Monster Hunter ~失ったもの、手に入れたもの~   作:小松菜大佐

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8話 シルフィードさんの言葉、船旅の終わり

「そういえば……」

人が結構増えてきた通りを歩きながら、シルフィードさんと一緒に歩く。その途中でふと思い出したようにシルフィードさんが話しかけてきた。

「君、ハンターになると言っていたな?」

「……はい、そうですけど」

「君はギルドの仕組みは知っているのかい?知っていないとハンターはやっていけないぞ」

「うっ、それは……」

突然投下されたその質問に、僕は言葉を詰まらせる。

「……剣の握り方は?」

「うっ、それは」

「回復薬の調合法は?」

「うっ、そ「もういい」すいません……」

なんだ。ただひたすらモンスターを斬りまくるわけじゃなくて、いろいろ細かい事もあるんだな。

肩を落とす僕を見て、シルフィードさんは呆れの溜息を漏らす。す、すいません……。

「……意外と、君もアバウトな人だったんだな。先を見てるようで見きれていない」

「あう……」

「まあいい。最初は私もそんなものだったからな……よし、じゃあこれから本屋に寄ろう」

「ほ、本屋?」

出てきた言葉は、およそハンターにはあまり関係のなさそうな名前。

「ああ、確かこの道の近くだったはずだ」

「べ、別にそこまでしていただかなくても……」

「基本知識を知らないままで、さすがに新人ハンターを送り出すのは不安すぎる」

僕が断りの言葉を放つと、シルフィードさんが正論という形で打ち返してきた。うっ、経験者の言葉は鋭く刺さるなあ。

「金は気にするな。武器が格安だったからな、その分金が余ったんだ」

「じゃ、じゃあ、お願いします……」

「ああ、それでいい」

そんなこんなあって『ハンター初心者に送るハンターズギルド公認!ハウトゥ本』というやたらめったら分厚い本を買っていただいた。それはもう、これで人を殴ったら大事故じゃすまないだろうと思える重量感である。

「ありがとうございましたー」

気の抜けた、いつもの常套句とも言える言葉を聞き流しつつ僕らは店から出る。

でも、これで本当に、シルフィードさんには頭が上がらなくなっちゃったな。

買ってもらった本を抱えながら、僕はそんなことを考えていたのだった。

 

 

「それじゃあ、ここでお別れだ」

僕とシルフィードさんは、本屋を出た後少し歩き、密林側の門に立っていた。

「え、そうなんですか?」

「ああ、そうだ。昼までと言っていたのは覚えているか?」

「はい。それまでに会いに来て欲しい、って」

「私は今日この街を出て、日暮れまでに次の街に着くつもりだったんだ。だから、昼までに……」

「なるほど……って、僕シルフィードさんの時間を!?す、すいません!!」

「気にするな。もともと時間に余裕があるように時間は組んである」

そうは言われたが、罪悪感は当然消えない。僕はうつむき、言葉を発せなくなった。

「……タクトくん」

シルフィードさんはそう、呟くように言った。

「………なんでしょう?」

「一つだけ、教えておく」

日の光を背負っているシルフィードさん。その絹のようになめらかな白髪が、光を反射し、僕には輪郭としてしか見えない。でも、どこか悲壮感が漂ってきていることだけは分かった。

「……」

「自分が何のために戦っているのか。それだけは、絶対に忘れるなよ」

「……」

自分のこのヘチマよりすっかすかな脳では、その言葉の意味を理解することはできなかった。だが、表情だけは見えないがその纏っている雰囲気から、茶化してはいけない気がして。

「もし、忘れることがあれば……私の………」

「……え」

「いや、これは蛇足だったな。まあ、この言葉だけは覚えておいてくれ」

「は、はい」

「それじゃあ、またどこかで」

そしてシルフィードさんは僕の前から去っていった。

遠く、遠くまで伸びていく道。その上を歩くシルフィードさんが僕の視界から消えるまで、ずっと、ずっと、僕は見送り続けた。

 

 

「……で」

そう言うギルドナイトのお兄さんは、なんだか不機嫌そうというか、つまらなさそうというか微妙な表情。

「そんな超絶美人なお姉さんであるシルフィード・エア様と一緒にお出かけして本を買ってもらったからお前はハンターになったんだな」

「話聞いてたかおい!?」

あまりの適当さに思わず怒鳴ってしまう。いいよね、さすがに。

「だってお前、いつまでもシルフィードの事しか喋らねえんだぜ?つまらんよ、さすがに」

「あんたが喋れっつったんだろ!?しかも暇つぶしに!!」

「かと言ってノロケはいらん」

「ノロケ!?ちげーよ、っていうか、あー!腹立つけど反論できんからさらに腹立つし発散もできねー!!どこにぶつければいいんだこの苛立ち!!」

「うるさい」

「うがー!!」

ああ言えばこう言うとは違うが、それに似たような状況となり思わず叫んでしまう。周りからの奇異の目が痛い……!

「……まあ、暇つぶし程度にはなった。ありがとな」

「なんか釈然としねー……」

苛立ちを晴らすためにどこまでも広がる海原を見るが、どこまでも海っていうのもだんだん秋が来ていた。

その後、お兄さんはぼやくように言う。

「で、その後はエリートコースまっしぐらか。ハンターズギルドに登録後、ランポス狩りから初めてガンガン有名どころのモンスターを撃破。んで、最終的にハンターズギルド登録後最短大型モンスター討伐少記録を達成してミナガルデハンターズギルドから直々のオファーが届き、今に至ると。さすがー」

「……やめてくれ。そういうのなんか気持ち悪い」

突然放たれたお褒めの言葉に、俺は寒気を禁じ得なかった。

「なんだ。俺が珍しく褒めたってのに」

「あんたのそれは褒めてる感じがしねえんだよ!!」

「あーはいはい。サーセンサーセン」

「ぐぬぬぬ……」

ほんとに、なんか、うまく言葉にできない感じに腹立つ人だな……!!

歯を食いしばっている俺を見て、めんどくさそうに視線を逸らすお兄さん。その後、なにかに気付いたように声を上げた。

「……あー。あれはー」

棒読みで。

(イラッ☆)

「今、面倒だからって話そらしただろ!絶対そらしただろ!!」

「ああ、それが?」

「………」

いらない事だけすっぱりという人だな……

「でも、気付いた事があったのは事実だ。見ろ」

「なんだ?どうせなんか、引っ掛けなんじゃないのか?」

「お前は俺の事をどんだけ疑ってんだ……。違う、見えてきたんだよ」

「え?」

「ほら、向こうだ」

そう言っているお兄さんは指を俺の後ろに向ける。それに釣られるように首を動かすと、そこには、俺の見てきた世界とは天地ほどにかけ離れたものがあった。

「う、うおおおおおおおおお!!??」

とてつもなく大きい街があったからだ。

(す、すごい……)

俺は、目の前に広がる光景を見て、世界の広さを痛感した。井の中の蛙とは言ったものだ。ハンターになってから、俺はあの村、そこの近くの密林が世界だと思い込んでいた。しかし、海といい、この街といい、俺の知っている世界の広さ、大きさを軽々と上回ってきた。

なにより、高い。建物全てが。自分の見てきた民家、病院、一番大きかった村長の家なんか目じゃないくらい、見えるもの全てのスケールが違った。

なにより、村と全然色が違う。

基本的に石を使用しているのか、周りの緑からそこだけ隔離されたかのように灰色に染まっている。俺の見てきた風景で、灰色なんてものは密林で崖を上る程度でしか見れなかったが、少し目を向けるだけで視界全てが灰色一色だ。

こ、これが……これが!

「これがミナガルデ!」

「違う」

……え?

「え?」

「だから、違う」

「ち、違うの!?」

まさかの新事実に僕は目を見張る。

「これはただの港街。ミナガルデはここから少し歩いて、ゴンドラに乗ってようやく辿りつけるくらい遠いところ。あーあー、なんでご先祖サマはめんどくせえ場所にギルドを立てやがったんだか……」

「……これで『ただの』なら、ミナガルデはどんだけでかいんだ……!?」

やはり俺の世界は狭かったらしい。口が引きつっているのが自分でも分かった。

「……びっくりして腰抜かすなよ、田舎者さんや」

「……ど、努力だけはさせてもらうよ」

俺はこれから見れるであろうミナガルデの町並みに期待しつつも、街中で醜態を晒すことに対する不安もだんだんと大きくなっていた。

ぼぉぉぉぉ、と一際大きな汽笛が鳴った。ざわつきが大きくなるのと比例するように、大きな陸地が近づいてくる。

 




はいどうも、愚かしくもまたまた小説を始めてしまった小松菜大佐です、はい。
なにやってんだ僕(遠い目)

暁、というサイトでミスマルカ興国物語という小説の二次創作を始めました。原作は『お・り・が・み』や『戦闘要塞マスラオ』で有名な林トモアキ先生です。
これ本当に面白いんで、スニーカー文庫の場所を探してみてください。

では、また。
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