新エリー都出張マッサージ屋   作:ジャカジャン

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たくさんの方に読んでもらってありがとうございますンナ これからも頑張りますンナ


第1話 「商機×怪奇×仁義×盲目」後編

エーテル粒子がなお漂う駅のホームに、リンの弾んだ声が響き渡った。

戦場の隅でイアスと感覚を同期したリンは、三人のもとへ走り出す。

 

「やったね!みんな!」

 

アンビーは刀を収め、工房にいるイチへ向けて小さく息をついた。

 

「……イチ先生。さっきの判断、本当に助かったわ、ありがとう…」

 

 それに続いて、ビリーが声を上げる。

 

「フゥ…よくわかったな、あんだけカオスな状況で音なんてよ…」

 

 イアス越しにリンの明るい声も重なった。

 

「イチさん、的確な指示ありがとう! 助かったよ」

 

「へへ、耳だけはよく聞こえるもんで…大したことはしておりやせんよ」

 

イチは照れたように笑う。

そのやりとりの後ろからニコの笑いが聞こえてきた。

 

「やっと…やっと!!」

 

満面の笑みで両腕を広げ二人の前に駆け寄り、二人にハイタッチを…

 

「みーつけた!!」

 

せず、そのまま金庫の方へ駆け寄っていってしまった。

 

「オイィ……」「むぅ…」

 

二人の不満そうな声が聞こえてきた。

ニコが金庫に近寄ったと同時にリンが金庫の上に飛び乗った。少し申し訳なさそうにしゃべり始める。

 

「ニコ…水を差すようで悪いんだけど…喜ぶのはまだ早いよ、落ち着いて聞いてね…」

 

「な、なに?また何かあったの?」

 

「全部あの悪玉ハッカーのせいだよ!私がホロウを脱出するために用意していたデータを削除したの。」

「ってことは…ここから出られないってこと!」

 

ニコはへなへなと地面に座ってしまった。

アンビーがそのまま倒れそうになったニコの肩をつかみ支える。

 

「ああ…あんなに苦労してやっと元に戻ったと思ったらまさかこれで終わりだなんて…」

 

ビリーも三角座りで頭をうなだれる。

 

「くっそ、モニカ様とデートしたこともねぇってのに、悔しいぜ。けど…なかなか悪くない人生だった。」

 

「ビリーの兄貴…そんなこと……言うもんじゃありませんや……」

 

イチは工房から心配そうにつぶやく

 

「イチのおっさん…ありがとよ…」

 

「……だめだったときは墓前にはトワイライトナイトのビデオを…」

 

「だからいらねぇって!!」

 

「イチ先生がそんなに推してくる映画…ちょっと見てみたいかも…」

 

「へへ…面白いですよ、ありゃ…」

 

「プフッ!また三

人の漫才だ……」

 

リンが笑いをこらえてつぶやいた

イチの映画に興味を持ったアンビーを横にビリーはニコに甘える様に寄りかかろうしたがアンビーがビリーを空いてる方の手で顔を押しのけて阻止される。

 

「っんが」

 

アンビーは今にも倒れそうなニコを片手で支えながら冷静に口を開く。

 

「映画の話はあとにしましょう、ひとまずほかの手がないか考えてみる」

 

ビリーが小声でぼそっと。

 

「……お前が乗ってきたんじゃねぇか…」

アンビーは聞こえているのかいないのか、微動だにしない。

 

「そんな悲観的になることじゃないよ、とっておきの切り札があるんだ!」

 

リンの声が希望の光のように3人の耳に届く

「それはなに?プロキシ先生。」

アンビーが冷静に問いかける。

 

「悪玉ハッカーが、金庫にはあの「ロゼッタデータ」並みに価値があるものが入ってるって言ったの。それがあれば、ホロウを自由に出入りできるみたい。」

 

「それじゃあ…」

 

ニコの目に希望の光が戻ってくる。

「うん、もしその話が本当なら、それを使ってホロウから脱出できるはずだよ。

だから…ニコがこれを開けることに同意してくれれば…」

 

「同意する!!」

 

ニコは勢いよく立ち上がり片手を上げて叫んだ。あまりの速さにリンは呆れるように言った。

 

「受け入れるの早くない!?え?いいの、そんなあっさり?依頼人のほうはどうするの?」

 

「生きるか死ぬかの瀬戸際なのよ!第一あたしがここから出られなかったら、だれが金庫を渡すっていうの?開けちゃっていいわ」

 

それを聞いてイチは感心したように微笑む。

 

「へへ、さすが親分さん、判断がお早い」

 

「当然でしょ。あたしが迷ってたら邪兎屋が潰れるわよ」

 

「よーし…じゃあ、さっそく」

リンは金庫に向き直り金庫についているテンキーを操作する。

 

「暗証番号は知ってるのよね」

ニコが少しだけ不安そうに聞いてくる。

 

「うん、大丈夫だよ」

リンの返事と同時に、金庫の内部から

「ピッ……」と電子音が響き、

「ガチャリ…」と重厚な扉がゆっくりと開く

その中央に――

小さなデータチップが、まるで宝石のように静かに鎮座していた。

リンがイアスの小さい手でチップを掴み静かに口を開いた。

「正直…私も何が保存されているかわからないんだ、強制的にデータを読み取って結果なにが起きるかは……」

 

リンの声に少しの不安が滲み出ていた。

工房の奥でその声を聞いたイチは、、静かに耳を澄ませた。

――空気の流れが、どこかおかしい。

イチの眉がわずかに動く。

言葉にはしないが、その身に染みついた“勘”が何かを告げていた。

「……」

イチは小さく息を吸い、

気配の変化を逃すまいと意識を研ぎ澄ませる。

 

「待って…質問があるのだけど…」

 

その場の空気を変えるようにアンビーは静かに、しかし真剣な声で口を開いた。

 

「あなたの本体はホロウの外でしょ?

そのまま立ち去ることもできたのに、どうして危険を冒してまで私たちを助けに来たの?他に…何かたくらみでも?」

 

「アンビー!」

 

ニコが嗜めるように声を上げる。

その声には、助けられた相手に対する礼儀と、仲間を疑うような空気を避けたい気持ちが混じっていた。

ビリーもなにも言わず黙ってその状況を見守っていた。

 

「おかしな質問だね?」

 

しかし、リンは不思議そうに答える。

「私たちはあんたたちのプロキシだよ」

「連れて行くって約束したんだから、絶対に連れ出してみせる!」

その言葉には一切の迷いはない響きだった。

その真っ直ぐさに、イチは小さく目を細めるように笑う。

 

「へへ…さすが伝説のプロキシですな…」

 

「あと…あんまり考えたくないけど…もし私が失敗したら、H・D・Dシステムがインターノットで救援依頼を出してくれることになってる、だからその時は…」

 

「安心して!ここを脱出できたら何があっても店まで助けに行くから!」

「フフ、そんなこと言っても、依頼料はチャラにならないからね!」

リンはそう言ってイアスのチップ挿入口のデータチップを押しこもうとする。

イチは少しの不安を感じながら声を絞り出した。

「……リンさん。気のせいならいいんですが……空気が、少しざわついてます。

どうか……お気をつけて」

リンの手が、ほんの一瞬だけ止まる。ほんの少しの不安の声がスピーカーから漏れる

「……ありがとう、イチさん。

大丈夫。もしもの時は、頼りにさせてもらうね」

そして、リンは覚悟を決めたように再びチップを押し込んだ。

ジジジ…

チップを読み込む音がスピーカーを通して工房に響き渡った。

「……」

「すごいデータ量……これが、ロゼッタデータ……っ!!」

リンの声が震えた瞬間、

イアスのモニターが強烈な光を放ち、

次の瞬間――

「っ……!」

リンの身体がふらりと後ろへ傾いた。

「リン!」

「リンさん!」

アキラとイチの声が同時に工房に響いた。

リンが倒れるのを感じ取ったイチがとっさにリンを抱きかかえる。同時に、杖がカランと音を立てて床に倒れた。

その瞬間――

イチの感覚が、わずかに揺らぐ。

工房の空気とは違う、

どこか遠い場所の“匂い”が鼻を刺した。

――煙の匂い。

――肌を焼くような炎の熱。

そして頭の中に流れる映像

(これは…?)

――腕の中で、誰かを抱きかかえている自分。リンではない別の誰かを……

 

(……なんだ……?これは…俺か…?俺は……誰を……抱いて……?)

 

そして一瞬だけ…

赤い炎に照らされた"小さい"影がイチの脳裏をかすめた。

「……っ!?」

 

「リン、しっかりするんだ!」

アキラのリンを呼ぶ声でイチは現実に引き戻された。

 

リンは目を閉じたまま、

イチの腕の中でぐったりと力を失っている。

イチは震える声を押し殺しながら呼びかけた。

 

「リンさん…リンさん!」

 

祈るようにイチはリンに声を掛け続けていた。ついには声が震えだしている。

イチはリンを抱きかかえたまま、明らかに動揺していた

 

「リンさん……リンさん……っ、頼む……返事を……!」

 

声が震え、呼吸が浅くなる。

普段は穏やかなイチの表情が、今は完全に乱れていた。

その横で――

「イチさん、落ち着くんだ!」

 

アキラがイチの肩に手を置く。

その声は強く、しかし優しかった。

 

「大丈夫だ。リンはまだ息がある。まずは……まずは落ち着こう」

 

イチは呼吸を落ち着かせ

「…すいやせん…取り乱したみたいで…」

 

「リンはきっと大丈夫だ…

まずはちゃんとしたところに寝かせてあげよう」

「そうですな…俺が運びましょう」

「頼むよ…」

「リンさん、ちょっと失礼しますよ…」

 

そう言って両手でリンを胸の前に抱きソファへ慎重に歩き、ソファの前で膝をつくようにしてリンをそっと寝かせた。

 

「リンさん……どうか……」

イチはリンの手をそっと握り、その場から離れようとしない。

アキラが静かに言う。

「イチさん、あとは僕が見ておくよ、少し休んでくれ。」

 

「すいやせん、ちょっと頭冷やしてきます…」

 

「なにかあったらすぐに…」

アキラはそう言おうとしたがイチは工房から外へ逃げるように出て行ってしまった。

「イチさん……」

アキラはイチを追いかけようとするがふとモニターに目をやると異様な光景と聞きなれない音声がスピーカーから流れ込む

「……ただいま……ホロウ外部へ……脱出行動を……開始……

最短ルート……検出……実行……」

H・D・Dのモニターには激しく動くイアスの視界とそれを追う邪兎屋の様子が映し出されていた。

「いったい何が起きてるんだ?……」

アキラはぽつりとつぶやいた。

その声には、ただならぬ不安が滲んでいた。

 

工房を飛び出したあとも、イチの胸のざわめきは少しも収まらなかった。

 ――数時間後。

六分街はすでに夕方の慌ただしさに包まれ家路を急ぐ人たちの足音が通りを満たしていた。

Random Playの隣にあるカスタムショップ「TURBO」の屋上でイチは壁に寄りかかりその音を聞きながら佇んでいた。

もう呼吸は落ち着いている。だが、リンを抱きかかえた時に見た記憶が頭から離れない。

(あの記憶はいったい…?)

頭の中が爆発しそうなほど混乱しながら、必死に考えをまとめていると、不意に階段を上がってくる足音がイチの耳に届いた。

 

「イチさん……」

 

 階段を上がってきた足音の主は、リンだった。

 その少し後ろに、アキラの気配もある。

 

「おぉ……リンさん。もう大丈夫なんですかい?」

 

イチが振り向くと、リンは少し申し訳なさそうに笑った。

 

「ごめんね、イチさん。心配かけちゃって」

 

「いえいえ。リンさんが元気になって安心しましたよ」

「アキラさんにもご迷惑をかけちまって…」

 

「いや、気にしないでくれ」

 

しばらくの沈黙が3人を包んだ。

やがて、イチがぽつりと口を開く。

 

「……リンさん、アキラさん。俺たちが初めて会った日のこと、覚えてますかい?」

 

リンとアキラが顔を見合わせる。

リンは懐かしむように口を開く。

 

「覚えてるよ、半年ぐらい前だったね」

 

 アキラが静かに答えた。

 

「六分街で暴漢に絡まれて、二人ともかなり危ないところだった」

 

「そこをイチさんがかっこよく助けてくれたんだよね」

 

「かっこよくは…、まあ、軽く懲らしめただけですけどね…」

 

「その縁でイチさんが店に来てくれて、そのあとだったね。邪兎屋の依頼の帰り道で、今度は僕たちがホロウで倒れていたイチさんを見つけたのは」

 

 イチが小さく苦笑する。

 

「へへ……あの日は、俺も珍しくヘマしちまいやしてね」

 

そこでイチは一度言葉を切り、少しだけ表情を引き締めた。

 

「リンさん、俺には記憶を探してるって話しましたよね」

 

 リンは静かに頷く。

 

「うん、11年前より前の記憶がないって言ってたよね、」

 

「そう……俺ぁ記憶を探してこの町に来たんです」

 

イチは視線を落とし、ゆっくりと続けた。

 

「街のいろんなとこ行って、いろんなホロウにも潜ったけど何にもわからなかった。」

 

「でも、さっき倒れたリンさんを抱きかかえた時、頭ん中に見たこともないはずの光景が流れ込んできてね」

 

 リンは目を細め、小さく呟く。

 

「それって……」

 

「俺ぁ誰かを抱きかかえていた。」

「見たこともないはずなのに、妙に生々しくて……あれは11年前より前の記憶じゃねぇかって……」

 

 

 リンもアキラも、黙ってその先を待っている。

イチは少しだけ俯き、言葉を選ぶように続けた。

「リンさんが関係しているのかはわかんねぇんだけど……」

「それでも、リンさんとアキラさんにお願ぇがある…」

 そこでようやく顔を上げる

 

「俺の記憶探しを手伝ってくれねぇかな?」

「ただとは言わないよ、リンさんたちが望めばなんだってやるからよ」

 

イチはためらうように二人を見て、それから恐る恐る口を開いた。

 

「お願いできるかい?」

 

 ほんのわずかな間、兄妹は顔を見合わせた。次の瞬間、息を合わせたように二人の声が重なる。

 

「うん、良いよ」「もちろんさ」

 

 イチが少し目を見開く。

 

「……あら、そんなあっさりと」

 

 リンはやわらかく笑った。

 

「私たちもあるものを探してるの。今はまだ言えないけど……」

「私たちからもお願いしたいな、私たちの探し物を、イチさんに手伝ってもらいたい」

 

イチはすぐに頷いた。

 

「俺の手でよければいくらでも貸しますよ」

 

 アキラが穏やかに口元を緩める。

 

「じゃあ契約成立だね」

 

リンはやわらかく笑った。

 

「今後ともよろしくね、イチさん」

 

「ええ、こちらこそ…」

「ありがとう……ございやす……」

 

イチは、あたたかいものが胸いっぱいに広がるのを感じながら、小さくお辞儀をした。

 

「それに、たぶんだけど、さっき手に入った新しい助っ人が、イチさんの探し物にも役立つかもしれない」

 

「助っ人?」

 

「うん。なんか、すっごく偉そうで、勝手に頭の中に住みついた感じなの。……また今度、紹介するね」

 

「へへ、そいつは楽しみでさ…」

 

黄昏の六分街に、その声が静かに溶けていった。

 

 少しして、今度はリンが興味深そうに尋ねる。

 

「イチさんはここに来る前まどこに住んでたの?」

 

「衛非地区の澄輝坪ってとこです」

 

「衛非地区…澄輝坪?どの辺にあるんだっけ?お兄ちゃん」

 

「確か…ラマニアンホロウの近くにある街じゃなかったかな?」

 

「そうです、アキラさんよくご存で……」

 

 イチは懐かしむように、少しだけ空を仰ぐ。

 

「俺の記憶はそこの海岸から始まったんでさ、そこに住んでるある人に助けられてね、助けてくれただけじゃなく盲目でも生きて行けるように色んなことを教えてくれた。」

 

 リンの声が少しやわらかくなる。

 

「その人……優しい人なんだね」

 

 イチは小さく笑った。

 

「まぁ、鍛えてもらった時は厳しかったけどね。」

「それ以外の時は優しかった。それに、他にもいろんな人に助けてもらったしね。」

 

 そして、少しだけ照れたように続ける。

 

「俺の名前も、その人につけてもらったんですよ、名無しじゃ何かと不便だからねって」

 

 リンはその言葉を聞いて、ふっと笑みをこぼした。

 

「会ってみたいな、イチさんを助けてくれた人に」

 

イチは小さく息を吐き、どこか遠くを見るように呟いた。

「ええ……いつか、きっと」

 その声には、懐かしさと、まだ少しだけ届かないものへの想いが滲んでいた。




男性キャラが車で石貯めて置きます
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