(仮)購買意欲が勝った転生者   作:Celtmyth

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 誤字脱字報告、感想ありがとうございます。
 話は変わりますが夏アニメも終わりましたね。私は『きみ死ぬ』が良かったと思います。この場でこんな事を言うのはですね、コミック版『ソードオラトリア』34巻が出て内容を読むたびにReoNaさんの『Amore』がリピートされるし、『きみ死ぬ』と視てたら妖精二人の別れが浮かぶし、かなり互いに互いを意識していました。


第4話『舞台の完成へ』

 夜を過ごし、朝日を迎えてさあいざカロンたちの主神探しに、とは行かない。

 まず初めに行ったのはベルゲンの地理の把握だった。ラフィアが鉄道車両から上空写真みたいなものを手に入れていたがやはり現地で見ていった方が早い。そうしてカロンとラフィアが交代で見て回り、戻って来て情報を共有する。

 例えば、

 

 

 

 

 

「なんだ新入りか? なら俺の舎弟になれ」

 

 チンピラから勧誘みたいなのを受けたり、

 

 

 

「ハッハー! 若い肉だぁ!!」

 

 殺人鬼の襲撃みたいなのがあったり、

 

 

 

「ウチに来い。商売? その器量なら良い客も付くだろう」

 

 水商売の元締めっぽいのからまた勧誘みたいなのを受けたり、

 

 

 

「カチコミじゃぁああああああ!!」

「返り討ちじゃぁああああああ!!」

 

 酒場で抗争みたいのに巻き込まれたり、

 

 

 

 

 

「「―――まぁそんな日々だったな・でした」」

「犯罪都市の、面目躍如じゃないですかぁ!!」

「ニャニャ(物騒過ぎる)」

 

 地理の調査を始めて数日、リリルカから近況を聞かれて包み隠さず話せば絡みに襲撃、怪しい勧誘に抗争とオラリオなら【ガネーシャ・ファミリア】と【アストレア・ファミリア】が過労もしくはガチギレするほどの発生率である。もちろんカロンもラフィアもベルゲンに倣ってすべて暴力(返り討ち)で何事もなく終わってる。返り討ちに遭った相手がアリに群がれた死骸のような扱いを受けてはいたが。

 

「まぁ地理は把握したし、ついでに怪我人がゴロゴロ出てくるから情報収集は捗った。一応、噂から確実な情勢までな」

「今の報告でどうやって―――ああ、カロン様は医者でしたね」

「正解。察しが良くなって嬉しいぞ」

「ここに籠ってからは推理系や謎解きゲームをやらされていましたから」

 

 リリルカが見るのは勉強道具以外に『名〇偵〇ナン』のコミックや『〇ルダの伝〇』のゲームなどが積まれていた。謎解きのゼル〇はともかく殺人事件が多いコ〇ンに対する感想は「もしかしてこの作者こそ快楽殺人鬼(シリアルキラー)なのでは……!」と誤解を持ってしまっている。まぁ実際に人死にが多すぎるのでそこは仕方がない。

 

「で、集まった情報はリリにも共有してもらえるのでしょうか?」

「ああ。とりあえず俺たちが来てから例の4柱の内、明確に動いているのはタルタロスだ。エレシュキガルとケルヌンノスは普段通り。ヘルは元々、自由奔放な所があってわからん。ただそれとは別にオラリオから闇派閥(イヴィルス)の残党がここに送られてくる事が一番の噂になっていた」

 

 闇派閥(イヴィルス)の名前が出るとリリルカの表情は曇る。オラリオの日々を思い出しているようだが顔を真上に向け、そして一気に下を向けて視線を戻して、気持ちを落ち着かせてから会話を再開する。ついでにラフィアがコルフを「のびーん」として戯れている光景を見て更に平静さを保つ。

 

「……ようやく、と言った所なのでしょうね」

「この前の『大抗争』が終わって勢力が一気に弱体化した今じゃないと送れなかったんだろう。そしてこのベルゲンにとって重要なのはその闇派閥(イヴィルス)の構成員をどう取り込めるかで牽制し合ってる」

「改宗(コンバージョン)ですか?」

「いや、それなんだがこのベルゲンには主神と恩恵が合っていない眷属が多かった。これは更新で強くなった眷属が脱出しない為の対策の一つらしい。上級冒険者の実力があっても【ヤマ・ファミリア】が牽制する」

「ああ、なるほど。そんな状況から、せめて自分に合った主神の元へと行くわけですね」

「正解」

 

 ご禁制品である、ステイタスを開示する『開錠薬(ステイタス・シーフ)』や他神でも更新できる『更新薬(ステイタス・スニッチ)』の存在は知っていたリリルカだが主神を介さず改宗できる薬は聞いた事がないし、寧ろここまでの代物はないと考える。あったらあったで高額だろうし、最初の2つ以上に禁止物になるだろう。

 その上で更新できない状態と言うのはそれ以上の実力を伸ばせない事である。それなりの実力者が来る場合もあるだろうが初日に見たように一度、神ヤマに面通しされるなら『大抗争』にあったザルド(【暴食】)とアルフィア(【静寂】)のような切り札の秘匿も難しそうだ。だが後者の事を考えると一つの懸念が生まれる。

 

「隠し通路の存在はないのでしょうか?」

「あるかもしれない、の程度でほぼ都市伝説の類だ。前にイディアが言っていた、ここから脱出した子供がいた話からその可能性が浮上しているが、この都市を囲む山壁は他より頑丈で掘り進めるのは数年じゃ収まらない。そしてその子供の脱出経路も鉄道車両の死角に潜んで且つ、団員の目を掻い潜って門の壁から脱出したと【ヤマ・ファミリア】が発表している」

「……一応、その話は信じておきます」

「ただまぁ、入り込むのは簡単らしい。入れてしまえば出させないって意味でな」

 

 それはリリ達にも当てはまるのでは? と思ったが最終的に空が飛べるカロンの兵器であれば脱出は大丈夫だと訂正した。さすがにこの世界でカロン以外に飛べる乗り物を持っているとは思わないのである。

 

「それで、そこまで情報が集まったならいよいよ4柱の誰かへ会いに行くと言う事でしょうか?」

「ああ。まず一番行動が明確で、エレボスの紹介状を渡したタルタロスから会いに行く。ここまで日を空ければ漫画もアニメも最後まで読んで視てるだろう」

「あ、それもあって時間をかけましたね」

「行ったら後日、なんて2度手間は嫌だからな」

 

 これは一気見しているのが前提だが、エレボスからタルタロス(彼)は一気見するタイプだからと言われているのでこっちを前提で動いている。ついでに心臓を捧げるポーズで出迎えてくるだろうと。

 

「――ああ、一気見と言えば。リリ、魔(・)法(・)の(・)発(・)現(・)は(・)も(・)う(・)試(・)し(・)て(・)み(・)る(・)か(・)?(・)」

 

 リリルカがそのポーズを想像していたらカロンが思い出したようにそんな事を言った。それが何を言っているのか理解したリリルカは首を横に振る。

 

「やめておきます。ただカロン様の魔(・)法(・)を疑っている訳ではなく、リリの内面に自信がありません」

 

 リリルカのステイタスには魔法のスロットを一つもつ。つまりは魔導書(グリモア)を使えば確実な発現が可能である。普通なら伝手なり幸運なり資金なりで彼女は魔法を手にすることが出来る。ただし彼女はカロンの庇護下と言う特別があった。

 カロンの妖精眼、【グラマリー・サイト】は神の恩恵(ファルナ)のステイタスに干渉し、更新する事が可能である。そして自身だけではなく他者にも可能であった。立証はすでにリリルカはダンジョン外のモンスターと戦い、得た経験値を反映して更新出来たので間違いない。

 

「魔法は願望や本心の発露だ。望む願望が、隠してきた本音が魔法として発現する。お前は自信がないんじゃない。自分の願いが本当にわからない上、これまでの過去が出てくるのを恐れている」

 

 そしてカロンはエレボスの伝手で闇派閥(イヴィルス)が保管していた魔導書(グリモア)を一冊、手に入れていた。ただし彼はこれに対して妖精眼でその『理』を手に入れていた。これによりカロンの精神力(マインド)フル使用で魔導書(グリモア)の効果を発揮できる。ちなみに回復が出来ればまた使えるので実質、カロンは使用限度ナシの魔法発現装置である。

 そんな魔法発現の理を得たからこそ、カロンはリリルカの言葉にそう返した。

 

「……魔法には種が必要、でしたっけ?」

「ああ。さっき挙げた2つ以外であれば血統に準じた魔法と魂に根付いた魔法。前者は俺の、ハイエルフに通じた【グラマリー・サイト】。後者は漂白された魂であっても根付いた前世の遺志。恐らく魔法の空きスロットはこれが影響しているが、今世の思いが強ければそっちを形にした魔法が発現すると考えている。魔導書(グリモア)を使って発現しないのはその種が未熟で、逆にスロット増設は十分な魔法の種が育まれているんだろう」

 

 個人の見解だがな、と締めくくったがリリルカはそれこそ真理に近いと考えていた。ついでに前者を語る時は嫌そうな顔をしていたと気付いたが、すでにリリルカにとって彼のエルフ嫌いは挨拶のようなものなので気にはしない。気にはしないが、その魔法の種と聞いて、そしてカロンがこの話題のきっかけになったもの。

 

「カロン様は、リリがフ(・)ィ(・)ア(・)ナ(・)騎(・)士(・)団(・)を思わせる魔法を発現するとお考えで?」

「確信はない、がお前だって小人族(パルゥム)だ。可能性は多い方がいいからな」

「とは言え、あ(・)の(・)本(・)で魔法が発現するならリリはかなりのひねくれ者ですよ」

「一応、俺が『エランの森』で過去視した上で執筆から挿絵まで手作りした史(・)実(・)だぞ。ま、これが嘘を吐かない神が保証しない限り、ただの架空でもある」

「架空、ですか」

 

 その言葉にリリルカの視線は部屋のベットの、自分が使う物に向けられる。しかしそれはベッドそのものではなくそこに置かれた3冊の本に向けられていた。カロンが前世で購入していた本ではなく、この世界にあるような分厚く飾り気の少ない本だった。

 

 

 

 

 

 『ナイツ・オブ・フィアナ』。カロンがすべて手作りしたこの世界で唯一の古代史劇である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――さぁて、そろそろベルゲンに到着する頃だな」

 

 遠目であるが目的地のカルデア山が見えてきた所で、馬車からそれを目視したヘルメスは呟いた。

 オラリオの闇派閥(イヴィルス)護送旅団。さきの『大抗争』より【ガネーシャ・ファミリア】がメインに捕縛した構成員たちをベルゲンへ護送する一団である。であれば大規模、と思う所だがせいぜい20か30人程度の規模だ。この理由は決戦の最終日、どちらも死力を尽くした戦いに闇派閥(イヴィルス)は死亡または逃亡し、オラリオの冒険者も捕縛する意識はなく逃亡する余力もなかった。結果、捕縛できたのはその後にまだ生存し且つ逃亡していなかった構成員だけであった。尤も、幹(・)部(・)級(・)もいてこれを余り物と片付けるには大戦果過ぎていた。

 

「そろそろなの、ヘルメス兄(・)さ(・)ん(・)?」

 

 しばらくカルデア山を眺めていたヘルメスは、同じ馬車からその声を聞いて中へ引っ込む。そして彼の視線は馬車の内側に凭れかけ、と言うには体を預けるように座り込む女性がいた。

 

「ああ、遠目だが見える所まで来た」

「じゃあまだ遠いじゃん。可愛い妹のお尻がカッチカチになっちゃいそうだよ」

「ベルゲンから最寄りの村まで馬車でも数日はかかる距離にあるからな。そこは我慢してほしい」

「にゃははは。ま、だとしてもロクに動けないんだけどね」

 

 冗句を交えつつ、手を振りながらにこやかに過ごしているのは【ヘルメス・ファミリア】団長、リディス・カヴェルナその人である。女性版ヘルメスと呼ばれ、女神に引けを取らない美貌を持つ。

 しかし今の彼女はその評価に影を落としている。顔の左側には火傷の跡があり、左目も閉じたまま。更に手を振っていた反対側の左腕は糸が切れた人形のようにだらんとしていた。

 そんな彼女にヘルメスは笑っていた。しかし帽子を目深く被って視線は合わせないように。

 

「暇ならベルゲンでの活動を決めておこう。道中、あそこに物資を運ぶ商人に聞いてみたが俺たち以外にすれ違った相手はいないそうだ」

「でもヘルメス兄さんの友達はそこに行ったって言うんでしょ?」

「ああ。ただ道中に立ち寄った町や村で見慣れない子供もしくは小人族(パルゥム)と猫を連れた女性を見たらしい。ただし確実に通過する経由地点を飛び地しての目撃情報だ。ついでに言えば【女神の戦車(ヴァナ・フレイア)】は空を飛ぶ敵と対峙している事から、かの一行は空を飛ぶ技術がある」

「……空を飛ぶ馬車か何か?」

「確実じゃないが俺は確信めいている。間違いなくベルゲンにいるし、目撃情報からすでに到着している事だろう」

 

 ヘルメスはかの一行、強欲な老人(パンタロン)の特徴は知らない。しかし目的地はわかっているからこそ、オラリオからベルゲンまでの道中と言う『送られる犯罪者』『それを護送する者』『物資を運ぶ商人』以外は使わない常識から、それに外れた存在に目を付けた。結果としてヘルメスは強欲な老人(パンタロン)らしき存在が徐々にベルゲンへ近づいている事を確信した。それもこの世界にない移動方法を使って。

 

「そしてベルゲンに滞在するなら閻魔様、ヤマの本拠(ホーム)に最初は滞在してるだろう。まずは彼に謁見し、行方を尋ねる」

「その後に街中へ?」

「本拠(ホーム)から離れていた場合にはそうなるな。一応、俺の同郷で友神がベルゲンにいる。ただアイツの兄(・)弟(・)でもあるから真っ先に会いに行ってるかもしれない」

「ふーん。でも神々に親とか兄弟とかあまり聞かないけどあるの?」

「あ、悪い。そこはノーコメント」

 

 思わずヘルメスはその話題を止めた。リディスはその兄弟に対して、片方に心当たりがあったが同時にその言葉で連想する存在に目を向けた。尤もその視線の先は馬車の内部であり、彼女が見ているのは護送車、それもとびっきりの存在を乗せている馬車に。

 

「思えば本当に何もしなかったね、彼(・)女(・)達(・)」

「それは確かに。アーディちゃんは大丈夫だって言ってたけど俺も半信半疑だった。結果として大人しいし、寧ろ他の闇派閥(イヴィルス)を牽制して大人しくさせていたよ」

「確か道化師(ジェスター)が彼女たちを制圧したんだよね? そう言うの、ヘルメス兄さんは好きだよね」

「……ああ。大好きさ」

 

 彼が遺した結末にヘルメスは笑った。これから未来が楽しみになるほどに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――潜入成功。さぁて、揃いも揃って放蕩する娘た(・)ち(・)に会う手筈を整えないとね」

 

 

 




カロン・グリマルキン
 ある意味慣れた環境を上手く立ち回って情報と都市構造を調べていた11歳。表でも裏でも医者と言う高等技術を持つ専門職は重宝されるのである。
 先日の4柱の影響下にある所はカロンの素性を聞かされているようで接触してきた相手以外でも遠目で観察されており、それに気づきながらも反応を伺う方向で流した。結果、ベルゲンの情勢を聞き出せた以外に情報は得られなかったのでほぼ安全は確保できたとタルタロスへの謁見へ望む。
 魔法の見解は原作知識から推測したものだが実際に遠からずと言えており、間違いはないと思う。加えて【グラマリー・サイト】を使って他者の魔法を発現できる能力を得た事は魔法大国アルテナの注目待ったなし。と言うより今後、かの国を意識させるタイプになる予定。
 リリルカの教育方針は多方面にしつつ、子供らしい遊びもさせている。その反面、可能性の発露として原作知識から『ナイツ・オブ・フィアナ』の物語を執筆した。所々に挿絵があり、第一巻『騎士栄華』の冒頭はPVのリューリゥの語りと『赤勇の唄』で始まり、第三巻『真勇蹄跡』の最後には『赤勇の唄』と『Fortia』のソロ楽譜を記した豪華仕様。

リリルカ・アーデ
 8歳にしてすでに原作本編のツッコミに板がついてきた見た目も中身も幼女な彼女。しかし過去の生存本能から知識の吸収は早く、すでに現実世界では義務教育を修めたぐらいには学習を終えている。
 情報収集の最中、遮那閻魔宮殿の部屋から出ずに勉強と娯楽とコルフの相手で日々を過ごしており、そろそろオラリオの日々が完全に過去の記憶と化してきた頃である。
 魔法の発現については自分の過去からくる自信のなさと願いが不透明である事で足踏みしているが、実際に今のままで発現させれば『今の自分とは違う自分に』の思いが形になってしまう状態なので判断は正しい。つけ加えるなら『ナイツ・オブ・フィアナ』を読んだ事で新たな種のような物は生まれている。
 最近、カロンことを兄か父の様に思えるようになって少しずつ遠慮もせず、甘える事もするようになってきた。

ヘルメス&リディス
 もう間もなくベルゲンに到着するオラリオ護送隊に同行している主神とその派閥の団長。このベルゲン来訪の件、カロン一行の接触が終えればリディスは隠居に入る予定である。
 リディスの『ヘルメス兄さん』呼びは2人っきりの時だが長い馬車移動で暇になり、その暇つぶしにヘルメスをからかう為にわざと口にしている。なので護送隊からは「ヘルメスは自分とこの団長に兄と呼ばせている変態」と認識された。
 護送されていると(・)あ(・)る(・)姉(・)妹(・)の今後も注目。

ある女神様
 原作ではセリフが一文しかなかったからほぼオリキャラの神様。どこにあるって? 小説ソードオラトリア15巻。
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