コズミックイラのマチュ ~ロリニュータイプの日本再興記~   作:アキ山

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とりあえず、ネタが降りてきたので投下

休日の暇つぶしになれば幸いです




マチュ殿下、Gシリーズと戦う

「よっと……」

 

 ヘリオポリスが戦火に見舞われる少し前のある日、キラはノートパソコンを手にマリの自室を訪れた。

 

「プレイ時間は……126時間!? いくら何でもハマりすぎだろ……」

 

 彼が主不在の妹の部屋を訪れた理由、それはゼミの仲間達と組み立てた体験型ゲームのメンテナンスの為だ。

 

 ロボットゲームとコクピット型の筐体が完成したのは一月半前の話だが、妹がここまでのめり込んでいるとは思わなかった。

 

 一時期、彼女の目の下にクマが出来ていたのはコレが原因だったらしい。

 

「……プログラムにバグは無し。筐体の方もレバーやフットペダルにボルトのゆるみはあったけど、それも絞め直した。これで大丈夫かな」

 

 オーバーホールではないので、キラ一人でも1時間ほどで作業は終わった。

 

 流石にプレイ時間の多さには若干引いたモノの、妹が楽しく遊んでいるなら兄としても作った甲斐があるというモノだ。

 

「そうだ。テストプレイって事で僕も少しやってみるか」

 

 そう思い立ったキラは呑みかけの缶コーヒーを妹の勉強机に置いて、椅子から立ち上がる。

 

 そして筐体に体を滑り込ませると、ゲームを立ち上げる。

 

「な…なんだ、これ……?」

 

 それから二十分後、ゲームを終えたキラは驚愕の視線を筐体に向けていた。

 

 数度にわたる彼のプレイ結果は散々たるものだった。

 

 何故ならキラはステージ1のザコ敵戦も突破できなかったのだ。

 

 ラスボスの手前の巨大兵器まで進むことが出来た以前とは雲泥の差だ。

 

「敵の動きが全然違う。前はこっちに銃を撃ってくるだけだったのに……」

 

 今回は乗ってきたリフティングボードのような機械を弾頭のように放つこともあれば、こちらの射撃に対する盾に使う事もあった。

 

 さらにはわざと自爆させて、その閃光を目潰しに使ってくるパターンまであったのだ。

 

 そこから取る相手の戦術も一変しており、前までは左右に分かれながら銃撃しては後退するだけだったのが、自機を取り囲んで遠近双方のチームプレイで追い詰めてくる始末。

 

 その虚実入り混じった動きの巧みさは、まさに熟練のもの。

 

 コーディネーターであるキラの反射神経でも……否、反射で追いつけるからこそ翻弄されて隙を突かれる事になった。

 

 こんな難しさでは妹も音を上げるだろうと思ったキラは、設定画面を開いて驚いた。

 

「……すごいな、マチュ」

 

 なんとマリはこの難易度でラスボスまで進むことが出来ていたのだ。

 

 妹も瞬殺されるようなら難易度を下げるつもりだったが、攻略を楽しんでいるのなら問題はない。

 

 そう考えて設定画面を閉じるキラ。

 

 モニターから消える寸前に見えた難易度設定には『REAL』と書かれていた。

 

 

 

 

 ここはヘリオポリスに備え付けられた非常用シェルター。

 

 突然の非常時に多くの人達がここへ駆け込み、家族や恋人に友人同士などで不安と恐怖に抗うべく身を寄せ合っている。

 

 そんな避難民の中に、ハルマ・ヤマトとカリダ・ヤマトの姿もあった。

 

「あなた、キラとマチュは大丈夫かしら?」

 

「ああ、きっと大丈夫だ。二人とも別のシェルターへ避難しているよ」

 

 周囲にいる強面の黒服、大和会が付けたハルマの護衛が周囲を警戒する中でカリダは夫へ不安を吐露する。

 

 そしてハルマもそんなカリダの心に出来たしこりを取り除こうと励ましの言葉を掛けた。

 

(まさか私達が戦火に巻き込まれてしまうとは。これが彼等を動かす起爆剤にならねばいいが……。キラ、マリ、お前達は何処にいるんだ?)

 

 抱きしめた妻の身体から温もりを感じてもハルマの背筋を奔る怖気は消えない。

 

 それは彼の中に流れる巫の長たる血が教える凶兆の前触れだ。

 

 ハルマ・ヤマトは極秘ではあるが、日本と大和民族の象徴である帝という地位にある。

 

 偽名とはいえ、日本全体を指す雅称たる『大和』を姓にする事を許されているのがその証拠だ。

 

 しかしハルマ自身がその地位を望んだかと問われれば答えは否だ。

 

 彼の祖父は再構築戦争の際には皇太子だった。

 

 そして曾祖父である当時の帝は大企業の資産や文化財、そして職人や知識人を海外へ逃がすように指示するなど、日本復活の種をまいた後に国と運命を共にしたそうだ。

 

 それ故か祖父の祖国復活への想いは強く、それはハルマの父へと受け継がれ、その父もハルマへ悲願を託した。

 

 だが、ハルマ自身は祖国復活に乗り気ではない。

 

 象徴として国や民を背負う事は彼にとって重すぎるのだ。

 

 なので許されるなら帝位も返上し、一市民として生きたいとも思っている。

 

(そもそも、私は帝になれる器ではない。普通に働いて、家族を守るのが精いっぱいな只の男だ)

 

 妻の背を撫でながら、ハルマは心の中で呟く。

 

 これは彼が思春期を迎えた頃からずっと抱いていた思いだ。

 

 しかし、彼が望む一般人としての幸せは己の血と立場が許してくれない。

 

 再構成戦争後に世界中に散り散りとなった日本人達は、殆どが祖国復活を望んでいる。

 

 それは当然のことだ。

 

 国とは民族にとって骨子であり土台。

 

 この事は旧世紀に世界中に離散しながらも、2000年以上もの長きに渡って自分達の国を求め続けたユダヤ人を見ればわかる。

 

 国土の大半が山に覆われて主たる資源も無く、自然災害が絶えない土地であったが、日本列島には大和民族が大和民族たる全てがあった。

 

 オーブのような新たなる安住の地を得てもなお、大和民族は災害大国にして四季が移り変わる大八州の地が忘れられない。

 

 彼等が日本の地を求めるのは、遺伝子に刻まれた帰巣本能と言えるかもしれない。

 

 そして自分には彼等を導き、日本奪還が成った暁には再び帝位に就く義務がある。

 

 この宿命から逃げ出そうと思った事は一度や二度ではない。

 

 だがハルマはそれを実行に移すことは無かった。

 

 彼は自分達一族が有形無形の手で支えられていることを自覚していた。

 

 それは全てハルマ達を敬い、国家復活の悲願を託した民達の行いだ。

 

 彼は受けた恩に後ろ足で砂を掛けて全てを放り出せるほど、我儘でも悪人でもなかった。

 

 だからこそハルマは3000年を超えて続く世界最古の皇族の血、彼にとっては呪縛というべき宿命から逃れられない。

 

 そして、この宿命に囚われているのはハルマ一人ではなかった。

 

(マリも生まれながらに生き方を定められている。私はあの子へ自分の好きに生きなさいという言葉すらかけられない……)

 

 普通の親なら当然のように子供へ与えられる将来の自由。

 

 ハルマはそれを愛娘に約束することが出来ない。

 

 彼に出来た事は皇女ではなく一人の子供として愛し、マリが己で身を護れる様に武術を教えることくらいだ。

 

(私はまだマシだ。身分を隠して暮らしているお陰で一般市民として生きられた。だが、この戦争が終われば大和会の者は動き出すだろう。そして日本が復活すれば、マリに待っているのは国と国民の象徴としての生だ。それはどれほど窮屈な生き方だろう) 

 

 昨年四月に起こった『エイプリルフール・クライシス』。

 

 ザフトによって投下されたニュートロン・ジャマーが引き起こした世界規模のエネルギー不足に対して、三菱重工と住友電設が生み出した新形式の小型水素発電ユニットが大活躍した。

 

 このユニットは海水を原料にして大量の水素を生み出し、それを燃料とすることで電気を発生させる簡易発電施設である。

 

 大和会はそれを人道支援として各地に設置し、エネルギー不足解消の一助としたのだ。

 

 これが特に喜ばれたのはシベリアやアラスカなど国土に凍土を持つユーラシア連邦や大西洋連邦で、水素発電ユニットと高性能送電ケーブルが無ければ冬には膨大な凍死者が出ていただろうと言われている。

 

 もちろん大和会がこれを配って回ったのは人助けだけではない。

 

 日本奪還の際に国際世論を味方につけるためだ。

 

 現にユーラシア連邦は設置した水素発電ユニットの無料譲渡を代価に、北海道と北方四島の返還を大西洋連邦立会いの下で約束している。

 

 そして大西洋連邦も日本の復活を望んでいるし、アフリカや中東も前世紀に日本が行っていたОDAから続く各財閥の開発や技術援助の借りがある。

 

 問題は本州と九州を占拠している東アジア共和国だが、こちらもインドをはじめとする東南アジアに水素発電ユニットによるエネルギー支援を行っている。

 

 大和会はこれによって前世紀から日本への隔意が消えない旧中華・朝鮮と、支援を受けた地域との分断を図る腹積もりだ。

 

(大和会を束ねる賢人連中の根回しは巧妙だ。この戦争の行方いかんでは、日本列島奪還も夢ではなくなる。だが、その時私達家族は……) 

 

 ハルマには祖国が復活した先に自分達の幸せがあるようには思えなかった。

 

 

 

 

「獅子吼、長門の位置は?」

 

『交戦しているのはコロニーのスペースポート付近! なのでもう少しです!』

 

 ヘリオポリスから飛び出した私は獅子吼の駆る夜刀神と共に宇宙を駆ける。

 

「見えた!」  

 

 宇宙に出た事でより鋭敏になった私の感覚は、視界より先に長門とザフトの戦いを捉えた。

 

「メビウスが3、夜刀神が3。数が合わない」

 

 長門の艦載機はメビウスが6、そして夜刀神が5機あったはずなのに。

 

『おそらくはやられたのでしょう。相手は連合の試作機、これだけのメビウスが生き残っているだけでも奮戦したかと』

 

 獅子吼の噛み締めるような言葉と共に、あたしの脳裏に声が響いた。

 

(殿下、先に逝くことをお許しください)

 

(どうか、日本復活を。我々の国を取り戻してください)

 

(俺達は靖国にある九段の桜の下で、その日が来るのを待っています)

 

「……ご苦労様でした。貴方達の献身は無駄にはしません、必ず!」

 

 散って逝った英霊達に答えると、私は右のアームレストの引き金を引く。

 

 オーロラが持つライフルから放たれた光弾は、モニターに映るビームサーベルで切りかかろうとしていたイザークという男が乗る機体と夜刀神を引き離すように二機の間を通り過ぎた。

 

『あの機体は……!?』

 

『アスランの幼馴染が乗っていた機体!!』

 

 アムロが調整した通信機から、試作機のパイロット達の驚きの声が漏れる。

 

 前に会った時は民間人の私が乗っていたから、攻撃された怒りよりも戸惑いが勝っているみたい。

 

 でも、こちらにとっては彼等の迷いは好都合だ。

 

「長門! 聞こえますか? 田上一佐!」

 

『殿下!? いけません! 御身が戦場に出るなど!』

 

「心配は無用、こちらも何の勝算も無しに出てきた訳ではありません。それより私が時を稼ぎますので、獅子吼と共に態勢を整えてください」

 

『ですが!?』

 

「分かっている筈ですよ。PS装甲を持った試作機を撃退するには、ビーム兵器を持つオーロラが最も有効だと」

 

『それは……』

 

「なにより貴方達には日本の土を踏んでもらわねばなりません。こんなところで死なれては困るのです」

 

 渋面を浮かべる田上一佐にそう告げると、私はフットペダルを踏み込んだ。 

 

 試作機たちに向かって飛ぶオーロラ、それに応じるようにイザーク機もこちらへ飛び出してくる。

 

『おい、イザーク!?』

 

『別れて、あれだけの時間が経ったんだ! あのガキが乗っているわけがあるまい!』

 

「ですが!?」

 

『万が一あのガキが乗っていたとしても、戦場に出てきた引き金を引いたんだ! 容赦する理由などあるものか!!』

 

 なるほど、あの銀髪おかっぱは道理を弁えている。

 

『落ちろぉっ!』

 

 裂帛の気合と共に手にしたライフルを放つイザーク機。

 

「甘い!」

 

 私は放たれた光弾を肩のアポジモーターを吹かし、突進の速度が落ちないように最小限の左への回避動作で躱す。

 

 狙いはそこそこ正確だけど、照準から発射までのラグが酷い。

 

 というか、なんで銃を構えるのに一瞬見得みたいなポーズを取るんだろう?

 

 その所為で狙う先がバレバレなんですが。

 

 こちらも射撃をと思っていたんだけど、相手も向かってくる所為で撃ち合いの間合いじゃなくなった。

 

『うおおおおおおっ!!』

 

 相手もそれを察したのだろう、ライフルをサーベルに持ち替えてイザーク機が突撃してくる。

 

 というか、なんで後ろの二機は牽制射撃しないの?

 

 こういう場合って一人は牽制射撃、もう一人は閃光弾とかで隙を作って、三方向で袋叩きするのがデフォのはずなんだけど。

 

 ロボゲーの難易度リアルだと、ステージ1の緑ザコでもやってた連携なんだけどなぁ。

 

 ツッコミ処はあれど、こっちの方がやり易いからいいか。

 

『多少は動かせるようだが、にわか仕込みで俺に勝てると思ったか!!』

 

 嘲りと怒りが籠った声を張り上げながらサーベルを振り上げるイザーク機。

 

 そこに刹那の隙を見出した私はフットペダルを踏み込むと同時に、アームレストを思い切り前に押し出した。

 

 瞬間、爆発的な勢いで前に飛び出すオーロラ。

 

『なにっ!?』

 

 それによって瞬く間に相手の懐を取った私は、すれ違うような動きで通常の三分の一程度の長さに調節したサーベルで相手の脇の下を斬る。

 

 今の踏み込みはバックパックと脹脛、そして足裏にあるスラスターを同時に最大出力で吹かせる事で短い距離を高速で移動するテクニックだ。

 

 ロボゲーの中で使っていた得意技で、私はこれを『縮地』と名付けている。 

 

『う、腕がっ!?』

 

 脇の下への一刀で動力回路が破損したんだろう。

 

 得物を持った手から力が抜けてゆっくりと下がるイザーク機。

 

 私はその手を取ると、逆に捻りあげて肩の付け根を使って肘関節を極める。

 

『イザーク!?』 

 

 砲撃機に乗っている褐色の肌のお兄さん…たしかディアッカだっけか、彼の声が耳を打つ中、オーロラの動きは止まらない。

 

 勢いのまま体を捻り、右腕を取られた事で動けないイザーク機の首をサーベルで切りつけたのだ。

 

 半ばまで断ち切られた事で傷口からはみ出たパイプからは潤滑油が漏れ、目からは光が消えたイザーク機の首がだらんと力なく垂れ下がる。

  

 これが浅間流兵法小太刀術。

 

 組打ち甲冑術の流れを汲む体を鎧った相手を確殺する古武術だ。

 

 心の中でドヤ顔を決めていた私だけど、ふとある事に思い当った。

 

「……あ、胴を突き刺したらよかった」

 

 そうだよ、これって生身じゃなくてМS戦なんだから首切っても仕方ないじゃん。

 

 いかん、いかん。

 

 いつもの稽古癖が抜けない所為で、一連の流れを条件反射でやってしまった。

 

 慌てて逆手に持ち直したサーベルで胴をえぐろうとした時だ。

 

「イザークをやらせるかよ!!」

 

 焦りと敵意に上を向けば、コクピット中に映し出されたモニターに長筒を構えた砲撃機の姿が見えた。

 

「チッ!」

 

 私が動くのと長筒の砲口がビームを吐き出すのは同時。

 

 一瞬イザーク機を盾にしようかと思ったけど、あの威力だと二枚貫きされてお陀仏になるだろう。

 

 なので、イザーク機から手を放した私は彼を蹴り飛ばすように踏み台にして上へと飛び上がる。

 

 そしてバク転の要領でビームを回避すると、砲撃機の方にオーロラの尻が向いた瞬間にトリガーを引いた。

 

『なっ!? 躱した!』

 

 ディアッカの驚愕の声と共にコクピットに伝わる振動。

 

 それは背負ったバズーカから砲弾が吐き出された反動だ。

 

「長門! 主砲で敵の砲撃機を捉えられますか?」

 

 体の芯に来る痺れにも似た衝撃を感じながら、私は長門へ連絡を取る。

 

 私の位置だとオーロラのビームライフルはギリギリ砲撃機へ届かない。

 

 だったらどうするか?

 

『はい、可能です!』

 

 答えは届く武器を使えばいい。

 

「では、私が敵機に隙を作ります。こちらの合図に合わせて砲撃を!」

 

 モニターに映る映像がグルグル回る中、私は長門との回線を切ると同時にアームレストのレバーを引く。

 

 するとオーロラはバク転を終えると同時に腹這いのような体勢で持ち替えたライフルを構える。

 

『クソッ! 砲撃後の硬直を狙って……! けど、こっちにはPS装甲があるんだ! 実弾なんて効くかよ!!』

 

 迫るバズーカの弾を前に通信機から漏れ出るディアッカの声。

 

 そこからはPS装甲への信頼と少しの慢心が読み取れた、

 

「いけっ!」

 

 私は頭の中に練った策が成るという確信と共にトリガーを引く。

 

 銃口から吐き出される光弾、それは砲撃機の少し前でバズーカの弾に追い付いた。

 

『なっ!?』

 

 撃ち抜かれたバズーカの弾は爆炎と硝煙を撒き散らし、虚を突かれた砲撃機は為すすべも無くそれに呑み込まれる。

 

「長門! 今です!!」

 

『三番砲塔、てぇっ!!』

 

 そこに突き刺さったのは長門に装備された主砲、『ゴットフリートMk.71』連装高エネルギー収束火線砲だ。

 

『うわぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

 放たれたМSのビームライフルより数倍太い熱線は、バズーカの弾が撒き散らしたヴェールを容易く吹き飛ばす。

 

 そしてその中から現れたのは、両足と腰の半ばを失った砲撃機の姿だった。

 

『くそっ! 仕留め損ねたか!!』

 

「いえ、十分です」

 

 長門のブリッジから聞こえる悔しそうな砲撃手の声にそう返し、砲撃機へとどめを刺そうとした私はある違和感に気がついた。

 

「……あれ?」

 

 それは先ほどまで砲撃機の後ろにいた三機目の姿が見当たらない事だ。

 

 味方がやられたのを見て逃げた? それともどこかに身を隠して不意打ちを狙っている?

 

 ──いや、違う。 

 

 姿は見えずとも気配を感じる、敵意が伝わってくる。

 

 三機目の狙いは……長門か!!

 

「そこっ!!」

 

 私は直感の告げるままに引き金を引いた。

 

 放たれた光弾は長門の側面から少し離れた場所へ飛んでいく。

 

 本来なら何も捉えることなく虚空へ消え去る筈のビーム。

 

『うわぁっ!?』

 

 しかし、それは透明な何かに当たって爆炎を巻き上げた。

 

 光学迷彩か、それとも他の技術か。

 

 紫電を伴いながら現れたのは、頭を失った三機目の試験機だった。

 

 これで試作機は全て手負いになった。

 

 どれから止めを刺そうかと考えていると、馬場一尉から通信が入ってきた。

 

『お下がりください、殿下! あとは我々が!!』

 

 私が稼いだ時間で態勢を立て直したのだろう、メビウスと夜刀神がオーロラの脇を抜けて試作機たちへ牙をむく。

 

『く…くそぉっ!?』 

 

『こいつはヤバいぜ、イザーク!』

 

 リニアガンやミサイル、機関砲の弾丸を受けながらも傷ついた機体で迎撃しようとするイザーク機と砲撃機。

 

 そんな中、ザフト側の戦艦から幾何学模様を描く照明が上がる。

 

『二人とも、撤退命令です! 下がりましょう!』 

 

『ふざけるな! まだクルーゼ隊長の仇も討っていないんだぞ!!』

 

『落ちつけ、イザーク! アイツ等の練度は連合の奴等よりも上だ! そこにあのМSが付いたら、今の俺達に勝ち目はない!』

 

『それに試作機を本国へ持ち帰らないと!!』

 

『……クッ!!』

 

 戦いを継続しようとするイザークだったけど、仲間の説得によって背を向ける。

 

 同時に彼等の撤退を援護しようと言う腹だろう、敵の戦艦からビームやミサイルなどの援護射撃が飛んできた。

 

『総員、深追いはするな! 我々には陛下をお助けすると言う使命がある!!』

 

 田上一佐の指示で、試作機たちを追いかけようとしていたメビウス達は敵艦の射撃を上手く躱しながらこちらへ戻ってくる。

 

『殿下、貴方も我が艦へおこしください。今まで操縦しっぱなしだったのです。さぞ、お疲れでしょう』

 

「ザフトへの警戒は我々が引き受けます。殿下はどうかお休みください」

 

「わかりました。お言葉に甘えます」

 

 田上一佐と獅子吼の言葉に、私はオーロラを長門へ向ける。

 

「あ、そうだ」

 

 そうしてフットペダルで徐行運転していた私は、ポケットから端末を取りだした。

 

 ポチポチと操作して開いたのはメッセージアプリ。

 

 父上と母上、そしてキラ兄に無事である事を知らせた後、最後に開いたのはムルタおじさんと銘打たれたアドレスだ。

 

 これは大西洋連邦有数の大企業体、アズラエル財閥の総帥であるムルタ・アズラエル氏の連絡先である。

 

 大和会の繋がりで何度かあった事があるんだけど、彼は随分と私の事を気に入っているみたい。

 

 多分だけど、初めて会った時のやり取りが彼の心の琴線に触れたんだろうなと思う。

 

 え、どんなやり取りかって?

 

 簡単に言うとこんな感じ。

 

ーーーーーー

 

ム『貴方はコーディネーターなんですか?』

 

私『いいえ』

 

ム『それは何故? お父上もそうですが、日本を奪還するのなら皇帝であるあなた方は優秀な方がいいでしょうに』

 

私『私の最大の役割はこの血を絶やさぬこと。コーディネーターは世代が進むごとに出生率が下がると聞きます。いくら優秀な者が産まれると言っても、子が成せぬならば本末転倒でしょう』

 

ム『ふむ、確かにそうですね』

 

私「それに人の手が入れば血は価値を失い、受け継ぐ意味はなくなる。Mrアズラエル。ロックフェラーを祖として数百年、血と財を受け継いできた貴方がたもそうではないのですか?」

 

ーーーーー

 

 こんな会話の後、ムルタおじさんは大笑いしたかと思ったら私に何かと便宜を図るようになってくれたのだ。

 

 この携帯端末もムルタおじさんから貰ったもので、何処にいても繋がる超高感度衛星通信用端末なんだよね。

 

 『なにかあったら連絡してください』って、ポンと渡してくるんだから金持ちってスゲー!

 

 流石に連合製の試作機がザフトに盗まれたり、私がオーロラでそれを撃退したって伝えるのは拙いのでボカしておく。

 

 となれば、送るべきメッセージはこうだ。

 

『ヘリオポリスがザフトに襲われましたけど、私は元気です。 マリ』

 

 これでよし!

 

 私は送信ボタンを押すと、オーロラを長門の格納庫へ納めるのだった




ロボゲー・モード『REAL』

アムロがいて初めて解禁になる鬼畜難易度。

その内容は宇宙世紀の第二次ネオジオン抗争の完全再現である。

参加している機体は戦乱の中で熟練に熟練を重ねたエースばかりなので、1面のギラドーガでもヘリオポリス襲撃時のイザーク達赤服より腕は上。

キラでも戦争に巻き込まれる前では成す術無く敗北は必至である。

このモードにはシャアの後に裏ボスがおり、最後の敵はまさかの同キャラ対戦。

戦後、ヤキンよりキツいと言いながらも赤いアンチクショウを倒したマチュの前に現れ、そりゃあもうボッコボコに叩きのめしたそうな。

 プレイ後、マチュは対戦中に伝わってきたイメージから裏ボスを『鬼畜テンパ』と呼んで、相棒に体当たりを食らっていたという。
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