鉄血の一夏   作:ディーノpc35

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第5話

次の授業は千冬による座学だった。教室に再び集まった生徒たちは先ほどの出来事を引きずっている者もいれば平常通り振舞う者もいた。そして、一夏の姿もあった。

「では、授業を始める」

 

千冬の厳格な声が教室中に響く。

「今日はISについて基礎的な部分から始めようと思う。まずISとは……」

 

授業は順調に進み、一夏もなんとかついて行けるようになっていた。次の休み時間一夏に声をかけたのは先ほど話したセシリア・オルコットだった。

 

「ちょっと、よろしくて?」

「えっと、あぁ……」

 

突然声を掛けられて戸惑う一夏に対し、彼女はどこか皮肉げな笑みを浮かべながら続けた。

「まあ!なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら。」

「…………悪いな、俺あんたのこと知らないし」

 

「わたくしを知らない?このセシリア・オルコットを?イギリス代表候補生にして入試主席のこのわたくしを!?」

セシリアは高慢な態度を見せつけるが、一夏は面倒臭そうに返す。

「知らないな、あと代表候補性って、何?」

聞き耳を立てていたクラスの数名がずっこけた。セシリアは憮然とした表情を浮かべながら一夏を見つめた後、鼻で笑って言った。

 

「……そうですの?それは仕方ないですわね。では説明して差し上げましょう」

「国家代表IS操縦者の、その候補生として選出されるエリートのことですわ。……本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じくすることだけでも奇跡……幸運なのよ。その現実をもう少し理解していただける?」

 

「はぁ……」

 

「だというのに……!」

 

その瞬間、一夏の表情から感情が抜け落ち、冷徹な視線を向けると、セシリアは一瞬息を呑んだ。

「お前、さっきから聞いてりゃペラペラと……自分がエリートだからどうしたんだ?」

 

その声音は低く抑揚もなく、まるで刃物のように鋭利なものだった。さっきまで普通に話していた一夏とは別人のようだった。

それに気圧されたのかセシリアも僅かにたじろぐ。

「な……何よ、その言い方は!」

「そもそも、俺たちは入学したばかりの一年生だろう」

 

「ふん、これだから『男』は……」

 

「別に男だ女だなんて関係ないだろ」

一夏の冷たい眼差しにセシリアは僅かに戸惑いながらも虚勢を張った。

 

「まぁ、わたくしは優秀ですから、泣いて頼まれたらあなたのような人間にも教えて差し上げてもよくってよ。何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから。」

「入試って……あれか?ISで戦うやつ?」

 

「当然ですわ、他に何があるというのです?」

「へぇ、あれくらいなら俺も勝ったぞ、倒してねぇけど」

その瞬間、教室中が静まり返り視線が一夏に集中する。セシリアの顔色は怒りと悔しさで紅潮していた。

「ふ、ふん。まぐれでしょうけど。まあ仕方ありませんわよね。ここにいるみなさんは入試で一対一の模擬戦を行いましたの。私以外はみな惨敗でしたけど」

「まあ、そうだろうな。訓練も受けずにあれと戦えと言われても無理があるしな」

 

「そうでしょう!ですから、入試では唯一の勝利者ということになりますわね。まさに完璧ですわ!」

その自信に満ち溢れた言葉を聞いた瞬間、一夏の中にある火種が燃え上がった。彼の瞳には無邪気さなど微塵もない冷たい輝きが宿っていた。

「そうか。でもそれだけだろ?」

「な……」

 

その冷たい口調に一瞬怯むセシリア。だがすぐさま反論しようと口を開こうとした時、授業開始のチャイムが鳴った。セシリアは眉を吊り上げながらも、仕方なく自分の席へ戻っていった。

 

授業中、一夏は周囲の生徒たちの視線や雑談から遠ざかっていた。彼自身、他人からどう思われるかをあまり気にしていないためだった。

しかし、心の奥底では自分に対する好奇や敵意、そして哀れみといった感情が入り混じっていることを感じ取っていた。

 

授業開始する前千冬は思い出したように言った。

「再来週に行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけない。クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まあ、クラスの長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点でたいした差はないが、競争は向上心を生む。1度決まると1年間は変更できないからそのつもりで」

千冬は説明を終えると、クラス全体を見渡しながら生徒たちに意見を求めた。

「誰かやりたいヤツはいるか? やる人は名乗り出て欲しいし、推薦したい人がいれば推薦も可能だ。自薦他薦は問わん」

教室の雰囲気は一瞬静まり返ったが、すぐにざわつき始めた。生徒たちが小声で相談したり、お互いをちらりと見たりする中、一人の生徒が勇気を出して手を挙げた。

「あの、織斑君がいいと思います」

クラスメートの1人が一夏を推薦した。

その発言によりクラスは一層活気づき、他の生徒たちも次々に意見を述べ始める。

「私もそれでいいと思います!」

「織斑君ならきっと頑張ってくれるでしょうし!」

「よしっ、それでは候補者は織斑一夏……他にいないか? いないなら無投票当選だぞ」

千冬が問いかけると、一人の声が教室に響いた。

「待ってください! 納得できませんわ!」

声の主はセシリア・オルコットだった。彼女は苛立ちを隠せない様子で立ち上がる。

「大体、男がクラス代表なんていい恥さらしですわ!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を1年間味わえとおっしゃるのですか⁉実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由でこんな役に立たない男に選ばれるのは困ります。」

セシリアの激しい抗議に対し、千冬は冷たく言い放つ。

「オルコット、文句があるなら自分で立候補したらどうだ。立候補する者には拒否権はない」

「それならわたくしが立候補しますわ!」

セシリアが自信満々に宣言した。

「この学園に入ったからには、最低限の礼儀というものをお持ちかと思いましたけど……あなたのような無能な男がクラス代表だなんて!冗談じゃありませんわ!」セシリアの声は甲高くなり、教室中に響き渡った。

 

その瞬間——

 

一夏の指先が微かに震えた。教室内の空気が一変する。

 

「……無能?」彼の声は低く、研ぎ澄まされた鋼のように冷たかった。瞳孔が針のように細く収縮する。

「お前が、俺の何を知っている」

 

彼の周りだけ温度が急激に低下したかのような錯覚。教室中の誰もが息を呑んだ。セシリアの額から汗が滴り落ちる。

「そ、それは……」

 

「答えろ」

一夏の目が真っ直ぐセシリアを見据えた。そこには恐怖すら感じる冷酷さが宿っている。鋭い眼光にすさまじい殺気か込められていた。

「……っ!」

言葉を詰まらせるセシリアに対して、一夏は更に追い討ちをかけるように続ける。

 

「IS適性があるかどうかなんてのは、単なる偶然だろう?でも俺は違う。俺は……」

 

千冬が咳払いをする。

「ストップだ、織斑。熱くなるのは良いが、今は授業中だ」

「……あぁ」一夏は怒りを抑え込んだ。だが、その瞳には未だ炎が宿っている。

セシリアは男である一夏にあそこまで強く言い返され逆上してしまう。

「納得いきませんわ!」

「ならどうする?」

「決闘ですわ!」

「いいぜ。4の5の言わずにそれだよな」

千冬は不敵な笑みを浮かべながら提案した。

「では勝負は1週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑とオルコットはそれぞれ用意をしておくように。それでは授業を始める。」

 

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