先にあるのは、僕の通るルートの中で最も危険なエリア7。そう、最もドスガレオスのいる可能性が高いエリアなのだ。なぜかどうかは知らないが、二匹のモンスターは本気で、協力して(・・・・)僕達を殺しに来ていた。なら、挟み撃ちにしようと考えている事も考えられない話ではない。

僕はいるかどうかも分からぬ神に向かって祈りを捧げながら、狭い道を駆け抜けた。

 

 

エリア7にはエリア真ん中に岩が、端には湖がある。そして気温にあまり差がないので、オアシスのようなエリアである。

(ど、どうだ……)

僕は危惧する事態が起こっているかどうか確認したが……

(っ!?)

……いた。

見つけてしまった。目の前で砂を巻き上げながら泳ぐ竜が数匹。

その中に色の濃いヒレを持つ、一際大きな竜が。

(ドスガレオスだ………っ!)

真ん中にある大きな岩を横切りながら、悠々と泳ぐドスガレオス。

ま、まずい。これは、まずい。バレたら死ぬかもしれない。

僕はゆっくり、ゆっくりと足音を殺し歩いていく。

サク、サク、サク……………

………………………

……………

……

ガッ

(しまっ…)

「痛っ!?」

足元にある石に気付けず、思わずつまづいてしまう。そのままその石が脚に突き刺さった、僕の口から悲鳴が漏れる。

「……グオゥ?」

それに反応したドスガレオスが砂から飛び出し、僕に振り向く。

そして、視線が合った。

「や、やばっ」

「グ、グギャアォオアアアアアッ!!!」

「ッ、うわああああ!?!?」

僕を、異常な程大きい咆哮が捉える。

思わず、というか本能的に耳を塞いでしまい、動けなくなってしまった。。

「……う、うぐぐ…」

「グルルルル……」

僕はその敵意のこもった視線によって萎縮し、地面に縫い付けられたように動けなくなる。

(ち、畜生!動け、僕の脚!動いてくれよ……!!)

涙を浮かべながら、僕は自分の脚を殴った。

しかし、思ったようには行かないものだ、僕の脚は意思に反して動いてくれない。

さらに僕の不幸は続く。後ろから砂を踏む音がかすかに聞こえてきたのだ。

「ど、ドスゲネポスまで来てるの!?」

少しずつ、でも確かに近づいてくるそれは僕を恐怖に震え上がらせるのに十分なものだった。

どうすればいいんだ。

僕はここで死ぬのか。

いや何か手は打てるはずだ。

こんな状況どんな手を打てって言うんだ。

思考がどんどんと混乱していく。

冷や汗が流れて、それによってどんどんと体が冷やされていく。そして、

「ギャォワッ!グルルルル……」

いつの間にか跳躍一回で僕を捉えられる位置まで、ドスゲネポスは近づいてきていた。それがさらに僕の思考を錯綜させる。

「グルルルル……」

「グウゥウゥウウウウ……」

「「グギャオワアァアアアァアア!!」」

「ッ!?」

その思考を戻したのは、皮肉にもというべきだろうか?思考を混乱させた根源であるドスゲネポスとドスガレオスの咆哮だった。

ドスガレオスが砂をかき分けながら、ドスゲネポスが大地を蹴り飛ばしながら僕に接近してきた。

ほんの一瞬の出来事だった。本当に瞬きする間に僕のすぐ近くに来ていたのだ。

これが、竜か。竜の身体能力なのか。

「……っつぁ!!」

とりあえず相手はまっすぐ近づいてくるのだ。僕は飛び込み前転の要領で横に飛んだ。

(か、かわした!)

自分の体に何一つ傷がないことを確認して飛ぶ前いた場所がどうなったか確認したが、しなければよかったと後悔した。

その一瞬、自分のいた場所はドスガレオスのヒレによって割かれ。その後ドスゲネポスの爪によって貫かれていたからだ。

「ひっ!?」

一瞬の判断ミスで僕の命は失われる。それが身をもって理解できて、流れる冷や汗の量がどっと増えた。

(こ、怖い……!)

「次、来る!」

命を失わずに済んだ事の安堵感によって涙が溢れてくるが、涙を拭うと同時にそれを急いで振り払って周りを見回す。

僕の視界には左奥で悠々と泳ぐドスガレオスと、非力な人間に攻撃を当てられなかったのが屈辱だったのか瞳を若干怒りに染めているドスゲネポスが右に見えた。

「グルルル……」

プレッシャーをかけているつもりなのか苛立ちなのか、カチ、カチと歯を打ち鳴らしているドスゲネポス。

(ダメだ、さっきのは一直線上に敵がいたからできた芸当だった。次は、ない……!)

再び同時に、または波状攻撃のように襲われることを恐れた俺は、

「なんとかして敵を減らすべきだ!」

この状況を、ドスゲネポスと戦うことを選んで、ドスガレオスから逃げることで袋叩きを回避することを選んだ。

このエリアに入った後、僕が移動した距離はあの横に飛んだ回避行動だけ。エリア10につながる道はまだかなり近い。それでも、逃げきれるか微妙だが……走るしかない!

ジリ、ジリ……

僕とドスゲネポスが砂を踏みにじる音が風の音、ドスガレオスが砂を裂く音に混じって、飽和していく。

その中先に動いたのは、ドスゲネポスだった。

「ギャォワッ!!」

側面からの一撃を、後ろにダッシュすることでかわす。

そして、そのままエリア10へと続く道に向かって駆け出した。今、ドスガレオスと僕の間には、ドスゲネポスが壁になるような位置で存在している。だから今あいつは、ドスゲネポスごと切り裂くしか僕を殺すことはできない!

「うおぉおおおおぉおおお!!!」

僕は今まで走ってきた疲労で止まろうとする脚に鞭をいれ、無理やり加速した。

後ろから何かが動く気配がする。それは、ドスガレオスだ。

何かが発射され地面を穿ったのはわかったが、それが砂によるブレスであることに気付いたころには僕はエリア10の境界線を踏み越えていた。

 

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