悟空の身に危機が迫る、そう知らせに飛んできたクリリンとトランクスは、ややあって悟空達が住む家のすぐ傍まで来て、どうやらまだ奴らがここへたどり着いていないという事実を確認し、ホッと胸をなでおろす。
そして、ふとクリリンはトランクスに「あのさ」と声をかける。
「……今更つかぬことを聞くけど、あの人造人間ってのは、とんでもなく悪い奴ら……でいいんだよな?」
「ええ。少なくとも、俺が居た未来では。……何故そんな事を?」
「い、いやあ!? そ、そうじゃなかったら……いいなあ~……なんて……」
――ごめん、なさい。
「あ……いや……実はさ、あの16号っていう可愛い女の子みたいな人造人間、居たろ? その子がさ……」
「……そんな事が?」
「ああ……だ、だからさ、もしもあの子を通じて、あの二人を説得出来たら……た、闘わなくて済むんじゃないかって」
「……先程も言ったように、俺の居た未来では、17号と18号はまるで悪魔のような存在で……ゲーム感覚で人を、愉しみながら殺すような……残酷で、非道なやつらなんです……その16号って子が、どうして俺の世界に居ないのか……恐らく、俺の世界での彼女は……あの二人に殺されてしまったんじゃないでしょうか」
「こ、殺され……!? で、でも、仲間なんだろ……!?」
「仲間どころか親でも殺すような連中ですよ。……それに、まだその16号が本当に良い奴かどうかだって、定かじゃない。あのドクター・ゲロの、試作品の失敗作とはいえ、世界を滅ぼしうるとまで言わしめた人造人間……ロクなもんじゃないと思っていた方がいいでしょうね」
「それは……確かに、そうかもな」
言い終わると、トランクスは踵を返して再び孫悟空の家へと向かい、その後をクリリンも追っていく。
クリリンは、トランクスが言う絶望の未来を直接この目で見てきた訳じゃない。だからきっと、こと人造人間の事に関して言えば、彼の言う事が正しいのだろう。
「(でも、それでも……あんな顔、するかな。世界を滅ぼしうる、超破壊兵器が……)」
「おい、いい加減機嫌直せって、16号」
「機嫌が悪い訳じゃ……むしろ、こちらこそ、ごめんなさい……勝手な事言って」
「はあ……これじゃ俺が悪いみたいじゃないか」
「実際アンタが悪いだろ? アンタから皆でのんびり行こうって言いだしたのにさあ」
ちっげーよ! 機嫌が悪いじゃなくて罪悪感で押しつぶされそうなだけだよ!
この二人、移動に車を使おうと、なんと宣言通りに離れた場所で駐車してた運送屋の車を奪ってそのまま乗って行っちゃうんだもんよ……!!
あ~~~ごめんなさい名前も知らぬ運送屋のおっちゃん達……あとで必ず……いや、可能なら……きっと返す……返すので……。
「せっかくだ、お前も行きたい所とか言ってみろよ。俺は孫悟空の所。でもその前に18号が服を見に行きたいって言うだろ? だからそのついででも、孫悟空の後でもいい。なんかあるか?」
「行きたい所……?」
強いて言えば日本のあの家に帰りたいけど……この世界にあるかも分かんないしなあ……う~ん……。
「……さっきみたいな、人があんまり居ないとこが良いな……」
「フッ、お前よっぽどカプセルの外の景色が気に入ったんだな」
「私には理解出来ないけどねえ……でもま、ず~っとあんなカビ臭いとこで眠らされてたんだ。無理もないか。じゃ、全部終わったら皆でピクニックにでも行く? 面白い所があるといいけど」
気付けば口からスッと出た自分の希望は意外にもあっさり二人に受け入れられた。
……どうもこの二人、望んで悪事がしたいというより、退屈で退屈で仕方なくて、なんでもいいからとにかく何かしらの目的が欲しいとか、そんな感じな気がする。
それこそ、再三17号が口にしている、ゲーム。
ゲームであまりにも強く……それこそ公然とチートを行使出来るようになってしまい、逆にゲームが面白くなくなってしまったかのような。それが、ゲームではなく、現実世界で起こってしまった……そんな感覚が近いのかもしれない。
だからこそ、世界で最も強いとされている相手……ゲームで言う、ラスボス的な存在である孫悟空をターゲットにした。
……うん、多分、当たってないにしても、そう遠くない推測だと思う。
あまり考えて発言したわけじゃないけど……そういう意味じゃ、人が居なそうな所を希望出来たのは良かったかもしれない。
「そろそろ町が見えてくるぞ?」
「やった! やっとこのボロとおさらば出来るよ。もっとスピードを上げなさいよ、17号!」
「はいはい」
うげぇっ。急にスピード出すな! すっ転ぶかと思った!!