新エリー都出張マッサージ屋   作:ジャカジャン

1 / 5
ゼンゼロ世界におっさんを増やしたい どうしても書きたかった。
楽しんでいただければ幸いです


プロローグ 六分街

カツン…カツン…

夕暮れの新エリー都に、杖の音が響く。

 

サングラスを掛けた男は杖で地面を探りながら歩いていた

「もうすぐかな?」

 

男はその声に微笑み、ゆっくりと歩みを進めた。

男は耳をピクピクと動かし聴覚と嗅覚に意識を集中させる。しばらく歩いていると嗅ぎなれた匂いとなじみのある音が聞こえてきた。

 

『六分街』

 

小さな下町だが様々な店が立ち並ぶこの町を男は気に入っていた。

六分街に入ると、ライブハウス「404 ERROR」のネオンがジジジと唸り、

「BOX GALAXY」の新作アナウンスが耳をくすぐる。

雑貨屋「141」ではボンプたちが相変わらず騒がしく、

少し先ではゲームセンター「GOD FINGER」のピコピコ音と子供達の声が絶えない。

「COFF CAFE」から漂うコーヒーの香りに、男は思わず胸の奥が緩んだ。ティンの淹れるコーヒーは、この街に来るたびに必ず吸い込みたくなる匂いだ。

その先には、ラーメン屋「滝湯谷・錦鯉」の湯気

ニューススタンド「HOWL'S」のウーフの鳴き声

レコード店「吟遊ニードル」のかすかな音楽、

そして「TURBO」の金属音が重なり合っている。

この雑多な音と匂いの重なりこそ、男が六分街を好きな理由だった。

久しぶりにこの街の空気を胸いっぱいに吸い込みながら、男は目的地へ向かう。

 

レンタルビデオショップ「Random Play」

 

店頭のショーウインドウのテレビからは映画の予告編のナレーションが聞こえてくる。

 

一呼吸おいて男は店のドアを開けた

カランカラン――

ドアのベルが軽やかに鳴り、来訪を告げた。

 

店のカウンターから看板ボンプの声が明るく返ってきた

 

「ンナタっ!!(いらっしゃいませ!!)」

 

「お、その声はトワさん。」

 

「ンナっ!ンナンナ~ナン~ナ~(あっ!マッサージ屋さん久しぶり~)」

 

「お久しぶりでございます。リンさんかアキラさんにマッサージ屋のイチが来たと伝えておくんなさいまし。」

 

「ンーナ、ンナンナナ(はーい、ちょっと待っててね)」

 

そう言ってトワはカウンターから離れ軽やかに二階へ上がっていった。玄関近くのベンチに腰を下ろす。

 

「今日は静かだな…」

 

いつもなら仕事帰りのサラリーマンたちや学校終わりの学生たちの気配が絶えないはずなのに、今日は妙に静かだった。

 

「まぁ、こんな日もありますわな」

 

階段の方向から、トン……トン……と足音が聞こえる。

 

「やあ、イチさんこんにちは」

 

Random Playの兄妹店長の兄、アキラの声だった。

 

「アキラさん、お久しぶりでございます」

 

「久しぶりだね。元気にしてたかい?」

 

「へえ……まあ、なんとかやっております」

 

イチは盲目だが映画好きで、この店にはよく通っていた。通ううちにアキラやリンとも自然と仲良くなり、今では気軽に声をかけ合う

ようになりその縁で、時々マッサージを頼まれることもある。

 

イチが微笑むと、アキラは階段を降りきり、ゆっくりと近寄ってきた。

 

「ここ一か月連絡取れなかったから心配したよ。」

 

「ご無沙汰してしております。ここのところマッサージのご依頼が多くて、あちこち呼ばれておりまして。」

 

「そうだったのか。よかった、元気にしてるみたいで」

 

アキラの声には、ほっとしたような明るさが混じっていた。

 

「それで、アキラさん今日の依頼ってのは?」

 

「え~と……実は……」

 

アキラが言い淀んだ瞬間、階段の上からかすかな物音がした。

イチはそちらへ顔を向ける。

 

「……あ、リンがちょうど起きたみたいだ。イチさん、こっち来てくれるかい?」

 

アキラは思わず手招きしながら言ったが、すぐに自分の失敗に気づいた。彼とは別の盲目の友人と接するときと同じように手振りで呼んでしまったのだ。

 

「あっ…ごめんよ、つい…」

 

イチは小さく笑い、杖の先で床を確かめながら立ち上がる。

 

「へへ、大丈夫、気にしてませんよ、アキラさん。声のほうへ向かいますので」

 

イチは杖を手に取り、ゆっくりとアキラのほうへ向かう。

アキラはほっとしたように息をつき、今度はイチの横に付き添い歩幅に合わせて二階へと案内した。

二階へ到着するとボンプのテテテッと軽い足音が近づき、続いて扉の開く音がした。

 

「その足音はイアスさんか、どうも恐れ入ります」

 

「ン~ナンナナンナ(どういたしまして)」

 

アキラはそのやり取りに、胸の内で小さく感心する。

 

(相変わらず、音だけで誰が来たかわかるんだな……)

 

部屋の空気がふわりと流れ出る。

少しこもった、疲れの匂いが混じった静けさだった。

 

「リン、イチさんが来てくれたよ」

 

ソファの背もたれに沈み込む音と、小さく呻く声が聞こえてくる。

リンはイチの気配に気づき、顔を上げた。

 

「イチさん…こんにちは、久しぶり、元気だった?」

 

いつもなら元気なはずのリンの声が淀んでいるように聞こえる。

 

「リンさん、お久しぶりでございます」

 

「最近仕事が立て込んじゃってね、もう疲れちゃって 全然動けなくてェ…」

 

「これは…相当参っておりますな。」

 

「じゃあさっそく、お願いするね。」

 

「へへ、それじゃちょっと失礼いたしますよ」

 

イチはゆっくりとリンのそばへ歩み寄り、指の柔軟体操をした後、肩にそっと手を置いた。

 

「へぇ、なるほど。こりゃあ確かに、無理をしすぎましたな」

 

指先で軽く押すと、リンの体がびくりと震える。

 

「……っ、そこ、痛い……」

 

「ええ、だいぶ固まっておりますが、深刻なもんじゃありません。ちょいと手を入れれば、すぐ楽になりますよ」

 

リンがほっと息をついた。

 

「イチさん、リンを頼むよ」

 

「任せておくんなさいまし」

 

イチは静かに息を整え、リンの肩へ両手を添えた。

 

「あぁ~~気持ちいい♪やっぱりイチさんのマッサージは新エリー都一だね」

 

「それはようございました」

 

「ハア~~」

 

リンの吐息がふわりとほどけ、部屋の空気がゆるんでいく。

 

最初は強ばっていた筋肉が、押すたびに少しずつ柔らかくなる。

肩、首筋、背中――

疲れの芯がほどけていくにつれ、ソファが沈む音が小さく響いた。

そうして、穏やかな時間が静かに積み重なり、

気づけば30分ほどが過ぎていた。

しばらくして、リンがぽつりと口を開いた。

 

「イチさん……探し物は、見つかった?」

 

イチの手が一瞬だけ止まる。

 

その短い間に、リンはイチの胸の奥に沈んだ影を感じ取った。

 

「……」

 

少しして、イチはいつもの調子を装って答えた。

 

「いやぁ……それがなかなか見つかりませんな」

 

「そっか……」

 

リンは視線を落とし、ためらいながら続けた。

 

「……その“探し物”ってさ。やっぱり……記憶のこと、なんだよね?」

 

イチは肩に置いた手を軽く揺らし、柔らかく笑った。

 

「へぇ。まあ、そういうことでございますな」

 

リンはその軽さの裏にある重さを感じ取り、胸の奥が少し痛んだ。

 

「……つらくない?」

 

イチはほんの一瞬だけ息を吸い、すぐにいつもの調子に戻る。

 

「へぇ、大丈夫でございますよ。慣れたもんです」

 

リンはその言葉を信じきれず、小さく息を吐いた。

 

「……見つかるといいね。イチさんの大事なもの」

 

「へぇ……まあ…気長に探しますよ」

 

六分街の喧騒が遠くに溶けていくような、柔らかな時間が流れていった。

 

――数時間後

 

寝息が聞こえるリンの部屋にイチの声が響く

 

「リンさん、終わりましたよ」

 

その声に、ソファに沈んでいたリンがびくりと跳ねる。

 

「ふえっ……!?」

 

寝起きの可愛さにイチが思わず笑みをこぼす。

 

「私、寝ちゃってたの……?」

 

「えぇ。途中から気持ちよさそうにいびきをかいてましたよ。あれは見ものでした」

 

いたずらっぽい笑みに、リンの頬が一気に赤く染まる。

 

「そ、そんなに……?」

 

待ってましたとばかりにアキラが身を乗り出す。

 

「最初は“すぅー”って静かだったのに、途中から“くぅ……すぅ……”ってリズム刻み始めてさ」

 

「お兄ちゃん!? やめてよ!!」

 

枕で顔を隠すリンに、アキラは追い打ちをかける。

 

「しかも最後のほう、んがーって…」

 

「言わなくていいってば!!」

 

耳まで真っ赤になってバタバタするリン。イアスが「ンナナ~」と笑うように耳を揺らす。

 

イチは肩をすくめて笑った。

 

「それだけ安心してくれたってことです。マッサージ師としては嬉しい限りで」

 

アキラも誇らしげにリンの頭を撫でる。

 

「そうそう。リンがあんなに気を抜けるなんて、イチさんの腕がいい証拠だよ」

 

枕に顔を埋めたまま、リンが小さくつぶやく。

 

「……もう……二人とも……」

 

照れと安心が混じった、柔らかい声だった。

 

しばらく他愛のない世間話が続き、部屋の空気はゆったりと和んでいった。

 

イチは小さく笑い、手を払うように立ち上がった。

 

「それでは、そろそろお暇しますかね」

 

「えぇ~、もう帰っちゃうの?」

 

リンが名残惜しそうに顔を上げる。

 

「久しぶりに会えたんだから、ゆっくりしていけばいいのに……」

 

イチは申し訳なさそうに肩をすくめた。

 

「へぇ……ゆっくりしたいのは山々なんですが、このあともいろいろと立て込んでましてね」

 

リンは「そっかぁ……」と小さく息をつき、ほんの少しだけ唇を尖らせた。

 

リンはしゅんと肩を落とし、指先でソファの端をつまんだ。

 

「そっか……でも、来てくれて嬉しかったよ」

 

その言葉に、イチはふっと柔らかく笑った。

 

「へぇ、それは何よりでございます。」

 

「……うん。ほんとに、楽になった。ありがとう、イチさん」

 

リンは照れくさそうに視線をそらしながら、小さくつぶやく。

 

アキラが腕を組んで頷く。

 

「また時間できたら寄ってくれ。コーヒーくらいは出すからさ」

 

「それに……また別依頼をお願いするかもしれないからね」

 

その言葉を聞いたイチは一瞬耳をピクリと反応させた。

 

すこし間を置いた後イチは口を開く

 

「そちらのお仕事も順調でございますか?」

 

「まあ、ぼちぼちだね」

 

「盲目の俺なんかが役に立ちますかね?」

 

リンが優しい口調で言う

 

「そんな謙遜することないよ。イチさんの腕は確かだもん」

 

「まぁ軽い手伝いくらいはいたしますよ」

 

イチは杖を手に取り、軽く頭を下げた。

 

「それでは失礼いたします」

 

「またねイチさーん」

 

優しい声を後ろにイチはRandom Playを後にした。

 

ドアを閉め辺りの気配を探る

 

 

 

六分街はすっかり夜の気配に包まれていた。

 

「……相変わらず優しいお人だ」

 

胸の奥に、じんわりと温かいものが広がる。

(盲目の俺なんかに……)

 

イチは小さく息を吐き、杖を鳴らして歩き出した。

 

「へへ……また忙しくなりますかね」

 

その声は、夜風に溶けていった。

 

イチ 

盲目の男性。目に横一文字の傷があるマッサージ師 

出張マッサージで新エリー都各地を転々としている。

衛非地区出身 

腰が低く、陽気で飄々とした性格。だが怒ると怖い

世話焼きで困ってる人や子供を見かけると手助けをしたがり。

過去の記憶を失っており、11年前より前の記憶を失っている。

自身が何者かさえ覚えていない

出張マッサージで各地を転々としつつ自分の記憶を探している

イチは本名ではなく助けてくれた人につけてもらった

 

裏では凄腕の居合術で敵を切り裂く物理エージェント。

武器は仕込み杖。

様々な組織に雇われ戦闘依頼やホロウでの依頼をこなし自分の過去と目を斬った人物を探している。

目は明暗がわかる程度だが他の感覚は非常に鋭い。

 

プロキシ兄妹と知り合ったのはイチが六分街に初めて来た時、暴漢に絡まれていたリンを助けたことがきっかけ。エージェントととしては邪兎屋に雇われた際random Playで再会する

そのままrandom Play常連になり仲良くなる。 

とあることからプロキシ兄妹には記憶喪失と記憶を探していることを話している。

 

 

趣味は丁半博打 ビデオ鑑賞 好みは時代劇 音楽鑑賞

 

 

 

 

 

 

 

 




ゼンゼロのキャラクターはとても魅力的ですがおっさんキャラが少ないもっと増やして!!

偉大なる先人に敬意をこめて
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。