六月頭、一夏は五反田食堂に来ていた。中学からの友達である五反田弾と格ゲーをしていた。
「よっしゃー!また俺の勝ち」
「おわ!ハイパーモードで最後削り殺すのきたねえ!」
一夏は弾に五連敗していた。
「で?女の園はどうよ、いい思いしてんだろ?」
「してねえって、毎日毎日珍獣を見る目を四六時中向けられている身を想像してみろ。お前が言うほど楽園じゃないよ」
一夏はIS学園での待遇を思い出し不満を漏らす
「はぁ〜一夏君にゃ悪いがそんな目で見るなんて羨ましいわ」
「お前な〜」
弾が一夏を揶揄うような態度を見せる。
「そういや、鈴の奴もIS学園にいるんだよな?アイツ、元気だったか?」
「元気だよ、変わらず元気一杯だ」
「そっか、安心したよ。アイツ、一夏が誘拐されたってニュースを聞いた時顔を真っ青にしてたからよ」
弾の話に一夏は申し訳なさを感じた
。弾の話を聞いて少し過去のことを思い出していた
(……あの事件で皆に迷惑かけちまったな)
「まぁ、それよりも、さっさと続きやろうぜ」
「次こそ絶対負けねえからな」
「いや、俺に勝つなんて不可能だって」
二人はゲームの続きを始めようとしていると突然の訪問者に止められてしまう。
「お兄!さっきからお昼出来だって言ってるじゃん。さっさと食べにー」
ドアを蹴って入ってきた訪問者、弾の妹、五反田蘭がラフな格好で部屋に入ってきた
「おい、勝手に入るなっていつも言ってるだろ」
「はぁ?そんなの関係ないし」
「兄貴に向かってなんだその口の聞き方は、一夏!お前からも言ってやってくれ」
「えっ!い、一夏さん!」
「おう、久しぶり。邪魔してる。」
「え?い、いやっ、あのっ、……来てたんですか?ぜ、全寮制の学園にいるって聞いてましたけど……」
「色々あってな、少し帰省しているだけだよ」
一夏の存在に驚きながら、恥ずかしさを誤魔化すように早口で喋り始める。そんな彼女に一夏は優しく答えると蘭はさらに顔を赤くしていく
「あ……あの……その……お久しぶりです」
「うん、久しぶりだな。少し見ないうちにまた大きくなったんじゃないか?」
「そ、そうですか?」
「ああ、昔はもう少し小さかったのに今はこんなに大きくなって」
「そ、それは成長期ですから!」
「はは、そうだな」
(なんか、一夏が鈴と一緒にいるときと同じ空気を感じる)
弾は兄として妹の恋愛模様に呆れるのであった。
「あ、あのよかったら一夏さんもお昼どうぞ。まだ、ですよね?」
「あー、うん。いただくよ。ありがとう」
「い、いえ……」
「よし、それじゃあ一夏、行くぞ」
弾に連れられ一夏は部屋を出て一階へ。一度裏口から出て、正面の食堂入り口にと戻る。
昼食が用意してあるテーブルに欄がおり弾は嫌そうな表情をしていた
「なに?何か問題でもあるの?あるんだったらお兄だけ外で食べれば」
「聞いたか一夏。今の優しさに溢れた言葉。泣けてきちまうぜ」
「別に三人で食べればいいだろ。他のお客さんもいるから、さっさと座ろうぜ」
「バカ兄さっさと座れ」
「へいへい……」
一夏、弾、蘭の並びでテーブルに座る
「「「いただきます」」」
厨房から聞こえる包丁の音と野菜を炒める音をバックに、雑談をしながら食事を始めた。
「でよう一夏。鈴以外に幼馴染とさいかいしたって?」
「ああ、箒な」
「ホウキ……?誰ですか?」
「俺のファースト幼なじみ。鈴はセカンド幼なじみな」
一夏の口から鈴の名前が出ると欄は不機嫌な表情になっていた
「……。決めました私、来年IS学園に受験します」
「お、お前、何言って——」
欄の発言に驚いた弾は勢いよく立ち上がり厨房からおたまが飛んできて顔面に直撃する
「今欄の学校ならエスカレーター式で大学まで出れて、かなり名のある学校だろ?」
「私の成績なら余裕です」
「……IS学園は実技試験のIS起動試験があって適性がないと落とされる」
欄は無言でポケットから紙を取り出しそこには、IS簡易適性試験の判定が書かれていた。
「IS適正判定はAだったので問題は解決済みです。……で、ですので先輩として一夏さんにご指導をお願いしたいです」
欄の志望動機が自分がいるからと気づいた一夏は表情を硬くする
「そんな軽い気持ちでIS学園を目指すなら今の学校にいた方がいい」
「……え?」
一夏の否定する言葉に驚く欄。
「ISの開発された目的は宇宙探査用のパワードスーツだったけど、現状最強兵器としての面が強い。兵器を扱う以上戦争や戦闘状況になればISを操縦できる人材は、確実に駆り出される」
「で、でもアラスカ条約で戦闘目的のIS開発は禁止されてるんじゃ?」
「条約も絶対じゃない解釈によっては戦闘用のIS開発は行える可能性はある。適性結果は政府に知られてるし高い適正ならなおさらマークされてる」
「……」
「ISの操縦者になるという意味ををもっとよく考えてから決めたほうがいい。最悪の場合、命の危険がある以上今の学校にいたほうがいい」
「……はい」
一夏は自身の体験を交えて忠告すると、欄は項垂れていた。
「あの、一夏さん。私」
「ん?」
「IS学園を目指すのを止めます。今の学校の方が……ずっと……」
欄は俯きながら小さな声で答える
「……ああ、それが良いよ」
一夏は優しく微笑みながら答える
「それと、このことは誰にも言わないでください。誰にも……」
「分かった」
一夏の言葉を聞いて安心したのか欄は笑顔を見せていた
「それじゃあ私は厨房に戻りますね」
欄は立ち上がり厨房の方に戻っていった
「なあ、一夏。さっき言ってたことってマジなのか?」
「ん?まあ、そうだな」
「それでお前は、今までどうやって過ごしてたんだ?」
「俺の場合は、やれることをやって来た感じかな」
弾に今までの経緯を話した。
「……なんか、思ったよりハードな人生を歩んでいるんだな」
「まあな、でも今はこうして生きているからな。文句は言えないだろ」
「そうか。俺はISに乗れなくよかったよ。俺には無理だな」
「いや、乗れなくともこういう問題に関わることもあるからな」
「そうなのか?」
「ああ」
弾は一夏の言葉に驚いた表情をしていた
「ま、そういう訳だからあまり気にするなよ」
「……分かった。ありがとな」
「気にすんな。俺達は友達だろ?」
「へっ!よく言うぜ。昔から変わってねぇよ」
「そうか?」
「そうだよ!」
二人は笑いながら食事を続ける