吾輩は転生者である。自己紹介はまた最後に。
トラック転生の事故死とかでもブラック会社転生の過労死でもなく、ガンによる死亡なので突然死ではなかった。そして神様が詫びに転生、と言う流れではない。
「おめでとうございます。あなたは当選の結果、異世界へ転生する権利が与えられました。加えていわゆる『転生特典』を貴方が選択してください」
なんだろう、死んだのに覚えのない宝くじに当たったこの感じ。
当選の経緯を尋ねると、どうやら年度毎に死者に対する異世界転生ツアーと言う物をやっているらしく、今年は自分に当たったらしい。ちなみに転生モノみたいな事はないかと言うと、
「ああ。この当選の枠は空きを残すほどありまして、その空きを神々のミスや不慮な運命事故にあった方々にも分け与えられます。事前にこういう枠が用意してあると手続きが楽なもので」
裏を返せば時々、そう言った事があるから予め対応できるようしたという事だろう。なんか役所の仕事だなぁ。
ただし俺みたいな当選ではない場合、特典はほとんどランダムになるらしい。さすがに意見を聞いて用意するのは時間がかかるようでその間に死亡予定(字面が不吉)にない魂は消滅する可能性があるらしい。神によってはパパっと用意できるが、そこは担当の引きによる。
その話題は俺には関係ないので渡された用紙を確認する。内容はシンプルに『能力名』と『詳細及び設定』の2つ。つまり名前を決め、それがどんな能力なのか決めていいという事だろう。その判断として転生先について尋ねた。
「貴方の転生先はSF世界。荒廃した土地と高技術に守られた科学都市、そして暴走した化学生物と自立兵器が跋扈する世界です」
「終末系」
「申し訳ございません。さすがにここは例外なくランダムになります。とは言え生まれてから過酷な環境には送りませんので、転生してすぐ死んでしまう事はありません」
すぐ死なないだけでその後には死ぬ可能性があるわけじゃない? とも思ったがガンで死亡した俺にとってそう変わらないと流した。とりあえず戦闘できる物か、もしくはスローライフができる物か? 今のままじゃ確定できないからもういくつか質問をして、そして決めた。
「そうして転生して、老衰じゃないが老齢まで生きたわけなんだが、
「なるほどなぁ。ちなみに今生の前に神様的なのには会った?」
「一応。その時は『今ならデスマーチでこんなトラブル、気づかないから!』って言われたな。
「やっべ外なる神が干渉してるじゃん」
今生で、目の前にいる黒髪黒服な青年の前で獣人
二人は少々風化した部屋で、ランタンの灯だけを照明としていた。窓枠の外側は夜で星々が輝いていて灯火より明るいが、互いの顔を見るには心持たなかったからだ。
「俺みたいな転生者が現れるのは珍しいか?」
「珍しい、とは言えないな。この世界線はお前だけかもしれないが他の世界線、並行世界なら複数いてもおかしくない」
「神にも並行世界の概念はあったんだな」
「ああ。だが俺たちから見れば異世界に当たるし、と言うか神々が多いこの世界じゃ干渉もほぼできない。できるのは世界全てから信仰を集める唯一神、もしくは元々世界の外にいる、お前が会ったであろう旧支配者の類だ」
「じゃあ、おれが最初に会った天使みたいのは?」
「地球の神だろう。ただ俺たちオリンピアやアースガルズじゃあないな。多分、ヤハウェみたいな奴だな」
ヤハウェって誰だ? と首を傾げる少年。尻尾と、
「これからどうするんだ?」
「父さん母さんには悪いけど引っ越しした方がいいと思ってる。
幼い貌で、老練な事を口にする。酷な運命を背負った。そう思うと同時に転生者でなければこの子もこの子の両親も
「ところで、君たちを殺しに来たエルフたちはどうするつもりなんだい?」
「
少年は自分の猫耳を弄りながら答えた。
半分ヒューマンの血であったとは言え、半獣人同士でもない子が生まれるのは未知を超えて奇跡だった。しかし不幸だったのはエルフが神以上に崇拝するハイエルフの色を持って生まれた事であった。半妖精であった母は緑のオッドアイを持つことから少なからずハイエルフの血を引き継いでおり、しかしてエルフの里ではなく他種族国家の出身かつ、思考がヒューマン寄りだった事は幸いだった。だから母親として我が子にハイエルフへの崇拝と言う色眼鏡では見なかった。なかったが、平穏に生きる事を願うにはあまりにも重すぎる宿業を背負ったと涙した。人里では生きられないと、エルフに知られてしまえばハイエルフの血を穢すと殺されてしまうと。
幸いだったのは半猫人だった夫に理解が得られた事、人里から離れたこの地に移住できたこと。父も母もこの環境でも生きる術があった事。
「そうして10年近くキミが健やかでいられたが、襲撃したエルフがキミの事を両親の故郷で知ったわけだ」
「さすがに父さん母さんの故郷の人たちは恨めないなぁ」
「優しいな、お前は」
「殺す覚悟が出来ているオレに言うことじゃないさ。まぁ前世の転生特典が使えたら生かせる方法もあったんだが、この世界で生まれてから使えなくなったからな」
「ふむ……」
転生特典が使えないと聞き、青年は暫し考え込む。前世で使えた能力が今世では使えない理由は。
「ああ、なるほど。なぁもし前世の転生特典が使えたら生かせるんだよな?」
「ん? まぁ。このまま生かせて逃すのがリスクだからな。俺はともかく、この先父さん母さんの命を危険にさらしたくない」
「なら試しに、俺から
青年、いや原初の幽冥を司る邪神エレボスは少年にそんな提案をした。
結論として少年はエレボスの提案を受けて
「これ、俺が貰っていいの?」
外でエレボスは
「人手は必要な気がしたから。いらないなら適当に野に放すだけさ」
対して少年は
「だが使ってくれるなら俺も恩を感じるから使ってほしいところだ」
「ほぉ、それはどうしてだ?」
「手を貸す意欲が沸く」
ワインをラッパ飲みしていたエレボスの表情が消えた。それを見て、少年はすかさずその理由を語り始める。
「相手が神とは言え、機微は人に近いだろ? あんたは何か気になったってここに来たみたいだが、本当は別に大きな目的があると見た」
「ほぉ。人間にしてはいい観察眼だな。前世を含めてもそこまでの観察眼は中々培われないぞ」
「そういえば前世の職を言っていなかったな。闇医者だよ。外科からサイボーグをやってて、裏路地の隅から戦場まで奮闘してたんだよ。問診以外で患者の容態を把握する必要があったのさ」
「意外と英雄してたわこの子」
「はは、英雄なんかじゃないさ。古巣が壊滅間近な瞬間、行動規制やタブーをやってた補填をしなきゃいけない新天地が嫌で世界トップの脅威に特攻した大ボケジジイさ」
あ、この子この世界における三大クエストに値するモノに対して殿もしくは撤退戦のために犠牲になったのだとエレボスは見抜いた。加えて闇医者だったと言うことは医学を学べた環境であった事と戦場を駆け抜ける実力があった事。そして転生特典の覚醒。まさに「引き継いでニューゲーム」だった。
神ならば手放す理由はなかった。
「魅力的な提案で、惜しい子供のお前からそう言われると嬉しいな。
そこに「理由がある」ものの一つとして、神が送還されてしまう事だろう。
神は死なない。いや、下界において死ぬほどの致命傷を負うと
「……アンタ、自分の首を賭けているのか?」
「そうだ。その為の役者は揃えたし、あとは舞台の幕を上げるだけ。今は軽くその前休憩ってところだ」
「そうか」
エレボスの返答に何やら考え始める少年。それを見たエレボスはどうした? と思ったが神ゆえの全知無能の視点がその思考を読み取った。
「待った。勝手に動くならこっちも考慮する」
「ん? なんだ、かなり綱渡りな計画だったのか?」
「ちょっと違うな。裏を知らず、表の助力をされると困るからだ。お前の
「コレって一応、フラッシュバックを起こしてパニックになった患者に使う医療機器なんだがな」
クルクルとカチューシャのような形状、ヘッドギアを弄り始める。もしこれがなければエレボスもここで少年を止めはしなかっただろう。
「で、アンタは何が気になった?」
「キミの一つ前の世界は個人、一般市民でも戦闘技術を持たないと死ぬかもしれないほどの世界だったろ? そこで戦場と呼べる場所にもいたなら、それ相応の兵器を持っているはずだろ」
「まぁ、な。ま、俺も
改めて説明しよう。少年が選んだ転生特典は『前世の世界で販売されている商品を、金銭を対価に手に入れる能力』である。
少年の前々世にあったのは『購買意欲』。転生した後で前世の商品を恋しくなったら嫌だなと思ってこの能力に決めた。加え、その場で思い付かず後々に必要だなと思う物に対し、『売買に関してリクエストをしてその意見を反映する』と言う機能も付けた。商品の購入より、この機能が前世の世界で大いに活躍した。最初にイメージしていた飲食物や衣類などから市販薬や建築資材から始まり、専門性の高い重機等から異空間として使用できる施設の利用、さらには一般では購入できないであろう兵器すらも。少年は金銭を対価に、前世において資金があれば手に入る物に関してあらゆる物を使えた。
「事実、これが取り出せたのなら俺が前世で購入した倉庫の
「だが使える物もあるんだろう? それを使われちゃこっちの計画が破綻する方が大きい」
「なら」
「ああ、キミが盤面をひっくり返さないために事情は話してもいい。話してもいいが、その前に俺の方から聞きたいことがある」
「なんだ?」
「ご両親の事はどう思ってる? この場で教えてくれ」
エレボスからの質問に少年は動きを止め、回していたヘッドギアも掴み直した。そしてふと、家の方に目を向けるが、すぐに深く息を吐いた。
猫人の血が流れている少年にとって気配を察知する能力は高い。
少年がため息をついた理由は、エレボスが『両親にキミの本音を伝えなさい』と言っているのだと察したからだ。精神的には親より年上であり、今回の件で迷惑をかけまいとしたが、それはいけないと言われた気分になった。ただ、伝えずに終わるのも確かに親不孝だなと思ったからこそでもあった。
「……愛してるよ。間違いなく、前世も前々世よりも」
「ほぉ」
「最初の両親は確かに愛情があって育ててくれたんだろうが、どこか『愛でてる』感じがしてな。俺と言う子供と理解し合うじゃなく、自分の愛情を押し付ける親だった。だから独り立ちできた後は交流しようと思えなかった。対して前世なんだが、そこの俺は遺伝子操作で生まれたデザインベビー……、悪い。意味わかるか?」
「ああ、薬とかで容姿や能力を調整して作る赤ん坊の事だろ?」
「まぁ遠からずだな。元々、荒廃した世界に合わせる側面はあったが両親は上級の市民でな。見栄のために俺と言う子供を
「待った。聞く限り貴族のような地位にいた親の元にてお前、なんで闇医者なったんだ?」
「住んでいた場所が壊滅したんだよ。俺は生き延びたが両親は死亡。身寄りはなかったがその時まで学んだことで、結果として闇医者になったのさ」
幸い、成人に近い歳だったからな、と締める。
エレボスはその話に贅沢だな、と言う感想と何が幸せか当の本人次第か、と考えを切り替える。その点で言えば自分はそんな二択を迫る事をした神であると。そうなると俺は、どうも家族と引き離す事ばかりやってるなと自虐の念を抱く。
少年の告白は続く。
「前世を思い出したのは2歳。前の転生もそのくらいだったから三度目の人生と思うと同時に、また親はどうなるんだろうと達観した。そうして会った父さんは不器用に俺をあやす姿で、母さんはそれを微笑ましく見守る姿を初めて見た。正直、動揺したよ」
前世なんて長い人生経験をしてるくせにな、少年は笑った。
「接し方がわからなくて、離れて二人を見て、しばらくして色々と聞いた。生活の事だったり、知恵だったり、世界の事を。知りたいことだったし、こんな場所で家族だけで住んでいるのも気になったからな。初めてだったよ、親子で話題を共有する事は、親子で生活の為に働く事は」
語るにつれて少年は自然と笑みを浮かべていた。恐らく意識的でない。本当に楽しく、幸せだったのだろう。
だからこそ、それを壊された事実は少年から笑顔を奪った。
「本当に幸せで、二人を愛していたんだ。だからそれを壊したエルフを嫌悪する。彼らが「貴き血を穢す忌み子」とハイエルフの名に誓った以上、その吐いた唾は訂正させない。そして俺も、もう二人の安寧にとって障害にしかならない」
「だから、去ると?」
「その方がいいだろ? 父さんと母さんが今日の事を知ってどう思おうと俺は恨まない。今日までの思い出があれば『ありがとうございます』と言える。それだけで、俺は二人に感謝と愛を捧げられる」
―――もう満足に愛されたから、と締めた。
わかっていたが成熟、いや老熟と言えるかもしれない少年の思いには深い愛があると感じられた。そして嗚咽の声も。全知無能たる神の耳にすら聞こえるのなら、獣人たる
元より少年の外見がトラブルになると判断した賢さと人里離れたここに引っ越す覚悟をした両親。何より善性の精神であった事。だからもう、二人は少年の前に出てこない。出てしてしまえば未練となり、足枷となり、互いを危険に晒しかねない。そんな離別しても深い愛にエレボスは自分にできる事をしようと思った。
「なら両親の移住先はオレに任せてくれ。お前は俺の
「そうか。頼む」
「ああ。だがお前の場合、その礼をしたくなるだろうから、俺がこれからする事を手伝ってくれ。全貌を話すからその上で従ってくれ」
「ありがたいね。
「
そしてこれは『未知』を願う神の好奇心。この
エレボスは役者のように、もしくは神のように少年を、カロン・グリマルキンを前の両腕を広げた。
「お前は
カロン・グリマルキン
Lv.1
《基本アビリティ》
力 :I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
《発展アビリティ》
魔導:I
《魔法》
【グラマリー・サイト】
・付与魔法
・幻理属性
・詠唱式【其は、真理を綴る銀の楔。
目覚めよ古き森の記憶。白銀の調べを以て、万象を編む記述を解き明かさん。
我が瞳の前に偽りは潰え、秘されたる理は白日の下に晒される。
虚ろなる綴りを書き換え、歪なる言葉を真実に。
境界を越え、妖精の瞬きを以て、
欺け、幻惑。射抜け、至高の真理。
我が視線の先に虚妄の檻を。
――――我が名はアールヴ。】
【】
【】
《スキル》
【
・前世継承
・耐神威
【
・『敏捷』『魔力』補正
・獣化
・猫・妖精に対する念話
・発展アビリティ『魔導』発現
・カロン・グリマルキン
本作の主人公。二度の転生をしたハイエルフの先祖返りを起こした猫妖精。この件を切っ掛けに「エルフは総じて
前々世は良くも悪くも一般的な社会人。前世は終末系SF世界で転生特典で前世の商品を手に入れながら闇医者をやっていた。最後はロボットに乗り外敵へ特攻する。終わりに向かう世界ながら英雄として名を遺す。
一度目の転生特典「前世の商品を購入できる能力」はリクエストと言う拡張可能でスーパーから専門店、果ては業者向け商品から異空間と言う貸出倉庫、兵器も購入できる状態。加えて言うなら
ポ〇モンが死後の最新作まで購入出来て歓喜。折角だから前世で初代ゲーム〇ーイの緑赤から〇ンテンドーs〇itchの風波までやった。ついでにエレボスに「何をやる?」って聞いたら「XY、俺にはそれがいい」と真顔で即答された。
・エレボス
道中、不審な行動をするエルフの集団を偶々見かけ、後をついて言った事で今回の件に遭遇。子供ながら大人のエルフたちを制圧したカロンと出会う。恩恵も持たず、加えてその技術を身に着けるには幼すぎることからエルフたちの捕縛に協力し、転生者であることを知る。
話を聞いた上で最初はこの場の出会いとしようと思ったがカロンの愛と恩を知り、これから自分が行う事に協力してもらう事にした。カロンの両親は、ある村に連れていくことになる。
カロンから〇ンテンドー3〇S(予備バッテリー&ソーラー式充電器付き)とポ〇モンXYを貰って歓喜。この世代を選んだのは「なんだかここの物語がいいと思ったから」。あとなんとなくドラゴンタイプ中心でパーティー育てたい。
・グリマルキン夫妻
カロンの愛する両親。二人とも元は神の眷属で恩恵を持つ。が、恩恵がなくても魔法を使うエルフ達の襲撃にはカロンがいなければ殺されていた。最初、カロンに対し『未知への恐怖』が芽生えかけていたががエレボスがフォローして沈静化。その後、影でカロンの本音を聞いて息子の愛に涙した。
エレボスの計らいによりある村に移住する。そこで祖父と二人きりで暮らすヒューマンの子供と出会い、息子のように絆を育む事となる。
・エルフ達
読者視点で悪い面が強い方のエルフ達。半猫人とハーフエルフの夫婦に翡翠色の髪とエメラルドの如き瞳を持つ子供がいると聞き、調べた上で『ハイエルフの血統を穢す忌み子』とし、ハイエルフの名の下に殺害を決意。結果は返り討ちの上に洗脳のような処置を受ける。その後の行先は