ここで【イレギュラー・レコード】編は終了となりますが、この話の後に余談になる回を挟むので次章はその次あたりです。それが終わったら序章と各話タイトルの整理を行います。
地上での【
この一報にオラリオは吠えた。冒険達と民衆の歓喜が響き、神々は安堵に胸を撫で下ろす。
しかしまだ彼らには一つ、怒りの炎が燃え続けていた。
「いやぁ、
「軽口ならいいけど、ヘルメスの様にセクハラするならある程度の痛めつけはするからね」
「おっと、虜囚の身じゃ口は災いの元か」
魔石式昇降機の中には拘束をされていないエレボスと彼の斜め後ろに控えるアストレアの2人だけだった。エレボスが自分を送還するならアストレアの手であり、観衆のいないバベルの天辺での要望があり、それは叶えられた。
「……でも少し話をするなら階段を使った方が良かったかもしれないわね」
「ん? この俺に聞きたい事があったか?」
「ええ、でももうすぐ到着するからこう言いましょう。―――
その問いはチン、と
アストレアは背後を取らず向かい合うようにすれば良かったと後悔した。そうすれば表情からある程度の察しが出来たからだ。問いて答えてくれなかった以上、もう
エレボスもアストレアの問いにポーカーフェイスを保っていたか自信がなかった。だからこのタイミングで到着したのは幸運だと安堵を覚える。しかし彼女の一言が、中央からでも見えるオラリオの街並みを端寄りから見下ろす。
「……いい景観だな」
魔石灯の光が点々とオラリオ中を照らし、それが自分の『裁きの時』を待っているのだと理解した。そんな光景を眼下に収めつつ、円を描くように歩き始める。アストレアの言葉はよほど重かったらしい。見えないだろうが、ふと探してしまうほどに。
なんて思っていたら。
(……視線? あ、あいつ魔法でこっちを見てるな)
決意が揺らいでしまいそうなソレに気づいてしまった。
カロンは中央ではなく端の、しかし見張りが残る市壁から少し離れた中途半端と言える場所にあったボロボロの建物の屋根にいた。座って妖精眼の瞳が輝きつつ、サイレンサーを装着させたFNハイパワーが遊ばれるように手首の動きに合わせて上下している。
彼はオラリオの住人たちとは違い、見送りのつもり、だけではない。万が一に『気が変わったら』でここにいた。しかしそれは起きそうになかった。なぜなら妖精眼が主神を捉え、彼もまたカロンの視線に気づいてくれたが首を横に振り背を向けてバベルの中央部へ姿を消した。
「あー、あぁー……」
エレボスの答えに大口を開けて肺の空気が一気に出す。わかっていたつもりで覚悟もしていたがこうして振られるのは心に来た。案外、前世の最期を引き留めた面子も同じ気持ちだったかもしれないと過去を思う。
せめて見送ろう。そう思った。
「
「
何気に呟いた言葉に応じる声があり、そしてカロンの背後から剣を突き付ける影があった。カロンは振り返らない。振り返らずとも、そして妖精眼で見ずともわかっていたからだ。
アリーゼ・ローヴェル。アルフィアと戦い、その後に処置された治療後の姿のまま、そこにいた。
「見守らなくていいのか? お前の主神があそこにいるんだろう【
「そうね。キミが素直に投降してくれるなら一緒に見ない?」
「投降はしないな。俺も俺で
そう言うがカロンの位置と方向は彼にとって不利であった。振り返って銃口を向けるにはアリーゼの剣先は近く、それ以前に座った体勢なので動きは半分以上は制限されてしまった。それでも対応策はあったが、エレボスの見送りをあまり水を差したくなかった。軽口を叩きながら時間を稼いでいた。
「逆に、なんでそっちはここにいる? あの女王様を相手に勝ってもよくて重傷だろ?」
「ショージキ、今でも体中痛いわ。安静にって言われたけど予感がしたのよ。『逃すな』って」
ここでカロンはアリーゼの方へ振り向く。そこで激戦を感じさせる治療痕と汚れを確認する。医者の観点から見れば治療はほぼ応急処置で安静にするのが正しいだろう。その上で言うなら自分を探しにに来たせいで傷口は開きかけており、オラリオを走り回って体力を消費た事で治癒力も衰えて回復までの時間は伸びただろうと。
が、口にすることではないとカロンはバベルへ視線を戻して会話を続ける。
「そこまでして俺を探したのか? 理由はやっぱりこんな子供が
「そうね。それもあるけど、それだけじゃないの。キミ、エレボスの眷属でしょ?」
アリーゼのその言葉はカロンから警戒心を強めた。動かなかったが意識の大半は彼女に向けられた。
「根拠は?」
「ダンジョンであの神様が唯一と言っていた眷属の助命を望んだ時、視線が泳いだの。他に眷属がいると思ったら、キミの事が浮かんだの」
「オラリオ外のファミリアで、預かったから無事に帰せるか心配だったんじゃないか?」
「じゃあ、エレボスは主神じゃないと言える? ――ああ、それなら目と目を合わせた方がいいわね」
そう言ったアリーゼの手がカロンのヘルムに触れ、その瞬間にカロンが動いた。突き付けられた剣先を無視した動き。アリーゼは咄嗟に剣は引いたがヘルムに伸ばしていた手はそのまま目的の物を掴んだ。一瞬、動きを阻害されたカロンだったが素早く判断してベルトをズラして脱ぎ、同時にFNハイパワーでアリーゼの足を掠める程度に撃ち抜いた。掠り傷だが弾丸の熱と傷の痛み、そしてその場所が直立するための足であった事でバランスを崩しそうになり、その隙を逃さずカロンが飛びつき押し倒した。
「ぐふっ!?」
しかし男女とは言え11歳と16歳では体格差がある為、カロンはアリーゼの身体に体重を乗せる事で押さえつける。が、それでも普通は抑えられない。すぐに押し返されるだろう。
「おい」
「何―――」
カロンの声に顔を合わせたアリーゼだったが、その瞬間体の自由が利かなくなった。
彼女が見ているのは輝く2つの瞳。そしてヘルムがなくなって明らかになったカロンの素顔と、容姿。
「猫耳が、横? それにその髪と瞳の色は……」
「聞くな」
未知で、しかし見覚えのあるその姿にアリーゼは声に出すがカロンはそこへ銃口をアリーゼの額に突き立てる。
「俺には複雑な背景があるが、それをお前に教える気はない。そもそも敵同士だ。殺さないだけ感謝して大人しく――」
カロンの言葉が中断され、アリーゼを抑えたまま振り返る。
その隙に、とアリーゼは動こうとしたが自由が取り戻せなかった。そうしていると天に昇る光柱が目に入る。それがエレボスの送還を示した事はすぐに理解した。
「……行ったか、エレボス」
カロンがそう呟いた。それが彼がエレボスの眷属たる証明としては足りないが、アリーゼはそれだけで確信するものだった。
そうしてエレボスの光柱が消えるまで2人の視線は釘付けになったが、終わるとカロンは不機嫌、いや怒りがわずかに混ざった目でアリーゼを見下ろす。
「おい、あいつの見送りをまともに出来なかったじゃねぇか」
「えっと……、ごめんなさい」
「謝れるなら結構。だが詫びはどうする。神は2回も下界に降りてこないんだぞ。不謹慎だが大事な別れに茶々を入れたわけだぞ? わかるか?」
「わかります……」
敵愾心や殺気はないが、近所のおじさんに正論を告げられてるようでアリーゼは動けない体に変わって心でペコペコ頭を下げていた。敵同士だが、主神の去り際を見送れないのは確かに嫌だなと彼女も思うからだ。
そしてカロンはエレボスの見送りをちゃんと出来なかったことに対してはイラついていたが、だからと言って彼女を殺したり痛めつけたりする気はない。そもそもこの程度でそんな事をしていれば前世で余計なトラブルの元になるからだ。特に彼女のような人望がある相手は。どうしようかと考え、今二人の体勢で傍から見たと余計な事も考えてしまった所で、決めた。
「お前、確か自称『正義の美少女、アリーゼ・ローウェルとは私の事』とか言ってたな?」
「えっ、まぁ」
「彼氏、一度もいないだろ」
「そこをつつく!? まぁいないけど!!」
「じゃ、それを詫びで貰う」
「それ?」
さっきの質問で詫びに何を貰うの? とアリーゼが疑問符を浮かべていると突き立てられていた銃口が離れ、
その直後に唇に柔らかい感触を覚え、その疑問符はさらに増え、そして纏めて驚愕にかわる。
「!!??!?!」
『まさか』と気づく前にはすでにカロンの顔は文字通り目と鼻の先を超えて、なんて言葉じゃ済まない
「……れろ」
「んぐっ……!?」
触れたままの唇の奥から舌が侵入してきた。小さい舌がアリーゼの口の中へ侵入して撫でるように弄ばれる。燃えるような蹂躙ではなく、時間をかけて飴を溶かす様に優しく。しかしアリーゼも成すがままに甘んじることなく自分の舌で押し出そうとするがカロンはそれを躱し、寧ろ絡めるように弄ぶ。それでもどうにか抵抗しようにも体は動かず、顔を逸らそうとしても首も同じく。どうにかしてカロンの舌を追い出そうとして自分の舌を動かすが寧ろ熱が沸き上がるだけだった。
それがしばらく。長い時間、いや短い時間かもしれない。時を忘れる程の戸惑いと興奮を抱いている内にカロンがその唇を放した。繋がっている間はお互いの隙間から混ざり合った唾液が溢れ出ており、離れた際にはカロンの舌から同じそれが糸を引いており、切れてアリーゼの口の中に落ちた。
「ハァ……、ハァ……」
アリーゼの頭と心は融けたように朦朧としていた。何をされたかちゃんと認識していているが、それ以外が考えられなかった。実はすでに体の自由を取り戻している彼女だがそれを認識できておらず、何より体の力が抜けて動きようがなかった。
対してカロンは濡れた口元を袖で拭って顔を横に向けたアリーゼの顎を掴んで目と目を合わさせた。
「一度しかない親愛なる我が主神の見送りを邪魔した対価にお前の初めて、貰っていく。それでも取りすぎだと思うなら、次会う時には捕まえて取り立ててみな」
そう言ってカロンは手を放し、アリーゼの上から退く。そして転がったヘルムを拾って彼女を顧みることなく去っていった。
残されたアリーゼは仰向けのまま、星々が輝く夜空を見上げた。大抗争が始まり今日で七日目。こうして夜空を身が得るのは久々だがそれ以上長く見ていない気がした。思えばオラリオを駆け廻って、それで疲れては部屋でグッスリ回復に努めていたから、じっくり見ると言う事であれば久しぶりが正しいだろう。
しかしそれ以上に先ほどの
「…………悪い子だなぁ」
小さくて、生意気で、追いかければ捕まらず、仕返しをする猫のような男の子が彼女の心に深く刻まれた。それこそ、猫の引っ掻き傷の様に印象的で、それでいて痛みなんてない不思議な棘が。
「――と言う事があった」
「そうですか」
逃走経路の確保を行っていたラフィアと合流したその脱出路、
「それは前世より控えめですね」
以上である。
「それはそれとして、次の目的地は?」
「場所か? 目的か?」
「場所と方法ですね」
「なら先に方法だな。エレボスからこの二通の紹介状を受け取ってる。これがあれば都市へ入る事は可能になるそうだ」
カロンが取り出したのは二枚の封筒。どちらも封蝋で閉じられておりラフィアからすればフィクションでしか見た事がない代物だった。1つはエレボスがしたためある神に宛てた物であり、もう一つはその都市へ入る為の
「私たちの事は、ギルドも承知で?」
「ギルドは知らない。完全な機密以上に、口約束で結ばれた取引さ。この紹介状以外に証拠になる物はないし、使えば相手に燃やしてもらうさ」
「相手が受諾しない可能性は?」
「ないとは言えないな。エレボスも地上に降りてから会ってないって言っていたし。そもそも神々でさえ簡単に入れない場所だって言っていたからな」
「その場所は?」
「犯罪都市ベルゲン。俺たちが会いに、主神になってもらう神を探す場所の名前さ」
そこは冥府の神々が管理する、この下界における絶対的な
余談であるが、2人が地下を抜けてオラリオの外へ、先に出ていたリリルカとも合流した時。
「カロン様! ラフィア様! コルフの尻尾が二つになってまぁす!!」
「知ってた。エレボスからコッソリ聞いてたから」
「ああ、二つに分かれる品種だったのですね。さすが異世界」
「冷静!?」
「にゃぁ~」
2人と1機と1匹の旅立ちへのエピローグはそんな形で納まるのであった。
最終ステイタス。
Lv.1
《基本アビリティ》
力 :H104
耐久:H156
器用:G226
敏捷:G202
魔力:F392
《発展アビリティ》
魔導:I
《魔法》
【グラマリー・サイト】
・付与魔法
・幻理属性
・詠唱式【其は、真理を綴る銀の楔。
目覚めよ古き森の記憶。白銀の調べを以て、万象を編む記述を解き明かさん。
我が瞳の前に偽りは潰え、秘されたる理は白日の下に晒される。
虚ろなる綴りを書き換え、歪なる言葉を真実に。
境界を越え、妖精の瞬きを以て、
欺け、幻惑。射抜け、至高の真理。
我が視線の先に虚妄の檻を。
――――我が名はアールヴ。】
【】
【】
《スキル》
【
・前世継承
・耐神威
【
・『敏捷』『魔力』補正
・獣化
・猫・妖精に対する念話
・発展アビリティ『魔導』発現
【
・銃器・機体使用時、ステイタス強化
・ステイタスに応じ銃器・機体の性能向上
・銃器・機体使用の戦闘時、経験値取得
カロン・グリマルキン
オラリオを去る前に星の乙女の初めてを奪っていた高テク持ちネコガキ。猫に見られていたが人や神に見られてないからセーフ。妖精眼を気安く使ったり高レベルのエルフの魔法を何とかしたりしたから成長補正無しに魔力のアビリティがギュンギュン上がった。
内心、エレボスの心変わりを願っていたがやはり神の決断はそう変わる物ではなかった。その落胆の隙にアリーゼに捉えられたが素顔を明かす事を代償に妖精眼で動きを止めた。その間にエレボスが送還されてしまったのでその仕返しで唇を奪う。ヒロインフラグはポンッと自然に立つんじゃない、この手でぶっ刺して立てるのだ。
ちなみにソッチの技術は豊富、と言うより前世では必要な技能であった。なぜなら前世の女性は逞しいので下手に主導権を握られるとその後は文字通り尻に敷かれて行動を制限されるので、生粋の童貞か最上のテクニシャンではないと自由に出来ないから。カロンは後者で狭く深くするタイプ。
アリーゼ・ローヴェル
ダンジョンでの勝利後、エレボスの様子からふとカロンの事を思い出し、治療も終えた後はオラリオを駆け廻って探す。彼ならエレボスの神意を知っていると同時に、まだ小さな子供を正道に戻したいと願って。そうして見つけたが捕まえる所か逆に制圧されて無垢な唇を濃厚な行為で蹂躙された。カロンが去った後は彼の容貌と感触が頭から離れず、その心に強い印象を残す。
帰った後、
エレボス&アストレア、ついでにヘルメス。
原作通りの流れと三柱。唯一違うのはエレボスがバベルの天辺を歩き回ったりヘルメスに『頼んだぞ、神友』と伝えたりぐらいである。唯一の心残りと言えばカロンの存在だったのは、三柱共通である。
ラフィア&リリ&コルフ
エピローグ回がキス回だったので最後にしか出番がなかった。彼女
あとコルフの猫又化はオラリオと言う魔窟で9回も死地を乗り越え、加えて老猫程の長生きをした事。最後に一個体として名前を得た事により恩恵なしで自身の器を昇華させた、と言う設定。神様だったらすぐに恩恵を刻みたいほどのURレアキャラ。エレボスが二度見したのはそれが理由。
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