エロ同人RPG系勇者ちゃんVSヒロピン好きの俺VSダークライ 作:らっきー(16代目)
交易都市カノープス。王都を除けばこの国で一番栄えている街で、いわゆる冒険者と呼ばれる人間は大概この街を拠点にしている……ああいや、『成功した』冒険者と但し書きを付けるべきかもしれないが。いわゆる普通の冒険者じゃあこの街で暮らすのは少しばかり厳しい。
あっちを向いても人、こっちを向いても人。異世界ファンタジーなこの世界にも眠らない街というものはあったらしい。勿論そういうお店もいっぱいある。男性用女性用問わずな。人であふれているこの街には、それだけ多種多様な欲望もあふれている。
そんな街に無事入れたわけなのだが──
「まさか勇者様ともあろうものが人酔いするとは……」
「田舎娘なんだからしょうがないじゃないですか……」
ぐでーんと、昼食がてら適当に入った店の机に突っ伏すたれ勇者ちゃん。その乳でうつ伏せは無理があると思う。
「まああれだ。なんか飲んで落ち着け。ほれ」
「あ、ありがとうござ……なんかおかしくないですか?」
「?」
渡したのは何の変哲もないこの店のメニュー表。べつに渡し方にも変なところはなかったはずだし、特にこの店が珍妙なものを取り扱っているなんてこともない。
「ゼロの数がやたら多く見えて……疲れてるのかな……」
「多分合ってるぞ」
水一杯1000G、コーヒー一杯3000G也。別に高級な水だとかなんかしらのオマケが付いてくるとかそういうわけじゃない。純粋にこの値段だ。コーヒーは良い豆なのかもしれないが、残念ながら俺はそこまで詳しくない。でも水の値段からして多分ぼったくってるだけだと思う。
「……ウーティスさん、早く出ましょう。私達には分不相応な店に来ちゃったみたいです」
「残念だが、他の店も大して値段変わらんぞ」
怪しい店に行けば話は別だが。女の子が一人で行くと飲み物に怪しいおクスリが混ぜられるようなお店。ちなみに男が一人で行くと痺れ薬を料理に混ぜるような店もあるぞ。男女平等で素晴らしいことだ。
「勇者ちゃん、この街がどんな街とか女神様は教えてくれなかったのか?」
「凄く栄えてる街だとは言ってました。あとお金が重要だって」
まあ間違っちゃあいない。明日の朝のパンから貴族としての爵位まで。この街では金さえ出せば文字通りになんでも買える。
「どちらかというと金が無いと何も出来ない街だな。パン一個もこのぐらいするぞ?」
「え゛」
「ついでに言うと宿代は他の街の10倍ぐらいする」
「にゃ!?」
「路上で寝たら罪人として晒しものにされるから気をつけろよ?」
「ひぇ……」
ついでにトイレも有料。もちろん路上で済ませようとすれば罰則。大体全裸で手枷やら首枷やらを付けられて大通りに放置されることになる。犯されたら? 残念ながらこの街では罪人を守る法なんてないのだ。男だったら? そういう需要もこの街には結構ある。不細工は……運が良ければ血塗れぐらいで済むんじゃないかな。昔石投げの的にされてるのを見たことがある。
「あの……ちなみにウーティスさんってどのぐらいお金持ってます……?」
「勇者ちゃんと同じくらい」
「ですよねー……え? これすぐに私達破産しません?」
「だろうなぁ」
「しみじみ言ってる場合じゃないですよ! 早くお金稼ぎに行きましょう!」
「勇者ちゃん目的見失ってない?」
元はと言えば女神様のお告げ。この街のどこかにある……というか、誰かが持っている魔石を回収しに来たはずなのだが。
「う……でも、探すのに相当時間かかりません?」
「まあそうだろうな」
「お金尽きません?」
「まあ」
じゃあ駄目じゃないですか! と勇者ちゃんは頭を抱えている。まあ闇のオーブ……もとい魔石は持ち主の欲望を強くする、と言われてもこの欲望だらけの街じゃ何のヒントにもなりそうもない。森でちょっと大きいのが特徴の木を探してきてって言われるようなもんだ。区別がつかん。
「とりあえず冒険者ギルド行きましょう! ……この街には支部がないとかありませんよね?」
「あー……ギルドは、ある。あるんだが……」
「だが?」
「仕事が無い」
「あはは、魔物なんて幾らでもいるのにそんなわけ……え、冗談ですよね?」
真面目な顔を崩さずにいたら伝わったらしい。残念ながらマジなのだ。
「正確に言うならあるぞ? ただ朝イチで行ってすら奪い合いになるぐらい需要と供給が釣り合ってないだけだ」
「……じゃあこの時間だと」
「まあ魔物退治なんて残ってないだろうな……他の仕事ならあるかもしれんが」
「なんだ、お仕事あるんじゃないですか! わざわざ脅すような事言って~」
「薬草摘みとかそういう仕事だと思ってない?」
「違うんですか?」
「……まあ、見に行くか。残ってるかはわからんけど」
「はい!」
百聞は一見に如かず。まあ運が良ければ魔物退治の仕事も残ってるかもしれない。と言っても、飛竜を殺してきてくれだの、軍勢と呼べるような数まで増えたゴブリンを倒してきてくれだの、パーティー単位どころかレイド単位で人数が必要になるようなものを仕事に含めていいならの話だが。
そういうクエストをコミュ障すぎて一人でこなしてたアホもいるらしい。ちなみにソイツは今勇者とパーティー組んでるとか。友達が出来てよかったね。……はい、俺です。チート能力最高。
無駄に広いこの街だが、空きスペースというものはほとんどない。商店街やら歓楽街やら以外の場所でも露店としてよく分からない物が売られていたり、いわゆる屋台飯が売られていたりする。お値段はピンキリだが……まあ、安い物はそれなりの質でしかないし、高い物が優れている保証は無い。俺は目利きなんて出来ないから早々にこの辺りへの興味は失くした。
最初のうちは灰色の瞳を輝かせて色々と見ていた勇者ちゃんだったが、値札を見るたびにその輝きも失われていった。犬だったら耳も尻尾も垂れ下がってると思う。
「なんでこんなに全部高いんですか……?」
「高いものに価値があると思ってる馬鹿向けの商品だから」
それとここがあくまで交易都市であって生産地から遠いから。生産地からわざわざ運ぶ労力、足すことの魔物除けのための護衛の料金、それに加えて利鞘。原価を考える方がアホだろう。まあ観光地料金を極端にしたようなものだ。
「……なんでこんな街に人が集まるんです?」
「夜になればわかる。昼にはやってないような店が開くからな。もしくは大通りから離れたところに行くか」
「なるほど?」
確実に教育には悪いだろうが……勇者ちゃん大丈夫だろうか。変な義憤とか持ち出されると困ったことになりかねない。……まあ、その時はその時に考えればいいか。
「そんなことよりほれ、着いたぞ」
「見慣れたものがあると安心しますね……」
冒険者ギルドは基本どの街でもそれと分かるようになっている……といっても、単純にギルドの紋章を掲げているというだけなのだが。龍を剣で貫いているというその意匠は心の中の中学二年生も大満足だ。
ギルドは……内装もシステムもまあどこも同じだ。壁に乱雑に依頼が張り出されていて、それを見て受けたいと思ったものを受付へと持っていく。無茶な依頼を受けようとすれば流石に止められたりもするが……受付の人次第だな。どうでもいいと流す人もいるし止めた方が良いと止める人もいる。とはいえこの街では一人一人の実力まで覚えてはいないだろうが。精々装備で判断するくらいか。
「あ、やっぱ依頼あるじゃないですか! 確かに少ないですけど」
「おーおー行ってこい」
とてとてと向かっていく勇者ちゃん。やっぱあの格好良くないよ、お尻の形丸わかりだもん。まあ珪素系生物と戦う人達の装備に比べたらマシ……か?
「ウーティスさんほら、良さそうなの残ってますよ!」
「ほう」
勇者ちゃんが見せてきた依頼書は魔法の講師求むというもの。そんなの専門の学校にでも頼めと言いたくなるのだがちゃんと理由がある。何かと言えば──
「……これ、お前さんじゃ受けられないぞ。条件のとこ見たか?」
「む、私だって魔法は結構得意なんですよ? えっと……『女性、銀髪、巨乳。低身長ならなお良し』……」
ビリビリと持った依頼書を破り捨てていた。あとで怒られても知らないよ。
「勇者ちゃん金髪だからなあ。他の条件はいけてそうだけど」
「低身長って言われるほど小さくもないですよ!? ……じゃなくて! なんですかあの依頼は!」
「家庭教師募集。ただまあ、真面目に教わる気は無い奴のだけどな」
セクハラ目的……ならマシな方。依頼主が変なところと繋がりを持ってたら監禁調教コースもある。だからこうして売れ残っているわけだが。そして当然、魔法学院がそんな奴の為に講師を派遣したりはしない。
「なんでそんなのギルドは受けてるんです……?」
「仲介金目当て。掲載するだけで金が取れるからな」
「結局世の中お金なんですね……」
がっくりと肩を落とす勇者ちゃん。こういう方向性で曇ってるところも可愛いと思う。
ちなみに仲介金目当てで張り出されているこれらの依頼、ごくたまに受けるヤツもいるらしい。曰く、『命の危険が無く金が稼げるならその方がいい』らしいのだが……それなら最初からその手の店で働いた方が早いのではなかろうか。
それはともかく。
「そんじゃ、勇者ちゃんが現実を受け入れたところでお金稼ぎに行くとするか」
「はい……え、そんなところあるんで……またロクでもない何かしらじゃありません?」
「おお、学習してきたな」
「殴りますよ?」
「大丈夫。少なくとも今はえっちな目には合わないから」
「今は!?」
通常の営業時間のうちは少なくとも大丈夫。夜になっても……客としてなら問題は無い。一体何処に行くかと問われれば回答は実にシンプル。闘技場だ。
「今はってなんですか!? 私変な所連れてかれませんよね!?」
「あー……裏路地とか一人で彷徨くなよ? 奴隷として売り飛ばされかねないから」
「今言います!? どんどん不安になるんですけど!」
この街ではお金があれば、明日の朝のパンから貴族としての爵位まで文字通りになんでも買える。勿論人権すらも。力仕事の出来る奴隷よりも美少女の方が高く売れるという辺りにこの世界の闇深さを感じなくもない。いや、前世でも大差ないか?
そしてお金があればお金も買える……今からするのは簡単に言えば、ギャンブルである。