「はっはっは……。いや、なんだこの状況はッ!?」
乾いた笑いしか出てこない。
視界の端でうごめくのは、
クトゥルフ神話のショゴスを煮凝りにしたようなスライムの粘液がが無理に形にしやかのような化け物が追いかけてくる
「いやマジで、あの黒い物体……なんだか増えてるんですけど!? 分裂? 増殖? 冗談抜きでシャレになってねえ!」
心臓が口から飛び出しそうな疾走の中、
なんとか近くの物陰に滑り込むはぁ、はぁ……。
なんだかんだあったが、逃げ切れたか。幸いのことに、あいつらの動きが鈍くて助かったところだった荒い呼吸を整えながら、周囲を見渡す。
だが、そこにあるのは希望ではなく、圧倒的な「闇」だった。
現代の夜とは違う。街灯も、遠くのビルの明かりも、スマホの電波すら届かない、五感をも塗りつぶすような純粋な夜。
さっき日が沈んだばかりだというのに、一寸先も見えない。
サバイバルとかごめんだぜ……記憶を遡る。
昨日は自室で小説を読みながら寝落ちしたはずだ。起きたらこのザマ 最悪だ。
周囲の植生は、日本か、あるいは大陸か。そこら中に生い茂る大麻(おおあさ)や、麻薬的ですらある不気味な生命力を放つ笹の群生。
「……まさか、ここが『ど田舎』の原風景ってやつか?」
しかし田舎んどいったことないし あっているか
「un?」
暗闇の向こうから、淡い光を放つ小さな影がふわふわと飛んできた。
初めて見るはずなのに、強烈な既視感が脳を焼く。「……東方の、モブ妖精?」00丸いシルエットに透き通った翅。
それは間違いなく、弾幕ごっこの背景で飛び交うあの存在だった。
その瞬間、俺の脳内に雷が落ちたような衝撃が走る。
「……待て。これ、『古代スタート』かよ!?」
ということは、さっきのショゴスもどきはクトゥルフの怪物なんかじゃない。
神々や妖怪が跋扈(ばっこ)し、人間がただの獲物だった時代の――「純粋な穢れ」そのものじゃないか。モブ妖精がケラケラと無邪気に笑う。
その光の向こう側、暗闇の奥底から、再び「ヌチャリ」と粘り気のある音が響き始めた。
「あ//」
逃走劇は、まだ終わってくれそうにない。
***
逃げ続つけると
気がつくと、夜が明けていた。
あれから1日間、
俺は死に物狂いで高原を歩き回っていたようだった。
そう
「何も成果も……得られませんでしたッ!!」
泣きたい。いや、もう涙も出ない。
脱水症状なのかなわからないが全身から力がむける
転生?につきもののチート能力を期待していたが、
特に何も目覚めない。
しかも、何も食っていない。腹が減りすぎて、いっそあの粘液を焼いて食えるか考え始めたところで意識が途絶えた。
……。
::::::::::::
目が覚めたとき。
「知らない天井」を期待したが、そこにあったのは「知らない牢屋」の鉄格子だった。
手には点滴のようなもの?ガついている
「うむ、起きたか」
隣から声がした
野太い、だが落ち着いた声。
そちらを向くと
隣にいたのは、
筋肉隆々のイケオジだった。ただの人間じゃない。纏っているオーラ
「本物かりちゅまオーラ」が、そこらの中年とは格が違う。
「返事をしてくれ」
「はっ! す、すいません! あの、どちら様でしょうか。あと、俺はなぜ牢屋に……?」
そう病院?医療所などならわかるが何故、俺は捕まっている
「そうだな。まず、君は自分が何をしていたか覚えているか?」
「いえ、あの……腹が減って、気を失ってからの記憶がなくて。俺、何かやらかしましたか?」
イケオジは顎に手を当て、困ったように眉を下げた。
「いや……実はな、月読命(ツクヨミ)様から直々に『その男を監禁しておけ』との命が下りてな。理由は我らにも分からん」
月読命。その名を聞いて心臓が跳ねた。東方における月の都の創始者。
「今から月読命様の元へ向かう。ついてきてくれ。私は綿月(わたつき)……」
男が名乗った名は、聞いたこともない古風な響きだった。おそらく、後の豊姫や依姫の先祖に当たる人物なのだろう。
「自己紹介は、直接あの方に頼むぞ」
「……わかりました」
生きた心地がしないまま、
俺は彼に連れ出された。
それにしても、この宮殿……道がなげええ! 永遠亭どころの騒ぎじゃない。
歩けども歩けども続く静謐な廊下の先に、
この世界の「主」が待っている。