(仮)購買意欲が勝った転生者   作:Celtmyth

5 / 7
 なんか使ってるAIイラストに新機能が出来たのでそっちを使ってみたらイメージに近いのを生成して貰いました。作中における衣装と違うと思う方に対して言い訳をするなら『この上に革鎧をつけてる』とかです。
 ただし細かく調整しようとすると耳が移動しちゃったり四つ耳になっちゃったりしたんですよね。

 
【挿絵表示】



『Ballistic Great Conflict —Jester vs. Pantaloon—』

 道化師(ジェスター)が成した功績には闇派閥(イヴィルス)の幹部を含む構成員の無力化がある。そうなった彼らは後で来た【ガネーシャ・ファミリア】に捕縛され、無力化した上でギルドの牢に繋がれている。神の恩恵(ファルナ)を持つ構成員を生かしたままはリスクが高い、と思うが処刑も処罰も現状ではリスクが高い。処刑は現場に襲撃の可能性がある上に戦力の偏り、隙が生まれ被害の拡大が起こりうる上に処刑の血に民衆が暴走する可能性も指摘された。処罰の場合は囚人の管理にも人員が必要となり、そのために罪人都市ベルゲンへの輸送をするしかないがこの場合また戦力の分散と襲撃のリスクが生まれ、余裕のない今の状況では後回しになってしまう。ただしベルゲンから人員を送る場合においてはそのリスクは減り、事実一度は行われた。しかしその後は情報流出の未遂が起こり、それ以降は行われていない。結果、闇派閥(イヴィルス)の構成員たちは牢に押し込むしかなかった。

 彼らはこの『暗黒期』が終わるまでここに繋がれる。オラリオの異邦人(ジョーカー)によって。ならば、二枚目の異邦人(ジョーカー)が相殺するまで。

 

『――やぁ、囚われし闇派閥(イヴィルス)の同胞たちよ。俺はエレボス、地下世界を支配する幽冥の邪神である』

 

 その空間にその声が響いた。ギルドの牢は主神ウラノスの祈祷の間が地下にある以上、牢を地下に置くことはリスクが高い。地上と挟むか、ウラノスの足元に配置するのは場合によってオラリオ全体の危機につながる。故に地上であるからこそより堅牢な建物の形を取る。出入り口も一つであり、窓も牢の中には無い。侵入など不可能である。

 

『が、この声は異世界の録音機(まどうぐ)の物だ。俺自身がここにいるわけじゃぁない。ただし、外から切り札を持ってきた。闇派閥(イヴィルス)の眷属じゃないが、そこは目を瞑ってくれ。そしてこの切り札がお前たちの解放にやってきた』

 

 その言葉に俯いていた多くの構成員が顔を上げ、その声に耳を傾け始める。

 

『この後、神の送還をもってオラリオとの決戦、『大抗争』を始める。その前後のタイミングでお前たちを解放する。そして外で暴れている同志たちと合流するといい。ただ問題と言えば幹部はともかく、構成員の皆は顔が割れてしまって脱出できても今後は民衆に潜伏する活動なんて事はもうできないことだ』

 

 それはそうだろう。捕縛の際、顔を隠していた装備は奪われてしまったのだから自分たちの顔はオラリオ側に知られてしまっている。脱出できてもこれからは襲撃する時を除いて人造迷宮(クノッソス)の中でこもり続ける事になるだろう。

 だが彼らもまた覚悟した者たち。このまま繋がれたまま何も出来ずにいるのは我慢ならなかった。彼らは等しく狂信者であり狂人。すでに前に進むしかなかった。

 

『それじゃあこの声を聴かせている協力者がお前たちを拘束から解放しておく。時が来たら出入り口とは反対の壁に脱出口を作り、そこに武器を置く。多種多様だが迷うな。この脱獄で迷う者は一大イベントに参加できないからな。――さぁ諸君、一世一代の悪を成そうか』

 

 ここで邪神の声が途絶えると鍵の外れる音が一つ、一つと鳴っていく。それに興奮が沸き上がってきたが邪神の言葉に従い、静かに時を待った。

 

 

 

 そして爆発音が聞こえたと同時に、示し合わせたかの如く闇派閥(イヴィルス)たちは動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、これで初手の頼み事は終わったわけだ」

 

 爆弾で開けられた拘置所の壁から闇派閥(イヴィルス)の構成員たちが水を得た魚のように暴れまわる。それはエレボスが言っていたように迷いなく、ではなく狂ったようだった。脱出の道は作り、武器も与えた。しかしそこからは運も付きまとう。日も沈んだ夜のオラリオを、未だ夕日の如く赤々と戦火が一部を照らす。その中には悲鳴と怒号が響き、これ以上ない混乱を巻き起こしている。すでに常用となりつつある【グラマリーサイト】はそれ以上の物を見せてくる。盤上の敵味方を見下ろすが如く、もしくは路地裏の角から戦いを覗くが如く。

 すでにエレボスから頼まれた事の一つ、『混乱をさらに深めるために捕えられた闇派閥(イヴィルス)を解放してくれ』は完遂した。それ以降からの協力はない、と言うより組織の一員として扱われていないカロンに彼らを率いる資格はないし、指揮官としての素質以前にその学習と経験がない。ならばこれが最適解。なによりエレボスはカロンを深く闇派閥(イヴィルス)に関わらせる気はなかった。

 

「……()()()

 

 そんな中、カロンの視線は黒煙が上がるオラリオの空を向いた。その直後、()()()が天へ伸びていく。1と、2、3,4、―――順に聳えるのは()()

 神が送還された瞬間だった。一部、闇派閥(イヴィルス)の邪神が送還されるとエレボスが言っていたが何柱までか聞かなかったカロンはその詳細は見ようとしなかった。同時に脱獄した闇派閥(イヴィルス)たちがさらに興奮して暴れまわる。一部は合流するべく冷静でいたがそれは割合で少数派だ。その中に幹部もいたのでそれに引っ張られた形だろう。

 

(もうここにいる必要はないな)

 

 完遂の責務として脱獄の様子を見守っていたがこれならもう加勢はいらないと判断する。エレボスからは指示されたが労力をかけて失敗したら、悪行と言えど気分はよくない。なのでこうしていたが事態の進行したことでその義理も消失した。

 拘置所に背を向けて建物の屋根を跳び越えていく。乱戦ばかりの地上を走り抜くのは無理と言うより面倒である。とは言え状況の把握、実際の戦力を確認は必要案なので魔法を行使しながら移動していた。オラリオの冒険者、闇派閥(イヴィルス)の実力や幹部の行動。それらを見て、

 

 

 ―――()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そうか、貴様がそうか!! 聞いた通り貴き血を穢す忌み子だ!!』

 

 

 

 フードとマスク姿でナイフ一本で戦う道化師(ジェスター)を。

 

 

 

『貴様は存在するだけで大罪だ! 我らが忠誠の刃で処罰してくれる!!』

 

 

 

 

 彼と共に前線で大斧を振り回すドワーフを。

 

 

 

『そして貴様を生んだ親たちも同罪だ!! ここで死んで罪を雪げ!!』

 

 

 

 その2人を後衛でサポートしている長杖を構える、エルフを、

 

 

 

 

『我ら同族(エルフ)を導く貴き方々の、ハイエルフの名の下に死ぬがよい!!』

 

 

 

 

 自分と同じ翡翠色の髪とエメラルドの如き瞳を持つ王族(ハイエルフ)のリヴェリア・リヨス・アールヴの姿を()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(殺気!?)

 

 道化師(ジェスター)、改めベル・クラネルは戦闘の最中にそれを感じ取った。あまりにも剝き出しの視線に思わず後ろに下がって周囲を探ったがその持ち主らしき敵はいない。ともに戦っていたガレスも囲んでいた全員を吹き飛ばして同じく周囲を見ている。自分だけじゃないと知ったが、特に視線に晒されていたベルはどの辺りが強く()()()()()()かを無意識に気づいた。

 

「リヴェリアさん!!」

「ッ!?」

 

 その名を叫び彼女へ向かって走るベル。呼ばれたリヴェリアは何かと身構えるがそれは近づいてくるベルに警戒してではなく、他の2人と同じく殺気を感じ取って見えぬ敵を警戒してだった。しかし彼女が気づかず、ベルが気づいたのは今まさに彼女へ襲い掛かろうとするその存在。

 その足でベルは飛び、リヴェリアの頭上すら超える高さでそのナイフを振り、その一撃を弾いた。

 

「……チッ」

 

 その直後に喧騒に似つかわしくない静かな舌打ちが聞こえた。そして力を押し込まれたのでベルは逆に押し返そうとしたがその瞬間に抵抗がなくなり、そのまま押し出した。

 

「ちょ!?」

 

 思っていなかった感触に思わずそんな声が漏れてしまったベルだがすぐに気を引き締め直して着地する。対して弾いた相手、襲撃者はその体を回転させ、地面に降りても勢いはそれほど殺さずに滑走して距離を取った。

 その襲撃者は小柄で小人族(パルゥム)かと思ったが腰の付け根から伸びた尻尾が獣人である事を証明していた。しかし装備は異質だった。革でも鉄でもない純然たる布の服飾。暗色の地味な色が全身を覆い、兜みたいな物に尻尾すらもしっかり毛並みを隠して口元と指先が唯一の露出だった。ただよく見れば手が届く所にはポケットが多くついていてそのどれにも膨らみがあるし、何か同色のホルダーみたいな物も所々まぎれている。そして手には片刃の小斧が握られており、見た機会が多くないベルからしても珍しい形をしていた。

 

「お前、道化師(ジェスター)で合っているか?」

「そっ、そうだ」

 

 しかしその話し方で見た目以上に大人びていた。まるでフィンさんを相手にしているかのようだ、そうベルは感じた。実際に彼は、カロンは前世と前々世を合わせて100歳の齢を重ねている。

 

「俺は強欲な老人(パンタロン)。この舞台の脚本を描いた邪神エレボスにより、天秤の傾きを戻しに来た」

「天秤? なんの――」

「ギルドの拘置所が襲撃された―――!! 捕えられた闇派閥(イヴィルス)が解放された―――!!」

 

 ベルが強欲な老人(パンタロン)と名乗ったカロンに事の詳細を聞こうとしたがそれは叫び続ける冒険者が教えてくれた。

 

「僕が無力化した闇派閥(イヴィルス)……!!」

「悪いな。俺が今日と言う日に頼まれた片方だ。もう片方はもう目に入ってるだろ」

「―――神の送還か!!」

「……察しがいいな。とは言えそっちは直接した訳じゃない。必要なものを用意しただけだ」

 

 後ろでカロンの役割を察したのはベルの後ろにいたリヴェリアだった。しかし第一級とは言え不意を突かれかけた彼女は警戒してベルの前には出ない。対してカロンは彼女が会話に参加するや間が空き、少し不機嫌そうに返した。

 

「こっちは用事が終わった。が、今俺は機嫌が()()()()()()。相手しろ」

 

 カロンの言葉にベルは迎撃の構えを取る。ここで突撃し、リヴェリアへ敵を回すわけにはいかないと瞬時に判断した。ただしベルは()()()()()()事に気づいていた。先ほどの一合は向こうがこっちの力を利用して距離を取ったが。それでも力が弱いと感じた。Lv.5の自分と比べて、を前提にしてもLv.1ぐらいだと。これが事実ならよくリヴェリアさんを狙ったな、なんて思いもする。その度胸を心の隅で称賛しつつ、カロンの行動に対して受けの姿勢を取った。

 

「じゃ、『未知』を味わえ」

 

 しかしカロンはその場から動かず、空いた片手に別の武器を握った。それは見た事のない武器だった。そしてカロンの指がゆっくり、それが向いているのがリヴェリアだと気付くとベルは「まさか!?」と思い、その線に割り込んだ。

 

 

 

 バァン!

 

 

 

 耳を塞ぎたくなるような、雷に似た爆音。しかしベルは本能か、もしくは芽生えた予感のお陰か耳を塞ぐよりもナイフを振るい、カキィンと何かを弾いた。

 

「グッ!?」

 

 それはかなりの衝撃だった。小さいものが、それこそ自分と同じ第1級冒険者の力で叩きつけられたかのようだった。

 対してカロンは初見でこれを避けるどころか銃弾をナイフを弾いた現実に驚いた。しかし偶々の可能性もあると切り替え、再び銃のトリガーを引く。今度は連射で撃ち、銃声もまた連続で響き渡る。

 

「っ! リヴェリアさん!!」

 

 一発目は防いだベルだったが実のところ、反応はギリギリだった。同時にまだ『未知』が残る武器に正面から受ける愚直さはなかった。そしてその思考は名前を呼ばれたリヴェリアも察し、2人は今の場から離れる。

 カロンの銃弾は外れ、背が低かった事で空や建物の上の階や屋根に当たる。そして逃げたベルとリヴェリアはそれぞれ反対方向へ移動し、カロンもそれぞれを一瞥する。

 

「チッ」

 

 二度目の舌打ちをすると小斧、タクティカル・トマホークをホルダーに戻し、拳銃を両手で持つ。そして狙うは今まさに近づいてきているベル。

 ゾクリと、悪寒がしたベルは強引に横へ跳び、そしてカロンの銃弾が撃たれる。その着弾場所はベルが前へ進んでいれば足があった場所だった。

 

(さっきより狙いが正確になってる!?)

 

 この一発でさっきまでのが乱射もしくは精密さを欠いた射撃だったことを示した。しかしベルが警戒を強めるよりも先にカロンの連射が降り注ぐ。それを右に左、そして後ろへ跳んで避ける。そんなベルの反対側にいたリヴェリアは魔法を唱え援護しようとしたがそれを阻止するかのよう其方にも弾が放たれ妨害される。しかも厭らしいと言えるほどに魔法を阻むにはベストなタイミングで、だ。

 

「儂を忘れとるぞぉ!」

「――知ってる」

 

 しかしそこで周囲の闇派閥(イヴィルス)を蹴散らしてきたガレスが突進し、カロンはそのタイミングで空になった銃の弾倉(マガジン)を落とす。しかもちょうど、ガレスが足を下ろそうとした場所にだ。

 

「ふんっ!!」

 

 転倒を狙ったのかもしれなかったが、ガレスは罠の可能性にも目にくれず踏み抜き、弾倉を潰す。その瞬間、「マジか」と呟きながらカロンは軽々と跳び、先ほどまでいた場所にガレスの大斧が振り落とされ地面が割れる。

 

「脳天かち割でも出来そうだな」

「この状況で軽口が叩けるとはフィン並みにいい性格をしとるのぉ!」

()()()()()()()()()を使うからな」

 

 新しい拳銃の弾倉を装填したカロンはそれをホルスターに戻し、背中に担いでいた筒、イサカM37(ショットガン)を手に取った。それを近距離、それこそ武器で撃ち合うほどの距離でその銃口をガレスに向けた。

 

「!?」

 

 頑丈さではオラリオでも上位に組み込むガレスが()()()()()からとっさに大斧を盾のように構えた

 

 

 

ドォオン! キィィィン!!

 

 

 

 先ほどより重い銃声と、金属が弾かれる音。そしてわずかに押し出されるガレスの足。

 

「ぬっ、うぅ!」

「スラッグ弾で貫通しないし、武器からも手を離さないか」

 

 槍の突きのような、しかしそれ以上に重すぎる衝撃にガレスは痺れと共に唸る。そこへ落ち着いているカロンはカチャリとポンプアクションの装填を素早く行い、続けて二発目を撃った。

 

「うぉぉおっ!?」

「ガレスさん!?」

 

 元々、後ろへ押されるほどの威力。二発目は踏ん張りの軸、重心や体幹の隙間を狙った一撃はガレスすら転倒させるに至った。思ってもいない光景にベルが叫びをあげ、駆ける。そこをカロンは装填を終えたショットガンを向けて放つ。ベルは向けられた瞬間に転がってその射線上から逃れたが、地面に着弾した地面が抉れたように穴を空けて冷や汗が出た。

 ここまでカロンはショットガンに切り替えてからそれほど移動をしていない。タイミングが良かったのだろうが、ここまで2人を相手にしたことにより、時間が作られた。

 

「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」

 

 リヴェリアが詠唱を終えて魔法を発動させた。ガレスが合流するまで詠唱の完遂すら出来なかったがここでようやく結実した。オラリオの最強魔法使いのそれは同レベルであっても容易ではなく、ましてやLv.1ではどうしようもない。

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 未だ発動したままの【グラマリー・サイト】は(ことわり)の属性を持つ。視えると言う事は干渉できると同意である。掴めぬ煙であっても手を振ればその形を容易に変えてしまうように。そしてカロンは今、見えぬ魔法の流れも精神(マインド)も視えていた。

 

「――――」

 

 カロンは静かに、何も呟かず(くう)たる目の前で、リヴェリアの魔法が迫る方向へ手刀を縦に振った。

 それだけで氷獄に閉じ込めようとした凍結の魔法はカロンを避けるように二つに分かたれた。

 

「なっ!?」

 

 その光景に最も驚いたのはリヴェリアだ。ベルは彼女の魔法が不自然な不発になった光景に言葉を失い。ガレスは転倒してそれを目撃していない。

 

「…………んっ」

 

 しかしカロンも代償があった。口元を抑え、手の隙間から血が流れた。吐血、ではない。鼻血が出たのだ。

 

(流石に魔力の差で脳の負荷が大きかったか……)

 

 一般的な付与魔法は武器等に効力を纏わせるので肉体的な負担はない。視界が魔法の胆となる【グラマリー・サイト】は必然的にその情報を処理するために脳に負荷がかかる。それも幻覚だけではなく人には視えぬ物を知覚し、干渉できるのであれば更に重くなる。事前に検証と、レベル差による()()()()()()に抑えた事でこの程度で落ち着いた。とは言えば戦闘継続の状態ではなかった。

 そんな状態のカロンはリヴェリアの顔を見て、その動揺した表情を見て()()()()()()()()()

 

「こっちもギリギリだが気が晴れた。逃げさせてもらう」

「待っ―――」

 

 一方的な宣言をし、三人の誰かの声を聴き流しながらカロンは背を向ける。タクティカル・トマホークを投擲し、その先へ走っていく。投げたソレは建物の高い所に刺さり、カロンはその脚力で建物の出っ張り等に足をかけて登り、その途中で突き刺さったタクティカル・トマホークを足場に屋根へ上り詰めた。

 ここでようやくカロンは魔法を解除し、ただの双眸でリヴェリアを見下ろした。

 

「じゃあな、()()殿()()

 

 皮肉をたっぷりと込めた言葉を最後に立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カロンが退散し終えた頃にはオラリオの混乱も一時の沈静化していた。とは言えエレボスによる『大抗争』の始まりは民衆に不安と恐怖を植えつけ、冒険者たちは闇派閥(イヴィルス)と民衆の板挟みになる事だろう。

 

「フゥーーーーー……」

 

 ()()()()へやってきたカロンは鼻血を拭き取りながら深く息を吐く。緊張の糸を解いた途端に視界と足取りが覚束なくなったが何とかここまでたどり着けた。ヘルメットは外しており、汗ばんだ頭が今は涼しく心地よさに身を任せていた。

 

「――よぉ、お疲れ」

 

 そこへ声が、待ち人たるエレボスが現れた。

 

「そっちこそ。あの7柱のうち、何本だ?」

「お前の協力があってと言う事なら2柱だ。一つは件のエルフを使って闇派閥(イヴィルス)の邪神に、もう一柱は借りたコレを使って俺が直接」

 

 エレボスが見せるのは右手に持つ拳銃と、スカウターのようなゴーグルだった。

 これはカロンがエレボスに貸した、前世の武器だ。拳銃とゴーグルはセットになっており、拳銃の射線がゴーグルに照準とリンクして命中率を上げる物。元々は訓練用であり、戦場でもマシンガンが多いので初心者が構え方や狙い方を訓練するための物であった。しかし今回はそんな青臭い目的ではなく、血なまぐさい狙撃に使われた。

 

「しかしまさか銃を撃てるとは。俺としては両手持ちじゃなくて片手撃ちでカッコよく決めたかったな」

「その場にいない俺に言うなよ。そんな事言うと送還された神も浮かばれないんじゃないか?」

「傷口を抑えた後、『なんじゃこりゃあ!!』と叫んでいたな」

「おいコメディか。本当にお前が送還しなきゃいけない神だったのか?」

「アステカ系の神」

「ああ、納得」

 

 豊穣の裏に生贄があったアステカ神話系なら悪意なくとも人類を振り回す可能性があったのだろう。エレボスの一言でそう判断したカロンは言葉通りにそれ以上は言わなかった。

 

「そっちも道化師(ジェスター)と【ロキ・ファミリア】の三首領のうち2人とやり合ったそうじゃないか。戻ってきた構成員が言ってたぞ」

「そこまで聞いたなら襲った理由はわかるだろ」

 

 確かに、と返したエレボスは先ほどまでの飄々とした笑顔が潜み、真面目な顔でカロンの横に並んだ。

 

「怒りは深いみたいだな」

「見つけた瞬間、感情が抑えられなかった。まぁ今回の一度限りにする。俺の魔法は王女殿下の魔法にも通じた事で優越感を持てたからな」

「王女殿下、か。お前は俺の個神(こじん)的に雇用した傭兵だから彼女から遠ざけることは可能だがどうする?」

「最適解で置いてくれ。そっちこそ俺の先輩がいるだろ? どう言い訳したんだ?」

「恩を売っていいように使う駒だ、と言い含めた。代わりにお前がどんなことが出来るうえで配置には口を出してもいいと伝えた。まぁあいつの事だ、会ってもいないお前を使おうとは思わないだろう」

 

 この話はカロンが闇派閥(イヴィルス)の一員としてではなく傭兵である事にした話だ。なのでカロンは闇派閥(イヴィルス)の拠点に入る許可は持っておらず、むしろエレボスの話術で『利用されている事に気づいていない哀れな駒』と言う事にしている。事実、拠点に入れていない事実がそれを強調させた。一部の邪神は何か裏があると察していたが計画は発動した今では寄り道は出来ないと放置することにしている。

 

「フィナーレは六日後になるんだったか?」

「ああ、その間は散発的な襲撃が起こる。俺もそれまでに会うべき相手には会っておく」

道化師(ジェスター)か?」

「それもだが、あとお前が嫌う妖精(エルフ)もいるな」

「なら手心は加えるな。それと折角だ、高級のワイン。グラスで飲め」

「りょーかい。そしてサンキュー」

 

 コルクを開けたガラス製のワインボトルに、これまた透明なグラスを蓋のように被せてエレボスに渡したカロンは自分用にカフェオレのペットボトルを取り出す。

 『大抗争』を引き起こした邪神と、その眷属はその日の終わりのように一服するのだった。

 

 

 

 




カロン・グリマルキン
 捕まった闇派閥(イヴィルス)の幹部含む構成員たちを解放する役目を与えられて、それを成した。その後に王族にちょっかいを出して自分の存在をよりオラリオに強めた。ショットガンはレバーアクション派だがここはロマンを抑えてポンプアクション式を使った。
 世界に合わせた格好もよかったがより使いやすいミリタリーなジャケット姿をしていた。拳銃にトマホーク、ショットガン以外にもナイフや爆弾を装備しておりあらゆる対応が出来る状態だった。脱獄する闇派閥(イヴィルス)の武器はギルドや【ガネーシャ・ファミリア】が押収した物である。
 リヴェリアを奇襲したのは逆恨み、ではない。実際に殺そうとしたエルフ達は『ハイエルフの名の下に』と宣言したし、世界中のエルフ達の崇拝はよく知っていたのでカロン曰く『否応なしに崇められるとしてもその血統にはエルフの罪を背負う業がある。何より世界の中心にいて王族として何も知らずにいるのはお前個人の罪だ』としている。ただし、この戦闘を機に自分もレベルアップを求める感情が生まれた。
 人造迷宮(クノッソス)には()()()()のでリリがいる拠点に戻る予定。



エレボス
 今日と言う日までに原作で行なった事を、おおよそ行った邪神様。内心未来的な銃を受け取ってワクワクした。神を送還した際にはマジで悪の心が深くなったんじゃないかと興奮していたが何とか抑え込んだ。カロンの事を言えないこの神様であった。
 闇派閥(イヴィルス)側にはうまくカロンの存在を伝えつつ外部の助っ人として認識させている。一部の邪神や幹部には詳細を聞かれているがそこは上手く立ち回っているし、アルフィアとザルドが目立ってその影を小さくさせている。ただし脱獄やベルたちから逃げ出せた構成員からは同志と認識されていることはどうにか逸らそうとしている。6日後までの決戦までにはカロンとは別行動だが通信機を受け取っており、お互い地上であれば連絡が取れる状態で指示は引き続き行う。
 高級ワインは美味かった。値段を聞けばウン百万だったので遠慮なく味わった。




ベル・クラネル
 この舞台『イレギュラーコード』の主人公。『狩人』もしくは『道化師(ジェスター)』がこの場での二つ名。原作ファンはこの舞台における原作時系列のショートストーリーを望んでいると思う。私だって気になるから。
 アルフィアとの戦闘後、リヴェリア・ガレスと共に闇派閥(イヴィルス)の迎撃に当たっていたが突然のさっきと襲撃、つまりカロンこと強欲な老人(パンタロン)と遭遇するというジョーカー同士の邂逅となった。ベルは未来では聞かなかった名前に『僕が関わったせいで……!』と思っている。ただし銃を知らない彼はヘルメスとアストレアに伝えるまで彼の異常性は知らない。そして同時に2柱は強欲な老人(パンタロン)と言う名がエレボスの目的を仮にだか察する事となる。




リヴェリア・リヨス・アールヴ
 現オラリオ最強の肩書がある魔導士。『アストレア・レコード』だとアルフィアにやられたが『イレギュラー・レコード』はベルが相手したから他の対処にまわれた。多分『失望』の話はオッタルからフィン、そしてフィンから聞かされた形になったと思う。
 ガレスと道化師(ジェスター)と迎撃に当たっていたところをカロンの奇襲を受ける。怪我などはなかったが執拗に自分を狙い、未知の武器を使い、何より自身の魔法が上手くいかなかった事実が三人の中で一番意識せざる負えなくなった。ただ漠然と殺気の強さから【ロキ・ファミリア】か最強の魔導士として目の敵にされている、無知ゆえの誤解がある。貴女が戦ったのは混血とは言え王族たるハイエルフと呼べる存在だと言うのに。





ガレス・ランドロック
 現オラリオで最も堅牢と評されているだろう重戦士。人生初で世界初の銃撃を耐えきった人類。とは言えかなりのダメージがあった模様。
 カロンの襲撃直後、すぐに周囲の闇派閥(イヴィルス)を散らしたが素早く対応されたことでまともな出来ずに終わった。それよりもスラッグ弾を受けた大斧に銃痕がついて椿に応急処置を頼むことになり、彼女からの雷が落ちることとなる。ちなみに近距離でスラッグ弾を撃ち込むのは「1㎏の鉄アレイが時速300kmで叩きつける」「原付バイク(約70kg)が時速30kmで衝突する」程の威力があるらしい。大型モンスターとかの打撃を受けても生きてるから大丈夫ダヨネ?





脱獄した闇派閥(イヴィルス)の構成員たち
 カロンの手により脱出した彼ら彼女らはこの日の始まりの日に参加するか素早く拠点に戻るかで分かれて全員が無事に終えた訳ではない。その裏にはここで戦場に立たせて潜在的な戦力を削るのがエレボスの思惑だった。しかしそれが罠だとも思わず、寧ろタナトスのような神からの約束がある構成員たちは嬉々として命を捧げた。




送還作戦に使われたエルフ達。
 カロンとその両親を殺そうとした集団。作戦のだいぶ前からエレボスの手によって闇派閥(イヴィルス)に渡されており、正気とも発狂とも呼ばれない状態の彼ら彼女らはこの日までありとあらゆる悪意の凌辱の中にいた。どうあっても人としての経歴もエルフとしての高潔さも汚された。そしてこの日、せめての慈悲か闇派閥(イヴィルス)の一員としてその衣装を纏って駆り出され、エレボスが射殺した神とは別の神を足止めし、光の柱に巻き込まれて消滅した。あまりも悲惨な末路だが、カロンの件以前からも差別的な態度と勝手にハイエルフの名前を出しての横暴があったので因果応報である。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。