ただし細かく調整しようとすると耳が移動しちゃったり四つ耳になっちゃったりしたんですよね。
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彼らはこの『暗黒期』が終わるまでここに繋がれる。
『――やぁ、囚われし
その空間にその声が響いた。ギルドの牢は主神ウラノスの祈祷の間が地下にある以上、牢を地下に置くことはリスクが高い。地上と挟むか、ウラノスの足元に配置するのは場合によってオラリオ全体の危機につながる。故に地上であるからこそより堅牢な建物の形を取る。出入り口も一つであり、窓も牢の中には無い。侵入など不可能である。
『が、この声は
その言葉に俯いていた多くの構成員が顔を上げ、その声に耳を傾け始める。
『この後、神の送還をもってオラリオとの決戦、『大抗争』を始める。その前後のタイミングでお前たちを解放する。そして外で暴れている同志たちと合流するといい。ただ問題と言えば幹部はともかく、構成員の皆は顔が割れてしまって脱出できても今後は民衆に潜伏する活動なんて事はもうできないことだ』
それはそうだろう。捕縛の際、顔を隠していた装備は奪われてしまったのだから自分たちの顔はオラリオ側に知られてしまっている。脱出できてもこれからは襲撃する時を除いて
だが彼らもまた覚悟した者たち。このまま繋がれたまま何も出来ずにいるのは我慢ならなかった。彼らは等しく狂信者であり狂人。すでに前に進むしかなかった。
『それじゃあこの声を聴かせている協力者がお前たちを拘束から解放しておく。時が来たら出入り口とは反対の壁に脱出口を作り、そこに武器を置く。多種多様だが迷うな。この脱獄で迷う者は一大イベントに参加できないからな。――さぁ諸君、一世一代の悪を成そうか』
ここで邪神の声が途絶えると鍵の外れる音が一つ、一つと鳴っていく。それに興奮が沸き上がってきたが邪神の言葉に従い、静かに時を待った。
そして爆発音が聞こえたと同時に、示し合わせたかの如く
「さて、これで初手の頼み事は終わったわけだ」
爆弾で開けられた拘置所の壁から
すでにエレボスから頼まれた事の一つ、『混乱をさらに深めるために捕えられた
「……
そんな中、カロンの視線は黒煙が上がるオラリオの空を向いた。その直後、
神が送還された瞬間だった。一部、
(もうここにいる必要はないな)
完遂の責務として脱獄の様子を見守っていたがこれならもう加勢はいらないと判断する。エレボスからは指示されたが労力をかけて失敗したら、悪行と言えど気分はよくない。なのでこうしていたが事態の進行したことでその義理も消失した。
拘置所に背を向けて建物の屋根を跳び越えていく。乱戦ばかりの地上を走り抜くのは無理と言うより面倒である。とは言え状況の把握、実際の戦力を確認は必要案なので魔法を行使しながら移動していた。オラリオの冒険者、
―――
『そうか、貴様がそうか!! 聞いた通り貴き血を穢す忌み子だ!!』
フードとマスク姿でナイフ一本で戦う
『貴様は存在するだけで大罪だ! 我らが忠誠の刃で処罰してくれる!!』
彼と共に前線で大斧を振り回すドワーフを。
『そして貴様を生んだ親たちも同罪だ!! ここで死んで罪を雪げ!!』
その2人を後衛でサポートしている長杖を構える、エルフを、
『我ら
自分と同じ翡翠色の髪とエメラルドの如き瞳を持つ
(殺気!?)
「リヴェリアさん!!」
「ッ!?」
その名を叫び彼女へ向かって走るベル。呼ばれたリヴェリアは何かと身構えるがそれは近づいてくるベルに警戒してではなく、他の2人と同じく殺気を感じ取って見えぬ敵を警戒してだった。しかし彼女が気づかず、ベルが気づいたのは今まさに彼女へ襲い掛かろうとするその存在。
その足でベルは飛び、リヴェリアの頭上すら超える高さでそのナイフを振り、その一撃を弾いた。
「……チッ」
その直後に喧騒に似つかわしくない静かな舌打ちが聞こえた。そして力を押し込まれたのでベルは逆に押し返そうとしたがその瞬間に抵抗がなくなり、そのまま押し出した。
「ちょ!?」
思っていなかった感触に思わずそんな声が漏れてしまったベルだがすぐに気を引き締め直して着地する。対して弾いた相手、襲撃者はその体を回転させ、地面に降りても勢いはそれほど殺さずに滑走して距離を取った。
その襲撃者は小柄で
「お前、
「そっ、そうだ」
しかしその話し方で見た目以上に大人びていた。まるでフィンさんを相手にしているかのようだ、そうベルは感じた。実際に彼は、カロンは前世と前々世を合わせて100歳の齢を重ねている。
「俺は
「天秤? なんの――」
「ギルドの拘置所が襲撃された―――!! 捕えられた
ベルが
「僕が無力化した
「悪いな。俺が今日と言う日に頼まれた片方だ。もう片方はもう目に入ってるだろ」
「―――神の送還か!!」
「……察しがいいな。とは言えそっちは直接した訳じゃない。必要なものを用意しただけだ」
後ろでカロンの役割を察したのはベルの後ろにいたリヴェリアだった。しかし第一級とは言え不意を突かれかけた彼女は警戒してベルの前には出ない。対してカロンは彼女が会話に参加するや間が空き、少し不機嫌そうに返した。
「こっちは用事が終わった。が、今俺は機嫌が
カロンの言葉にベルは迎撃の構えを取る。ここで突撃し、リヴェリアへ敵を回すわけにはいかないと瞬時に判断した。ただしベルは
「じゃ、『未知』を味わえ」
しかしカロンはその場から動かず、空いた片手に別の武器を握った。それは見た事のない武器だった。そしてカロンの指がゆっくり、それが向いているのがリヴェリアだと気付くとベルは「まさか!?」と思い、その線に割り込んだ。
バァン!
耳を塞ぎたくなるような、雷に似た爆音。しかしベルは本能か、もしくは芽生えた予感のお陰か耳を塞ぐよりもナイフを振るい、カキィンと何かを弾いた。
「グッ!?」
それはかなりの衝撃だった。小さいものが、それこそ自分と同じ第1級冒険者の力で叩きつけられたかのようだった。
対してカロンは初見でこれを避けるどころか銃弾をナイフを弾いた現実に驚いた。しかし偶々の可能性もあると切り替え、再び銃のトリガーを引く。今度は連射で撃ち、銃声もまた連続で響き渡る。
「っ! リヴェリアさん!!」
一発目は防いだベルだったが実のところ、反応はギリギリだった。同時にまだ『未知』が残る武器に正面から受ける愚直さはなかった。そしてその思考は名前を呼ばれたリヴェリアも察し、2人は今の場から離れる。
カロンの銃弾は外れ、背が低かった事で空や建物の上の階や屋根に当たる。そして逃げたベルとリヴェリアはそれぞれ反対方向へ移動し、カロンもそれぞれを一瞥する。
「チッ」
二度目の舌打ちをすると小斧、タクティカル・トマホークをホルダーに戻し、拳銃を両手で持つ。そして狙うは今まさに近づいてきているベル。
ゾクリと、悪寒がしたベルは強引に横へ跳び、そしてカロンの銃弾が撃たれる。その着弾場所はベルが前へ進んでいれば足があった場所だった。
(さっきより狙いが正確になってる!?)
この一発でさっきまでのが乱射もしくは精密さを欠いた射撃だったことを示した。しかしベルが警戒を強めるよりも先にカロンの連射が降り注ぐ。それを右に左、そして後ろへ跳んで避ける。そんなベルの反対側にいたリヴェリアは魔法を唱え援護しようとしたがそれを阻止するかのよう其方にも弾が放たれ妨害される。しかも厭らしいと言えるほどに魔法を阻むにはベストなタイミングで、だ。
「儂を忘れとるぞぉ!」
「――知ってる」
しかしそこで周囲の
「ふんっ!!」
転倒を狙ったのかもしれなかったが、ガレスは罠の可能性にも目にくれず踏み抜き、弾倉を潰す。その瞬間、「マジか」と呟きながらカロンは軽々と跳び、先ほどまでいた場所にガレスの大斧が振り落とされ地面が割れる。
「脳天かち割でも出来そうだな」
「この状況で軽口が叩けるとはフィン並みにいい性格をしとるのぉ!」
「
新しい拳銃の弾倉を装填したカロンはそれをホルスターに戻し、背中に担いでいた筒、
「!?」
頑丈さではオラリオでも上位に組み込むガレスが
ドォオン! キィィィン!!
先ほどより重い銃声と、金属が弾かれる音。そしてわずかに押し出されるガレスの足。
「ぬっ、うぅ!」
「スラッグ弾で貫通しないし、武器からも手を離さないか」
槍の突きのような、しかしそれ以上に重すぎる衝撃にガレスは痺れと共に唸る。そこへ落ち着いているカロンはカチャリとポンプアクションの装填を素早く行い、続けて二発目を撃った。
「うぉぉおっ!?」
「ガレスさん!?」
元々、後ろへ押されるほどの威力。二発目は踏ん張りの軸、重心や体幹の隙間を狙った一撃はガレスすら転倒させるに至った。思ってもいない光景にベルが叫びをあげ、駆ける。そこをカロンは装填を終えたショットガンを向けて放つ。ベルは向けられた瞬間に転がってその射線上から逃れたが、地面に着弾した地面が抉れたように穴を空けて冷や汗が出た。
ここまでカロンはショットガンに切り替えてからそれほど移動をしていない。タイミングが良かったのだろうが、ここまで2人を相手にしたことにより、時間が作られた。
「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」
リヴェリアが詠唱を終えて魔法を発動させた。ガレスが合流するまで詠唱の完遂すら出来なかったがここでようやく結実した。オラリオの最強魔法使いのそれは同レベルであっても容易ではなく、ましてやLv.1ではどうしようもない。
未だ発動したままの【グラマリー・サイト】は
「――――」
カロンは静かに、何も呟かず
それだけで氷獄に閉じ込めようとした凍結の魔法はカロンを避けるように二つに分かたれた。
「なっ!?」
その光景に最も驚いたのはリヴェリアだ。ベルは彼女の魔法が不自然な不発になった光景に言葉を失い。ガレスは転倒してそれを目撃していない。
「…………んっ」
しかしカロンも代償があった。口元を抑え、手の隙間から血が流れた。吐血、ではない。鼻血が出たのだ。
(流石に魔力の差で脳の負荷が大きかったか……)
一般的な付与魔法は武器等に効力を纏わせるので肉体的な負担はない。視界が魔法の胆となる【グラマリー・サイト】は必然的にその情報を処理するために脳に負荷がかかる。それも幻覚だけではなく人には視えぬ物を知覚し、干渉できるのであれば更に重くなる。事前に検証と、レベル差による
そんな状態のカロンはリヴェリアの顔を見て、その動揺した表情を見て
「こっちもギリギリだが気が晴れた。逃げさせてもらう」
「待っ―――」
一方的な宣言をし、三人の誰かの声を聴き流しながらカロンは背を向ける。タクティカル・トマホークを投擲し、その先へ走っていく。投げたソレは建物の高い所に刺さり、カロンはその脚力で建物の出っ張り等に足をかけて登り、その途中で突き刺さったタクティカル・トマホークを足場に屋根へ上り詰めた。
ここでようやくカロンは魔法を解除し、ただの双眸でリヴェリアを見下ろした。
「じゃあな、
皮肉をたっぷりと込めた言葉を最後に立ち去った。
カロンが退散し終えた頃にはオラリオの混乱も一時の沈静化していた。とは言えエレボスによる『大抗争』の始まりは民衆に不安と恐怖を植えつけ、冒険者たちは
「フゥーーーーー……」
「――よぉ、お疲れ」
そこへ声が、待ち人たるエレボスが現れた。
「そっちこそ。あの7柱のうち、何本だ?」
「お前の協力があってと言う事なら2柱だ。一つは件のエルフを使って
エレボスが見せるのは右手に持つ拳銃と、スカウターのようなゴーグルだった。
これはカロンがエレボスに貸した、前世の武器だ。拳銃とゴーグルはセットになっており、拳銃の射線がゴーグルに照準とリンクして命中率を上げる物。元々は訓練用であり、戦場でもマシンガンが多いので初心者が構え方や狙い方を訓練するための物であった。しかし今回はそんな青臭い目的ではなく、血なまぐさい狙撃に使われた。
「しかしまさか銃を撃てるとは。俺としては両手持ちじゃなくて片手撃ちでカッコよく決めたかったな」
「その場にいない俺に言うなよ。そんな事言うと送還された神も浮かばれないんじゃないか?」
「傷口を抑えた後、『なんじゃこりゃあ!!』と叫んでいたな」
「おいコメディか。本当にお前が送還しなきゃいけない神だったのか?」
「アステカ系の神」
「ああ、納得」
豊穣の裏に生贄があったアステカ神話系なら悪意なくとも人類を振り回す可能性があったのだろう。エレボスの一言でそう判断したカロンは言葉通りにそれ以上は言わなかった。
「そっちも
「そこまで聞いたなら襲った理由はわかるだろ」
確かに、と返したエレボスは先ほどまでの飄々とした笑顔が潜み、真面目な顔でカロンの横に並んだ。
「怒りは深いみたいだな」
「見つけた瞬間、感情が抑えられなかった。まぁ今回の一度限りにする。俺の魔法は王女殿下の魔法にも通じた事で優越感を持てたからな」
「王女殿下、か。お前は俺の
「最適解で置いてくれ。そっちこそ俺の先輩がいるだろ? どう言い訳したんだ?」
「恩を売っていいように使う駒だ、と言い含めた。代わりにお前がどんなことが出来るうえで配置には口を出してもいいと伝えた。まぁあいつの事だ、会ってもいないお前を使おうとは思わないだろう」
この話はカロンが
「フィナーレは六日後になるんだったか?」
「ああ、その間は散発的な襲撃が起こる。俺もそれまでに会うべき相手には会っておく」
「
「それもだが、あとお前が嫌う
「なら手心は加えるな。それと折角だ、高級のワイン。グラスで飲め」
「りょーかい。そしてサンキュー」
コルクを開けたガラス製のワインボトルに、これまた透明なグラスを蓋のように被せてエレボスに渡したカロンは自分用にカフェオレのペットボトルを取り出す。
『大抗争』を引き起こした邪神と、その眷属はその日の終わりのように一服するのだった。
カロン・グリマルキン
捕まった
世界に合わせた格好もよかったがより使いやすいミリタリーなジャケット姿をしていた。拳銃にトマホーク、ショットガン以外にもナイフや爆弾を装備しておりあらゆる対応が出来る状態だった。脱獄する
リヴェリアを奇襲したのは逆恨み、ではない。実際に殺そうとしたエルフ達は『ハイエルフの名の下に』と宣言したし、世界中のエルフ達の崇拝はよく知っていたのでカロン曰く『否応なしに崇められるとしてもその血統にはエルフの罪を背負う業がある。何より世界の中心にいて王族として何も知らずにいるのはお前個人の罪だ』としている。ただし、この戦闘を機に自分もレベルアップを求める感情が生まれた。
エレボス
今日と言う日までに原作で行なった事を、おおよそ行った邪神様。内心未来的な銃を受け取ってワクワクした。神を送還した際にはマジで悪の心が深くなったんじゃないかと興奮していたが何とか抑え込んだ。カロンの事を言えないこの神様であった。
高級ワインは美味かった。値段を聞けばウン百万だったので遠慮なく味わった。
ベル・クラネル
この舞台『イレギュラーコード』の主人公。『狩人』もしくは『
アルフィアとの戦闘後、リヴェリア・ガレスと共に
リヴェリア・リヨス・アールヴ
現オラリオ最強の肩書がある魔導士。『アストレア・レコード』だとアルフィアにやられたが『イレギュラー・レコード』はベルが相手したから他の対処にまわれた。多分『失望』の話はオッタルからフィン、そしてフィンから聞かされた形になったと思う。
ガレスと
ガレス・ランドロック
現オラリオで最も堅牢と評されているだろう重戦士。人生初で世界初の銃撃を耐えきった人類。とは言えかなりのダメージがあった模様。
カロンの襲撃直後、すぐに周囲の
脱獄した
カロンの手により脱出した彼ら彼女らはこの日の始まりの日に参加するか素早く拠点に戻るかで分かれて全員が無事に終えた訳ではない。その裏にはここで戦場に立たせて潜在的な戦力を削るのがエレボスの思惑だった。しかしそれが罠だとも思わず、寧ろタナトスのような神からの約束がある構成員たちは嬉々として命を捧げた。
送還作戦に使われたエルフ達。
カロンとその両親を殺そうとした集団。作戦のだいぶ前からエレボスの手によって