コズミックイラのマチュ ~ロリニュータイプの日本再興記~   作:アキ山

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本編が思いつかないので息抜きに前に上げたネタを読み切りで書いてみる

思った以上に長くなってしまった

何故だ!?


コズミックイラの動乱に巻き込まれるマチュ殿下

 これは宇宙世紀とは別の世界で起きたお話。

 

 コズミック・イラ62年。

 

 月面都市コペルニクスで暮らすハルマ・ヤマト、カリダ・ヤマト夫妻の間に待望の女児が誕生した。

 

 正史であれば生まれる事の無かった娘、彼女はマリと名付けられ蝶よ華よと育てられた。

 

 マリは両親はもちろん、7歳違いの兄キラやその親友であるアスラン・ザラ。

 

 そしてアスランの母であり、カリダの親友でもあるレノア・ザラに良く懐いた。

 

 舌足らずの為に自分の名を上手く言えず、『マチュね、マチュね』と兄とその親友に付いて回る様は愛らしいの一言。

 

 とくに娘が欲しかったレノアはマリの事を溺愛し、今までアスランに着せて憂さを晴らしていた女の子の服を使って、これでもかと彼女を着せ替え人形にした。

 

 これに関してはアスランが女ものの服を嫌がって、マリを生贄にしたと言えなくもないが。

 

 そんなマリだが、彼女は一つ他人とは違う力を持っていた。

 

 それは他人の感情の機微を敏感に感じ取るというモノだ。

 

 幼い頃のマリはその力を持て余し、人ごみに連れて行った時や来客などで慣れない人が来ると恐怖や不快感から泣きじゃくる事があった。

 

 それは彼女や家族に悪意を持つ者に対して特に敏感で、酷い時には体調を崩すこともあった。

 

 マリが言葉を話せるようになった頃、拙い彼女の説明でその事を知ったハルマは何とか対策を立てようと考えた。

 

 色々と悩みに悩んで彼が出した結論、それは家に伝わる日本拳法をマリに伝授すること。

 

 そして祖父が遺した彼の故国である日本の書物、武士道や禅など心を鍛える書物を読み聞かせる事だった。

 

 結果、彼女が他者の感情に翻弄される事が無くなった。

 

 しかし女児らしからぬお転婆でアグレッシブな性格になった為に、ハルマがカリダとレノアにガチ詰めされたのはご愛敬であろう。

 

 さて、そんなマリだがある日不思議な出会いを果たすことになる。

 

 切っ掛けはヤマト家とアスラン親子がコペルニクスの繁華街に来たことだ。

 

 ショッピングを楽しんだ帰り、マリ達は街外れにある粗大ごみ置き場の前を通った。

 

 そこでマリが足を止めたのだ。

 

「どうしたの、マチュ?」

 

「……よんでる」 

 

 レノアが声を掛けると、マリはポツリとそう答えた。

 

「呼んでるって誰が?」

 

 首をかしげるアスランを置いて、マリは粗大ごみを漁り始める。

 

「このこ!」

 

 危ないと娘を引き離そうとカリダが動く前に、マリはゴミの山から一つのモノを取り出した。

 

 それは白い球体型ボディが特徴の何かだった。

 

「ペットロボ?」

 

 光が灯っていないつぶらな瞳と笑顔を象った口元を見て妹が取り出した物を推測するキラ。

 

 そんな兄を他所にマリはぺちぺちと白い球体を弄って反応が無い事が分かると、アスランの方へ歩いていく。

 

「アスにぃ、なおせる?」

 

「が…がんばるよ」

 

 可愛い妹分に上目遣いでおねだりされたアスランは、口元を引きつらせながら修理を承諾するのだった。

 

 その後、ヤマト家に持ち帰られたペットロボは3日に渡るアスランの奮闘によって息を吹き返す事となった。

 

「ハロ、元気? ハロ、元気?」

 

「やったー! アスにぃ、ありがとー!」

 

 それを見たマリは大喜びでアスランに抱き着いた。

 

「よく直せたわね、アスラン」

 

「電源基盤がショートしていただけでしたから。メインの部分がダメだったら僕じゃ直せませんでしたよ」  

 

 直ったペットロボを渡されて大喜びのマリに微笑むレノア、その言葉にアスランはこそばゆそうに笑う。

 

「名前、ナンダ? 名前」 

 

「マチュはマチュだよ。あなたは?」

 

「名前、付ケロ! マチュ、付ケロ!」

 

 ピョンピョンと跳ねていたペットロボを懐に抱きかかえ、しばし考えるマリ。

 

「う~ん……そうだ!」 

 

 そして名案を思い付くと、表情を明るくしてペットロボの顔を覗き込む。

 

「アムロ! あなたのなまえ、アムロだよ!!」

 

「アムロ! アムロ! オレ、アムロ!!」

 

 一人と一体がぴょんぴょんと跳ねて喜ぶ様、それをヤマト一家とアスラン達は暖かく見守っていた。

 

 それからマリとアムロは何時も一緒に行動するようになった。

 

 両側の側頭部にあるべきバーツが無いという事でハルマからもらったニット帽を被ったアムロは、マリが嬉しい時も悲しい時も常に彼女に寄り添った。

 

「にゃーーー!!」 

 

「いいぞ、マリ!」

 

「マチュ、ガンバレ! ガンバレ!!」

 

 ハルマから受ける武術の手解きで、木刀で切りかかっている時も。

 

「マチュ! 年上の男の子相手だからって、日拳マッハパンチはダメって言ったでしょ!!」

 

「ごめんなさーい! だって、あの子女の子イジメてたもん!!」

 

「マチュ。ドンマイ、ドンマイ」

 

 時には喧嘩をしてカリダから雷を落とされた時も。

 

「ア”ズにぃぃぃぃ! レノアおばさまぁぁぁ! 行っちゃヤダァァァ!!」

 

「マチュ、泣クナ」

 

「ま…マチュ、泣かないでくれ。顔がスゴい事になってる」

 

「カリダ、アスランの婚約者ってことで連れて行っちゃダメ?」

 

「ダメ」

 

 コペルニクス市でコーディネーターを狙ったテロが起こった事でプラントへ帰るザラ母子と別れる時、マリが涙と鼻水でぐちゃぐちゃにした時もアムロは彼女を慰め支えた。

 

 なによりマリがアムロを頼りにしたのは、類まれなる感応能力が悪い方に働いた時だった。

 

「うぅ…あの人、気持ち悪い。悪い事しようとしてる」

 

「マチュ、拒絶! 邪気、感ジルナ!!」

 

 人混みや学校など、他人と接する際にマリが他者の悪意や害意に晒された際、アムロは常に助言を与え心のケアを行った。

 

 月面都市コペルニクスを後にしたヤマト一家がオーブ本国で少しの時間を過ごし、キラの進学を機にオーブ所有の学術コロニー『ヘリオポリス』へ移住する頃には、マリとアムロの間には人とペットロボ以上の絆が出来ていた。

 

 そしてコズミック・イラ71年。

 

 一年前に起こったプラント所有の食糧増産コロニー『ユニウスセブン』への核攻撃を切っ掛けに勃発したプラントと地球連合の戦争。

 

 野火の如く世界中へ広がる戦火は、マリ達ヤマト一家の住むヘリオポリスにも忍び寄っていた。

 

 

 

 

「今日はここまで!」

 

「ありがとうございました!」

 

 窓の格子から人工の朝日が差し込む中、私は向かい合った武術の師である父上に礼をする。

 

 4歳の時から続けている日本拳法と剣術、少しは様になってきたと思う。

 

「それじゃあシャワーを浴びてきなさい。母さんが朝餉を作っている頃だ」

 

「はい!」

 

「マチュ! 今日ハウドン! 今日ハウドン!!」

 

「やった!」

 

 父上の言葉に道場を出ると、相棒であるアムロがトレードマークになったニット帽のボンボリを揺らしながら朝食のメニューを知らせてくる。

 

 麺類は好きなので、これは嬉しい。

 

 そんな訳で素早く汗を流して母屋へ行くと、出汁と醤油のいい匂いが漂ってくる。

 

「おはようございます、母上!」

 

「おはよう、マチュ。御飯が出来たからキラを起こしてきて」

 

「はーい! 行こ、アムロ!」

 

「奇襲! 奇襲!!」 

 

 アムロを連れて二階へ上がった私はキラ兄の部屋のノブを回す。

 

 仲良し家族のウチは、当然個人の部屋に鍵なんてついていない。

 

 なので、その気になれば入りたい放題だったりする。

 

 扉を開くと目に入ってくるのは脱ぎっぱなしの服やPCのパーツやら何やらでゴッチャになった室内の様子。

 

 これで空になったカップ麺の容器や食べさしのスナックなんかがあったら、引きこもりの部屋に見えるんじゃなかろうか。

 

 とはいえ、ここも私にとっては勝手知ったるものだ。

 

 壊したらヤバそうなものや、キラ兄がカレッジで使ってる工具なんかが何処にあるかは把握済みである。

 

 そんな訳でスルスルと部屋の中を進むと、その奥には上布団が膨らんだベッドがある。

 

「キラ兄! おっはよーー!!」

 

 私は小さく加速を付けると、ベッドの寸前で大きく飛んだ。

 

「げふっ!」

 

 そしてふくらみへダイビングボディプレスを決めると、布団の奥からくぐもった悲鳴が聞こえてきた。

 

「ま…マチュ……起こすならもう少し優しくしてよ。頬にキスとかさ」

 

「はっはっはっ! もう騙されないぞー!」

 

 小学生に上がる前はレノアおば様もいたから、めっちゃ騙されてたからね。

 

 キラ兄の言われるままにほっぺにチューで起こしたり、メイド服とかも着てたし。

 

「ほら、今日の朝餉はおうどんだよ。伸びちゃうから起きて」

 

「うん……」

 

 身体の上から降りて促すと、キラ兄はモゾモゾとベッドから這い出てくる。

 

「また昨日も寝るの遅かったみたいだね。目の下にちょっとクマが出来てる」

 

「ゼミの課題が難しくてさ。あの教授、なんで僕にばっかり押し付けてくるんだろう」

 

「そうして試練を与えられるのは目を掛けられている証拠だよ。ガンバレ、キラ兄」

 

 母上が待つ居間へ行く道すがら、私はキラ兄の愚痴を聞いてあげる。 

 

 我が兄は不平不満を内側に溜め込むタイプだからね、こうして発散させてあげるのもデキる妹の役目なのだ。

 

「おはよう。父さん、母さん」

 

「おはよう、キラ」

 

「まだ眠そうだな。お前もマチュと一緒に鍛錬してみるか? 身体を動かせば気も引き締まるぞ」

 

「遠慮しとくよ」

 

 そうして家族みんなが揃うと朝餉の始まりだ。

 

 ちゅるちゅるとおうどんを食べ終わると玄関の呼び鈴が鳴った。

 

『キラー! 迎えに来たぞー!』 

 

 インターフォンの画像をオンにすると、そこにはキラ兄の友人であるトールさんとその恋人のミリアリアさんが映っている。

 

「そうだった! 今日は早めにゼミへ行かなきゃいけなかったんだ!」

 

 そう言うと慌てて部屋へ戻るキラ兄。

 

「しかたないなぁ」

 

 その背を見送ると私は玄関へ足を運ぶ。

 

「おはようございます、トールさん。ミリアリアさん」

 

「おはよう、マリちゃん」

 

「キラはもう少し時間かかりそう?」

 

「はい。何時も待たせてごめんなさい」

 

 キラ兄はこうしてトールさん達を待たせる事がけっこうあり、兄が用意を済ませるまでの間を稼ぐのも私の役割だったりする。

 

「ところで例の筐体はどうだい?」

 

「うん! すっごいやりやすい!! 造ってくれてありがとう!!」

 

 トールさんの問いかけに私は満面の笑みで答える。

 

 彼が口にした筐体とは、キラ兄が作ったロボゲーをする為の体験ゲーム機の事だ。

 

 事の始まりは半年ほど前、キラ兄がアムロのメンテナンスをしていた時にあるプログラムを見つけた。

 

 圧縮されていたソレを解析してみると、なんと見た事もないロボゲーだったのだ。

 

 ゲーマーの端くれである私はコレに嬉々として飛び付いた。

 

 けれど、ロボゲーは超ムズいうえにパッドやジョイスティックだと滅茶苦茶動かしにくかったのである。

 

 キラ兄は悪戦苦闘する私を見て、これは本来体験型の大型筐体で遊ぶ物じゃないかと推測。

 

 ゲーム自体は面白かったために十二分に楽しめない事が分かってヘコむ私の為に、トールさん達ゼミの仲間と共に一肌脱いでくれた。

 

 そうして出来上がったのがトールさんが口にした筐体だ。

 

「それでクリアはできたの?」

 

「まだ。ラスボスの赤い奴が強くて連敗中」

 

 ミリィさんの問いかけに私は苦笑いで答える。

 

 ちなみにゼミの皆もロボゲーに挑戦したけど、ラスボスに辿り着いたのは私だけだ。

 

 カズィさんって大人しめのお兄さん、ミリィさんは最初に出てくる緑のザコ集団でアウト。

 

 トールさんとサイという眼鏡を掛けたお兄さんは両肩に黄色のシールドを備えた中ボスに破れた。

 

 そしてキラ兄は中ボスを倒した後に出てくるクリーム色の巨大ボスに敗北したのがベスト戦績である。

 

「あれって、めっちゃムズイよな。あの中ボスの移動砲台、初めてだったら絶対に躱せないって」

 

「あの砲台は基本的にコッチの死角に回るからね。撃ってくるって気配を背中で感じたら割と躱せるよ」

 

「それできるのマリだけよ」

 

 そうだろうか?

 

 そういえば、キラ兄にコレ言った時も妙な顔されたっけ。

 

「お待たせ」

 

 そうこうしている間に支度を済ませたキラ兄が玄関から出てきた。

 

「それじゃあ、三人とも行ってらっしゃい」

 

「「「いってきます」」」

 

 三人を見送った私は再び家の中に入る。

 

 今は7時を少し過ぎたくらい。

 

 学校に行くにはまだ早い。

 

「キラ達は行った?」

 

「うん!」

 

 食器を洗う母上を手伝い、お駄賃でカフェオレを貰うと一度部屋に戻る。

 

 扉を開けると乙女の部屋に鎮座しているのは件のロボゲー筐体だ。

 

「うっし! 学校の前に一勝負といこう! アムロ、おいで」

 

「リョーカイ! リョーカイ!!」

 

 床を跳ねながら筐体の中に入ってきたアムロは、サイさんがシートの後ろに付けてくれたお皿型の定位置へ収まる。

 

 トールさん曰く、この筐体の設計図もアムロから引っ張ったデータの中に入ってたんだって。

 

 そして電源を入れると筐体のハッチが閉まって真っ暗になったのもつかの間、すぐにシートの周りに宇宙空間が映し出された。

 

 背後には味方という設定の白い戦艦とライトグリーンのロボットたち。

 

 そして前には十字に似た独特の形の小惑星と地球が見える。

 

 ここがこのゲームの戦場だ。

 

 スロットルを踏み込んでアームレイカーの先にある球体のコントローラーを操作すると、私が乗る白いロボは一団の先駆けとして小惑星に向かって飛ぶ。

 

「マチュ、来タゾ! 来タゾ!!」

 

「オッケー!」

 

 そんなあたし達の前に立ち塞がるのは、ライディングボードみたいな機械に乗った緑色の身体に紅い一つ目が特徴のザコ敵だ。

 

 奴等は一定距離まで近づくと乗っていたボードをこっちに突撃させてくる。

 

「今回はパターンCか! けど甘い!!」 

 

 私はライディングボードが当たらないように機体を左右に振りながら上へ上昇すると、ロックオンと同時にコントローラーのボタンを引き絞る。

 

 こちらが手にしたビーム砲から薄紅色の光弾が飛べば、それはすぐにこちらへシールドが付いた方の腕を向けていたザコの胴体を貫いた。

 

 実は奴等の盾にはロケット砲が仕込まれていて、ボードで相手が上昇するように誘っておいて、そこを狙うのがパターンになっている。

 

 初見だとカズィさんみたいに引っかかる人が結構多いけど、このゲームをやり込んでいる私には通用しない!

 

「まずは一つ! 次!!」 

 

 左のコントローラーで機体を旋回させながら、右に備わったトリガーを一定のタイミングでリズミカルに押す。

 

 するとビーム砲は光弾を連射し、次々とザコを撃墜していく。

 

 本当ならビーム砲はこんな風に連射できないんだけど、この辺はちょっとした裏技というヤツだ。

 

 アムロに教えてもらってから、バリバリお世話になってます。

 

 こうしてザコを倒すと、今度は中ボスの黄色いシールド持ちが現れる。

 

 奴は緑のザコより動きがいい上に、両肩に6個付いた移動砲台で包囲攻撃をしてくる憎い奴だ。

 

 早速シールド持ちは手に持ったラウンドシールドから出るビームでけん制すると、砲台をこちらへ飛ばして来る。

 

「マチュ、背中ニ目ヲツケロ!」 

 

「わかってる!!」

 

 包囲されると色々と面倒になる。

 

 こういう時は散開する前に叩くべし!

 

 私は左へ移動しながらこちらへ飛んでくる砲台にビームを連続で放つ。

 

 弾幕のように目の前に広がった光弾は、回避行動を取った移動砲台の内三つを撃ち落とすとシールド持ちの脇を抜けて宇宙へ消える。

 

 本体にも一発くらい当たってくれると楽なんだけど、そううまくは行かないか。

 

 そうしている間にも残った砲台が私を包囲するけれど、ここで慌てては相手の思うつぼだ。

    

 三つが陣取った場所はこちらの頭上と股の下、そして背後の右上。

 

 自分を中心にして意識を球の形に広げれば、こんな芸当も出来るのだ。

 

「っ! 今!!」

 

 そして砲台達がレーザーを撃とうとした瞬間、あたしは足のスロットルを思い切り踏み込んだ。

 

 砲台は攻撃の瞬間は少しだけど動きが止まる。

 

 彼等がレーザーを吐き出した頃には、急加速で前に出た私の愛機は影すら残さずに奴等の本体へ突撃している。

 

 さらに言えば、この中ボスの弱点は移動砲台を動かしている時は行動しないという事だ!

 

「もらったっ!」

 

 一気に間合いを詰めた私は、薄紅色の光刃を伸ばしたビーム剣で中ボスの胴体を貫いた。

 

 盾持ちを倒してさらに小惑星に向かって進むと、今度はこちらの数倍はありそうな巨大な敵が現れる。

 

 クリーム色の歪な十字架みたいな形をしたコイツは、ラスボス前の壁であるデカボスだ。

 

「マチュ! 撃チ合イダメ! 懐ニ入ル!!」 

 

「任せて!」

 

 奴は人間でいうところの掌から光の弾幕、そしてタコみたいな口からはゴン太ビームを撃ってくる。

 

 まともに撃ち合うには火力の差があり過ぎる。

 

 ここは回避に専念するのがセオリーだ。

 

「右! 左! 次は上に向かってすぐ下に下がる!!」

 

 そして躱す時には大きく動いたらいけない。

 

 それをしてしまうと次の射撃に間に合わないからだ。

 

 やるならば紙一重! 見切りが重要になる!! 

 

 しかし相手は無駄に図体がデカい訳じゃない。

 

 猛スピードで距離を詰めていると、奴のスカートの後ろから何かが飛び出して来る。

 

 それは中ボスが使っていた移動砲台だ。

 

 しかも奴の物は図体が反映されていて、中ボスのモノより遥かに大きいと来た。

 

「そう簡単にはいかない!!」

 

 私が右側のコントローラーに付いているトリガーを押し込むと、自機の指の間から小さな弾丸が飛び出す。

 

 それは宇宙空間に出ると見る見るうちに膨らんで、簡易的な私の偽物に変わった。

 

 これはダミーバルーンという機能だ。

 

 これを出すと少しの間だけど、敵の狙いを反らす事が出来るのだ。

 

「マチュ、気ヲツケロ。本当ナラダミーは効カナイ」 

 

「本当ってどういう意味なのさ?」

 

 今だって移動砲台メッチャ惹き付けてるじゃん。

 

 アムロのアドバイスに首をかしげながらも加速した私はデカブツに取りつくと、奴の眉間にサーベルを突き立てる。

 

 これで巨大ボスは撃破だ。 

 

 普通のゲームみたいにライフ制じゃないから、こっちも当たり所次第だと一発で落ちるし相手も同様。

 

 だからこそ、緊張感が半端ないんだ。

 

 そうして小惑星に辿り着くとラスボスが現れる。

 

「来た!」

 

 小惑星に足を付けた私が後ろに飛び退くのに遅れて、一瞬前までこちらがいた場所を貫く二条の光。

 

 それを放ったのは全身の赤が目に染みる憎いアンチクショウだ。

 

「今日こそは負けないぞ!」 

 

「マチュ! ヤレ! ヤレ!!」

 

 バックパックのスラスターを全開にして小惑星から離れると、私は手にしたライフルを連続で放つ。

 

 けれど奴は狙いを微妙にズラして避け難くしたそれを簡単に回避すると、背中から移動砲台を射出してきた。

 

 中ボスとは比較にならない鋭さと速度で飛ぶそれらはあっという間にあたしを包囲すると、死角からビームを撃ってくる。

 

「こなくそっ!」

 

 前後左右に細かく動いて襲い来る光弾を躱しながら私は一台、また一台と砲台を落としていく。

 

 けれど、砲台にばかり気を取られてはいけない。

 

「おわぁっ!?」

 

 何故なら赤い奴は砲台を動かしながらコッチに攻撃してくるからだ。

 

 いつの間にかこっちの上を取った奴が腹から放つ高出力のビーム。

 

 雨のように降り注ぐそれは、背筋に奔った悪寒から咄嗟に掲げた盾を左腕ごと持って行ってしまう。

 

「舐めるな!!」 

 

 けれど私だってやられてばかりじゃない。

 

 食らって仰け反った反動を利用して、ダメ押しに放たれた移動砲台からの射撃を宙返りの要領で躱すと同時に、バックパックに差したバズーカをラスボスへ放つ。

 

 グルンと回転したモニター越しに上を見上げると二発撃ったバズーカの弾丸は一発は奴の盾を、もう一発は左足を砕いていた。

 

 しかし奴は足が無くなった事も気にせずにビーム斧を抜くとこちらへ放り投げてくる。

 

「やばっ!?」

 

 こっちは宙返りの終わりを狙われた所為でまだ体勢が整ってない!

 

 強引に回避しようとしたんだけど、ビーム斧はバズーカの弾薬に突き刺さってしまった。

 

「緊急パージッ!!」

 

 素早くコントローラーのボタンを操作し、バックパックから切り離した次の瞬間バズーカは爆発する。

 

 爆風と破片が機体を叩くけど、幸いにもバックパックの動作に支障はない。

 

 その事を確認した私は思い切りフットペダルを踏み込むと、アームレイカーに付いたコントローラーを前に押し出す!

 

「このぉぉぉぉっ!!」  

 

 こちらの操作によって自機はバズーカの爆発の反動を利用して加速し、赤いボスに向かってサーベルで切りかかる。

 

 さっきの投擲で相手は近接武器を失った!

 

 それに加えて盾もバズーカで壊れているから、クロスレンジで出せる手はない筈!!

 

 けれど、そんな私の予測は簡単に覆されてしまった。

 

「うそぉっ!?」

 

 なんとボスは隠し持っていたビームサーベルでこちらの斬撃を受け止めてみせたのだ。

 

「マチュ、後ロ!」

 

 アムロの忠告に意識を向ければ、そこには生き残った移動砲台が……

 

「あっ!?」 

 

 鍔迫り合いの状況でこちらの動きを押さえられていては、どうすることもできない。

 

「あちゃあ……」 

 

 こうして背後から撃ち抜かれた私は、通算12回目の敗北を喫する事になったのだ。

 

「マチュー! 学校に行く時間よ! ババさんが来てくださっているんだから、待たせては駄目よ」

 

 筐体から出ると下から母上の声が聞こえた。

 

 時計に目をやれば時刻は7時45分。

 

 何時も家を出る時間だ。

 

「はーい!」

 

 母上の呼びかけにバッグを手に取った私の眼にある物が入る。

 

 それはラックに掛かったチェーンの先に小さなT字の金属フレームが繋がったペンダントだ。

 

「おっとと、忘れる所だった」

 

 素早くそれを手に取って首に掛ければ、ペンダントトップは暖かい緑の光を放つ。

 

 これはアムロが私の誕生日にくれたお守りだからね、家で留守番という訳にはいかない。

 

 ちなみになんで光るのかは謎だ。

 

「行ってきまーす!」

 

 そうして階段を駆け下りて玄関を出ると、スーツ姿の大柄で東洋人風なお兄さんが立っている。

 

「おはよう、マリちゃん」

 

「おはようございます、ババさん」

 

 ニッと人好きのする笑みと共に挨拶をしてくれたこの人はババさん。

 

 ヘリオポリスに駐留しているオーブ軍の大尉さんで、ちょっとした縁から私の学校の送迎やウチの警備をしてくれているのだ。

 

 そんな訳でババさんの車に滑り込むと私は学校へ向けて出発する。

 

『カオシュン宇宙港防衛戦の敗北によってザフトの制宙権は更に強固な物となり、地球連合はこの先も苦境を強いられる事は避けられないとの見通しが……』

 

 そうして私達の乗った車が車道を快調に走る中、テレビのラジオはプラントと地球連合の戦況についてニュースを流している。

 

「虎の子だった資源衛星の『新星』を奪われ、更にはカオシュンが陥落した事で奴等は宇宙へ出る為のマスドライバーを失った。東アジア共和国は大慌てだろうね」

 

「そのうえ、連合は地球でも負け続きだ。日を追うごとに奴等の兵力と人員は、摩り下ろされるように減って行っている」 

 

 私の言葉にババさんは前を向きながら応じてくれる。

 

「だが、我等にとってはこの戦争は僥倖と言えるかもしれん。結果はどうあれ、戦後の世界は確実に荒れる。反面、我々は世界へ散った同胞と共にオーブなどの中立国で財と力を温存している」

 

「機を読んで事を起こせば大八洲国を取り戻す事も夢じゃない、か」

 

「その為に来月に予定された住友と三菱の党首との会談で、その辺の話を詰める必要がある。事が成った後に国際社会での承認を得る事を考えれば、アズラエル財団との繋がりも必須だ」

 

「ムルタおじさんは色々と面白い人だからね、私は嫌いじゃないよ」

 

「大西洋連邦の前身の一つであるアメリカ合衆国は故国が滅びるまで我々の同盟国であり続けた。三井達が例の組織に食い込んでいる事を思えば、こちらへ助力は惜しまないだろう」

 

「賢人会の爺ちゃんたちも大変だ。そういえば、フェイズシフト装甲とラミネート装甲だったっけ。三菱が開発した事を秘密にしたのも、向こうに流して恩を売る為なんでしょ?」

 

「ああ。モルゲンレーテの連中は大西洋連邦のアドヴァンスト・スペース・ダイナミック社が開発したと聞かされているがね」

 

「これがムルタおじさんが出資している地球産MSに加われば、プラント側が持っていたアドバンテージは消える」 

 

「そうなれば国力差でプラントは敗北する事になるだろう。彼等には悪いが、今後の事を思えば彼等に勝ってもらうのは我々にとって都合が悪いからな」

 

 やれやれ、仕方がないとはいえ重い話である。

 

 どう考えても9歳が首を突っ込む内容じゃないよね。

 

 アムロを抱きながらため息をつくと、ババさんは表情を一層引き締める。

 

 それを見た私も相応に居住まいを正した。

 

「真理華様、約100年にも及ぶ悲願達成は目前です。貴女と晴馬様は我等の支柱となる存在」

 

「分かっております。神代より連綿と受け継がれし、この血は決して絶やしてはならぬモノ。再び神州に大和の民が集う日まで、何としてでも生き延びてみせましょう」

 

 護衛ではない別の顔を見せたババさんに答えを返すと、車は小学校の正門前に付いていた。

 

「それじゃあ、行ってきます」 

 

「ああ、気を付けて」

 

 そして車を降りて別れる時には、私もババさんも元の顔に戻っていた。

 

 

 

 

 日常とは退屈であり、また尊いモノでもある。

 

 うん、その事実を私は今肌で感じている。

 

『現在、このヘリオポリスは外部から攻撃を受けています! コロニー居住者は速やかに最寄りの緊急シェルターへ避難してください!!』 

 

 コロニー全体に響き渡る様な放送が流れたのは、午後の授業が始まって少し経った頃だった。

 

 こんなご時世だからあり得ない事はないとは覚悟していたけど、まさかこんなに早く起こるとは思わなかった。

 

「みんな、こっちよ! 逸れないでついてきて!!」

 

 先生の先導でシェルターに向かっていたんだけど、街の中は我先に避難しようとする人達でパニック状態だった。

 

 オーブって中立国だから襲われる事はないって思っていた人が殆どだからね。

 

 こうなるのも当然と言えば当然だ。

 

 でもって、私はここで大ポカをやってしまった。

 

「は…逸れちゃった」

 

 なんとどっかの会社から出てきた集団避難の波に呑まれてしまった影響で、他のクラスメイトを見失ってしまったのだ。

 

 さらに情けない事に私は学校がある地区のシェルターの位置を把握していなかった。

 

 ババさんに偉そうに言っておいて、このザマとか!?

 

「マチュ、逃ゲル! マチュ、逃ゲル!」

 

 飛び跳ねながら先行するアムロについて行くと、目に入ってきたのはジャンクの山が積まれた粗大ごみ置き場。

 

「ここって……」

 

 そういえばアムロと初めて出会ったのは、コペルニクスにあったジャンク置き場だったっけ。

 

 おっと、懐かしがっている場合じゃない。

 

 今は安全な場所に逃げないといけないのに、どうして相棒はこんな所に連れてきたんだ?

 

「マチュ! コッチ! コッチ!!」

 

 意図が分からずに首をかしげていると、アムロは凄い事をやってのけた。

 

 積み上がったジャンクの中にある建材の扉を開けてみせたのだ。

 

「ええっ!?」

 

 よく見るとドアの横には電子錠らしきものが付いている。

 

 アムロは普段から目を離すと機械弄りとか私のパソコンで妙なプログラム組んでたから、今もその手腕を使ったんだろうけど……。 

 

「この奥って入れるの?」

 

 恐る恐る扉の向こうを覗き込んでみると、内側はしっかりした造りの通路になっていた。

 

 壁の左右にうっすらと光る照明が施された扉の奥は地下へと緩やかに続く坂道が続いている。

 

「マチュ、急ゲ! 急ゲ!!」

 

 そう言いながら地下への道をピョンピョンと跳ねていくアムロ。

 

「ちょっ!? 待ってよ!」

 

 まったくビビる様子もなく進む相棒を追って私も下へと降りていく。

 

 直感の方もアムロについて行った方がいいって言ってるしね。

 

 そうしてしばらく進むと妙に広い空間に出た。

 

 灯りは非常灯だけで足元は暗い。

 

 でも、なんでか知らないけど迷ったりする気がしないんだよね。

 

 まるで何かに誘導されているみたい。

 

「あ……」

 

 そうして進んでいると、ペンダントトップが淡い緑色に光を発した。

 

 そしてその光は、眼前にある一つの大きな影を映し出す。

 

「これ…モビルスーツ?」

 

 まるで力尽きたかのように腰を下ろした黒い胴が特徴の白を基調にした機体。

 

 右半身の装甲は取られて内部の機械やフレームがむき出しになっているけど、機能美というか存在感が凄い。

 

 いつの間にか隣に来ていたアムロと一緒に圧倒されていた私は、そのMSに見覚えがある事に気が付いた。

 

「あのロボゲーの自機そっくり……」

 

 細かいところは少し違うけど、全体的なデザインは本当によく似ているのだ。

 

 酷く気になった私は床に付いた彼の手、そこから伸びた指先に触れる。

 

「……ガンダム」

 

 そう、この機体の名前はガンダムだ。

 

 直感的に分かった事は彼はもう抜け殻になっているという事だった。

 

 言葉にすると難しいけど、魂というか根幹と言うべきモノが無くなっているように思えたんだ。

 

 なんというか酷く後ろ髪を引かれるものがあるけれど、今はここで時間を潰している場合じゃない。

 

「マチュ! コッチ、コッチ!」 

 

 いつの間にか先に進んでいたアムロに誘われるままに進むと、そこにはもう一つの巨人がいた。

 

「これ……ガンダムに似てる」

 

 けれど、身体のところどころに見えるむき出しになったフレームやガンダムよりも一回り細い外観からは、真似しようとして再現しきれなかった感が漂ってくる。

 

「マチュ! コレデ逃ゲロ! コレデ逃ゲロ!」

 

「これに乗れってこと……うわぁっ!?」

 

 私がアムロに問いかけると同時に、上の方で爆発音が響いて辺りがグラリと揺れた。

 

 どうやら迷っている暇はないみたい。

 

「ねえ、アムロ! どうやって乗ったらいいの?」

 

「コレ! コレニ摑マレ!」

 

 ニット帽を外したアムロが側頭部から伸ばした手でMSの足を弄ると、胴体から取っ手みたいなものが付いたワイヤーが降りてきた。

 

 相棒に促されるままにその取っ手に足を掛けると、ワイヤーはひとりでに巻き上がって私を胴体の搭乗口まで引き上げる。

 

「これって…ロボゲーと同じ」

 

 MSのコクピットは驚くことにロボゲーの筐体に瓜二つだった。

 

 脇に抱えたアムロを置いてシートに座ると、またペンダントトップが光る。

 

「な…なに……!?」

 

 そして、その光に呼応するみたいにコックピットの中も淡く緑に光ったのだ。

 

「これ……まるでオーロラみたい」

 

 直接見た事は一度も無いけど、コックピットを満たす柔らかな光は動画や写真で見たオーロラに似ていると思った。

 

 この幻想的な光景はどのくらい続いたのだろうか? 

 

 コクピットを満たす淡い光が消えたところで、現実に戻った私は

 

「もしかして起動の仕方もおんなじとか?」

 

 半信半疑で呟きながら、私は直感の赴くままにアームレイカーの先にある球状のコントローラーを操作する。

 

 やり方は筐体でゲームをスタートさせる時と同じだ。

 

 するとハッチが閉まり、コクピット全体に周辺の様子が映し出された。

 

「うそ……本当に同じだった」 

 

 これはいったいどうなっているんだろう?

 

 思わず首を捻っていると、サブモニターに機体のコンディションが映し出される。

 

 どうやらこの機体は『技術検証機壱号』というらしい。

 

「なんとも味気ない名前だなぁ。……よし、私が名前を付けちゃおう!」

 

 目を閉じて足りない脳みそを回転させる事しばし。

 

 私の頭に浮かんだのはさっき見た淡い緑の柔らかな光だった。 

 

「そうだ! 君はオーロラ! ガンダム・オーロラだよ!!」

 

「オーロラ! オーロラ!!」 

 

 ちなみにガンダムはさっきのMSからいただいた。

 

 勘なんだけど、この子はあのガンダムを基にして作られたような気がするんだよね。

 

 だから、ガンダムの名を付けてあげたらきっと本望だろう。

 

 こうして名づけも終われば本格的に脱出開始だ。

 

 椅子を一番前までスライドさせると、私はフットペダルを踏み込む。

 

 するとオーロラはゆっくりと前に歩き出した。

 

「お! 盾とライフル、それにバズーカまである!」

 

 コロニーを襲ってくる奴等と鉢合わせる可能性もあるし、一応持って行っておこうかな。

 

 壁に武器が掛けてあった武装を回収して盾とライフルは両手、バズーカはゲームと同じように背中にマウントする。

 

 コンディションモニターでは武装は全て認識されていて、バズーカもこの状態で撃てるようになっていた。

 

 そうして出口と思われる隔壁の横にあるボタンを操作すると、重苦しい音と共にハッチが開いて私の眼前に宇宙が広がる。

 

「よし! 行こう、アムロ!!」

 

「マチュ、宇宙! 宇宙!!」

 

 床を踏み切ってオーロラと一緒に宇宙へ飛び出すと、まるでチャンネルを切り替えたように目の前の光景が変わった。

 

「おお、キラキラ」

 

 それは様々な色が入り混じった空間の中を数多の光が駆け抜ける不思議な世界。

 

 まるでこの世のモノとは思えない光景と自分の認識が広がっていく感覚に、私は我を忘れて酔いしれた。 

 

「マチュ! シッカリシロ! マチュ!!」

 

「お…おお……」

 

 どれ程呆然としていただろうか、アムロの声に私は現実へ立ち戻った。

 

「今のなんだったんだろ?」

 

「アマリ行クナ! アマリ行クナ! 戻ッテコラレナクナル!!」

 

 相棒が怖い事を言ってるんだけど、そんなにヤバい所なのかな。

 

 まだ夢見心地の頭を軽く振って私はオーロラを進める。

 

 ……宇宙に出ると自分が広がっていく感じがする。

 

 例のキラキラほどじゃないけど、この感覚は嫌いじゃない。

 

 とにかく、今はコロニーに戻ってキラ兄や父上たちが無事か確かめないと。

 

 そう考えてモニターの背面に映るヘリオポリスへ行こうとした時だった。

 

「っ! なに!?」

 

 右手の方向から複数の気配を感じた。

 

 アームレイカーを操作してモニターをアップにすると、そこに映っていたのはザフトの主力MSであるジンが二機。

 

 どうやらヘリオポリスを襲撃してきたのはプラントのコーディネーターらしい。

 

 そしてジンの後ろにはガンダムによく似た4種類のMSが続く。

 

 ……ちょっと待って。

 

 もしかして、あれって大西洋連邦がモルゲンレーテと一緒に造ってたっていう新型なのでは……。

 

 まさかの事態に唖然としてしまったのだけど、事態はそんな悠長な事を許してくれなかった。

 

 先導していたジンが止まると、こちらに向けて手にしたマシンガンを構えたからだ。

 

「もしかして……いや、本当に撃ってくる気だ!」

 

 相手の殺気を感じ取った瞬間、私の手と足は反射的に動いていた。

 

 ショートブーストの為にフットペダルを踏んで、それと並行してアームレイカーのコントローラーのトリガーを絞る。

 

 こちらの操作に応じるようにオーロラは左に跳ぶ事でジンの銃口から外れ、同時に手にしたライフルを放つ。

 

 宇宙の蒼を奔る光弾は相手が鉛玉を吐き出す前に二機のジンの顔面を吹き飛ばした。

 

「あっぶねぇ……」 

 

 ロボゲーの影響でほとんど反射的に反撃してしまった。

 

 だって、あのジンってゲームのザコにちょっと似てるんだもの。

 

 寸前で狙いを変えなかったら、コクピットをぶち抜いて人殺しになるところだった。

 

 とはいえ、一息ついている場合じゃない。

 

 ジンは黙らせたけど、パチられた新型達は戦意バリバリの御様子なのだ。

 

 それはそれとして、4機の新型の内の赤いのからは懐かしい気配がするんだけど誰だったっけ。

 

「マチュ! 敵ハ目ノ前! 集中シロ!!」

 

「おっと!」

 

 だから考え事している場合じゃないんだってば!

 

 私はブルブルと頭を振って雑念を追い出すと通信機へと手を伸ばす。

 

 設定するのは国際救助チャンネル。

 

 ザフトの周波数は分からないけど、これならどんな陣営でも届くはずだ。

 

「こちらはヘリオポリス在住の民間人、マリ・ヤマトです! こちらに戦う意志はありません!!」

 

 私は通信機に向かって思い切り叫ぶ。

 

 さて、これで乗っているのはいたいけな子供と分かった筈だ。

 

 相手はどう出るか?

 

『貴様、ふざけるのもいい加減にしろ! 何が戦う意志は『黙っていろ、イザーク!!』』

 

 最初は怒り心頭と言った感じのお兄さんの怒鳴り声が通信機から聞こえてきたんだけど、それも別の誰かの怒声によって遮られてしまった。

 

 この声ってもしかして……。

 

『マチュ! それに乗っているのはマチュなのか!?』

 

「アス兄!? アス兄なの!」

 

 なんと赤い奴に乗っているのは、私の幼馴染な兄貴分アスランだったのだ。

 

『どうしてお前がそんなモノに乗っているんだ!? 子供が乗る物じゃないだろう!!』

 

「ヘリオポリスが攻撃されたから逃げる為に乗ったんだよ! というか、攻撃してたのアス兄たちか!!」

 

 こんなところで知り合いに会うとかどんな確率なのさ!?

 

 ふざけるなぁぁぁぁぁっ!!    




・マリ・ヤマト

ガチでやんごとなき血を引くが故に、C.E世界で日本奪還をする事を強いられている幼女。

物心がついた時から父ハルマに薫陶を受け、更に大和会や日本初の世界的企業の重鎮と顔合わせしている事もあり、血の宿命を背負う覚悟を固めている。

キラが兄ではなく母方の従兄妹である事は知っている。

そもそも自分と同じ血を引いているなら、それに手を入れるコーディネート手術などあり得ないのでハルマに聞かされる前から察しは付いていた。

C.Eでは数少ないニュータイプであり、相棒の教えもあってMSの腕もメキメキ上がっている。

その出自と同胞の悲願ゆえに、立ち位置的には盟主王寄り。
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