もし藤丸立香(女性)がFate/Zeroの雨生龍之介にキャスターとして召喚されたら   作:白豚くん

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先週は初めて評価に色がついたり、まさかのルーキーランキングに掲載されたりと、非常に嬉しかったです!
本当にありがとうございます。



第十八話 四番目・五番目の脱落者 醒めない狂気

「りゅう……のすけ、くん……?」

 

綺麗な赤色が私の顏に飛び散った。

ドサリ、という重い音が砂の上に響く。

目の前で、私の大切なマスター、龍之介くんの身体が糸の切れた人形みたいに崩れ落ちていく。

どうして?

私を庇ってくれたの?

サーヴァントの私を?

 

背後から私を抱きしめている薄紫色の髪の少女の力が緩む。

そうだ、この娘はマシュ・キリエライトだ。

どうして忘れていたんだろう。私の大切な後輩。

一緒に7つの特異点を旅した、人理修復の旅の大切なパートナー。

 

私は彼女の腕を振り払い、地面に横たわる龍之介くんのもとへ歩み寄る。

 

「嫌だ……嘘、嘘だよ。ねえ、起きてよ、龍之介くん!マスター!!」

 

私は彼を抱きかかえ、必死に呼びかける。

龍之介くんの胸には、大きな穴が開いていた。そこから溢れ出すのは、赤い血。

彼は何かを言おうとして口をパクパクと動かしているけれど、そこから漏れるのは言葉じゃなくて、ゴボゴボという血の泡だけだった。  

 

「……ゴ、ボ……ッ……」

 

「だめだよ、喋らないで! 私がすぐに治してあげるから!

影たち、来て! 私のマスターを今すぐ癒して……!」

 

だめだ、間に合わない……。

またなの? 私は、また大切な人を失ってしまうの?

 

……また? またって、何のこと……?

その時、私の頭の中に圧倒的な光の奔流が流れ込んできた。

 

(――先輩、今までありがとうございました)

 

誰。誰の声……。  

光の中に立つ、一人の少女。

大きな盾を構えて、空を覆い尽くすような巨大な光を受け止めている。

彼女の身体が、白く、熱く、透き通っていく。  

ああ、そうだ。私は知っている。この光景を知っている。  

終局特異点。魔術王の、第三宝具。

人類終了を告げる光帯から私を守るために、彼女は……。

 

『全ての傷、全ての怨恨を癒す我らが故郷、顕現せよ、今は遥か理想の城( ロード・キャメロット) !! 』

 

不意に蘇る、私の記憶。 そう、かつての私が体験した、忌まわしくも鮮烈な光景。

場所は、時間神殿。終局特異点。

目の前にいるのは、魔術王ゲーティア。

放たれたのは、第三宝具『誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの(アルス・アルマデル・サロモン) 』。

光の束が、私達を焼き尽くそうと迫り来る中、私を守るべく前に出てくれたのは――。

盾を掲げ、ただ一人、絶望的な熱量に立ち向かう、薄紫色輩の髪の少女。

そして、 最後に、彼女は振り返り、私に向けて微笑んだ。

 

『……でもちょっと悔しいです。

わたしは、守られてばかりだったから――。

最後に一度くらいは、先輩のお役に、立ちたかった 』

 

そして、彼女は蒸発した。 文字通り、跡形もなく。

あの雪花の盾だけを残して、私の目の前から消え去ったのだ。

ああ……思い出した。完全に思い出した。

どうして、忘れていたんだろう。

 

 

 

あの時のマシュの姿……。

あんなにも美しかったのに(・・・・・・・・・・・・) !!

 

自らの命を燃やし尽くし、ただ一つの目的のために全てを捧げ、最も輝かしい瞬間に弾けて消える。

あれこそが最高の『芸術(アート)』。

私が、龍之介くんと追求していた、最高にクールな、最高のアートそのものじゃないか!

マシュ・キリエライトのあの死に様こそ、世界で一番美しい「最高の美」だったんだ!!

 

「あはっ……ふふ、あははははは!」

 

喉の奥から、笑いがこみ上げる。

でも、どこか、頭の奥で悲痛な声が響くような気がする。

 

違う、と。私はそんなこと考えたこともない、と。

私があの時思ったのは、そんな悍ましいことじゃない、と。

 

その声を無視し、記憶と思考を同調させていく。

欠けていた自分が埋められていく感覚があった。

同時に、激しい怒りが湧いてくる。

許せないという気持ち。

腕の中で冷たくなっていく龍之介くんを、まじまじと見つめる。

 

……違う。 龍之介くんの最期は、こんなのじゃない。

彼が死ぬときは、もっと満足して死ぬはずだったんだ。

自らの血と臓物で最高の絵を描きながら、狂気に満ちた笑顔で死んでいくべきだったんだ。

なのに、さっきの彼の動きは何?

まるで、見えない糸に操られた安っぽい操り人形みたいだった。

私を庇っての美しい自己犠牲なんかじゃない。

ただ私の前に『置かれた』だけの、惨めで、滑稽で、少しも美しくない死。

 

「……かわいそうに。龍之介くん」

 

誰が、こんな酷いことをしたの?

誰が、私のマスターの最期に、泥を塗ったの?

許さない。絶対に許さない。

私の中に、これまでにないほどのドロドロとした黒い怒りと、研ぎ澄まされた殺意が湧き上がってくる。

黄金色の瞳が、怒りで爛々と輝く。

誰だ。誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ!!!!

 

『ンンンンン……嘆かわしい、実に嘆かわしい!』

 

不意に、頭の中に直接、ひどくねっとりとした男の声が響いた。

 

『見なされ、立香殿。

貴女の愛しいマスターは、あそこで立っている忌まわしき盾の娘のせいで、あのような無惨な最期を遂げてしまった。

あの娘と狙撃者が協力して、貴方を狙ったのです。

龍之介殿は、貴方を守るために身を挺した。

なんと美しい自己犠牲でしょうか……!

拙僧、涙が止まりませんぞ。

さあ、まずはその小娘を殺しなされ。

拙僧も協力いたしますぞ。

マスターの無念を晴らのです!!』

 

「…………」

 

私は、黙ってその声を聞いていた。 その声の主が誰なのかは分からない。

でも、私を馬鹿にするのもいい加減にしてほしい。

 

「ふふ……あはははははははははは!!!」

 

私は天を仰ぎ、腹の底から狂笑した。

 

「馬鹿じゃない? 私がそんな見え透いた嘘に騙されるとでも思ってるの?」

 

『……な、何と?』

 

「その耳障りな声。あなたでしょ?

私を、龍之介くんを利用したのは。」

 

声の主が、一瞬だけ息を呑む気配がした。

 

「私とマスターの間に入り込んで、私たちを利用して何かをしようとしていた。

私が召喚された時の声と一緒。

さっき、アサシンの霊基を流し込んだのもあなただよね。

……神様扱いしちゃった私を、殺してやりたいよ。

お前なんかに感謝しちゃったなんて、笑い話にもならない!」

 

「お前が……お前が、龍之介くんが最高のアートになるのを台無しにしたんだ!!!

お前が、私の最高のキャンバスを汚したんだ!!

許さない、許さない許さない許さない!!」

 

『ンンソンンンン……! なにか、なにか非常に不味い気がしますぞ――

急用を思い出しましたので、拙僧はこれにて失礼を――』

 

「逃がすかあああああああっ!!!」

 

私は、アサシンの霊基を流し込まれた際のパスを利用し、声の主の魔力を影の中に吸収するべく強引に吸い上げる。

 

「吸い尽くしてやる! 私に力を与えたいんでしょ?

もらってあげるよ!あなたの全てをね!」

 

『なっ!? ば、馬鹿な!

やめなされやめなされ!

拙僧は貴女の器に収まるような者ではありませぬぞ!』

 

「だからどうしたっていうんだ!! 死ねええええええええええ!!!」

 

私は魔力を全開にし、狂気のままにその力を吸い上げる。

熱い。痛い。気持ちいい。

得体の知れない宇宙の深淵のような力、

それが、私に無理やり注ぎ込まれていく。

 

『ソソソソソッ!? おのれ、おのれおのれおのれえええええっ!!』

 

声の主が、醜い絶叫を上げる。

 

『ええい、仕方ないですな。今宵はここまで。

またお会いできるのを楽しみにしておりますぞ』

 

ブツンッ、と。

パスを強制的に切断された。

 

「……逃げられたか。まあいいよ」

 

私の中には、十分すぎるほどの力が溜まった。

ああ、溢れ出してきそう。 もう、止まらない……。

 

汚染された聖杯の泥、影に吸収したサーヴァントの霊基、今吸収した奴の魔力。

全部、私の中に、私の可愛い影の中に入っちゃった。

そうだ。龍之介くんも、一緒に居ようね……。

私は、マスターを影の中に大切に収めた。

 

すると、さらにドス黒く染まった影が、私の身体を包んでいく。

そうか、私に相応しい姿に着替えさせてくれるんだね。

 

私はゆっくりと眼を瞑る。着替えが終わるまでに、頭の中を整理するために。

はあ、やっと全部思い出したよ。

どうして、私の大切な後輩を忘れていたんだろう……。

待っててね、マシュ。

はやく、会いたいな……。

 

 

 

どうして、生き返ってるのかな?

駄目じゃない。せっかくあなたは『芸術(アート)』になれたのに。

かわいそうなマシュ。

大丈夫だよ。今度は、私が最高にクールに殺してあげるからね……。

 

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