もし藤丸立香(女性)がFate/Zeroの雨生龍之介にキャスターとして召喚されたら   作:白豚くん

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今回、再臨したキャスター:藤丸立香をAIで生成してみました。

【挿絵表示】



第六話:再臨する狂気 託された希望

月光が、砕け散ったホテルの窓ガラスを冷たく射抜いている。

かつて「時計塔のロード」が築き上げた難攻不落の要塞は、今や見る影もなく破壊され、静寂の中に重苦しい血の匂いだけが淀んでいた。

 

その惨劇の中心で、藤丸立香は、自分を抱き起すマシュ・キリエライトの腕の中で、必死に混濁する意識を繋ぎ止めていた。

起源弾による衝撃は、彼女の魔術回路を無理やり繋ぎ直し、束の間の「正気」を彼女に与えていた。だが、その代償としての激痛は、彼女の華奢な肉体を内側から焼き尽くそうとしている。

 

「……マシュ、お願い。……聞いて……。時間が、もう……ないの……」

 

「先輩! しっかりしてください、先輩! すぐにここを出て、ドクターやダ・ヴィンチちゃんに連絡を……!

私が、あなたを守りますから!」  

 

マシュは泣きながら、立香の体を自分の盾で庇うように抱きしめた。

その温もりに、立香は温かな安らぎを感じる。

だが、彼女はその温かみを振り払い、決意を込めた瞳でマシュに話しかける。

 

「……ううん。……マシュ、私は……行けない。」

 

立香は、涙が零れおちるのを感じながら、魔術礼装を換装する。

カルデア制服から、橙と白のボディスーツ、カルデア戦闘服へと換装を完了する。

 

「よかった……。礼装の換装ができた。

……マスタースキル……発動……っ! 『オーダーチェンジ』……」

 

「先輩!? 何を……何をしようとしているんですか!?」

 

マシュが驚愕の声を上げる。

立香の意図を察した彼女は、必死に立香の腕に縋り付いた。

 

「嫌です! 先輩を置いていくなんて、そんなこと絶対にできません!

私と一緒に来てください! 担いででも、ここから連れ出します!」

 

 

「……ダメなの、マシュ。

……今、一緒に行ったら……貴女まで、あの『悪意』に呑み込まれちゃうかもしれないんだ……。

!……あ、あああああっ……!!」  

 

突然、立香が悲鳴を上げ、自分の胸を掻きむしった。  

スキルを発動しようとした時、異変は唐突に訪れた。  

彼女の心臓の辺りに、この世のものとは思えないほど濃密な「影」の魔力が集結し始めたのだ。

それは、この特異点を歪めている「誰か」が、立香の正気への復帰を察知し、強制的に彼女を再定義しようとする動きだった。

 

「……やめて……来ないで……! 私の……私の中に入ってこないで……っ!」

 

立香の喉から、血を吐くような絶叫が漏れる。

起源弾によって出鱈目に繋ぎ直されたはずの魔術回路が、ドロドロとした影に侵食され、再び「キャスターとしての魔術回路」へと、より強固に修復されていく。  

バチバチと火花を散らす回路に、再度、彼女への「役割」が流し込まれていく。

それは、雨生龍之介という狂気に寄り添い、共に歩ませるための歪な悪意だった。

 

「……っ、ぐ……ぅ……!

……あぁ、嫌だ……怖いよ、マシュ……!

また、あの真っ暗な場所に堕ちていく……。

全部、全部忘れちゃう……。

貴女のことも、カルデアのことも、みんなとの旅も……全部、あの『影』に塗り潰されちゃうんだ……っ!」  

 

立香の瞳から、琥珀色の輝きが失われ始める。

黄金の狂気が、じわじわと彼女の瞳を侵食していく。

 

「先輩! しっかりしてください!

あきらめないで! 私が……私がその影を払いますから!

先輩を一人になんてさせません!」

 

「……ううん。……無理だよ、マシュ。

……これは、たぶん外からの攻撃じゃない……。

……私の、内側から溢れてくる……誰かの呪い、だと思う……。

……誰かが、私を笑ってる。……

『あなたは、この特異点を狂わせるための役割を全うしなさい、って……。

逃がさないって……。頭の中で響いてるの……っ」

 

立香は、激痛と恐怖に顔を歪めながらも、儚く、そして慈しむような微笑みをマシュに向けた。

 

「……正気が残っているうちに……マシュを、転移させるね。

……さっきも言った通り……衛宮さん達、セイバー陣営と、協力して。

……ごめんね、マシュ。……頼りないマスターで、本当に、ごめんねっ……」

「嫌です、そんなの嫌です! 先輩! 私を置いていかないで!

先輩と一緒に戦いたいんです! お願いです、先輩っ!!」

 

マシュの絶叫が、無機質なホテルの壁に反響する。彼女は立香の戦闘服を千切らんばかりに掴んでいたが、立香の指先が、マシュの頬にそっと触れた。

 

「……いいんだよ、マシュ。

……貴女が無事なら……私は、それでいい。

……たとえ私が、また私じゃなくなっても

貴女が、道を繋いでくれるなら……。

……さようなら、マシュ。……大好き、だよ……

マスタースキル——『オーダーチェンジ』……ッ!!」

 

カッ、と視界が真っ白に染まる。

「先輩————!!」  

マシュの手が、空を掴んだ。

彼女の身体が転移していく。

立香の瞳に最後に映ったのは、涙に濡れたマシュの絶望に満ちた顔だった。

 

「……あ……あああ…………」

 

マシュの気配が完全に消失した瞬間、立香を繋ぎ止めていた最後の防波堤が崩壊した。

影の魔力が、津波となって彼女の精神を呑み込む。

それは、ただの魔力ではなかった。

人間のへ怨嗟、絶望……そして、彼女個人へ向けられる強烈な悪意……。

この特異点を構築した「何者か」の粘着質な殺意が混ざり合った、魂を腐食させる毒だった。

 

(……あ、あ……あぁ……っ!)

 

立香の脳内で、ふたたび人理修復の旅の記憶が、一枚ずつ燃え落ちていく。  

冬木、オルレアン、セプテム、オケアノス……。

共に戦ったサーヴァントたちの笑顔が、声が、名前が、真っ黒な影に染まって消えていく。

(……嫌だ、消さないで……! あの人たちの、誇りを……私との……絆を……!)  

抗おうとする意志さえも、付与される狂化EXという圧倒的な狂気に蹂躙される。

 

(……ダ・ヴィンチ……所長……。……ドクター、ごめん、なさい……。

私、もう……)

 

最後の光——マシュ・キリエライトという少女の記憶が、深淵の底へと沈んでいく。

 

(……マシュ……? ……誰だっ、け……。

……あ、の、紫色の……。なすび色の……。

あ…………)  

 

プツン、と。  頭の中で何かが切れる音がした。

その瞬間、立香の表情から一切の苦悩が消え去った。  

琥珀色の瞳は、深淵のような、あるいは爛々と輝く宝石のような黄金色へと完全に染まり切る。

その瞳孔は悦楽に細められ、理性の代わりに、純粋な狂気と「役割」への没入が、立香の中を満たした。  

 

彼女は、再び「人類最後のマスター」ではなく、雨生龍之介のサーヴァントたる「キャスター」として完全に再定義され、霊基から禍々しい魔力を周囲に撒き散らし始めた。

 

「……あ。……あは。……あははははは!」

 

立香の唇から、鈴を転がすような、しかし背筋が凍りつくほど無邪気な笑い声が漏れた。

彼女は自分の掌を見つめ、そこに付着した血を愛おしそうになぞる。

 

「……なんだか、不思議な夢を見てた気がする。

……すごくつまらなくて、退屈な、光の夢。

……誰かが私の名前を呼んでた気がするけど……ふふ、どうでもいいや。

……そんなことより、もっと素敵な『赤』が見たいな」

 

立香はしなやかな動作で立ち上がり、換装されたままのカルデア戦闘服を確かめた。

魔術礼装の機能は、キャスターとしての魔術行使をさらに効率化させ、影のサーヴァントをより歪め、より迅速に召喚するための補助装置へと変質していた。  

そこへ、廊下から軽い足取りの音が近づいてきた。

 

「——おーい、キャスター! 大丈夫かい!?

今、すごい光と音がしたけど、また何か面白いことが起きたのかい?」

 

雨生龍之介が、血の付いたナイフを弄びながら部屋に戻ってきた。

彼は以前よりもさらに禍々しく、そして美しく狂った気配を纏った立香を見て、歓喜に瞳を輝かせた。

 

「あ、龍之介くん! おかえりなさい!」  

 

立香は満面の笑みを浮かべ、龍之介の胸に飛び込んだ。

マシュのことも、自分の本当の使命も、人理の運命も、全てを忘却した彼女にとって、目の前の青年こそが世界の中心であり、魂の片割れだった。

 

「大丈夫だよ、龍之介くん。なんにも無いの。それより、見て見て!

この身体にぴったりのボディスーツ!似合ってるでしょ!

私、いつの間にか姿が変わって、もっと凄くなっちゃった!

身体の中から、ドロドロした力が溢れてきて……すごく、気持ちいいの!」

 

立香は龍之介の肩に腕を回し、頬を擦り寄せながら、恍惚とした表情で報告した。

 

「……おおっ、本当だ! 凄いよキャスター、君はやっぱり最高だ。

……今の君、さっきよりもずっと『クール』だよ!

まるで、闇を溶かして作った綺麗な宝石みたいだ!」

 

「ふふ、ありがとう! 龍之介くんにそう言ってもらえるのが、私、一番嬉しいな。

……ねえ、もっと、私を見て? もっと、私を使って?」

 

立香は龍之介の頬を撫で、蕩けるような表情で彼を見つめた。

 

「龍之介くん。……今晩の成果、もっと堪能しようよ。

……さっきの『探索』で、何かいい素材は見つかった?」

 

「ああ、見つかったとも! 下のフロアに、怯えて震えてる面白い家族がいたよ。

君の影で、じっくりと、彼らの『内側』を暴いてあげてよ」

 

「いいよ! ……ふふ、楽しみ。

……全部、全部使って、朝まで二人で最高の芸術を作ろうね?

誰にも邪魔されない、私と龍之介くんだけの世界だよ」

 

「ああ、賛成だ! 君がそう言ってくれるのを待ってたんだよ! さあ、行こう、キャスター!」

 

二人は、まるで仲の良い恋人同士のように寄り添い、楽しげに語らいながら、廊下へと消えていった。  

藤丸立香は、再び狂気に堕ちた。

残されたのは、雨生龍之介という殺人鬼を神の如く崇め、命を解体することにのみ至上の悦楽を見出す、美しき絶望のキャスターだけだった。

 

「あはははは! 龍之介くん、あっちの部屋にも『綺麗な悲鳴』が隠れてるよ!」

 

「最高だね! 君のセンスには、いつも脱帽させられるよ!

さあ、次はどんな色を見せてくれるんだい!?」

 

遠ざかっていく二人の狂った笑い声が、ホテルの中に虚しく響き渡る。

冬木の夜は、より深く、より静かに沈み込んでいった。

 

 

 

一方、とあるビルの屋上。

狙撃銃を片付けようとしていた衛宮切嗣の頭上に、突如として空間が歪み、一人の少女が吐き出された。

 

「……っ!? 転移魔術……上か!」

 

切嗣は瞬時に身を翻し、懐のコンテンダーに手を伸ばす。

しかし、それよりも速く、巨大な十字の盾が彼の眼前に叩きつけられた。

 

「……が……は……、せん……ぱい……!!」  

 

マシュ・キリエライト。  

彼女は地面に膝を突き、消え去る直前の、あの、あまりにも儚い立香の笑顔を思い出し、喉を詰まらせて泣き叫んだ。  

自分を逃がすために、一人で闇へと堕ちていった立香。  

彼女が遺した願い。

マシュは震える手でコンクリートの地面を叩き、自分をここに立たせた「先輩」の意志を、血を吐くような思いで噛み締めていた。

 

「……先輩……。……必ず、あなたを……。

……あの地獄から……私が、連れ戻しますから……!!

たとえ……世界中を敵に回しても……私は、あなたの……っ!」

 

マシュの慟哭が、冷たい夜風に吹かれて消えていく。  

その背後で、切嗣は冷徹な眼差しで、突如現れた何者かの姿を凝視していた。

 

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