コズミックイラのマチュ ~ロリニュータイプの日本再興記~   作:アキ山

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読者の皆様、情報提供ありがとう

君達のお陰で夜刀神の開発ツリーが解放された

R-9DPシリーズ、素晴らしいではないか!

さあ、アイレム・グランゼーラ博士!

新たな夜刀神を造るのだ!!

なに? 先ずはフォースの開発が必須だと?

そのフォースというのは何なのだ?

君がいた『TEAM R-TYPE』が開発した機体の必須装備だと?

グランゼーラ博士を射殺しますか?

→Yes

 No


ザフトの弔い合戦と戦場へ向かうマチュ殿下

 コズミック・イラ65年。

 

 月面都市コペルニクスの一角にある、スラムというべき貧民が身を寄せ合って暮らす場所。

 

 そこに一人の少年が身を縮めながら座っていた。

 

 年の頃は12~13歳程度。

 

 しかし貧しさ故に栄養が足りず、同じ年の男子に比べて少年は随分と小さかった。

 

「はら…へった……」

 

 長くボサボサに伸びた髪はフケだらけでシラミが住み着き、顔や薄汚れた服の下に見える肌は垢によって黄色人種である本来の肌色より浅黒く見える。

 

 身じろぎしようとして、空腹に耐えかねた彼はゴミが散乱する路地に体を横たえる。

 

 仰向けになって閉じそうになる目を薄く開ければ、見えるのはドーム状に張り合わされた透明な外壁の向こうに広がる黒い宇宙。 

 

「ここ…まで…か……」

 

 とある研究所で生み出された少年は、そこで延々と勉学と訓練を繰り返す毎日を送っていた。

 

 理由は分からない。

 

 白衣を着た大人たちは黙して語らなかったし、必要なモノ以外は何一つ与えてくれなかった。

 

 そうして訳も分からぬままに努力を積み上げた結果、少年に与えられたのは『失敗作』という汚名だった。

 

 本来なら少年はそのまま廃棄処分となる筈だった。

 

 しかし彼に同情した研究員の一人が秘密裏に、このコペルニクス行きのシャトルへ紛れ込ませた事で難を逃れたのだ。

 

 とはいえ、小さな子供が一人で社会に投げ出されてまともに暮らせるわけがない。

 

 行き場のない彼は流れに流れて、このスラムへと潜り込むことになった。

 

 今まで必死に生きてきた。

 

 スラムに住み着くのは全て貧者か、脛に傷がある犯罪者や追手から逃げてきたなど訳アリの連中だ。

 

 皆自分の事に必死で、少年に手を差し伸べてくれる者はだれ一人いなかった。

 

 だから彼は独力で命を繋ぐしかなかった。

 

 残飯をあさり、トイレの水を飲み、時には腐った食べ物や虫だって口にした。

 

 理由などなく、ただただ死にたくないと足掻き続けた果てがコレだ。

 

「あ…ぁ……」 

 

 何の庇護も無い孤児が明日を掴もうと藻掻き手を伸ばした末に死ぬ。

 

 特に珍しくも無い、世界の何処にでも転がっている結末だ。

 

 その少年にもそんな陳腐な結末が降りかかる……筈だった。

 

「おにーさん、はい!」

 

 しかし救いの手は唐突に舞い降りた。

 

 舌足らずな幼い声に少年が目を開けると、幼女が菓子折りを自分に差し出しているのが見えた。

 

 娘の年の頃は3歳程度。

 

 どこかの令嬢なのだろうか、スラムには似付かわしくない見るからに高級そうな服を身にまとっている。

 

「おひぃ様、いけません! このような場所に来るなど! それに、それはご母堂と義兄君へのお土産でしょう!?」 

 

 その証拠に慌てたように御付きと思われる男達が幼女の元へ走ってきた。

 

「いいの! かかさま、いってたもん! こまっている人がいたら、たすけてあげなさいって!」

 

 大人達にそう返す幼女。

 

 彼女が後ろを向いた隙を突いて、少年はふくふくと柔らかそうな手から菓子折りを奪い取った。

 

 そして乱暴に封を破ると一心不乱に菓子を口に入れていく。

 

「うめぇ! う…めぇ……」 

 

 菓子など何日ぶりだろう。

 

 口の中に広がる濃厚な甘みに少年の眼から涙がこぼれる。

 

 そうして夢中で菓子を貪る少年を、幼女は嫌悪することなくニコニコと見ていた。

 

 彼女は少年が喉を詰まらせそうになると、自身がたすき掛けにしていた水筒からお茶を汲んで手渡したりもした。

 

 そうして数分ほどで全ての菓子を食いつくすと、一息ついた少年は口を開く。

 

「なんで…俺を助けた?」 

 

「きこえたの! おにーさんのこえ! おなかすいたーって!!」

 

 少年の問いかけに元気よく答えると、今度は幼女が彼に問いかける。

 

「マチュはマリってゆーの! おにーさん、おなまえは?」

 

「……名前なんてない」

 

 よく分からない自己紹介に続いて名を問われた少年は、吐き捨てるように答える。

 

 自分は失敗作だ。

 

 廃棄される予定だったゴミだ。

 

 そんな物に名を付けようなどという奇特な者は今まで現れるはずも無し。

 

 それは何処か諦観を含んだ悟りだった。

 

「だったら、マチュがなまえつけていい?」 

 

「え……?」

 

 だからこそ、幼女の提案は少年の虚を突いた。

 

 己の申し出に唖然とする少年を構うことなく、幼女は言葉を続ける。

 

「ししく! ししくってどう?」

 

「しし…く……?」

 

「ライオンがね、がおーってほえるようすなんだって! マチュね、ちょっとまえにならったの!!」

 

 正確に言えば『ライオンが吼えるように力強く堂々と演説すること、または仏教における最高の説法』なのだが、幼児では正しく覚えるのは難しいだろう。

 

 それはともかくとして、獅子吼という名を与えらえた少年は何とも言えない思いに駆られていた。

 

(なんだ…この感じ……?) 

 

 今まであやふやだった自分というモノが、今この瞬間にしっかりとした輪郭を以て感じられるようになったからだ。

 

 東西限らずに名とは重要な意味を持つ。

 

 一説では人間は名前がないと物の認識ができないとされる。

 

 名とは付けられた人・物を他と区別し、アイデンティティ(個性)を確立する重要な役割を果たすからだ。

 

 そして過去に滅びた日本という国では、名を付ける事を命名といった。

 

 『命』という言葉が入るのを見れば、それがどれ程の価値と意味があるのかは容易に分かるだろう。

 

 この時、少年は初めて失敗作というモノから名を持つ人へとなったのだ。

 

「おひい様、戯れはいい加減になさいませ! このような浮浪児に名を授けるなど……貴方様の血を思えば、言霊が宿っても可笑しくはないのですぞ!!」

 

 背後に立つ男が慌てたように怒鳴るが、幼女はそれに怯える様子もなくゆっくりと振り返る。

 

「んとね、マチュかんじるの。ししくがマチュをたすけてくれるって」

 

「しかし……」

 

「待つがよい」

 

 幼女の言葉を受けて唖然とする御付きの大人、そんな彼を押しのけて後ろから異様な男が現れる。

 

 顔を白粉で白く染め、眉毛が薄く、眉頭だけに眉毛が残った公家の風俗である置き眉。

 

 狩衣に立烏帽子という古代日本の平安貴族を思わせる衣装を纏った男。

 

(コイツ……化け物か!?)

 

 少年は男の姿を見た瞬間、その圧に全身が圧し潰されるかのような圧迫感を感じた。

 

 それは強者が持つ圧倒的な氣。

 

 この男に比べれば研究所にいた軍人やスラムの破落戸など虫けら同然だ。 

 

「烏丸様……」

 

「殿下は赤子の時より高い霊力を宿すお方。その殿下がここまで言うのじゃ、そこな童には何かあるのでおじゃろう」

 

「うん! ししくはマチュのこと、たすけてくれるの!」

 

 烏丸と呼ばれた怪人の言葉に嬉しそうに頷く幼女。

 

 そして彼女は再び少年へ向き直る。

 

「あのね、マチュね。おおきくなったら、すごいことしないといけないんだって! だからね、それをおてつだいしてほしいの!」

 

「すごい事って何だ?」

 

「んん~……ん?」

 

 少年の質問に幼女は難しそうな顔で首をかしげるだけ。

 

 どうやら難行の内容までは理解していないようだ。

 

「わかった。手伝ってやるよ」

 

 それでも少年は差し出された小さな手を取った。

 

「いいの?」  

 

「ああ。俺は失敗作って捨てられた身だしな。このままくたばるくらいなら、助けてくれたお前の為に使った方が有意義ってものだ」

 

「マチュ、むずかしいことわかんない! でもよろしく、ししく!」

 

 厭世的な言葉と共に笑う少年に、幼女は満面の笑みを返す。

 

 こうしてゴミとして死する定めだった少年は、名と人としての生を得ることになった。

 

 彼は世界的な大企業である三菱グループの大株主、烏丸家当主である烏丸文麿の預かりとなった。

 

 烏丸からの教えで少年は自分を拾った娘が、世界最古の歴史を誇る皇族の末であること。

 

 そして彼女が成すべき大業が、再構築戦争で失われた母国を再興である事を知った。

 

 類稀なる武人である文麿から武士として鍛えられた少年は修練の中で才覚を示し、同世代の武を志す少年達の中でも頭一つ抜きんでた結果を叩きだしたのだ。

 

 それを見た文麿は少年が17になった折に分家を起こし、己が烏丸の烏から由来を取って『大鳥』の姓を与えた。 

 

 こうして一家を背負い、晴れて『大鳥獅子吼』となった少年。

 

 祝賀の日の夜、獅子吼は訪れたあの時の幼女こと真理華内親王に今まで秘してきた己の出自を明かした。

 

 彼の苦悩と屈辱、そして怨嗟やコンプレックスに満ちた告白を黙って耳にしていた真理華は、その全てを聞き終えるとこう返した。

 

「獅子吼、二度と己を失敗作と卑下する事は許しません」

 

「……殿下」

 

 思わぬ言葉に虚を突かれた獅子吼に真理華は続けた。

 

「其方は私が初めて己で定めた臣下です。出自はどうであれ、其方が過去の呪縛に囚われるという事は、見出した私と其方を鍛えた烏丸少将の識見を愚弄する事に他ならぬ。其方は我らの目が節穴と申すのか?」

 

「め…滅相もございません!」

 

 普段とは打って変わった鋭い視線の真理華に慌てて獅子吼が平服すると、彼女は再び視線を穏やかに戻す。

 

「獅子吼、其方は人です。人はモノとは違い成長することが出来る。烏丸少将の元でその事を示し続けたのは、外ならぬ其方ではありませぬか」

 

 もはや言葉も無い獅子吼の手を取って、真理華はこう告げた。

 

「過去に愚者達が烙印を押した其方はもういません。ここにあるは大鳥の名を背負う武人。──故に我が名の元に断じましょう。大鳥獅子吼、其方は失敗作ではない。私と共に歩む第一の忠臣であると」

 

 獅子吼は真理華の言葉に涙した。

 

 ずっと己を捕えていた過去の呪縛を、この御方は真正面から両断してくれた。

 

 そして人非ざる胎から生まれた自分を人と呼び、しっかりと認めてくれたのだ。

 

 だからこそ真理華が手を離すと、すぐに彼は伏して床に額をこすり付けた。

 

「真理華内親王殿下。この大鳥獅子吼、我が身、我が命を殿下に捧げることを誓います。そして必ずや神州奪還の大業を為す力となりましょう!」

 

 こうして大鳥獅子吼は少女を生涯唯一の主と定めた。 

 

 後にある男が彼に一つの事実を吹き込んだが、獅子吼が揺らぐことは無かった。

 

 故に彼は主の義兄であるキラ・ヤマトに冷ややかな目を向ける。

 

 ぬるま湯のような偽りの中で何も知ろうとしない大虚け。

 

 何時かは主に捨てられる哀れな完成品と。

 

 

 

 

 時は現代を刻み、場面はヘリオポリスから少し離れた宙域を映し出す。

 

 そこには船体に刻まれた損傷に突貫で応急処置を施すザフト軍の艦、ヴェサリウスとガモフの姿があった。

 

「クルーゼ隊長が戦死されたですって!? 馬鹿なッ!?」

 

 ヴェサリウスのブリッジで赤いザフトの制服を身に纏った銀髪が特徴の少年、イザーク・ジュールは悲鳴にも似た声を上げる。

 

 ラウ・ル・クルーゼに憧れを抱いていた彼にとって、その対象の戦死はまさに青天の霹靂だった。

 

「……事実だ。ヘリオポリスに駐留していたオーブ軍と交戦した際、敵の突撃を受けてシグーはバラバラになった。遺体は回収できたが酷い状態だ。見るなら覚悟をしておけ」

 

 艦を統括するフレデリック・アデスが絞り出す苦い声音に、潜入作戦から戻ってきた者達は隊長の死が事実である事を嫌でも思い知った。 

 

「それで…これからどうするんですか?」

 

「決まっているだろう! 隊長の仇を取る!!」

 

 ブルネットの髪に緑の瞳を持つ少年、アスラン・ザラの問いかけに怒気を収めることなく言い放つイザーク。

 

「ですが、ヴェサリウスもガモフもダメージが深刻です。それにジンだって予備機は殆ど無いんですよ?」

 

「何言ってんだ、ニコル。俺達の機体なら例の試作機があるじゃねえか」

 

「そんなっ!? あれは連合の技術検証の為に本国へ送る筈じゃ……」

 

「技術データならここで引き抜けばいい! 隊長の仇も討たずに、おめおめと本国へ帰るなどできるか!!」

 

 緑髪の幼い風貌の少年、二コル・アマルフィは同僚であるディアッカ・エルスマンの意見に仰天し、その様を腰抜けかとイザークが咎める。

 

 彼等の様子をアデスは難しい表情を崩すことなく見ていた。

 

「しかし、そうなればオーブと本格的に戦火を交えることになる。当初のようなヘリオポリスで連合のМSを建造していたという言い訳は通用せんぞ」 

 

 このヘリオポリス襲撃はクルーゼの独断で行われた事だ。

 

 今なら『中立な筈のオーブが連合とМSを共同開発した』という相手の弱みを付くことで、ある程度有耶無耶にできるだろう。

 

 しかしクルーゼの仇討ちとなれば、明確にオーブ軍へ攻撃を仕掛けることになる。

 

 それでオーブが宣戦布告し、連合を含めての二面戦争になれば膠着している戦線が大きく敵側に傾く可能性もある。

 

 その責任は自分達の素っ首程度で賄えるものではないだろう。

 

「アデス艦長。仇討ちはともかくとしても、クルーゼ隊長の遺した命令はまだ終わっちゃいない。向こうにはまだ一機試作機があるんだ。ソイツを奪取、もしくは破壊しない限り俺達は帰れないぜ」

 

 そう意見を述べたのは金髪のアスラン達より少し年上の青年、ミゲル・アイマンだ。

 

 ミゲルはイザークたちと同じく赤服と呼ばれるエリート、ラスティ・マッケンジーが戦死したことで奪取に失敗したGAT-Xシリーズと交戦。

 

 その結果、自身の乗機であるジンを失っている。

 

「お前はその試作機にリベンジしたいだけだろう」

 

「それも確かにあるさ。けどな、俺だってクルーゼ隊長には世話になっているんだ。最後の命令くらい遂行してやりたいぜ」

 

「待ってくれ! 今、オーブを敵に回すのは拙い事は皆もわかるだろう! クルーゼ隊長がいなくなった以上、今は一度撤退して上の指示を仰ぐべきだ!!」

 

 皆が仇討ちという空気が醸成されようとしていた中、異を唱えたのはアスランだった。

 

 祖国の敵を増やすのももちろんだが、それ以上に幼馴染のヤマト家がいると分かった以上、彼はヘリオポリスが戦火に包まれるのを避けたかったのだ。

 

「貴様! 世話になったクルーゼ隊長より、ナチュラルの小娘を選ぶ気なのか!?」

 

「幼馴染がいるのは気の毒だが、そういった都合が通る時じゃないのは分かるだろ」

 

 そんなアスランに噛みついたのは、日ごろから折り合いの悪いイザークとその友人であるディアッカだった。 

 

「それは……っ!?」

 

 反論しようとしたアスランだったが、周りからの視線に思わず口を噤んでしまう。

 

 意図してか否かはわからないが、イザークのナチュラルという発言が影響したのだろう。

 

 ブリッジのオペレーターや、ミゲルをはじめとするパイロット達からの視線が冷たいモノになったのをアスランは感じ取った。

 

「ディアッカ、どういう事なんだ?」 

 

「俺らが試作機を持ち帰る途中で、連合かオーブ製かは分からんがМSをパクッて逃げようとしていた民間人のガキとカチあったのさ。ソイツがアスランの幼馴染の妹分だったってわけだ」 

 

「ガキって、いったい何歳なんだ?」

 

「10歳くらいだったな」

 

「マジかよ!? よくモビルスーツなんて動かせたもんだ……」

 

 ディアッカから事情を聞いたミゲルが漏らした感心と呆れが混じった声を聴きながら、アスランは思わず歯噛みする。

 

 今の雰囲気からして、ヘリオポリスへの再攻撃を止めることが出来ないのは明白だ。

 

 我を通し続ければ、最悪幽閉されて事に関わる事も出来なくなる。

 

「そういう事ならコロニーは傷つけないようにしてやるよ」

 

「ま、出来る限りだがな」

 

 フォローのつもりか、アスランに声をかけるミゲルとディアッカにイザークがフンッと不機嫌そうに鼻を鳴らす。

 

 一連のやり取りを見ていたアデスは小さくため息をつく。

 

 正直に言えば、彼はこのままプラントへ引き返すつもりだった。

 

 クルーゼが行った今回の独断は、奪取した試作機全てを差し出しても功罪の帳尻が合うか分からないのだ。

 

 それに加えてヴェサリウスやガモフも損傷が酷い。

 

 応急修理だけで長期間の航行を行うのはかなり無理がある。

 

「やむを得んか……」 

 

 正規の軍隊なら艦を預かるアデスの方が地位は上だし、その強権を振るって無理に撤退する事も出来た。

 

 しかしイザーク達は訓練校を優秀な成績で卒業した赤服というエリートなうえに、その親もプラントの頭脳たる最高評議会の議員。

 

 そしてミゲルは今大戦で多くの戦績をあげた『黄昏の魔弾』の異名を持つエースパイロットだ。

 

 個人主義、実力主義が蔓延して階級というモノが軽視されがちなザフトでは、アデスが彼等を押さえつける事は不可能だった。

 

「では、ヴェザリウスとガモフの応急修理、試作機の解析とデータ保存が終わり次第ヘリオポリスへ再攻撃を仕掛ける! 各員、作業に取り掛かれ!!」

 

 己の指示に格納庫へ走るパイロット達の背を見つめながら、アデスは『クビは覚悟したけど投獄だけは勘弁…』と心の中で愚痴るのだった。

 

 

 

 

 みなさん、ごきげんよう。

 

 地球連合のトンデモねえ暴挙を前に、度胆を抜かれているマリ・ヤマトです。

 

 コロニー内で戦艦の主砲ぶっ放すとか、何考えてんだ!

 

 ヘリオポリス、ブッ壊す気か!?

 

「獅子吼、そっちにコロニーから緊急通報来てない!? 今の一撃で外壁やシャフトが傷ついたとか?」

 

『……そう言った物は、まだ来ていません。今、管理センターにコロニーの損傷を確認してもらっているところです』

 

「ありがと。返事が来たら非常シェルターの収容者も調べてもらって。もし陛下が避難されていらっしゃるなら登録されている筈だから」

 

『承知』

 

 コロニーと父上達に付いてはこれでいいとして、問題は連合の戦艦だ。

 

 とはいえ、私には実質何もできない。

 

 地球へ通信が繋がるならムルタおじさんにチクって手を打ってもらうんだけど、いけるかな?

 

 どうしたものかと頭をひねっていると、足元に覚えのある気配を感じた。

 

「アムロ、足元ズームお願い」

 

『了解! 了解!』

 

 どうやってるのかイマイチ分からないけど、こっちの注文に素早く応えてくれる相棒。

 

 そして眼前に表示された足元の光景に私は思わず息を呑んだ。

 

「キラ兄!? それにトールさん達も!」

 

 それは連合の試作機らしきМSの周りで、キラ兄達が何やら作業をしている光景だった。

 

 なんでオーブの民間人が連合の機密に触れてるのさ!?

 

「獅子吼、今大丈夫?」

 

 私は混乱しつつも獅子吼へ通信を繋げる

 

 なんつーメンドイ事になってるんだ、まったく!

 

『殿下。先ほどの砲撃はコロニー内で減衰し、ヘリオポリスの被害は無いようです。シェルターの収容名簿に関しては現在精査を急がせています』

 

「ありがとう。戦艦の前にやることが出来たみたい」

 

 テキパキと私の指示の結果を継げてくれる獅子吼に、通信越しにキラ兄達の状況をライブで送る。

 

『……奴め、いったい何をしている?』

 

 明らかに苛立ちと侮蔑が籠った声。

 

 獅子吼はこちらに聞こえないように小さく呟いたみたいだけど、生憎と私の耳には届いている。

 

(相変わらずだなぁ、獅子吼のキラ兄嫌いは) 

 

 今の態度から分かるだろうけど、獅子吼はキラ兄にいい感情を持っていない。

 

 理由は彼が長男としてヤマト家で暮らしていることに警戒感を抱いているからだ。

 

 キラ兄と私は本当の兄弟じゃない。

 

 彼は私にとって母方の従兄にあたる。

 

 キラ兄は母上の姉の子であり、私が産まれる前に何らかの事情でウチへ預けられた。

 

 住友の長老曰く、キラ兄の両親は研究者で今は双方ともに鬼籍に入っているそうだ。

 

 獅子吼は神州奪還が成った後にキラ兄がヤマト家の長子として過ごしてきた事実や、母の血縁を頼りに外戚として権力を欲する事を警戒している。

 

 古来より王家や皇室にとって外戚というのは厄介な存在だ。

 

 血や婚姻で結んだ縁を頼りに権力や財を求めて政に首を突っ込んでくる。

 

 彼等が原因で国が荒れた例は、世界各国の歴史を紐解けば幾らでも見ることが出来る。

 

 そういう理由もあって、私を補佐する身としてはキラ兄は油断ならないように見えるのだろう。

 

「獅子吼、彼等を保護しよう。あそこにいられたら厄介な火種にしかならない」

 

『了解しました』

 

 モニターで指示を出しているオレンジのツナギを着た女の人、多分あれが連合の軍人だ。

 

 そしてキラ兄は試作機を見たとかで機密保持の為に拘束された。

 

 カレッジの皆がМSを弄ったり備品を運んでいるのは、ザフトの襲撃で減った人員の代わりに使えるモノは使う精神でコキ使われているってところかな。

 

 なんて推測を立てながら、私は獅子吼の夜刀神を連れてトレーラーに寝かされた試作機の横に降り立った。

 

 コロニーの中央は遠心力が弱いから宇宙みたいに飛べるけど、ここに来るとオーロラじゃ飛行は無理みたい。

 

『こちらはヘリオポリス駐留軍所属、シシク・オオトリ二尉である。そこの学生たちは民間人に見えるが、何故連合の試作機に関わっているのか?』

 

 私が話すわけにはいかないので、話し合いは獅子吼にお願いする。

 

 やっぱりお忍びって不便だなぁ。

 

『私は地球連合軍のマリュー・ラミアス技術大尉です! 彼等はオーブの民間人ですが我が軍の機密たるGAT-Xシリーズを目撃しました。その為、漏洩防止の為に拘束。現状は非常時という事で次なるザフトの襲撃に備える為に特別に手を借りているのです』

 

 トレーラーの無線機で通信を返してくるラミアスなる女性士官。

 

 ふむ、私の推理がドンピシャじゃないか。

 

『それより、そこの機体はオーブのモノですか? GAT-Xシリーズに酷似していますが、まさか我々の技術を!』

 

 ラミアス大尉とやらはオーロラを厳しい視線で見ながら通信機のレシーバーへ怒鳴るように詰問する。

 

『これは我々オーブ独自に造り上げたМSの試作機です。GAT-Xシリーズとは一切関係がありませんよ』

 

『ですが、ここまで似ているではないですか!』

 

 更に怒りのボルテージを上げるラミアス大尉。

 

 けれど獅子吼はそんな彼女の怒りを鼻で笑う。

 

『偶然ですよ。このオーロラは貴官達のGAT-Xシリーズより前に出来ているのですから』

 

 機体の汚れ具合を見ればわかるでしょう、そう返されるとラミアス大尉はグッと黙り込んだ。

 

 うん、たしかに今のオーロラは放置されてたから埃とか被ってるもんね。

 

 口に出して言われると少し凹むけど 

 

『大尉殿が納得したところで、次は学生諸君に問う。君達がそこの機体を目撃したのは偶然か? それとも意図しての事か?』

 

『ザフトが攻めてきて、必死に逃げてた時に偶然見ちまったんだよ!』

 

『私達、ヘリオポリスにこんなのあるなんて夢にも思ってなかったわ!!』

 

 獅子吼の問いかけにラミアス大尉の無線スピーカーを奪って答えたのはトールさんとミリアリアさんだ。

 

 その勢いは物凄いもので、軍に拘束された事がよほど怖かったんだろう。

 

『……分かった。ラミアス大尉、彼等の身柄は我々が預からせてもらいたい』

 

『そ…それは困ります! そんな事をすれば機密の保持に問題が……!』

 

 慌てるラミアス大尉の言葉を獅子吼は鼻で笑う。

 

『敵であるザフトに試作機を奪われた時点で機密も何もあった物ではありますまい。それにGAT-Xはオーブと連合との共同開発の産物。ある程度のデータはモルゲンレーテに提供されているのではないですかな?』

 

『それは……』

 

『ならば外見を見ただけの彼等が掴んだネタなどタカが知れている。そちらが目くじらを立てる必要はないでしょう。機密保持の方法にしても誓約書を書かせて、カメラなど記録媒体の没収程度です。それならばウチでやった方が効率的ですし、解放後に漏洩違反を見張る監視にしても貴国がオーブへ人員を派遣するよりウチで出した方が手間が掛からない』 

 

 スラスラと話を進める獅子吼にモニター越しでラミアス大尉が苦悩しているのが見えた。

 

 まあ、キラ兄達が試作機を見る羽目になったのは、大本を糺せば地球連合とオーブが悪い。

 

 諸々事が済んだ後で『不当な拘束や脅迫』で裁判を起こされたら負けると思うよ。

 

『……わかりました。ですが、キラ・ヤマト君だけはそちらに引き渡す訳にはいきません』

 

「えっ!?」

 

『……ほう』

 

 ラミアス大尉の思わぬ言葉に私は驚き、獅子吼は面白いと言わんばかりの声を漏らす。

 

『理由をお伺いしても?』

 

『先ほどのザフトの襲撃の際、コロニー内に侵入したジンをストライク……そこの機体を操縦して撃退したのはキラ君なんです。ですので、彼はGAT-Xの深い部分まで知りえている。こちらとしても解放するわけにはいきません』

 

 ラミアス大尉の言葉を聞いた時、私は頭を抱えて天を仰いだ。

 

 何やってくれてんの、キラ兄!?

 

『なるほど、それは仕方がないな。ならば、キラ・ヤマト君の身柄はそちらへ預けましょう。その代わり、他の者はこちらで保護させてもらう』 

 

『そ…そんな……』

 

『な…なんでだよ!?』

 

『キラ一人を置いて行けるわけないじゃない!!』 

 

『ラミアス大尉! ど…どうにかなりませんか?』 

 

 獅子吼の答えにキラ兄は絶望の表情を浮かべ、トールさんとミリアリアさんは通信機のレシーバー越しに獅子吼に噛みつき、サイさんはカズイさんを連れてラミアス大尉に頼み込んでいる。

 

 というか獅子吼! それ私も困るんだけど!?

 

 ……でもキラ兄のやらかしと向こうの言い分を思えば、この対処も筋が通ってるんだよなぁ。

 

 どうしたらよかんべぇと頭を抱えていた時だった。

 

「……あ!」

 

 私の脳裏に閃くものがあったのだ。

 

 この心がザラつく感覚……強い敵意だ!!

 

「獅子吼! 敵が来るよ! 多分ザフト!!」

 

『こんな時に……!』

 

 私の警告に忌々しげに言葉を噛み締める獅子吼。

 

 けど、次の瞬間に長門から来た通信は最悪の事態を伝えてきた。

 

『大鳥二尉! 殿下を安全な場所へお連れしろ! 奴等、奪った試作機を投入してきやがった!!』

 

『なんだと!?』

 

 ヤバい! あの機体にはPS装甲が使われていたはずだ!

 

 となると、長門の戦力じゃ太刀打ちできない!!

 

「行くよ、獅子吼!」

 

『いけません、殿下! 御身が戦場へ出るなど!?』

 

「ザフトが奪った試作機はPS装甲が付いてる! メビウスや長門だと勝ち目がない!! ビーム兵器を持ったオーロラが必要なの!」

 

『しかし……』

 

 日本奪還も大事だけど、私の最大の役目は血統を維持することだからね。

 

 獅子吼が戸惑う気持ちはよくわかる!

 

 でも、そんな事を行ってる場合じゃないんだよ!!

 

「長門には大和の民が、我が臣民が乗っておるのだ! それを護れずして何が親王か! そしてこの程度の戦場を乗り越えられぬ者に、神州奪還などできようはずがない!」

 

 通信越しに獅子吼を一喝すると、私はフットペダルを踏み込んでオーロラを発進させる。

 

「この一戦が我らの国盗りの始まりよ! 獅子吼! 供をせよ!!」

 

『御意!』

 

 ぶっちゃけ、姫モードでテンション上げないとビビッてチビリそうだ!

 

 でも、ここまで来たらやるしかない!!




クルーゼが死んでキラ虐担当が消えたと不安な諸君!

大丈夫だ! 新しい弾丸はしっかり用意しておいたぜ!!

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