そらな達がいるのは結婚式場の中にある控室だ。
経緯を説明すると、ポチタンが結婚式場に入りたそうにしていた事もあり、そらな達は中に入ってみる事にした。中ではスタッフと思われる女性が慌てた様子で何かを探しているようだった。途中ウェディングドレスを着た女性がやって来て、もう大丈夫だと言っていたのでおそらくスタッフが探しているのはこの花嫁の物なのだろう。
それを見たそらなとあんなは事情を訊くことにし、今に至るという訳だ。
「改めまして、私はこの式場のスタッフの幸野です」
「想田まりです」
スタッフが幸野、花嫁がまりと言う名前の様だ。
「それで、何があったんですか?」
「実は…式で着ける筈だったティアラが、なくなっていたんです…」
まりがなくした物はティアラだったようだ。何でもまりの母親も結婚式で着けた物だったらしく、娘であるまりも着けたかったようだが、いつの間にかなくなっていたようだ。
「あれ?じゃあそこにあるティアラは?」
そらなが指を指した先にはティアラが一つ置いてあった。
「それは1時からの式に間に合うように、式場が用意してくれた物なんです」
そらなの疑問にそう答えたのはまりだ。幸野によればまりのティアラと似た形と大きさの物を用意したらしい。その際にティアラの写真も見せてもらったが、確かに大きさは全く同じだった。
「もしかして、これが本当の探偵テスト…?」
「みくるちゃん?」
「安心してください!私が必ず見つけ出してみせます!」
「…みくるちゃんの言う通りだね!まりさん、ティアラがなくなる前に誰かと会ったりしましたか?」
「え?…はい、幸野さんを含めて三人ほど…」
「なるほど…その三人から話を訊いてみるべきと…凄いですねそらなさん!関係者三人に辿り着くなんて!」
「うんうん!流石だねそらな!」
「え…エヘヘ!」
あんなとみくるに褒められて最初は困惑していたそらなだったが、すぐに嬉しそうにする。
それからティアラをなくすまでに会ったという三人から話を聞く事にするそらな達。一人目がカメラマンの宇都見、二人目がまりの友人だというともか、そして先程から一緒に居たスタッフの幸野だ。
「まりさんが最後にティアラを見てからこの部屋に出入りしたのはあなた方三人…つまりこの中に、ティアラを盗んだ犯人がいます!」
みくるは高らかにそう告げる。
「そんな、ありえないですよ!」
だがまりからそれはないと否定され、思わずみくるは固まってしまう。
「…で、ですよね~!ちょっと話を聞こうかな~って…」
「え?それってありえるんじゃないかな?」
「えっ?」
「もしかしてそらな、犯人がわかったの!?」
「違うよ。だってこういうのって、ティアラを盗まれる前に会ってた人達の誰かが犯人だっていうパターンじゃん。これでも僕、コ○ンとか金○一少年読んでたからわかるんだよね~!」
ニシシと笑みを浮かべるそらなであったが、あんなとみくるを含めた人達は唖然とした表情をしていた。
「あれ?どうしたの?」
「もうっ!真面目に考えてよ!!」
「姉ちゃん!?何怒ってんの!?」
(そらなさんって、本当に凄い名探偵なのかな…?)
それから改めて関係者から話を聞く事にするそらな達。
「僕は、花嫁さんを撮りに来たんだよ」
そう言いながらカメラを見せるのはカメラマンの宇都見。
「私は、まりにお願いしたい事があってね」
次にそう証言したのはまりの友人であるともかだ。
「お願いって、何をお願いしたんですか?」
「ブーケをともかの方に投げてほしいって」
「あっ!それってブーケトス!」
(ブーケトス…あっ、悟飯兄ちゃんとビーデルさんの結婚式でビーデルさんがやってた奴だ!確かその時のブーケ、僕がキャッチしたんだったよな~)
そらなが思い出していたのは前世での兄、孫悟飯の結婚式での思い出だ。
「それにしても、お願いってアリなんですね」
「まり、OKって言ってくれたよね?」
「ともかが珍しく遅刻しないで来たから、つい…」
それから幸野からも話を聞いたようだが、式の準備で控室を出入りしていただけで、目ぼしい情報は特になかった。一応帽子やカバンに隠したという推理も出たりしたが、ティアラの大きさ的に帽子にもカバンに隠せないとわかった為、捜査は振り出しに戻ってしまった。
あれからみくるは噴水に座ってティアラを持ち出した方法を考えていたが、中々思いつかないようだ。
「みくるちゃん」
そんなみくるに声をかけた人物が二人いた。
「あんなさん、そらなさん…」
「大丈夫…?」
「…わからないんです。ティアラを持ち出した方法が判れば、犯人がわかる筈なのに、その方法がわからない…」
「みくるちゃん…」
「…ねぇ!みくるちゃんはさ、どうして名探偵になりたいの?」
この暗い雰囲気を変える為か、それとも単なる疑問なのか、そらなはみくるに名探偵になりたい訳を訊いてきた。
「それ、私も気になる!」
「…私も、助けられたから」
そう言ってみくるは噴水から立ち上がった。
「だから、今度は私が名探偵になって、みんなを助けたい!」
「…じゃあさ、なれば良いじゃないか」
「え?」
「僕は推理力がある方じゃないけど、みくるちゃんはみくるちゃんなりに考えて、ティアラを見つけようと頑張ってるじゃん。それだけみんなを笑顔にする名探偵になりたいって事でしょ?」
「そらなさん…」
「みくるちゃん」
そらなの言葉を聞いたみくるに、今度はあんなが声をかける。
「悩んでるだけじゃ始まらないよ。一歩踏み出せば、答えはついてくる!…一歩の勇気が答えになる!…だよ!」
「あんなさん…」
「みくるちゃん!もう一度全部調べてみよ!」
「僕も姉ちゃんも手伝うからさ!」
「はい!」
「でも、ティアラはどこに行ったのかな?」
「案外まだあの控室にあったりして?」
「そらなってば、真面目に考えようよ…」
「そうですよ…あっ」
するとみくるが髪を結ぶのに使っていたリボンが風で飛ばされてしまい、植え込みの中に入ってしまった。
「あ、まただ」
「また?」
「今日はこれで二回目なんだ。女の子のリボンが植え込みの中に入って…植え込み…花?」
「植え込みの中に入って…」
何か引っかかったものがあるのか、あんなとみくるは考え込んでしまう。
『案外まだあの控室にあったりして?』
そして先程そらなが口にした言葉。これで全ての線が一本に繋がった。
「「…見えた!」」
「え?わかったの!?」
「うん!そらなのおかげだよ!」
「ぼ、僕の…?」
それからそらな達は控室に戻り、まり達に真相を話すつもりの様だ。
「「犯人は…あなたです!」」
あんなとみくるが指差した人物、それはまりの友人であるともかだった。
「…や、やだなぁ!ティアラはポーチに入らなかったでしょ?外に持ち出す事なんて…」
「いいえ。ティアラは持ち出されていません」
「は…?」
「あなたは自分にブーケを投げてほしいとまりさんに頼み、こっそりティアラをブーケの中に隠した…そらなさん」
「オッケー!」
みくるに目線を送られたそらなはブーケの中に手を入れ、そこからある物を取り出した。
「それは…!」
「私のティアラ!?」
「ともかさん、あなたはまりさんからブーケを受け取った後、ティアラを抜き取るつもりだったんです」
「どうですか?ともかさん!」
これがあんなとみくるが導き出した答えだ。
しばらく静寂が続いていたが、突然ともかが不敵な笑みを浮かべながら拍手をし始めた。
「フフフ…やるねぇ。まさか君達の様なベイビー達に見抜かれてしまうとは…」
「と、ともか…?」
友人である筈のともかの豹変ぶりを目の当たりにしたまりは当然困惑していた。
「フフ…僕は、ともかではないんだ!」
そう言ってともかは衣服を脱ぎ捨てる。ともかが居た場所にはシルクハットを被り、マントを付けた男が立っていた。
「す、姿が変わった!?」
「僕の名はニジー!怪盗団ファントムの、怪盗さ!」
「か、怪盗!?」
「頂くよ?」
ニジーは一瞬でそらなに駆け寄り、彼女の耳元にそう囁いた。
「…あーーっ!ティアラがない!」
「「えぇっ!?」」
そう、そらなが持っていた筈のティアラがニジーに奪われたのだ。控室の窓が開いていたのを見るに、ニジーはそこから逃げたようだ。
それからそらな、あんな、みくるは木々の中でニジーを追いかけていた。
「速い…これじゃ追いつけないよ…!」
「っ…あれ?そらなさんは?」
ふとみくるが疑問に感じる。一緒にニジーを追いかけていた筈のそらなが隣に居ない事に。
「フフッ、ここまで離れればもう追いつけないね」
「ヤッホー!」
「おっと、この状況で僕に気安く話しかけてくるベイビーが…えぇっ!?」
ニジーが驚くのも無理もないだろう。なにせそらながあっという間に自分に追いついてきたのだから。
「ハッ!」
「がっ!?」
そらなはニジーを思いっきり殴り飛ばした。ニジーは木々の先にあった広場まで吹っ飛ばされた。
「ず、随分過激なベイビーだね…」
「さっきからベイビーベイビーって言ってるけど、僕には明智そらなっていう立派な名前があるんだい!覚えてよね!」
「そらな!」
そこへあんなとみくるも追いついてきた。
「さぁ!ティアラを返しなさい!」
みくるはニジーに近づき、ティアラを返すように言う。
「それは出来ない相談だね。このティアラには、マコトジュエルが宿っているからね」
「マコトジュエル…?」
するとニジーはティアラからダイヤの様な物を取り出した。
「このジュエルを頂く事が、僕達の目的なのさ!…そうだ、三人も観客がいるんだ。これから素敵なショーを開くとしよう!」
「みくるちゃん!離れて!」
これからニジーが何かをしようとしている事を見抜いたのか、そらなはニジーから離れる様みくるに言う。
「えっ!?」
「嘘よ覆え!いでよ、ハンニンダー!」
ニジーはティアラに何かエネルギーを注ぎ込んでいた。するとティアラは怪物に姿を変えた。
「ハンニンダー!!」
「ファントムが新たに開発したハンニンダーさ。さぁ、ショータイムだよ!」
「ハンニン…ダァー!!」
ハンニンダーと呼ばれた怪物はマントから斬撃のような物を出し、それで周辺の木々を切り倒した。
「な…なんとかしなきゃ!」
「な、なんとかって…!」
動揺しながらもあんなは何とかしようとするが、今のハンニンダーの攻撃を見たみくるは恐怖で震えてしまっていた。
「さぁ、探偵ごっこはおしまいだ」
それを見ていたニジーはみくるにハッキリと告げた。
「君の怯える瞳が全てを物語っている。君は探偵じゃない…探偵気取りの真っ赤な偽物さ」
「気取りなんかじゃない!」
そんなニジーの言葉を否定する人物がいた。それはそらなだった。
「そ、そらなさん…」
「…二人とも、出来るだけ遠くまで離れてて。巻き添えを喰らっちゃうからね」
「そ、そらなさん…もしかして…!?」
「うん。僕があいつと闘うよ!」
「そらな!?」
「そんな、無茶ですよ!」
「大丈夫だよ。だってあいつ…弱いもん」
「…え?」
「弱い?…何を言ってるんですか…?」
そらなの一言を聞いたあんなとみくるは信じられないと言わんばかりの表情をしていた。
「…ハハッ!何を言い出すかと思えば…ハンニンダーを君の様なベイビーが倒せる訳が…」
「ダァーーッ!!」
「ハンッ!?」
「ない…は?」
「「えっ…!?」」
この光景を見ていたニジー、そしてあんなとみくるは驚愕していた。
何故なら、そらなが一瞬の内に距離を詰め、ハンニンダーを蹴り飛ばしたからだ。
次回でようやく1話部分が終わりそうです…!
ちなみにそらなの現時点での最大戦闘力は2万程です。