予定より早くできたんで三話目をトレース。
それは二年前のこと。
バーサーカーのおかげもあって、本来とは異なり殺すことはできても死を回避することは出来ず、英雄王によっては私とイリヤは命を落とし、意識が完全に途切れるその瞬間まで私は何度もイリヤに、マスターに謝罪した。
真っ暗な空間の中、私はただひたすらに涙を流しながら膝を着いて。
何度自身を恨んだことか、何度自身を殴ったことか分からないほどには自暴自棄にもなったと思う。
そして完全に視界が途切れる瞬間、純白の光に包まれるのを最後に私も消えた……はずだった。
気が付けば完全に廃墟となって草木に侵食された場内に横たわっていた。
そこはかつて暮らし慣れ、見慣れ、最後の死に場所となったアインツベルンの場内だった。
戦闘後、誰も踏み入れなかったのか、あの戦いの跡のまま緑に生い茂っていて、地面には花も咲いている。何でここにと思った時、私の視界に綺麗な白い髪の毛が垂れ落ちて来たのに気づいて、私は困惑した。それに身体の大きさ、感覚、中にあるもの、その全てが一気に伝わって来て絶句した。
空っぽだけど、ちゃんとあって機能もしている。
思わず私は立ち上がり、ちょうど小さな水たまりが出来ている場所に駆け寄って自身の顔を見た。
「嘘……」
そこに映っていたのは、紛れもないイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
私が転生する際、憑依転生した対象のキャラクターにして――
前と違う点は、
なんで?これもまた転生?
だったら普通姿も変わってないとおかしい。
何よりなんで時間が過ぎたアインツベルンのお城の場内にいるの?
「まさ、か……」
最後に私が消えかける瞬間、純白の光と共に聞こえた
Fateを見てたからわかる…あれは『聖杯』の願望が機能し願いを叶える瞬間の一つ。
まさかそんなことが…だって、英雄王が入った瞬間に確かに満タンにはなったけど……だからって、だからって……!!
「――なんでよッ!!!」
叫ばずにはいられなかった。
私が願った『共に生きたい』という願いを
だけどそれは私とイリヤではなく、
残っているのは肉体と魔術と回路、そして小聖杯のみ……結局、
「くぅ!!!」
干将を投影し、自分の心臓を貫こうとした。
だけどそんなことできなかった。
願望機たる聖杯であれば、
でも、それは本当に
何よりそれには膨大なエネルギーが英霊だと少なくとも六基分必要になる……あぁ、クソ。
「
自害すらもできないこの状況の中、誰もいないその空間で一人呟くしかなかった。
※ ※ ※
あのままお城内でジッとしてたらそれこそもうどうにかなりそう。
そう思った私は状況を把握するための情報収集へと移行した。
お城はもう誰も入ってこなかったのか、食器や書物やら全部がきっと、あの日から変わってない。
最初に集めるのは聖杯戦争は継続しているのか、士郎たちは生きている時代なのかを調べる。
私は急いで衛宮邸に向かった……けど家には誰もいなかった。
いや、正確には家はもう誰も出入りしていない程にもぬけの殻となっていた。
家はもう手入れされていないように、Fate/zeroで出て来たようにボロボロになっていた。
生活していた痕跡はあるけど、ボロボロになって埃が多く被っている……こっちの方は誰かが侵入したり隠れ家にしていたような跡もある。
「士郎……あなたは結局、正義の味方になったの?」
思わず私の投影魔術を発動して、夫婦剣の妻の方を投影する。
士郎だけが投影しても砕けない限り消えないそれを、聖杯の機能も使用することで擬き的に同じことをして成り立たせているその贋作を見つめる。
もしそうだとしても、タイガーぐらいは毎日通ってておかしくないと思うけどな……とりあえず士郎は今のところ行方不明としておこう。
その後遠坂の家にも、間桐の家にも行った。
でもどちらももぬけの殻…ではなかった。
遠坂家は霊地の管理者であるけど、衛宮邸同様に中まで植物などが張っていて、結界の魔術の一つもなかった。
地下にも入らせてもらい、前世で見たUBWでのプロローグを頼りの例の箱を見つけて、中を確認したけど予想外。
中は空っぽ……あの英雄王の触媒すらなかった。
でも本人は本編後、海外に行くからそれで中身を取り出して持っていった可能性が高い。
今となってはそれを確認する術もないけど。
んで、その後に間桐の家に向かった。
遠坂の方は誰も住んでなかったけど、間桐の家にはまだ住む人がいて驚いた。
この流れだと間桐も同じだろうと思っていたのに。
でも出迎えたのは、桜でも慎二でもない…全く知らない女性だった。
その後は古くからの友人で、外見は生まれ持っての病気だと説明して、何とか家にお邪魔させてもらった。
「ごめんなさい、いきなり訪問するような形になってしまって……」
「いえ、お爺様と面識がある方を追い出すわけありませんから」
紅茶まで出してくれたこの人は最近間桐家に嫁として住むようになった人だ。
どこにでもいる一般的な人で、少し鑑定させてもらえば魔術回路は一切なかった。
主人は今仕事で、お爺様と呼ぶ人を呼びに行った。
まぁ大体、予想はつくけど……。
「――まさか、お前さんが生きているとはな……しかもあの願望機が未だ残っているのも驚きじゃわい」
紅茶をいただいていると、聞き覚えのある声が聞こえた。
目を向ければ、暗闇から蟲を使役し使うことで疑似的な不死で長く生き続けている爺――『
奥さんはどうやら積もる話をすると魔術を使ってまで来させないようにしているらしい。
「そういうあなたは相変わらず醜い姿ね…マキリ」
「呵々々……お前さんとて――
その言葉を聞いて私は言葉を失い目を見開いた。
「……何時から気づいていた?」
思わず
「そう警戒するでないわ。もう儂も戦う意味を持たん、ただ間桐、マキリの血を絶やさぬようにしておるだけに過ぎん」
「どういう意味? 質問に答えなさ――」
「聖杯戦争は本当の意味で終止符を打った。魔術というものも、年月を重ねるごとに消滅していき、やがてこの世から消滅した」
「は?」
聖杯戦争が終わった?魔術が消滅した?
どういうことだ…こっちからすれば、あの悲劇から一瞬で今に至っているのに…?
いや、お城や士郎たちの家の状況から見てもうあの日から何年も過ぎてることぐらいわかるはずだ。
「お前さんが行方不明になる前の第五次聖杯戦争は、イレギュラーの形で終止符を打っている。それはお前さん、正確にはアインツベルンの娘が敗北し死した時、聖杯が起動し、お前さんを生かした」
「…なんでわかるの?」
「お前さんが今こうしてアインツベルンの娘として生きているのが何よりの証明。その後、アインツベルンの娘の死体は聖杯と共にこの世から消えた。それも突然としてな」
どういうこと?
英雄王は相打ちで殺した。
聖杯が起動してたとはいえ、近くに士郎たちがいたんだから、そのままの方が良かった気がする。
……いや、まさか。
「完全に私として蘇生させるため、誰にも悟れない虚数空間とかに転移させていた? それが現実世界ではとても長い年月だったけど、私からすれば一瞬だったってこと?」
「呵々々……まぁそう考えるのが正しいかもな。貴様の最後に記憶にある第五次から既に数十年は経過している。衛宮士郎も、遠坂の娘も、桜も皆、亡くなっているぞ」
「なっ…!?」
思わず立ち上がってしまった。
士郎たちが死んでるなんて……。
「衛宮士郎は旅に出て、遺体が数年前に日本に運ばれ埋葬されている。遠坂も生涯を全うし終えて、悔いなく逝った。子孫は今も海外で生きてるだろう。桜は……元々儂の計画で命が短かったからな」
桜は……確かにそうだ。
でも結局生きていたけど……それが絶対と聞けば簡単にそうだと即答はできない。
それに現実で今マキリがそう言っているんだ。
「でも待って? あなたはさっき聖杯戦争は終止符を打って、魔術も消えたって言ってたわよね? マキリの血を絶やさないようにしているのならあなたは別に生きてたって意味はないと思うわよ」
「鋭く皮肉なことを言うものだ。だがその言い分はあっている。ただ儂は、お前さんがこの地に戻った時、利用しようと考えていただけ。だが魔術ももうこの世から消えた今、魔術を持つ者は一割とていない。この日本、冬木で持つのも儂とお前だけ」
なら、聖杯戦争はもう無意味ってことね。
仮に亜種としてやるとしてもそれはもう日本では起きない……いや、魔術は一割といないって言ってたんだ。
「それにアインツベルンの本家であるドイツにいる奴らも、全員もう命を亡くしている。今アインツベルンとしてその姿と血肉、魔術を持つのはお前さんだけだ」
……なら、本当に聖杯戦争はなくなったんだ。
「……あなたのことは分かった。でも私がこうしている以上、これからどうするの? 最初こそ私を利用しようとしていたらしいけどその気もないんでしょ?」
「呵々々…刻印蟲をもってしても、もうマキリの血を持つ者でさえ、魔術回路を持ち耐えられる者はいない、そして現れない。儂もこれからすることと、新たな孫の顔を見て生涯を終えるつもりだ。お前さんを利用する気も毛頭ない」
……コイツ、私が知っているマキリ・ゾォルケンとはまるで別人だ。
魔術が消えた世界で更に長い年月を生き続けていたんだ……そりゃあ変わるか。
蟲を使ってるのは気持ち悪いけど。
そんなマキリはついて来いと言い、私は後に続いた。
※ ※ ※
着いたのは、桜を酷くしたあの地下室だった。
でも蟲はいない。
「蟲どもは儂を生かし続ける分しかおらん。ここに大量にいた蟲たちは、遠坂の娘に焼き払われた」
「自業自得ね」
「そうだな。なにより表の御三家、遠坂と間桐はただの凡人の家に。アインツベルンはただの気高い貴族に当たる亡き名家に成り下がった」
表と言ってるけど、それは魔術業界での話でしょ?
ボケてるのか真面目なのかたまに分からなくなるなこの人。
そう思いながら階段を降りていき、着けばマキリが私も知らない場所からいくつもの箱を、蟲を使って取り出し運んできた。
「これらはすべて儂が裏で集めることの出来た触媒と聖遺物――お前さんにくれてやる」
は?触媒と聖遺物?
何でそんなものを……いや、第一次聖杯戦争を行うためにも、遠坂は土地で、アインツベルンは聖杯。
そして間桐は令呪とサーヴァントを提供していたんだ……それらの物を集めるのは他愛もないのだろう。
「どういう風の吹き回し?」
「呵々々……警戒するでないわ。もう儂にとってこれはただのガラクタに過ぎんからくれてやること。
…………ちょっと待って?
「今、トッキブツって言った?」
「呵々々……そうかお前さんは知らないのだったな。トッキブツとは数年前に現れた政府の特殊組織のようなものだ。奴らは聖遺物や触媒に当たる物を多くかき集めている」
嘘でしょ…まさ、か……。
「嘘、別作品でしょ…? でも、まさか…同じ世界の軸で過去と未来という形でクロスオーバーしてたっていうの? だからこんな状況なの?」
「何をブツブツ呟いておる」
マキリにも聞こえない声量で、状況を整理しようとする。
けどまだ確定したわけじゃない…後で改めて情報を集めよう。
今は聖遺物と触媒の確認だ。
「と言ってももう何年も使用されていないからな。儂とてどれが何の聖遺物か、触媒かわからん」
「いやなんで分からないのよ。私だってハッキリとこれはっていうの分からないわよ。そこまでボケたのマキリ」
「お前さんとてアインツベルンの娘の身体に憑依した異物であろうが」
でも……聖杯もあるんだ。
なら、疑似的な形で出来るかもしれない。
召喚が出来るんだから……アレだって。
「マキリ、魔術に関する本はまだある?」
「残っておるが、お前さんは必要ないだろう」
「いいえ必要よ」
「まぁよい…何の本だ」
「――
弱いままじゃ、何も守れないしね。
※ ※ ※
光を微かに感じながら重い瞼を開けて起き上がる。
随分と懐かしい、とは言い切れない記憶を夢に見た。ラーメンが美味しすぎて満腹になるまで食べた後に寝ちゃった結果かな?そう思いながら身体を伸ばすと、か弱い肉体から骨が鳴る音が聞こえる。
「結局初期からのソロモンの杖の回収は出来なかったな~……あの英雄王の宝物庫に繋がる唯一の聖遺物でもあるから欲しいのに」
上手くいかないものだ。
何よりあの長年片思い恋焦がし全裸巫女にこちらの存在をさらしてしまった。
あの巫女が魔術に関して知っていたらいろいろと面倒なんだよね……。
「……最悪はデュランダルかな。あの無限のエネルギーを手にすれば、聖杯を満タンにして叶えられるはずだ」
けど問題なのは、この身にある聖杯がちゃんと叶えてくれるかだ。
きっとイリヤは、アインツベルンでれっきとした魔術師……そしてHFでは第三魔法で士郎の魂を物質化させ。生かしている。
でも……何度も思ってしまう。
ありとあらゆる願望を叶える聖杯。
だけどそれは蘇生までもできるのかということ
現に私は蘇生されてこうしている。
けど、だからってイリヤを、マスターを蘇生する気はなかった。
だってそれを望んでいるようには思えなかったから。HFルートのラスト、奇跡を使用した瞬間、イリヤはアイリスの下へ嬉しそうに駆け寄っていったのを今も鮮明に覚えている。
もし、そうなのだとしたらできない。
あの痛みを味わう地獄に、マスターを引きずり戻すなんてことしたくない。
「結局、ただ別作品の世界になっちゃったこの
昨日が絶唱を奏でるはずだった日。
それがなくても、きっと流れは変わらない。
ならしばらくは主人公様の修行期間に入るだろう。
「デュランダルはその後……アニメだとあっという間なのに、現実になると退屈な時間になるのがアレだよね~……」
起こした上半身を今一度床に転がすようにして寝っ転がる。
正直言って、つまらない……。
「こんな時、魔法少女の世界の変態ステッキがいたら話し相手になるのかな? いや、酷い目に合うしいいや……イリヤの格好は最高に可愛いしイケてるけど」
仕方がない。
「巫女を脅し潰せるセリフでも考えてよ~っと」
その時が来るまで定期的に監視しながら、暇を潰すとしよう。
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