そこからの流れは……あまりにも呆気ない物だった。
人間やサイヤ人とかいう宇宙人と違って、スタミナが消耗して動きが鈍くなるといった事が無い。だから、長時間激しい闘いを繰り広げた際、無尽蔵のスタミナを持つ人造人間相手では、一撃で破壊出来るぐらいの攻撃を持たないと勝ち目がない。
……と、闘いの最中に余裕たっぷりに……というか、恐らく私に聞かせる目的もあったんだろう、人造人間である私たちのその強さの秘密について17号が教えてくれた。
どんだけ強いのよ、あの二人……。
「ど、どれだけ強いんだよ……あいつら……!」
おや、私と同じ感想を持ってくれた人が相手側にも居たらしい。同類かな? 仲良くしよう。
「う、うわわっ……!?」
……と思ったが視線を向けただけで怖がられたのでやめとこう。ちょっとショックである。私何もしてないのに……強いて私がした事と言えば、現実逃避にボーッと小鳥達を眺めていたぐらいである。
何の気無しに拳を突き出すと、気付いた小鳥がパタパタとやってきて、私の拳の上に乗る。
……やたら人懐っこいね君? あはは可愛い。
なんでこんなメルヘンな事してんだろ、私……現実逃避するのもいい加減にしないと。
「闘いが終わったら、あの変な輝きが消えてしまったな?」
「超サイヤ人とか言ったっけ? そっちの奴も同じように変化した」
「ベジータは知っているが……そっちのはデータが無かったな? ……ま、どうでもいいか。大したことない奴だったし」
……これはアレだ。後々めちゃくちゃ強くなったこの人にリベンジマッチでぼっこぼこにされるやつだ……私はバトル漫画に詳しいから分かるんだ……。その証拠に、どうやらまだ生きてはいるっぽいし、二人とも殺すことまではしてないらしい。
「結局、最後まで手ぇ出さなかったね? 16号」
「だ、だって……」
「ま、私達だけで充分だったわけだし、別にいいよ」
「だな。それより……おい、心配しなくてもそいつらはまだ生きてる。早く仙豆ってやつを食わせてやるんだな。早くしないとホントに死んでしまうぞ」
「な、なにっ……!? 仙豆の事まで知ってるのか……!?」
最後まで戦わず、私と一緒に(かなり距離は置いて)闘いを観ていたつるつる頭の小さい人がそう言って驚く。
いや、私はそのセンズってやつ知らないですけど……。
「ああ。どんな怪我もすっかり治ってしまうんだろ? もしもっと腕を上げたら、また相手になってやると言っておいてくれ。じゃあな」
はえ~、すごい……アレか、回復アイテムってやつか……どんな怪我もすっかり治ってしまうなら、ここで全員やられてしまっても、大丈夫……なのか。多分。
「な、なあ!」
「なんだ?」
「お、お前たちの目的は……なんなんだ? 悟空を殺そうっていうのか? それとも、世界をめちゃくちゃにしようっていうのか!?」
「目的ねえ……今は孫悟空を倒す事だ。その後は……その時に考える」
「何故だ! なんで悟空を狙う!? ドクター・ゲロはもういないんだろ!?」
「ドクター・ゲロは関係無い。これはただのゲームさ。見つけるのも含めてな」
うへえ……若者の悪いとこの煮凝りみてえな感じだ……。
「も、もしもだ! そんな事はやめてくれって言っても……無駄、なのか?」
……。
「……む、無駄、なんですか?」
「16号?」
「だ、だって……何の意味も無いのに……ただ、ゲーム感覚で人を、殺すなんて……そんなの、やっぱりおかしい、よ……そんな事しちゃったら、きっと……ば、化け物になってしまう……と思う」
「……それを言ったら……」
そう口を開いて、しかし、17号は何かを言いかけた口を閉じた。
「だ、だから……他の……何か、もっと……殺しとかじゃなくて、えっと……それこそ、ゲームとかっ……!?」
「……16号……それじゃあまるで俺達が、まだ化け物ではないかのようじゃないか? それとも、やっぱりお前だけが違うのかな?」
「そ、れは……」
その声色は静かだった。だが、その目には、顔には……どう見たって怒りの色が滲んでいて。
「お、おい!!」
小さい人が、声を荒げて二人に声をかけ……でも、そこから先の言葉が出る事はなかった。
「……ま、コイツの言っている事は置いといて、だ。孫悟空を殺すのをやめてくれ、だったか? 答えはNOだ。データの中で一番強いとされている戦士が孫悟空だから、そいつを倒せれば、晴れてゲームクリア。俺達はこの世界で最も強いって事になる。世界最強、良い響きじゃないか?」
ひとまずそれを目指す。と締めくくり、17号は踵を返した。
「あーあ、ヘソ曲げちゃったよ。……じゃあね」
18号は、怒りか恐怖かでプルプル震える小さな人の頬にキスを落として、そのまま去っていった。その場には、驚いて頬を手で押さえながら呆然と彼女を見送る事しか出来ないその人と……申し訳なさと、なんで今キスした???という困惑でいっぱいな私が取り残され……。
「16号、お前まさかそっちにつくつもりじゃないだろうな?」
「……ごめん、なさい」
17号にそう声を掛けられ私は、そう言って小さい人を残してその場を後にした。
私は……いや、元々の
17号は……多分、きっと、絶対、
こわくって、なにもできない。
そんな、まるで本当にただの女の子みたいな、非力で勇気もない自分の事が、今は酷く情けなくて仕方なかった。