鉄血の一夏   作:ディーノpc35

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第2話

 

「う……ん…」

 

次第に意識を取り戻し始めた。瞼の重みが徐々に和らいでいく中で、自分がどこにいるのかを認識しようと視線を巡らせる。

 

「ここは……?」

 

天井は白く清潔感漂う医務室のような場所だった。窓から差し込む柔らかな日差しが室内を穏やかに照らしている。布団越しに感じる温もりが安心感を与えてくれる一方で、頭痛と共に過去の記憶が呼び起こされる。

 

(俺……一体何があったんだ?)

 

身体中の筋肉が軋むような違和感を感じながら、自分が何故ここにいるのかを考え始める。その思考過程で突然響いた声に反応して視線を向けた。

 

「一夏!目覚めたのか?」

 

その声の主を見るために首だけ動かす。そこには見覚えのある鋭い目つきを持つ女性—織斑千冬—が立っていた。その目には安堵と心配の色が混じっていた。

 

「千冬姉?……俺どうして……」

 

「お前がアリーナに落ちてきたところを救助したんだ。まずは安静にしておけ。」

 

その言葉には厳しさと共に優しさも感じ取れた。体を起こそうとし、自身の違和感に気付く。

 

(左腕が動く⁈左目もハッキリと見える⁉)

 

かつてMA(モビルアーマー)との戦闘で機体のリミッターを外したことによる代償で失っていた機能が完全に戻っていたのだ。その事実に驚愕する。

 

「俺……治ってる?」

 

その呟きを聞いた千冬が眉をひそめ問い詰める。

 

「どういうことだ?何故そんな状態になっていた?何があった?」

 

その質問に対して一夏は、自分が今まで経験した出来事を語り始めた。その内容は信じ難いものばかりであった。

 

誘拐され気が付けば火星にいたこと、三日月とオルガに拾われ鉄華団の一員として生きるために戦い続けた日々。そして最終的にガンダムアガレスを使って火星の王を目指したオルガに付き従い命懸けで戦った結果、この世界へ飛ばされてきた事全てを話し終えた後、

 

「……信じられない話だが本当のことなんだ」

 

最後にそう締め括った。その真摯な眼差しと言葉遣いから嘘偗を一切感じさせなかったため、千冬も次第にその事実を受け入れ始める。

 

「その背中にある3つの突起はなんだ。」

 

「これは……阿頼耶識のピアスだよ。」

 

「阿頼耶識……」

 

千冬の眉間に深い皺が刻まれる。聞き慣れない単語だが、その語感には不吉なものを感じさせる響きがあった。

 

「詳しく聞かせろ」

 

一夏は少し躊躇った後、自分の体に埋め込まれた特殊な神経接続システムについて説明した。

 

「阿頼耶識は成長期の子供にしか定着しない特殊なナノマシンを使用し脳に空間認識をつかさどる器官を疑似的に形成しそれを通じて外部の機器の情報を直接、脳で処理できるようにするシステムだ。」

 

「それによって通常では不可能なレベルの高速反応や精密操作が可能になるけど、施術にはリスクがある。」

 

「まず成功率は高くない、失敗すると半身不随や一生寝たきりになる」

 

その話を聞き終えると、千冬は更なる怒りを露わにする。

 

「お前……そんな危険極まりない技術を使っていたと言うのか?」

 

「そうだね……でもそれを選ばなければ生きていけなかったんだ」

 

その一言には重みがあった。それがどれほど過酷な環境だったのか想像を超えるものだったということを理解し始めた。

 

「今から本題に入ろうと思うが、構わないか?」

 

「本題?」

 

「ああ、お前はIS学園に墜落し発見した時はISに身を包まれた状態だった。つまりこの世界で唯一の男性操縦者ということになる。今のところ外部に情報が漏れていないがIS学園に何かが起きたことについてはすでに外部に知られている。」

「ISを纏った状態だった……?」

 

一夏は困惑しながら自分自身で確かめるように口にする。それに対して千冬が続ける。

 

「そうなるな。その理由について何かわかるか?」

 

しばらく考え込むが答えなんて出る訳もない。

 

「わからないけど……

 

それなら一つだけ気になることがある」

 

「それは?」

 

「この世界のに帰ってくる直前までMS(モビルスーツ)に乗って戦闘をしていたはずなんだ。MS、アガレスはどんな風になっているのか教えてほしい。」

 

「お前がいた世界のいうMSのサイズを考えると近くにあればすぐに気づく。おそらくだが、お前が搭乗していたMSはISに姿を変えた可能性がある。」

 

 

「確かに、それしか考えられないかも……」

 

「今はとにかく体力回復に努めることと、体の状態確認をしっかりとすることが第一だな」

 

「わかった」

 

「それとこれからのことで伝えないといけないことがあるがいいか?」

 

「何だよ?」

 

「IS学園については知っているはずだし、男でありながらISを操縦できることは公表すれば世界各国から狙われる可能性がある」

 

「そのためお前はIS学園に入学することで少なくとも3年間は生活するのに苦労は少ないだろう。」

 

 

「だが」と千冬は厳しい顔つきのまま言葉を続けた。「お前が本当に操縦できるかどうかのテストは避けて通れない。IS学園への入学には必須だからな」

 

「それは分かってるよ。もう逃げるわけにもいかないし」

 

一夏は小さく頷いた。ここに来てからまだ一日も経っていないが、これ以上隠れる意味がないことは理解していた。むしろ早く自分の状況を整理するためにも検査を受けた方が良いと考えていた。

 

「じゃあ今日の午後から検査を行う。それまでちゃんと休んでおくんだぞ」

 

そう言うと千冬は部屋を出て行った。

 

一人になった一夏はベッドの中で天井を見つめた。左腕が自由に動き、左目も見えるようになったことに改めて感謝する。火星での死闘から解放されたものの、また新たな試練が始まったようだった。

 

(地球か……本当に帰ってきたんだな)

 

4年ぶりに帰ってきた故郷。しかし自分を取り巻く環境は大きく変わってしまった。しかも異世界で得た能力を持ったまま戻ってきたことで新たな問題が生まれている。

 

「さて……これからどうするか……」

 

考えるべきことが山積みだったが、今は体力を回復させることが最優先だと自分に言い聞かせ、再び眠りについた。

 

 

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