(仮)購買意欲が勝った転生者   作:Celtmyth

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 今日の投稿まで読者の皆様から誤字報告を頂き、ありがとうございます。

 そろそろカロンも本気を出さなきゃならない展開となっていきます。まぁ戦時中の七日間って多分思う以上に長く感じるだろうね。

 現在、2日目の夕方か夜。


『ーSystem Boot: Exoskeletonー』

 エレボスの隠れ家的な場所に漫画やらワインやらおつまみを置いて行ったカロンは1人廃墟で本を読んでいた。廃教会でエレボスが叫んだエロ本もここに置いて行こうと思ったが同じくアルフィアの存在が頭に過ったので『エロ本はココに隠しといた。俺の前々世にとってファンタジー系純愛物・ハーレム物・凌辱物・モンスター姦物を取り揃えておいた』とメモを残した。

 

「…………」

 

 ページを捲る音だけを鳴らし眼だけが動くカロンは妙な静けさがあった。周囲の警戒を怠ってる訳ではないが意識の割合は読書に傾ている。本のサイズはA6サイズであるからライトノベル。しかしわざわざブックカバーを取り換えて表紙を隠していた。ちなみに小説はエレボスと一緒にいた時は手を出しておらず、加えてわざわざリリルカとラフィアのいる拠点から離れて、人気がない場所でだ。前々世のラノベ作品であるにもかかわらずここまで警戒して読む作品とはいったい。

 

「……()()()。読んでしまえば一日で終わったな」

 

 そして裏表紙を上にして閉じ、読み終えたカロンは感慨深く呟いた。一日と言ったが日が沈みかけ夕日が差す時間になっており、十二分に熟読していた。とは言え彼も日が沈む前には完結まで届かなくても切り上げるつもりであった。特にそろそろ闇派閥(イヴィルス)が散発的な奇襲をかけ始める頃と予想していた。

 本をしまい、武装を整える。ガレスとの戦いで使ったショットガンの弾はスラッグ弾ではなくショット弾に変えておく。彼が対象とは言え、スラッグ弾二発使って転倒止まりでは効率が悪く、寧ろ軽傷でも防ぎきれない攻撃の方がいいと判断。

 

「近接用にトマホークを選んだが銃器の方が効率が良かったし、トンファーに替えておくか」

 

 トマホークを携帯していた所をトンファー、棒部分が六角柱ではなく円柱なので正確には取っ手付き警棒(サイドハンドル・バトン)であるがカロンはトンファーとして認識する。これなら斬る・叩くに対して防除が出来るし、小柄な体を活かして相手の懐へ刺突が可能である。

 

「これで良し。移動は、屋根の上を走るか」

 

 街道は逃げ道が限定される。何より猫人(キャットピープル)の血か身軽に動けるカロンは瓦礫を伝って屋根へ上り、走っていく。今回は【グラマリー・サイト】は使わず肉眼で周囲を見渡す。先日のリヴェリアの魔法に干渉したのは当てつけの意味もあったが、使用中だった事もあって選んだ行動だった。しかし最低限使っただけであれだけの負荷が掛かった事で、不意を突かれることを懸念した結果だった。

 ひと際高い建物の屋上に立つと足を止めて状況を確認する。最前線(フロントライン)と呼ばれる辺りから喧騒の声が聞こえ始めていた。

 

(均衡を保っているがオラリオ側がギリギリか? 闇派閥(イヴィルス)の動きに統率がある。俺が解放した幹部を上手く使ってるな)

 

 そして厭らしい、と付け加えるカロン。見る限り民衆が避難している場所に繋がる所と防衛拠点で表向きの戦闘があり、裏道に当たる所にも剣戟や爆発が聞こえる。

 

(嫌がらせだな。この時間帯に奇襲をかけてオラリオにプレッシャーと不安を与えてる。それで民衆が暴走していないのは昨日の開幕はなんとか感情の暴発を抑え込めた、って所か)

 

 文明の発展具合と統治の背景から民度は低いと思っていたカロンは正直、意外だと思う。事実、危険が身近でありながら冒険者に生殺与奪の行方を預けていた。自衛・避難・財産の確保など、カロンが『当たり前』と思う基準には達していない。もちろんそれは前世の記憶からの基準だが、今回の場合は予想が外れた驚きである。

 さて、状況を確認したカロンはどうするか考える。エレボスの連絡がない事からしばらくは自由、自己の判断で動いていいと言う事だ。が、かと言って余計な真似をしては闇派閥(イヴィルス)にもオラリオにも影響を与える。実際にオラリオ側の道化師(ジェスター)も活動している気配はない。聞いただけのカロンだが彼が参加していればまだ闇派閥(イヴィルス)は混乱しているはずだった。

 

「なら俺もしばらくは様子見を――」

 

 結局はエレボスの指示待ち、そう考えていたところでカロンは自身の毛が逆立つ感覚が全身を襲った。ヘルメットを被り尻尾も布カバーをしていたがその尻尾が天に向かってピンと張っていた。

 それは殺気だった。冒険者にしては敵意が混ざっていない純粋な。しかしカロンは冷静に、そしてショットガンを構えて安全装置も解除する。

 

「俺は邪神エレボスの配下に当たる訳だが、気に入らない事でもあったか?」

 

 

 

 

「まさかまさか! 寧ろ貴方には好意を抱いているわ!」

「ええ、ええとても! かの貴き方を襲ったのがこんな可愛らしい子猫ちゃんだったんだもの!」

 

 

 

 

 カロンが友人に尋ねるような声に反し、後ろにいる2人は感極まった喜びのような、もしくは絶望の果てに狂ったような声で応えた。

 より警戒を強めたカロンはいつでもショットガンを撃てる心構えをして振り返る。その似たのはエルフとダークエルフの少女が2人。妖精の時点でカロンの感情に『嫌悪』が湧いたがそれは顔に出さずさらによく観察する。服装は妖精らしからぬ踊り子もしくは娼婦のように露出は高い。魔法を使う後衛より前衛、大きな武器はなく恐らくナイフのように短い物が得物と予想する。しかし間違いなく血族ではなさそうなのに姉妹のような距離感。最後のそれが彼女たちの正体を見抜いた。

 

「【アレクト・ファミリア】のディース姉妹か」

「ええ、そう! 初めまして強欲な老人(パンタロン)! 私はディナ!」

「私はヴェナ!」

 

 

 

「「私たち、キミにとってもとっても興味があるの!! だからね、いっぱい(あい)してあげる!!」」

 

 

 

 声と意味が噛み合っていない。それを察したカロンは返事もせずに照準を定めて引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアッ!」

「ギャア!」

 

 この場を襲撃した闇派閥(イヴィルス)の最後の一人を撃破し、アリーゼはすぐに周囲を警戒する。今までも油断できなかったが今の状況はそこから更に神経を尖らせて。

 『大抗争』になって状況は悪化した。市壁は敵の手に落ちて誰も出る事は出来ず、不安は増すばかり。民衆が暴徒になっていないのは、昨日の悲劇と言えど、まだ多くの命が失われていないと言う自身の主神アストレアの言葉を、()()()()()。【ガネーシャ・ファミリア】から聞いた数が少ないと言えるのか、疑問は残る。

 

(私も不安はある。でも、迷って足踏みしてたら命を取りこぼすし、平和が遠くなる)

 

 しかしアリーゼは前へ進む。いつものように明るく、前向きに笑顔を見せる。「大丈夫よ」と安心させ、「勝つわ」と敵を圧す。仲間たちにすら表向き、それは隠している。気づいているだろうと思える相手もいたが、気を遣って貰っているようでいつも通りに接してもらっている。

 ただもし、アルと出会っていなかったらここまで進めたのか疑問だった。彼が思う「正義」は、彼女の「正義」にとっての答え、幼き日々に自分が求めていたものだと気付かせてくれた。この『大抗争』が起こるまで忘れていた、いや主神のアストレア曰く思い出せなくなってるだけと言われたが、感謝すべき相手に変わりはない。

 

「アリーゼッ!」

 

 そこへライラが現れた。今【アストレア・ファミリア】の眷属たちは一塊ではなく分散して対応に当たっていたが彼女とアリーゼは近い所を担当していたが別に分けられていた。ただしアリーゼは単独。理由は『手広く』である。

 

「ライラ、何かトラブル?」

「トラブルどころじゃねぇ! あのイカれエルフ姉妹、ディース姉妹が強欲な老人(パンタロン)を襲ってるそうだ!」

「…………え?」

 

 まさかの報告に何時ものような大げさな反応はなく、いったんフリーズしてからその一言だった。

 

「えっ? え??」

「しっかしろ団長!! と言うかいつも大げさに驚くお前がそんな反応でアタシも反応に困るだろ!!」

「えっ、だって?」

「ならアタシがディース姉妹の考えを当ててやる! 昨日の襲撃の中で強欲な老人(パンタロン)は【ロキ・ファミリア】のハイエルフ様に奇襲して、噂じゃその魔法を軽々といなしたって話でまず一つ! そしてアストレア様が言ってたが強欲な老人(パンタロン)道化師(ジェスター)の対抗馬! 道化師(ジェスター)に執着しているイカれ姉妹が気にならない筈がないのが一つ! 以上!!」

「……ディース姉妹が暴走して敵味方が巻き込まれかねないじゃない!!」

「そう言ってんだよ!! で、私がここに来たのはお前のトコが制圧したと思って、お前なら今そこへ駆けつけられると思ったからだ!」

 

 いつもと違う反応だったが、落ち着かせるより事態を進めた方が速いと早口気味で語るライラ。結果としてアリーゼはいつもの調子を取り戻した。

 

「で、どうする!?」

 

 そして彼女がまた腑抜けないように結論を急がせる。

 アリーゼはライラの報告で、急かすようでこっちの気を引き締め直させたと思いつつどうするかを考える。確かにこの戦線は落ち着いたから離れることは出来るが、リューが焦燥している事が頭に引っかかった。この『大抗争』が於いて自分の無力さ、正義の脆弱さをこれでもかと突き付けられて焦っていた。強欲な老人(パンタロン)がリヴェリアを奇襲した話を聞いたときはセルティと一緒に怒りを露わにしていたが宥めて落ち着かせた。ただいつもならそんな簡単に引くことはないのでどれだけ精神に来ているか誰の目に映った。強欲な老人(パンタロン)とディース姉妹の件をライラが口頭で伝えに来たのは彼女に伝えない意図もあったのだろう。

 その上で、判断する。難しくは考えない。『どっちに行ったらいいのか?』だけに集中して。

 

「……私一人で行くわ」

「援軍は?」

「いらない。いや、なんとなく来てほしい気持ちはあるけどやめた方がいい気がする」

「いつもの勘か」

「うん」

「じゃあ行ってこい。方角はあっちだ。屋根で戦ってるらしいから迷う事はねぇだろ。あと報告は端折るなよ」

「ええ! ここの事はよろしく!」

 

 アリーゼはライラに後を任せ、言われた方向に向かって駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドォン!!

 

 

 

 イサカm37(ショットガン)に装填された最後の散弾が尽きる。装填は手動だがカロンは躊躇いなくショットガンを横に向けてスティレットを受け止める。

 

「あらあら! さっきまで距離を取っていたのにどうしたのかしら? 種がなくなったのかしら?」

「言葉が遠からずって所は勘がいいな!?」

「あらありがとう!」

「でも残念、なかなか面白そうな武器でドキドキしてたのに!」

 

 ディナの攻撃を防ぐもヴェナの魔剣の魔法が飛んでくる。ディナから離れ、ショットガンを投げつけた。相殺するか否かは賭けだったがそれには勝ち、魔法はショットガンを犠牲にして防ぐことが出来た。

 

「お見事! でも武器を犠牲してよかったのかしら?」

「しまう余裕があったらな!」

「でも貴方は強いわよ! ()()()()()()()()()のに私たち2人を相手にしてるもの!」

「クソッたれ!」

 

 称賛は受け取らない。エルフ相手、と言うのもあるだろうがカロン自身が言ったように余裕がなかった。自分はLv.1に対しディース姉妹はLv.5の上級冒険者の実力者。しかも前衛と後中衛のコンビ。先日と違って難敵だった。

 事前に【グラマリー・サイト】を発動しておけばと思ったがすぐにこのディース姉妹程の強敵に集中して使える不安が過った為、マシと考える。そして失ったショットガンの代わりに癖で拳銃に手が伸びかけたが機動力の高い彼女らに弾が当たるとは思えず、すぐにトンファーも抜く。拳銃と片手トンファーの両手持ちだ。

 

「また知らない武器! 小さくて可愛らしいわ!!」

「貴方に似ていいわよ子猫ちゃん! もしかしたら痛めつけ(愛で)たら声も可愛いのかしら?」

「断る! と言うよりエレボスになんて言い訳するんだよ!!」

「「それは……、テヘペロ♡/♥?」」

「神にやれ!! いや神相手だろうがよ!!」

 

 ここでついボケのツッコミのような返しをしたがカロンの動きに乱れはなく、ディナの懐に入ろうとする。対する彼女は詰められように離れるがその瞬間、カロンは片手の拳銃を撃つ。近い距離、しかしその弾を器用に避けたがカロンはそれを狙った。相手の乱れたリズムの隙をついて更に一歩、そしてトンファーが届く間合いに入る。

 

「シャア!!」

 

 トンファーの長い部分を前に突きを放ち、当たる。

 

「ッ!?」

 

 余裕のあったディアの表情が歪む。カロンは手を休めず二撃目を放とうしたが、歪んだはずのディナの表情に違和感を見る。

 

「キャハ!」

 

 そしてディナの笑い声。すぐにその顔に向けて拳銃を撃ったがまた器用に避けられ、視界の外からスティレットの切っ先が右肩に刺さる。

 

「グッ!」

 

 カロンは痛みに堪え、スティレットの切っ先が抜けるように動いてディナから距離を取る。

 

「まだ終わらないわよぉ!!」

 

 しかし続けてヴェナの魔法が無数に放たれる。今度は魔剣の魔法ではなく彼女が発現した魔法だ。広範囲の魔法の中に、ディナはすでにその外に出ていた。カロンはただ一人で魔法の雨を浴びる事となる。

 

「――――――――――!!」

 

 その中でカロンは小声で、そして口早くに詠唱を紡ぐ。この状況、しかも第一級の魔法の中で並行詠唱を高速で行っていた。詠唱と回避、そしてディース姉妹の2人に気を割く三つを行いながら、魔法の直撃をギリギリで避けたカロンは詠唱を完了させた。

 

「―――【グラマリー・サイト】!!」

 

 魔法名の直前で呼吸を整え、叫ぶように一気に宣言する。そして両眼に宿る魔力と、そして切り替わる()界。銃とトンファーを仕舞い、空いた両手でヴェナの魔法の流れを把握し、()()

 

「え?」

 

 その感触がヴェナに、違和感として伝わったようで彼女の声が漏れた。しかしその声は自身の魔法が起こす音によってその事を知っているのは発動した彼女と、それに干渉したカロンのみ。

 

「ディナお姉様!」

()()()()!!」

 

 詳細は言わず、ただ名前を呼ぶことで危機を伝えたが、カロンは賭けに出ていた。制御を奪った魔法の返し先。使い手のヴェナか、この中で気づきようのないディナか。対して息の合ったディース姉妹。カロンが行った事に対してヴェナが『逃げて』か『攻めて』か、どちらで意思疎通するのか。

 そしてヴェナの選択は前者であり、カロンの狙いは妹だった。

 

「シャア!!」

「―――キャアッ!!」

「ヴェナ!?」

 

 カロンはヴェナの魔法をヴェナ自身へ返した。姉に逃げるように声を掛けたヴェナは制御を奪われた困惑もありその場から動いておらず、結果として回避が間に合わなかった。受けた衝撃で魔法はそこで止まり、しかしその衝撃で後ろへと飛ばされる。いや、遅れただけで後ろに飛んだのだ。でなければこの屋根の戦闘で真下の家屋の中へと落とされていたハズだった。

 妹の声で退避したディナはその安否を気にしたが、カロンはその瞬く隙を逃さなかった。その手に持つのは()()()()()()。両手の中で収め、維持していたソレをディアが接近に気づくギリギリの直前で開放する。

 

「キャア!?」

 

 ヴェナと同じ叫びをディアが叫ぶ。至近距離で魔法を放たれた事で妹のようにとっさの回避は出来ずに魔法の衝撃を直に受けて吹き飛ばされた。

 

「はぁ、はぁ」

 

 そして見事、ディーナ姉妹を出し抜いたカロンは疲弊していた。ヘルメットで隠された双眸はまだ魔法を宿し、昨日のように一回だけで鼻血が出来る程の負荷を掛けずに成功させた。しかしその分の集中、そして何より魔法を収めた手の平が火傷していた。カロンの持つ医療技術であれば痕も残さず治療できるのでその心配はない。彼が心配してるのはこの後だ。

 

「一応、俺たちは協力関係にある。これ以上はやめないか?」

 

 冷静に言ってはいるが、内心は怒気と敵意が占めていた。勝手に襲撃され、しかも相手は嫌いなエルフ。殺されないようにレベル差を覆すような立ち回りで必死に足掻いてギリギリなのだ。そして出来る事なら()()を使いたくない気持ちがあった。

 そして下級冒険者の肩書き相当のカロンに一杯食わされたディース姉妹はその身に汚れを付けた姿で、しかして笑っていた。

 

「―――すごいね貴方! 確かに道化師(ジェスター)のように何をするかわからないわ!!」

「―――健気ね貴方! 弱いのに必死に抵抗して、本当に子猫ちゃんね!!」

 

 カロンの反撃を受けたにも関わらず、それを不快には思わなかったのだろうか? と、表面上は見えるが【グラマリー・サイト】を発動させたカロンはその奥底を視ていた。ドロドロでグチャグチャの精神。剥き出しの感情を動力にした狂気的な行動。それに反して姉妹に余裕があるのはカロンが正真正銘の弱者であるから、そして怯えずに必死に抵抗するから。その思考も見えていた。

 事がこのまま終わるとは思えなかったカロンは逃走を視野に入れた。しかしリリルカとラフィアのいる場所、いや方向には逃げられない。下手すると探り当てられる危険があったからだ。

 一応、オラリオの地理は頭に入っているカロンは逃走計画を思考して、いた。

 

「ところで、()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 そのディナの言葉に、()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリーゼがライラの示した方向へ走るにつれて人気がなくなっている事を実感していた。理由は察している。ここは闇派閥(イヴィルス)の襲撃後、防衛に向かないと避難を促し放棄した地区だからだ。闇派閥(イヴィルス)側にとっても旨味がなかったようで占拠することはなく、事実上の空白地だ。だが被害を度外視するなら戦闘するにもってこいの場所でもあった。

 

 

 

 ドドドドーンッ!!!

 

 

 

 そして静寂過ぎる事は音もよく響く。

 

「なっ、なに!?」

 

 予想も警戒もしてなかった音にアリーゼの足は止まり、その発生源を探す。真っ先に考えたのは闇派閥(イヴィルス)の自爆だ。ただ聞こえた爆音は連続しており、集団が一斉自爆した可能性を疑い焦りが見える。そして見つけたのは空に向けて昇る煙だった。その煙を見てアリーゼは疑問を抱いた。

 闇派閥(イヴィルス)が自爆に使う火炎石は爆発物であって()()()ではない。周辺の可燃物にあれば火が付き煙が上がるかもしれないがアリーゼの目に映る煙が一か所にまとまった程に大きなものだった。

 建物で自爆したの? とアリーゼが眺めていると煙の中から何かがこちらに向かって飛んできた。煙を纏ったままでそれはアリーゼの近くにあった建物の壁へ衝突する。剣を抜き、警戒しながらそこへ近づいて覗いて、目を見開いた。

 

「ディース姉妹!?」

 

 そこにはアリーゼがここまで走ってきた理由の片割れだった。しかしその彼女たちは今はボロボロであり、すぐに安否を確認する。呼吸と脈はあり、大出血になるような大きな怪我はなく姉妹揃って気絶しているだけであった。ただ、Lv.5と聞いていたこの二人がこうして吹っ飛ばされて気絶した事実が目の前にあってなお信じられなかった。

 アリーゼは原因を探ろうと冷静に考え、ここに来たもう片方の存在が―――。

 

 

 

 ゴォオンッ!!

 

 

 

「あ? 【アストレア・ファミリア】?」

 

 何かが落下する音と、まだ幼い子供の声。

 すぐに振り返り、武器を構えるアリーゼ。気絶したままとは言えディース姉妹を後ろに抱える危険はあったがこれまでの出来事からアリーゼはそれを頭から除外していた。彼女が見るのは街路の中心、落下した際に舞い上がった砂煙の中の存在。

 キィィン、ガコン。と、聞いたこともない音を立ててそれが煙の中から姿を現す。先ほどの音の発生させたのは具足のような足、そしてそれに似たデザインの腕、そして胴体と現したがあまりにも()()()()()()だった。両腕の肘、両足の膝の先から数倍の長さに対してその前の身体は子供の体躯。両肩には胸当てらしき鎧と接着しているように見える縦長の箱が背中に向かっている。最後に頭部、ヘルムのようだが目元は色のついたガラスのようで、たまに神が装着している「サングラス」のようなものだった。鎧の下の服も珍しい物だったが異質な鎧にアリーゼはそこまで確認する余裕はなかった。

 

「そこの姉妹は闇派閥(イヴィルス)で、襲ってきたが一応の仲間だ。連れて帰らせてもらう」

 

 その言葉でアリーゼはこの子供も闇派閥(イヴィルス)であり、そしてディース姉妹に襲撃された事から強欲な老人(パンタロン)だと察した。すぐに警戒を強め、隙があれば攻める、そう考えて相手に集中した。

 しかしすぐにアリーゼは呆けた顔をしてその警戒を緩めた。

 

「キミ、もしかしてあの時の」

 

 強欲な老人(パンタロン)が誰なのか気づいたからだった。

 

 




 カロン・グリマルキン
 主神の頼み事はしっかり果たすいい子の上にエッチな要望も気を遣って叶えるいい子過ぎる子。ただしエルフ相手だとキレて暴走しやすい。
 意味深なことをした後、戦況の様子を確認していたらディース姉妹に襲われて必死に抵抗したLv.1でありながらLv.5のコンビは流石に無理ゲー過ぎた。大盾を持って臨戦モード少女であればショットガンは犠牲にならなかったかもしれなかった。しかし接近戦をしていたディナから瞳の色を指摘されたことで前世の装備を解禁。
 終盤に装備していたのは他作品で言えばイ〇フィニ〇ト・〇ト〇トスのようなもの。子供の体躯なのでショップで購入した物であり俗称「マスタースレーブ・ユニット」。前世に置いては飛行ユニットだが改良した陸戦仕様である。決して少女しか適合しない制限とかはない。
 ちなみに、カロンはディース姉妹を()()()として扱っている。



ディース姉妹
 強欲な老人(パンタロン)ことカロンに興味が湧いてチョッカイ出しに行って、未知によって返り討ちにあった。地雷のような彼女たちが地雷を踏んだようなものである。
 道化師(ジェスター)が消えてストレスを溜めていたようだった彼女たちだったがその道化師(ジェスター)の帰還にこれまでの鬱憤を晴らすように精力的になる。本当ならすぐにでも道化師(ジェスター)の下へ駆け付け(殺し)たかったが主神アレクトもしくは首魁エレボスの指示か控えて(※ダンクロからの予想)いたが強欲な老人(パンタロン)の存在を聞いて確認もせず会いに行ってしまった。
 殺気を隠す事もしなかったために警戒されたカロンに先手を打たれたが長年の経験からそれを躱し、指で遊ぶように相手をした。ヴェナの魔法を返されたのは面食らったが上手く受け流したためにダメージはなかった。しかしディナがカロンの逆鱗に触れる発言をした為にSF兵器であっけなく敗退した。




アリーゼ・ローヴェル
 前線から強欲な老人(パンタロン)とディース姉妹の戦いへ一人赴いた正義の団長。実は彼女も色々と思い詰めておりタマにいつもの対応が出来ない時が出ている。
 ライラの報告を聞いて向かった先で大きな爆発音、気絶したディース姉妹。SF兵器を纏った強欲な老人(パンタロン)とこの世界とオラリオの冒険者として未知の連続だったが強欲な老人(パンタロン)が前に出会った少年だとすぐに気づく。
 何かと縁が続きます。



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