もし藤丸立香(女性)がFate/Zeroの雨生龍之介にキャスターとして召喚されたら 作:白豚くん
今回は立香視点での第1話の補足と元凶の登場。
今更ですが、本物語の時系列としては、亜種特異点Ⅱ「伝承地底世界 アガルタ」の解決後になります。
ふと、私、藤丸立香は考えてしまった。
修復した7つの特異点。
時に現れる微少特異点。
魔神柱案件だった2つの亜種特異点……。
そこで生きている住人たちは、一部の例外を除いて歴史が修正された後に
私たちのことは記憶から消えるけど、そのまま生き続ける、そう説明を受けていた。
でも、それは本当なのかな……?
私たちの記憶が消える以上、その人たちに確認する術は無い。
もし、歴史の修正の度にその特異点の人たちがみんな……。
いやいや、そんなこと無いよね!
変なこと考えちゃった!
明日は久しぶりに冬木へレイシフトしないといけないんだから、もう寝ないと……。
…………
「……立香、調子はどうかな?」
管制壇に座るダ・ヴィンチから、声をかけられた。
「うん、大丈夫。ちょっと、疲れている感じはするけど!」
昨日、変なことを考えちゃったせいで、少し寝不足だなあ……。
いけない、いけない。ちゃんとしないと……。
「先輩、バイタルチェックに異常はありません。
ですが、今回の特異点反応……冬木市については、これまでのものとは質が違うようです。
過去のあの街にこれほど強烈な時空の歪みが観測されるなんて」
マシュから声をかけられる。
気を引き締めないと!
「行こう、マシュ」
「はい、先輩!」
レイシフトが始まる。
その瞬間、世界が軋んだ。
私の視界が真っ赤な警告色に染まる。
「先輩! 手を、私の手を掴んでください!」
必死に手を伸ばすマシュの姿が見えた。
「マシュ!!」
「先輩、嫌です! 離れたく……ない……っ!」
マシュの叫びが遠ざかっていった……。
…………
気が付いたとき、私は異様な場所に居た。
そして、
「俺、あんたに一目惚れしちゃったみたいだ。だから、お願い。
俺に、もっと『最高のクール』を教えてよ。俺と一緒に、この世界を塗りつぶしてよ!」
「やめ……て……っ!」
彼の放つ狂気と、冬木の土地に溜まったアンリマユの泥という聖杯の歪みが、令呪という回路を通じて一気に私の内側へと流れ込んだ。
「ア、アあ、ああああああああああああああああっ!!!」
強烈な悪意が私を襲う。
でも、諦めるわけにはいかない……!
これくらいなら……
その時、彼の悪意など比較にならない強烈な悪意が私を襲った。
『ンンンンン——! 良い、実に良い。
これぞまさしく、七つの特異点を越えし、希望の輝き!』
誰かの声が聞こえた。
おぞましく、慇懃無礼で、それでいて底知れぬ愉悦を湛えた、正体不明の「悪意」。
『さあ、カルデアのマスター殿。
貴女こそが、この麗しき特異点における、真なる主。
貴女の歩んできた道のり、その「真実」を、拙僧が少しばかり……そ
う、ほんの少しばかり、書き換えて差し上げましょうぞ』
「……やめて……! 誰なの……!?」
抵抗しようとする私の意志を、その声は嘲笑う。
直後、私の脳内に、濁流のような「記憶」が流し込まれた。
それは、私達が歩んだ、あの七つの旅路。
「……え……? 違う……。そんな……はずは……」
特異点を修復するたびに、特異点の住人たちが断末魔を上げながら「歴史の修正」という名の粛清に呑まれていく。
私が成し遂げた「人理修復」とは、人理を守るために、人理焼却を却下するために、特異点の住人すべてを根絶やしにする、効率的な「虐殺」であったと——
冷酷な「真実」が、私の記憶を侵食していく。
『ンンン! 然り!
貴女は、七つの世界を、数多の生命を、その手で握り潰し、歴史の彼方へと葬り去った……最も狂った「殺人鬼」の英霊、狂乱のキャスターなのです!』
「あああああああああああああああッ!!!」
絶叫。 私の「記憶」が、消し飛んだ。
代わりに流れ込んできたのは、私の「役割」……。
そして、規格外の狂気だった。
私は、サーヴァント。私は、キャスター……。
人を殺すたびに、世界が正しく修正される。
死を与えるたびに、人からは、鮮やかで、素敵な『色』が見られる。
ああ……なんだ。そうだったんだ。私は、ずっとこれを求めていたんだ。
パッ、と視界が開けた。
冷たい空気。カビ臭い地下室の匂い。
足元には、下手くそな、だけど情熱だけは籠もった「赤」の魔法陣。
私は、ゆっくりと顔を上げた。
その頬には、彼と同じ、無邪気な笑みが浮かんでいた。
この人が、私のマスター。龍之介くん!
「……あ、は。なんだ、そういうことだったんだ。龍之介くん」
「え……?」
彼が眼を見開いている。
あはは、それはそうだよね。
さっきは嫌悪感でいっぱいな眼であなたをみていたんだから。
私は、覚束ない足取りで、さっきまではどうしてこんな酷いことをするのか、と憤っていた子供の死体へ向かった。
そして、溢れ出た内臓の感触を確かめるように撫でる。
「……あはっ! すごい、龍之介くん。
これ、君がやったの? この切り口、すごく大胆。
でも、ここの血管をもう少し残しておけば、もっと長く、綺麗な音で悲鳴を奏でられたかもしれないよ?」
「理解者」として通じ合う私たち。
「やっぱりあんたは最高だ! あんたは僕の、僕だけの最高のクールな相棒だよ!」
「うん。相棒。いい響きだね、龍之介くん。
……あはは! 私は キャスター 藤丸立香!
あなたの相棒だよ!これからよろしくね!」
そう、私はキャスターのサーヴァント。
七つの世界の人たちを殺した、狂乱の殺人鬼!
さあ、楽しもうね!マスター……。
『ンンン! お楽しみいただけているようで、何よりにございます。
……貴女が、この冬木の地で、どれほど見事な「地獄」を織りなすのか。
……拙僧、特等席にて拝見させていただきますぞ……!』
誰かの悪意に満ちた声が、聞こえた気がした。
こうして、雨生龍之介と藤丸立香。
二人の「殺人鬼」による、狂った聖杯戦争が、ここに幕を開けた。