もし藤丸立香(女性)がFate/Zeroの雨生龍之介にキャスターとして召喚されたら   作:白豚くん

16 / 23
誤字報告・評価をいただきありがとうございます。
第十四話でも致命的な誤字を発見したので修正しました・・・。


第十五話:再会 決戦のはじまり

「あああああ! 俺の、俺たちのクールなアートが!

神様、あんまりだよ!ひど過ぎる! こんなのってないよ!

ひでぇ、あんまりだぁ、精魂込めて俺たちが仕上げてきたアートが、ひどすぎる。

こんな、これが人間のやることかよぉー!!?」

 

冬木の夜空に殺人鬼の嘆きの叫びが響く。

自分たちの「工房」まで戻ってきた龍之介 と立香。

眼前に広がるのは、マシュと切嗣たちによって、「火葬」された犠牲者たち。

2人は、焼け落ちた屋敷の地下室で、自分たちの作り上げた「芸術」が灰になっているのを見てしまった。

 

「龍之介くん……。泣かないで。

また作ろうよ!

私、今インスピレーションがどんどん湧いてきてるんだ!

今ならもっとすごい「芸術」が造れると思う!」

 

彼女は龍之介の震える肩に、そっと、慈しむように手を置いた。

立香の言葉には、本来の彼女の価値観はもはや微塵も残っていない。

今の彼女を動かしているのは、歪められた殺人鬼としての記憶と役割、そしてパートナーである龍之介の狂気と同調していることで得られる、壊れた充足感だけだった。

 

「立香ちゃん……。

そうだな!芸術に完璧は無い!

これを糧にして、俺は、俺たちは更なる高みに登るぞ!」

 

「その意気だよ!

私は知ってるんだ。諦めなければいつかは辿り着けるから!

私は成し遂げたからね!」

 

立香の狂気に染まった黄金色の瞳が輝き、誇らしげに笑顔で答える。

バーサーカーを影に収め、更にキャスターのサーヴァントとしての定着が深まってしまった彼女は、歪められた人理修復の旅の記憶を思い出していた。

 

地下室から階段を上がり、地上まで出てきた2人。

立香は、口元を狂気の笑みで歪ませ、敵意に満ちた声で周囲に呼びかける。

 

「さて、そろそろ出てきてくれるかな。

私たちの芸術を灰にしてくれた犯人さん?

それで隠れてるつもりなの?

ドブネズミみたいな臭いにおい、隠せてないよ?」

 

「……マスター。……先輩!」

 

悲痛な、泣き出しそうな叫びと共に進み出たのは、薄紫色の髪をした少女――マシュ・キリエライト。

そしてその隣には、威風堂々とした巨躯を誇る ライダー――イスカンダルが、マントを夜風に翻して立っていた。

彼らは今、衛宮切嗣の策に従い、一時的な共同戦線を張っている。

周囲の闇の中には、切嗣と久宇舞弥、そしてライダーのマスターであるウェイバー・ベルベットが身を潜めていた。

 

 

 

「そろそろ連中が戻ってくる。作戦は頭に叩き込んだな?」

 

切嗣さんが私たちに告げる。

 

先輩……。

あの地下室の惨状を思い出し、彼女をこんな狂気に叩き落した犯人への怒りが溢れてくる。

自然と盾を持つ手に力が入る。

でも、今の私には戦う力がほとんど、無い……。

 

「下を向くな、盾の娘よ。

頭を上げ、前を向け。

どんなことも、挑まねば届かぬ。

お前とあのキャスターには、誰にも断てない絆があるのだろう?

絆というものの強さは、誰よりも余が知っている。

案ずるな。キャスターの元までは必ず余が連れていくとも」

 

ライダー、イスカンダルさんが私の頭を乱暴に、でも優しく撫でる。

……イスカンダルさん。以前、アイリさんをカルデアで召喚するきっかけとなった

事件の時に縁を結んだ、偉大な王。

このイスカンダルさんにはあの時の記憶は無いのだろうけれど、変わらないカリスマとその意志に、心が奮い立った。

 

「はい!マシュ・キリエライト、絶対にあきらめません!

必ず先輩を取り戻します!」

 

「うむ。良い気迫だ。

……坊主、お前も準備は良いか?」

 

「だ、大丈夫だよ!

うう……大事な令呪を使うことになるなんて……。

オマエこそ大丈夫なのか?

聞く限り、キャスターの宝具は大量の影の英霊を召喚して襲わせるんだろ?

あの戦車だけじゃ厳しいんじゃあ……」

 

「フフン、坊主よ。しかとその眼で見ておくがいい。

余が誇る最強の宝具をな。さあ、魔力を回せ!」

 

「分かったよ!

我がサーヴァントよ、ウェイバー・ベルベットが令呪をもって命ずる。

ライダーよ、必ずや、 敵を打ち砕き、マシュをキャスターの元まで連れていけ!」

 

イスカンダルさんの身体に魔力が満ちていく。

準備は出来た。

後は、待つのみ。

 

 

マシュの姿が視界に入った瞬間、立香の頭の中を強烈な激痛が襲った。

 

「――っ!? 痛い、あたまが……割れる……っ!!」

 

立香は頭を両手で抱え、その場にうずくまった。

黄金色の瞳が見開かれ、苦しみに悶える。

彼女の脳内では、記憶を消されても断ち切れないマシュとの深い絆が、道満の呪いと激しくぶつかり合っていた。

 

「先輩! 分かりますか、私です! マシュ・キリエライトです!

一緒に旅をした、あなたの後輩です! お願いです、思い出してください!」

 

必死に呼びかけるマシュと苦しみ悶える立香。

事態に付いていけず放心していた龍之介が、状況を飲み込み、苦しむ立香を抱きしめる。

 

「立香ちゃん、しっかりしろ!

立香ちゃんは俺のパートナーだ!あんな奴の言うことは聞くことないよ!

俺のことだけを感じて、見てくれよ!」

 

龍之介の言葉で、揺れていた立香の精神は再び龍之介の狂気と同調し、安定していく。

 

「そうだよね、マスター。

私はあなたのサーヴァントだもんね!

なんなの、お前……。

うるさいな……。黙ってよ……!

何なのさ、その気持ちの悪い、押し付けがましい言葉は……!」

 

立香は不快感を露わにしてマシュを罵った。

今の彼女に、マシュから放たれる言葉は耐え難い不快感をもたらしていた。

道満によって記憶を改竄され、「役割」を与えられた彼女には、マシュが自分の積み上げた「罪」を否定しに来た、最も排除すべき邪魔者にしか見えない。

 

「知らない……。私はお前なんて知らない! 

私の名前を、その汚らわしい口で呼ばないで! 

……ああ、気持ち悪い。反吐が出る。

お前から漂うその臭い……まるで、腐りかけの死体みたいで、吐き気がするんだよ!!」

 

「先輩……そんな……。どうして、そこまで……」

 

マシュの瞳に絶望の色が広がる。

愛する先輩に、これほどまでの嫌悪を向けられる日が来るとは。

しかし、傍らに立つライダーが、その太い腕でマシュの肩を力強く叩いた。

 

「うろたえるな、マシュ!

越える壁は高ければ高いほど越えた時の喜びも大きい!

今のあやつには、声は届かぬ。だが、絆は消えぬ!

今から余がそれを証明してやろうではないか!」

 

ライダーは立香を真っ直ぐに見据え、腰のスパタを力強く抜き放った。

その覇気は、夜の冷気を一瞬で吹き飛ばすほどの熱量を持っている。

 

「立香ちゃん! あいつらだ、あいつらが俺たちの芸術を台無しにしたんだろ!?

あんな、見るからに退屈そうな連中がさあ! 

殺そうぜ! 今すぐ、最高にクールな方法で、バラバラに解体してやろうよ!」

 

龍之介が憎悪に満ちた声を張り上げ、地を踏み鳴らして叫ぶ。

マスターの明確な「命令」が下った瞬間、いまだ立香を苛んでいた頭痛は、冷酷なまでに研ぎ澄まされた殺意へと昇華された。

立香は、龍之介に口づけし、魔力を回してもらう。

彼女の黄金色の瞳が爛々と輝き、狂気に満ちた笑顔で語りだす。

 

「……ふぅ。 了解だよ、マスター。

さあ、私の影たち。……おいで。

 

これは、人理を彩る英雄達の影。彼ら、彼女らの負の側面の集合。

宝具展開——『英霊召喚・反転(シャドウ・オブ・ヒューマニティ)』!!」

 

彼女の手の甲に、再び漆黒に輝く令呪のような紋章が現れ、妖しく光る。

周囲の景色が変わり、巨大な門(ゲート)が顕現する。

ランサー戦の時よりもさらに禍々しさを増した門。

開いた門から流れ出す影が、床一面に広がり、底なしの影の沼へと化していく。

そして、膨大な数の「影」が這い出してきた。

その中には、吸収したランサー・ディルムッドやバーサーカー・ランスロットの影だけではなく、ケイネスやソラウまでが含まれている。

彼らの顔は、他の影と同じくのっぺりとした影の膜に覆われていた。

 

「あはは、あははははははは!

前よりも調子がいいよ!龍之介くん!

さっき影にしまった皆も協力してくれるって!

これが私たちの絆だよね!

……さあ、マスターの望み通り、あいつらを最高にクールに解体してあげて!」

 

「フム……。

これがキャスターの宝具か。

同じ軍勢でも余とは大違いだな。何の脅威も感じぬわ」

 

ライダーの身体にも魔力がみなぎる。

事前に令呪を使用したおかげで、全力を出す準備は出来ていた。

 

「ここはかつて我が軍勢が駆け抜けた大地。

余と苦楽を共にした勇者達が、等しく心に焼き付けた景色。

肉体は滅び、その魂は英霊として世界に召し上げられて

それでもなお余に忠義する伝説の勇者達。

 

彼等との絆こそ我が至宝! 我が王道!

見よ、我が無双の軍勢を!

これこそが、イスカンダルたる余が誇る最強宝具 『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ』”なり! 」

 

展開される固有結界。

その心象風景は、見渡す限りの蒼穹と太陽が照り輝き、熱風吹き抜ける広大な荒野と砂漠。

そして、召喚されていく大軍勢。

 

「遠征は終わらぬ。

我らが胸に彼方への野心ある限り。勝鬨を上げよ!!AAAALaLaLaLaLaie!!」

 

数万の軍勢の咆哮。

ライダーは、神威の車輪(ゴルディアス・ホイール) も展開し戦車に乗り込む。

 

「さあ、マシュよ!早く乗れ。

一気に突破するぞ。突撃じゃあ!!!」

 

「なに、あれ……。

不快だ、すごく気持ち悪い……。

そうか、あのサーヴァント、イスカンダル。アレキサンダー大王だったんだね。

生前の軍勢を召喚して作り上げる固有結界。それに、あの戦車……。

でも、私の影たちには敵わないよ。いくらでも代わりはいるから!」

 

本来の「藤丸立香」が結んできた「縁」や「絆」。

それが具現化されたような固有結界は、今の彼女には不快なものにしか映らない。

そして、本来の彼女なら絶対に考えないであろう、サーヴァントの使い捨て。

 

その言葉を聞いてしまったマシュは、悲しみを感じながらも決意を込めて戦車に乗り込む。

その時、耳のイヤホンに切嗣からの声が届いた。

 

「マシュ、聞こえるか?

アイリから連絡だ。こちらに向かっている二人に妨害が入った。

アサシンのようだ。監督役のはずの言峰神父も居るらしい。

教会もグルのようだな。

セイバーの到着が予想より遅れるだろう。

だが、作戦は決行する」

 

「了解です」

 

短く答えるマシュ。

突撃を開始するライダーと彼の軍勢。

ずるずると蠢きながら動き出す影の軍勢。

 

決戦の時が迫る。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。