町へ向かう途中。
――ふと、何か……大気が揺れたかのような感覚を身体が察知する。
「……今、確かに大気が振動したのを感じた……火山の大爆発でも起こったか?」
「さあ……」
「16号は何か感じたか?」
「えっと……」
恐らく発生源があるであろう方向へと意識を向けると、体内の”パワーレーダー”が何らかの反応をキャッチし、その詳細な位置情報を私に情報として伝える。
「西の都の郊外……二つの巨大なパワーが、多分……戦っている?」
「! ……お前、パワーレーダーがついてるのか?」
「そう……みたいです」
そう言われて初めて、私が無意識のうちに人間ならば持っているハズの無い感知機能がある事をようやっと認識する。恐らくはずっと機能しっぱなしだったのに、これまで気付かずにいたとは……。
「何故言わなかったんだ?」
「え? だって……そういうものだと思ってた、から……」
「そうか、データが無いんだったな。ふむ……その様子じゃ、今のは無意識か? 自分が他にどんな事が出来るのかも、何も知らなそうだな」
「はい……お察しの通りです」
すると17号が蟀谷に指を当て、なにやら私の身体を隅々まで凝視する。
私自身も、それが何となく、所謂スキャン機能に相当するものだと分かる。
「……へえ、俺達とは随分構造が違うんだな……両前腕が着脱式? その下には……これは砲台、か? なるほど、ここからエネルギー砲を放つ訳だ……こっちは? ああ、これは……」
しばしぶつぶつと何かを確かめるようにしている17号。しばらくかかるだろうと踏んだのか、18号が退屈そうに私に尋ねる。
「で? その二つの巨大なパワーってのは誰と誰なの?」
「さ、さあ……分かりません」
「なんだ……まあ、流石にそこまで便利じゃないか。孫悟空がどこに居るか、そのレーダーで分かったら良かったのに」
……私は、ある事実を言わなかった。
この巨大なエネルギー反応……片方は
もしかして、さっき戦った人達の仲間……パワーアップイベントが挟まって、リベンジ戦が近い、とかなのかな……?
それか、もしかしたら今私達が探している、そんごくう、その人なのかもしれない。
そうだといいけど……不穏な事に、このそんごくうともう一人の反応……この二人の反応がある場所は、西の
何故か、一般人の反応がその街だけゴッソリと消えてしまっている。
これってどういう事なんだ? 私はてっきりこの漫画の……この章の敵が、人造人間であると思ってたけど、実はそうじゃなくて……もっと恐ろしい敵が居て、私達人造人間は前座……みたいな展開だったりするんだろうか……。
いやいや、もし本当にそんな恐ろしい敵が居たとして、前座って事は無いでしょ……無い、よね? 多分、本来の流れだとこの後この二人と私が改心するなり、もっと恐ろしい敵の存在を前に「チッ、ここは一時休戦だ!」みたいなアツい共闘が始まって……。
「……クソ、そういうことか、ドクター・ゲロめ。16号……お前が試作品の失敗作だと言われた理由が分かったぞ」
「えっ?」
しばし黙っていた17号が、いつにも無く苦々しい表情……端正な顔を怒りと憐れみに染めながら、そんな事を口走る。
「なにがあったのさ?」
「……知らない方が良い」
「はあ?」
えっ何それ。
「な、なんで……?」
「なんでも、だ。心配するな、どうせ……
そう言って……やけに覚悟が決まった顔で私の頭を撫でる17号。え? は? マジで何? スキャンした結果が気になり過ぎるんだが!? 私が困惑していると、17号は18号とアイコンタクトを取り「ここでちょっと待ってろ」と私を残して車に乗り込んで……。
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「爆弾?」
「ああ……それも、俺とお前についてる、命令を聞かず暴走した時の為、最終手段として用意されたような奴じゃない……威力が桁違いに高い、それこそ、街一つ……いや、もしかしたら本当に奴が言っていたように、世界そのものを滅ぼしてしまいかねないぐらい強力な、超高性能爆弾だ」
「はあ!? ドクター・ゲロは一体何のためにそんな……」
「アイツの姿を見てからずっと疑問だったんだ……奴はどうしてあんな姿形の人造人間を造ったのかって……」
「……!? ま、まさか」
18号はある可能性に気付く。17号も同じ考えに至ったのだろう、その様子を見て頷いた。
……16号の造られた理由、それは他の人造人間達と違わず一貫して「孫悟空の抹殺」が目的。
彼女が可愛らしい少女のような見た目なのは、恐らく
温厚で臆病な性格は、孫悟空の気を引くため……。
困っていれば、思わず手を差し伸べてしまうだろう。
泣いていれば、思わず助けてしまいたくなるだろう。
倒れていれば、思わず駆け寄りたくなるだろう。
……その瞬間、爆弾は起爆する。
至近距離で超威力の爆弾の猛威を浴びたとあっては、いくら孫悟空でもひとたまりも無いであろう。
こと、孫悟空の抹殺の為であるなら、ただの爆弾ではダメなのだ。
爆破するよりも早く逃げられてしまうから。いや、孫悟空だったら、爆風より早く空を翔ける事だって不可能じゃないかもしれないし、エネルギー波を手から放出し、起爆する前に爆弾を塵にしてしまうかもしれない。
ドクターゲロが失敗作と呼んだのは、その爆弾の威力が、あまりにも
失敗作と呼ぶ割に未練がましく残していた理由を、17号が奴に尋ねた時……奴は確かにこう言った。
後で調整するつもりだった、と。
17号や18号に搭載されている、暴走した人造人間を停止させる程度ではなく。
かと言って、世界を滅亡させてしまうほどのぶっ飛んだ威力でもなく。
爆破した時に、孫悟空という超人を……至近距離ならば、確実に屠れるだろうと確信できる威力まで、意図して性能を落とす調整が必要だったのだろう。
後は、奴の命令を忠実に聞くように調整してやれば……。
「敵の至近距離で起爆する、高性能な爆殺人形……それが、16号の完成モデルだ」
「ちょ、ちょっと待ちなよ……だったら、あんな戦闘能力は要らないんじゃないの?」
「データによると、孫悟空は武闘家らしいからな。……真正面から闘いを挑めば、喜んで受けてくれるに違いないさ。大いに手加減もしてくれるだろうし、そのままの勢いで倒せれば、それでも良かったんだろ」
そしていざ負けてしまったとしても、それすら計画の内。
「……なんだよ、それ」
18号はそのあまりの胸糞悪さに、ドクター・ゲロの悪辣さに、気付けば手に万力のような力を籠め、手をかけていた座席の手すりを握りつぶしていた。
「それじゃあ、何? あの子は敵の前で爆発して死ぬために生まれてきたってワケ?」
「……落ち着けよ。だから言わなくていいって言ったんだ。こんな事」
「当たり前だよ!」
知らなくていい事はある、と言っても、ここまでのはそうそうないだろうが。
18号は、シンプルにそんな胸糞悪い方法を取ろうとしていたドクター・ゲロに、心底腹を立てていたし、16号に少なくない同情の念を抱いた。
「そして……ここからが重要だ」
「まだあるの?」
「……スキャンしただけだと、その爆弾の起爆方法までは解析出来なかったんだ。どうも永久エネルギー炉と繋がっていて、そこから供給された膨大なエネルギーを爆発力に変える、そんな仕組みなんだとは思うが……」
「こ、この永久エネルギー炉からのエネルギーを、爆発力に……?」
18号は、目覚めて初めて寒気を覚えた。
自分達にも、この永久エネルギー炉は搭載されている。文字通り、永久にエネルギーを産み出し、それを身体の稼働に、そして戦闘時のパワーに、放出してエネルギーを強力な武器に変える、ドクターゲロの研究の中でもずば抜けて水準の高い技術力の結晶。
サイヤ人を含む戦士達を、一方的に打ちのめす事すら可能にしたのがこの永久エネルギー炉だ。
そこから発生する膨大なエネルギー、それを爆弾のエネルギーに変える?
「改めて思うわ……イカレてるわね、あのジジイ!!」
「せめて起爆する条件が分かればな……俺は、アイツをこのまま孫悟空に会わせてしまっていいものかと思っているんだ」
「は? どういう事?」
「さっきも言ったが、アイツの身体とその爆弾は、俺達と同じく孫悟空抹殺の為に造られたものだ。……そしてさっき見せたパワーレーダー。アレが起爆に関係してるとしたら?」
「……孫悟空の存在を、ある一定範囲内に検知したら、ドカンッ! ……って?」
「そうと決まったわけじゃないがな。個人の特定までは出来ないみたいだったし。そういった起爆条件に関しては、構造云々より、どちらかというとシステムとか……プログラムとかを解析しない事には分からないだろうな」
17号も18号も、プログラミング知識に関してはからっきしだ。
もちろんドクター・ゲロになら分かるんだろうが、孫悟空の抹殺の為には必要の無い知識である為、気前よくその知識を彼らにインプットしているハズも無い。
「どうすんのよ……」
「……とりあえず、一旦孫悟空を追うってのは止めにするか……爆発に巻き込まれたら、俺達も無事で済むか分からないしな」
こうして、16号のあずかり知らぬところで……二人の目的が先ほどまでとは全くの逆。
孫悟空を抹殺する為追跡する、から、孫悟空という存在をとにかく避けるという方向へと。
突然「やっぱ孫悟空を追うのやめよう!」と言い出した二人を見て、16号は取れるんじゃないかと思うほど首を傾げて困惑するのだった。
※前話から今回の話の間までに、セルが未来の世界から乗ってきたタイムマシンの話とか、セルが街で人々を襲ったり、ピッコロさんが超ナメック星人になったりしてますが、人造人間視点だとそんな事を知り様がないし、特に変更は無いのでバッサリカットしています。